サイタマさんちのメイドラゴン 作:実は小林さん派w
サイタマとトールがA市の瓦礫の中で立ち尽くす中、少女の泣き声が響き渡った。親を探して叫ぶ声に、トールが尻尾をピクンと動かし、すぐさま反応した。
「サイタマさん、私、あの子のお母さん探してきます!」
「お、お前飛べんだろ? 上から見てこいよ。俺はここ片付ける」
「え、でも私だって戦えますよ?」
「怪人死んだし。後は面倒なだけだ。ほら、行け」
トールは少し不満そうだったが、サイタマの言葉に渋々従い、ドラゴンの姿へ変身。緑の鱗が光り、翼を広げて空へ飛び立った。風圧でサイタマのマント(実はただの服)がバタつく。
(便利だな、あいつ)
サイタマは感心しつつ、瓦礫を片付け始めた。ビルのがれきを軽々と持ち上げ、下敷きの人々を次々と救出。遠くで騒ぎを聞きつけた市民が集まり始めた頃には、救助作業はほぼ終わっていた。
「おい、あいつ誰だよ!? 一人でこんな災害片付けてるぞ!」
「すげぇ……ヒーローなのか?」
市民がざわつく中、空からトールが戻ってきた。ドラゴンの姿で着地し、口から少女の母親をそっと降ろす。少女が母親に駆け寄り、泣きながら抱きついた。
「サイタマさん、見つけました!」
「おお、ナイス。でかい口してんな、お前」
「褒めてます?」
「まぁな」
トールは得意げに胸を張り、メイド服姿に戻ると少女に笑顔で手を振った。少女は少し怯えつつも手を振り返す。市民たちは呆然と二人を見ていた。
「何だあれ……ドラゴン?」
「いや、メイドだってよ」
「メイド!?」
サイタマはトールに近づき、ボソッと呟いた。
「なぁ、お前さ。飛べるし強いし、俺よりヒーローっぽくね?」
「え!? 私がヒーローですか!?」
トールの目がキラキラ輝き、尻尾がバタバタ揺れる。
「でも私、サイタマさんのメイドですよ? ヒーローよりメイドの方がいいです!」
「いや、メイド雇う金ねぇって言ったろ……」
「私が稼ぎますよ! 怪人倒したらお金もらえるんですよね?」
「ん? 誰から?」
「え? 誰か……くれるんじゃないですか?」
「……お前、世の中舐めてんな」
サイタマは面倒くさそうに頭を掻いた。
「ったく……まぁ、しばらく置いてやるよ。お前が怪人倒して金稼ぐなら、家賃くらい出せ」
「本当ですか!? やったー! サイタマさん大好きです!」
トールが抱きつこうとした瞬間、サイタマはサッと避けて冷静に告げる。
「抱きつくなら殴るぞ」
「えぇーっ!?」
その後、トールはサイタマの部屋に居座り、勝手にメイド兼怪人退治係として生活を始めた。ある日は怪人を炎で焼き払い、ある日は魔法で近所のハゲたおじさん(サイタマではない)の髪を復活させ、またある日はサイタマの買い物に付き合って荷物持ち。サイタマは相変わらず怪人をワンパンで倒しつつ、トールの騒がしさに少しずつ慣れていった。
ある夜、満月を見ながら団子を食べていたサイタマがポツリ。
「お前、意外と悪くねぇな」
「え? 今なんて?」
「なんでもねぇよ」
「絶対何か言いましたよね!? ねぇ、サイタマさーん!」
トールが騒ぐ中、サイタマは無表情で団子を頬張った。Z市のゴーストタウンに、奇妙なヒーローとドラゴンメイドの日常が始まった。
数日後、街でまた怪人が暴れ出した。トールが空から火を吐いて怪人を焼き、サイタマがトドメを刺すという連携が自然と出来上がっていた。市民からは「ハゲマントとドラゴンメイド」と呼ばれ始め、噂が広まる。
「お前さ、このまま怪人倒してりゃ食っていけるんじゃね?」
「じゃあ、私、サイタマさんの専属メイドとして正式に雇われてもいいですよね?」
「いや、金ねぇって」
「私が稼ぐって言ってるじゃないですかー!」
トールが拗ねると、サイタマはため息をつきつつも小さく笑った。
「まぁ、いてもいいけどよ。怪人来たらちゃんと起こせよ」
「はいッ! 任せてください!」
こうして、サイタマの孤独なヒーロー生活に、トールというドラゴンメイドが加わり、二人の奇妙な日常は続いていくのだった。