『……は? いないよ?』
冷たい表情のままそう言う薫。
だが、スクアーロは引く様子を見せず口を開く。
「本当はXANXUSに会いに来たんじゃ、ねぇのかぁ!?」
『……』
スクアーロから、その名が出た瞬間、薫の表情は変わった。
薫は黙ったまま、悲しげな表情で、スクアーロを見る。
「!?」
さきほどまでとは、全く違う表情だったので、驚くスクアーロ。
思わず言葉を失う。
あの日、最後に見た……茜の表情と重なる。
「どうして、ボスに会いたいんですかー?」
ただ一人、話についていけないフランがそう言った。
そう言った瞬間、ベルが焦ったような表情に変わる。
「お前は黙っとけ……隊長、後は頼んだから」
そう言い、フランを引きずって、中へ入っていった。
「……そうじゃねぇのかぁ?」
二人のやり取りを見て少し落ち着いたのかスクアーロはそう言う。
『ハッ……ハハッ、何でアイツに会わないと駄目なわけ?』
悔しそうな顔をしてそう言う。
いつもの余裕が感じられない薫。
明らかに誤魔化すように笑う。
――さすがにこれ以上はダメだ。
そう思い、和は薫を守ろうと腕を伸ばす。
「……はぁ?」
『自分を殺した奴に会いたがる奴なんて居ないよ?』
苦笑いで言う薫。
その瞬間、和が驚いたような表情をした。
あと少しで薫に触れようとしていた手が止まる。
そして、その手は薫に触れることなく、静かに下ろされた。
もっとも、薫より後ろに立っていたため、その表情や行動派薫からは見えなかったが。
(分かっていたのか……)
内心、そう思う和。
そう。薫に最終的止めをさしたのはXANXUSなのだ。
それを皆黙っていた。
だが、薫はそれをずっと知っていたのだ。
と、言っても、薫の言う〝殺された〟というのは、外傷的意味ではないのだが。
「!?」
スクアーロも驚いた表情を見せる。
『何? 知らないと思った? アイツでしょ? ……僕を……茜を最終的に倒したのは!
そんな奴に会う気は無いよ……じゃぁね』
そう言い、またそこから、立ち去ろうとする。
薫が歩き出す少し前を和は歩く。
それには、薫に表情を見られないようにしたところもあった。
――きっと、今の表情を見られたら幻滅される……
自分でも、悲しげな表情をしていると自覚していた和はそう思った。
「ちょっと待てよ! 本当は……まだ好きなんじゃねぇのかぁ!?
だから、わざわざ、来たんじゃねぇのかぁ!?」
『ッ……うるさいな……違うって言っているだろ……』
薫は呟くようにそう言う。
それを聞いた和は動きを止めた。
少し焦ったように和は振り向き、薫を見る。
もう、自分の表情に構っている場合ではなかった。
その時の和は、もう先ほどの表情なんて忘れ、ただただ薫を“守る”ためだけに動いた。
背を向けているため、スクアーロに薫の表情は見えない。
だが、薫の表情が見えている和は、安心させるように、薫の肩に手を置く。
すると、薫の体から力が抜けたようで、いつものように笑った。
そして、振り向き――
『あ、だったら、アイツに伝えといてよ。
僕は、薫として……ボンゴレに復讐しに来たって……ね』
そう不敵な笑みをみせながら言い、帰った。
〔帰り:日本に着いてます〕
『……ハァ』
「知っていたんだな……」
『何を?』
「薫を最終的に……」
その続きの、言葉に詰まる。
なぜなら、殺したといっても、ちゃんと生きているからだ。
『あぁ、そのことか……まぁ、銃を使うのはアイツだろうし……技は強力だったしね
それに……私がアイツのことで間違えるわけないじゃん』
茜として、最も近くにいた存在を間違えないと、悲しそうな顔で、あくまで外傷的なことを話す薫。
当然、和もそうなのだが。薫以外、みんな死にかけた原因は外傷だと考えているのだ。
「……ごめん」
『何で、和が謝るの?』
「薫なら大丈夫と思っていて……」
『僕は、大丈夫だよ……と言っても、もう壊れたからだけどね』
「……そんなこと、言うな……ただ、薫は……」
『優しいのは僕じゃない……茜だよ。まぁ、あの子は甘かったんだけどね』
和の次の言葉を予想してそう答える薫。
それを聞いた和は少し驚いた顔をする。
「え?」
『茜は、甘すぎた……その結果がアレだ…………バカ、だね』
拳を握って言う。
『……最後まで、もしかしたらって、変な期待を持って……何、信じていたんだろ』
「でも、薫は…………なぁ……1つ聞いてもいいか?」
なんとか言い返そうとした和だが、それよりも気になることがあったためそちらを優先する。
『何?』
「あのさ……その、今でも……好き……なのか?」
言い辛そうにそう聞く和。
その言葉を聞き、薫は息をのむ。
スクアーロに言われたときもそうだったが、XANXUSのことが出ると、薫は一気に感情を読み取りやすくなる。
これではダメだと思い、薫は一度大きく息を吸う。
『……それは、XANXUSのこと?』
「あぁ」
『……ない、な……僕は誰かを信じる心を失くしたからね』
「……」
薫の言葉が微かに途切れ途切れだったのを、和は見逃さなかった。
『あ、やっと着いたや……疲れたー!〔ガチャ〕ただいまー!』
「ただいま」
〔その頃、ヴァリアーでは〕
〔バンッ!!〕
勢いよく、ドアが開く。
「ボスゥゥゥ!! 邪魔するぞぉぉぉ!!」
「うるせぇ! カス鮫が!」
「なんだとぉ!?」
「……カスが……何の用だ」
スクアーロの言葉をかるく無視して用件を聞く。
「あ、あぁ……実は、今日は、客が来たんだが……」
「……」
それがどうした。それがXANXUSの持った感情だった。
「その客が……茜だったんだぁ……」
そんなXANXUSの気持ちを知ってか知らずか焦っているような顔をしてそう言う。
「!?」
その瞬間、表情には出さないが、驚くXANXUS。
それと同時に殺気を放つXANXUSにスクアーロは一歩下がる。
「……ドカスが……とうとう、頭が逝ったのか?」
「っんな訳あるかぁぁ!!」
「アイツは死んだんだ……もうこの世には居ねぇ」
「でもよぉ、確かに見たぜぇ……ベルやフランだって見たんだ……間違いねぇ」
「……」
「あ、でも、茜は、名前変えたみたいだぁ……確か、薫……そう言ったな」
「……」
何かを考えているのか、黙り込む。
「そういえば……アイツから伝言だぁ。
『薫として、ボンゴレに復讐しに来たって』……だってよぉ」
「……カスが」
「いいのかぁ?」
「何がだ?」
「会わなくていいのかぁ!?」
「……あぁ」
「何でだぁ!? ボスは会いたいんだろぉ!?」
「……どうせ、何時か会うだろ」
「でもよぉ!! ボスも、まだ好きなんだろぉ!?」
「あ? アイツとは、時が来るまで会うわけにはいかねぇ」
スクアーロの問いには答えず、言葉を濁す。
「時って何だぁ!? それが、てめぇなりの罪滅ぼしかぁ!?」
「うるせぇ! これ以上、余計なこと言うと、カッ消すぞ!!」
そう言い、銃を向ける。
「……チッ」
〔バタンッ〕
スクアーロは、舌打ちをして、部屋から出て行った。
静かになった部屋の中、XANXUSは首にかけたネックレスをそっと握り締める。
「……カスが」
〔ベル&フランは〕
「結局、何でボスに会いたがっていたんですかー?」
「ししっ♪ お前が気にする事じゃねぇし♪」
「気になりますー」
少し、棒読みで言う。
「お前、本当に、気になってんのか?」
「なっていますよー? あの、薫って言う人と、先輩達の関係もですけどー」
「お前は知らなくても、いいっての」
「じゃぁ、せめて、どっちか1つ教えてくださいー」
「……分かったよ……言えばいいんだろ? じゃぁ、ボスの事で……」
「おー」
軽く、手で拍手をする。
「……実は、あの二人は、恋人同士だったんだ」
「だった? って、いうことは、今は違うんですかー?」
「さぁな……その後、色々あって、知らねぇし♪」
「じゃぁ、直接、聞けば早いんですねー?」
「お前、まさか、聞くつもりか!?」
「暇ならですー」
「……」
どうなっても、知らね……と、思うベルだった。
〔薫の家では〕
「大丈夫だったか!?」
家に帰ると真っ先に言ってきた奈津。
『大丈夫だよ……本当に奈津は心配性だね、でもありがとう』
少し、笑いながらそう言う。
「……だってよ、敵のところに行くなんて……」
薫と和の姿を見て、安心したような表情になりながらもそう言う。
「あ、その事だが、ヴァリアーは真実を知っていた」
「は!? どういうことだよ!?」
「つまり、味方ってことだ」
「……そうだった、のか」
一気に気の抜けたような表情になる奈津。
そんな二人のやり取りを見ていた薫が、口を開く。
『……味方? 僕は認めないよ』
「薫?」
『1度裏切られている……認めたくない……』
えっと、まず初めに、スクアーロってXANXUSのこと名前で呼ぶっけ…?
もし呼ばなかったら、すみませんでしたー!!
さてさて、まぁ、二人は恋人同士という設定にしてみました。
そこー、年齢のこと気にしたら負けね。
最終編集日 2017/12/15