「「………」」
薫の言葉に和と奈津は何も言えず黙っている。
今までの薫と何も言うことが違うことはなかった。
だが、何故だろう。
二人は何も言えなかった。
きっと、それはあまりにも薫が悲しげにそう言ったからだろう。
いつもなら、彼女は何も感じていないような表情でそれを言い放っていた。
だが、今回は違った。
悲しげな薫はみない。だから、何も言えなかったのだろう。
何を言えば良いのかわからなかったのだろう。
誰も喋らない状況で、長い沈黙が流れる。
『……あれ? ごめん……僕、急に何言っているんだろうね?』
不意にさっきとは別人のように、明るい声でそう言った薫。
その変わりように二人は少し驚いた。
「薫……?」
『アハハッ、少し……疲れたのかも。部屋で休んでくるよ』
誤魔化すように笑いそう言う。
でも、明らかに無理して作っている笑顔だった。
「……分かった」
それをわかった上で、余計な事は聞かずにそう言う和。
『うん』
どこか安心したようにそう言い、薫は部屋に戻っていった。
「薫、どうしたんだ?」
さきほどの悲しげな表情を思い出しているのか。
少し戸惑ったようにそう言う奈津。
「……俺らが思っている以上に……薫の傷は、深いかもな」
「そう……なのかな?」
〔薫の部屋〕
――僕は、何言っているんだ……
部屋に戻ってきて、座り込んでそんなことを思う薫。
自分でも、珍しく感情を出しすぎたと思う。
それは、本当にただ疲れているだけなのか、それとも相手がヴァリアーだからか。
〔コン、コン〕
ドアがノックされる。
『どうぞ』
〔ガチャ〕
「……おかえり」
『ただいま……珍しいね? 裂が自分から来るなんて』
「別に……帰ってきた後、たまたま通りかかったから、寄っただけだ」
部屋に入りきることなく、壁にもたれかかるようにしてそう言う。
手のやり場に困っているのか、青緑色の髪の毛を触る。
『そっか……何? 裂も、心配してくれていたの?』
少し、笑いながらそう言う。
「……そんなわけないだろ」
つり目であり、緑色の瞳を薫からそらしながら、言う。
だが、その頬は少し赤い。
どうやら、照れているだけのようだ。
『そっか……』
それを知ってか知らずか落ち込んだ様子をみせながらそう言う。
「あ……えっと、まぁ、その……少しは、心配したけど」
落ち込む薫をみて、顔を赤くしながら焦ったように裂がそう呟くように言う。
『え?』
「あ、う、嘘だからな……まぁ、そこまで言うなら、心配してやらないこともないけど……」
だんだん小さくなっていく声。
顔はこれでもかと言うくらい、薫から背けているので表情はわからない。
だが、耳が赤い。おそらく、顔も真っ赤なのだろう。
『……クスッ、そっか、アリガト』
それを見て少し笑ってそう言う。
「なっ! あ……別に、じゃぁ、俺忙しいし、じゃぁな!!」
〔バンッ〕
少し荒々しくそう言い、出て行った。
一瞬、笑われたことにか驚いたように薫の方を向いた。
その顔は予想通り真っ赤だった。
『……クスッ』
薫は微かに、微笑んだ。
どこか落ち着いたように、静かに裂に対して礼の言葉を呟く。
その後は、疲れたのか、知らない間に、眠っていた。
〔次の日〕
【7:13】
目が覚め、時計を見ると、そう表示されていた。
『……朝、か(いつの間に寝たんだっけ……)』
とりあえず、起き上がり、何をしようか迷う。
今日は日曜日なので、学校も休みなのだ。
『とりあえず、1階に行くか……』
そう呟き、着替えて、1階に降りる。
「あら、おはようございます」
『聖菜姉さん。おはよう……星姉さんの手伝い?』
「はい。もうすぐ朝食が出来ますよ」
優しそうな微笑でそう言う。
和風と同様、守護者ではない。
彼女は、このファミリー内でも医者的役目を果たしている。
怪我をしたら、すぐに彼女のもとへ行く。
彼女の医師としての治療は上手く、傷も残らないことが多い。
普段は、掃除なんかもしてくれる、必要な存在だ。
『あ、そうなんだ……』
「出来ましたよ」
朝食を作り終えたのか、それを運んできてそう言う。
聖菜は「運ぶの手伝います」と言って、チッキンの方へ走っていった。
『あ、星姉さん……おはよう』
「おはよう……珍しいね。今日も、自分から起きるなんて」
『アハハ……なんか目、覚めちゃって……』
数秒言い訳を探したが何も出てこず、苦笑いで素直に言う。
「そう……あ、そうだ、ちょっと、
それに対して何も言わずに、話を変える星。
和から、昨日の薫の様子を聞いていたからだ。
『え?
そう言い、薫は和風を起こしに、部屋に向かった。
「
そう呟くように言ったとき、丁度聖菜が料理を持って帰ってきた。
「あの、どうして薫さんは、
星の言葉から内容をなんとなく読み取った聖菜はそう聞く。
「あの子曰く、そっちのほうが、言いやすいから……ですって」
「……そう、なんですか」
少し、苦笑いで言った。
〔一方、薫は〕
〔コン、コン〕
『
声をかけてみるが、中から返事は聞こえてこない。
『……寝ているのか? いいや、入ろう』
〔ガチャ〕
部屋の中に入る。
すぐにベッドの上に横になっている和風を見つけた。
『あ、居た……寝てる?』
少し、目を細めそう言う。
和風は規則正しい寝息をたてている。
『……
「……ん? 何だ、薫か……俺は、
『さぁ? ま、起きたね……朝食出来ているから、早く来てね』
いつもより大人しいツッコミに少しだけつまらなさそうな顔をする薫。
「あぁ……分かった」
『じゃ』
そう言い、薫は部屋から出て行く。
〔リビング〕
『一応、起こしたから時期に来ると思う』
「そう、ありがとう」
「ん? どっか行っていたのか?」
『あれ? 和、いつの間に……あ、
「さっき……そっか」
『へぇ、全然気がつかなかった……うん、時期に来ると思う』
「まぁ、こっちに来るまで、会ってないし……さっき、聞いた」
『それもそうだね……ハハッ、当たり前か、和も聞いていたんだもんね』
一度に、二つの会話をする二人。
「あんたら……すごいね」
二人の会話を聞いていた、哉恵が言う。
『「何が?」』
「息ピッタリって、いうか……」
「そうか?」
「えぇ、一度に二つの会話をして、話しする人なんて、そうそうみないよ?
そんなしっかりと区切ってね」
二人の会話は確かにしっかりと区切られていた。
数秒を間を置いて話を切り替えていたのだ。
その数秒の間に先走って返事をしようと言葉がかぶることなく、会話をしていたのだ。
『……あぁ、もうそんなの、無意識……みたいな?』
「そうなんだ……(無意識であんなちゃんと通じ合う会話するんだ……)」
「お待たせ」
そんな会話をしていると和風がやってきた。
『あ、来た』
「じゃぁ、食べましょう」
「「「いただきます」」」
〔薫の部屋〕
朝食を食べ終え、部屋に戻ってきた薫。
『……ハァ』
一人部屋の中で、ため息を吐く。
『……XANXUS』
ネックレスを握り締めながら、そう呟く。
『って、駄目、ダメ! アイツは敵なんだ……僕に止めを刺した……敵。
今頃……真実を知っていても、敵……なんだ!! こんなもの!!』
そう言い、手を振り上げ、握っているものを、床に叩き付けようとする。
『……こんな……ものっ……何でなんだろう……な』
唇を噛み締め、手をゆっくりと、元に戻す。
ネックレスは、握ったまま。
『アイツだって……あの日に、捨てているはずだ!』
そう言いつつも、それを捨てられない。
『…………くそっ!』
そう言い、ベッドに倒れ込む。そして、うつ伏せになる。
『……無理、だよ……捨てられないよ』
悔しそうに言う。
〔薫の部屋の前〕
<アイツだって……あの日に、捨てているはずだ!>
「ん?」
たまたま、通りかかった、和が薫の声に気づく。
<…………くそっ!>
「薫? どうしたんだろ?」
小さく、呟いて、ドアを開けようとする。
いつもとは違う感情剥き出しの薫を心配に思う和。
ドアノブに手をかけ、ドアを開けようとしたその時――
<……無理、だよ……捨てられないよ>
「!?」
薫の悲しく、辛く、悔しそうな声が聞こえて、動きを止めて驚く。
(……今は、入らないほうがいいな……そっとしておくか)
薫の気持ちを感じ取ったように、和はその場から、静かに離れた。
「ちょっと、庭行く……誰も来ないように、言っておいて」
「ん? 分かったー、行ってらっしゃい」
「……すぐ戻る」
〔庭〕
和は外へ、出て、あるところに電話をしていた。
〔プルルル、プルルル、プルル―― ガチャ〕
最後に電話を掛けたのはどこになんでしょうね?
まぁ、今回はファミリーのことだったねー。
あと、薫のXANXUSへの感情を出してみましたー。
まぁ、そんなに出てない気がするけどね!!
最終編集日 2017/12/15