悪の復讐劇   作:カオル06

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いやぁ、優しさの前に存在が謎ですけどねw


謎の優しさ

「痛っ!!」

どこからか――薫が、投げたナイフの方向から声が聞こえてくる。

薫はいままで通り笑みを浮かべていたが、さらに口角をあげる。

「まさか!?」

焦ったように声のした方を向く骸。

そこには、ナイフで腕を軽く切ったクロームが居た。

今更、薫の狙いに気付いたのだ、だが、もう遅い。

薫の狙いは最初からクロームであるのだ。

本来、骸はクロームと入れ替わるようにして出るものであるが、今回は違った。

クロームが作り出したもの、骸は本当に幻覚である。

そのため、それを作り出したクロームを攻撃すれば、骸は消えると、簡単に想像のつくことだ。

「クローム!!」

「骸様!」

クロームが骸のほうへ向かおうとする。

だが――

『はい、残念♪』

薫は簡単にクロームの目の前に立ちふさがった。

急に瞬間移動したのかと思うほどの速さで、目の前に来た人物にクロームは驚き足がすくむのを感じた。

そして、そうしている間にクロームの首に、短剣を突き付ける薫。

『動いたら……死ぬよ?』

「……ッ」

『もちろん……おまえが、動いても……ね?』

ゆっくりと骸のほうを見ながらそう言う薫。

短剣は向けられているものの、視線は違う方向を向いている。

それならば、逃げることもできるように思えるが、それをさせない気配が薫はまとっている。

おそらく、少しでも動けば、見えていないはずのクロームの首を簡単に掻っ切るだろう。

「くっ……卑怯です! クロームを放しなさい!!」

薫を睨みながらそう言う骸。

だが、薫はその殺気を抑えようとはしなかった。

『ハハハッ、油断するからだよ……それに、消えかけに言われてもなぁ?』

「!?」

骸の体は消えつつある。

だが、今の状態のクロームが幻覚を維持できるとは到底思えず、骸はただ消えていくばかりである。

「……茜さ、ん」

怯えたようにそう呼ぶクローム。

『あれ? 聞いてないの? 僕は、茜じゃない……薫だよ?』

冷たい目でクロームを見ながらそう言う薫。

それを見てクロームはさらに怯えてしまったようだ。

「あ……ぅ」

『……怖いの?』

微笑みながら、優しい声でそう聞く薫。

その表情は茜のものだった。

「え? ……はい……離して……おねがい」

突然の薫の変化に少し戸惑いながらも、涙目でそう言うクローム。

『あらあら、可哀想に……でも、そう簡単に、離すわけ無いよ♪』

だが、そんな願いを簡単に崩してしまうような言葉と笑顔でそう言う。

一瞬見せた茜の表情は消えていた。

「あっ……」

 

「……だったら」

『ん? 何かいい方法でも、思いついた?』

急に声を発した骸に向かって挑戦的にそう言う薫。

「いい度胸です……これでどうですかっ!!」

そう言い、強力な幻覚が現れる。

おそらく、今の骸に出せる一番の力なのだろう。

『わぁ……強力な術だね♪』

それでも、焦った顔ひとつ見せず、楽しそうな顔をしてそう言う薫。

そして、一瞬でその幻覚を消した。

「なっ!?」

さすがの、骸も驚きを隠せなかった。

まさか、自分の最大の力をこんな簡単に破られるとは思ってもいなかったのだろう。

それほど、薫の力は強力なものだと、改めて知らされたようで、骸の頬に汗が伝った。

『……さぁ、消えたよ?』

アヤシク笑いながらそう言ったと思えば、薫はクロームを連れて、下へ飛び降りた。

「屋上からっ!? ……しかし……この体も、限界のようですね……くっ」

驚きを隠せない骸。だが、自分の体が消えつつあるので、上手く動けない。

悔しそうな顔をして、骸は膝をついた。

 

「きゃぁー!!」

『アハハハハッ、大丈夫……怖くないよ』

笑いながらそう言った薫。

その声は、すごくすごく優しいものだった。

クロームはその声に茜の影を見てしまい、安心を覚え、黙って頷いてしまう。

『さて、もうすぐ教室通るかな?』

そう呟く薫。

その瞬間、教室を横切ったのだった。

落ちていく薫はしっかりと、教室の中から、生徒たちがこちらを見ていることを確認した。

その中にツナたちが一緒にいることも――

 

〔教室〕

「おい! あれ!!」

窓から顔を出していた、生徒が声を上げる。

その声に、教室にいた生徒全員窓を見る。

その瞬間――

「!?」

一瞬だけだったが、薫が落ちていると、はっきり見えたツナは驚きを隠せなかった。

……クロームと一緒に。

「クローム!?」

驚き、窓の下を見る。

未だ、薫とクロームは落ちている。

もちろん、地面に向かって、クッションも何も無い場所へ。

「あのままじゃ、クロームが!!」

そう言い、急いで、教室から飛び出すツナ。

「10代目!!」

それと一緒に獄寺も出て行った。

他の生徒たちは、あまりにも突然の出来事すぎて、動くことができなかった。

 

 

〔和たちは〕

「なんか、騒がしいな?」

あの後、和たちも教室に行くのは嫌で、ずっと同じ場所に居たのだ。

そんな中、数人の生徒の声に気付いた山本はそう言った。

「!!」

次の瞬間、和は、何かを感じ取ったのか、驚いたように目を開く。

「どうしたのな?」

「……薫が、屋上から飛び降りた」

焦りながら、早口でそう言う和。

「なっ!?」

「くそっ!」

走り出す和。

それに驚いた山本は声を上げる。

「あ、無理だ!! 間に合わない!!」

「だったら……」

そう言い、すごいスピードで走り、窓に飛び込んだ。

〔パリーン!!〕

すごい音で、ガラスが割れ、和にも少し刺さっただろう。

だが、そんなの気にしないというように、和はそのまま外へ飛び出した。

 

 

 

〔薫たち〕

『んー……もうすぐ、到着だね♪』

楽しそうな顔をして、そう言う薫。

一方クロームは真っ青だ。

当然だ、何もない地面に落ちていっているのだから――

〔パリーン!!〕

『ん?』

下から、窓が割れる音がした。

「薫!!」

窓から飛び出てきた和は腕を変化させている。

『さすが和だ♪』

そう言うと同時に――

〔モフッ〕

何かクッションのようなものが、二人を支えた。

それから、すぐに降りる薫。

もちろん、クロームも引っ張られるようにそこからどいた。

「……フゥ」

軽くため息を吐く和。

変化させた腕はもう元に戻っている。

『ご苦労さん♪』

悪びれた様子を見せずにそう言う薫に和はひとつため息を吐いた。

「ったく……無理しすぎだ」

『んー、だって……ね?』

クロームを見ながら言う。

「え?」

突然話題を振られたクロームは少し困ったように聞き返した。

『ハハッ、そんなに怖かったんだねー』

ずっと掴んでいた手を離し、指でクロームの涙を拭いながらそう言う。

(悪い人のはずなのに……何で? すごく、優しい……)

『さて、これからどうするかなー……あ、アイツはどうしたの?』

「……置いてきた」

『そう……でも、そうじゃなくて』

「ん? ……あぁ、必要と思うことは言っておいた」

『……そっか』

 

 

「クローム!!」

ちょうど話が一段落ついたところで、そう叫びながら走ってくる人物が見えた。

『ん?』

当然、薫も予想していた通り、ツナたちが走って来ている。

「ハァ、ハァ……大丈夫?」

「ボス……」

そう言い、クロームはツナのところに駆け寄る。

『……』

そのクロームを少し悲しそうな顔をしながら見ている薫。

引き止めるように、微かに腕を伸ばす。

「薫?」

そんな薫の行動を不思議そうに見る和。

『ん? ……うん、何も無い……』

笑いながらそう言い、伸ばしていた腕もおろした。

いつもと違う雰囲気の薫に心配そうな表情をする和。

「おい」

怒ったような声が聞こえた。

そちらを見ると、ツナだった。

『ん?』

「クロームを泣かせやがって……」

『……知らないよ』

目を閉じながらそう言う。

「ボス、違うの……薫さんは、優しくしてくれて……それで、あの……」

『……へぇ、庇ってくれるんだ……無駄なのにね』

薫はゆっくり目を開きながら小声でそう呟いた。

 

 




いやぁ、薫も無茶しますね~
屋上から飛び降りちゃったよ。クローム巻添えだよ。
骸、今回もあんま見せ場無かったよ。大事なところで消えちゃったよ。骸ファンごめん;
和は自分の腕を変形させて、武器を出すのです。もう何でもありだな。


最終編集日 2017/12/17
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