とりあえず、学校に行きましょう。
〔現在〕
見渡す限り、どこをみても、部屋の中は赤色に染まっている。
ただの赤色ではなく、ところどころ赤黒く、部屋中にそれの匂いは漂っていた。
その赤色の正体――
〔グシャ〕
にぶい音をたて、死んでいく人々。
その中に、立ち尽くす一人の女。その女は――
『アハハハ……今回も弱かったなぁ……』
狂っているかのように笑いながら、死体を見る。
「……うっ」
まだ微かに意識のある男が声を上げる。
声がしたほうを睨むように見る彼女。
殺気を込めたその睨みで相手は言葉をつまらす。
『アレ? まだ生きていたの?』
だが、すぐに表情を変え、笑いながら彼女は男に近づく。
笑っている、殺気立ってもいない。
なのに、相手は怯えた表情を隠さず、大げさなほど震え上がっている。
「くっ……もぅ、許して……くれ」
震えた、かすれた声でそう言う男。
そんな男をつまらない、というように見下ろす彼女。
『アハ、ゴメンネー? 君たちに恨みは無いけど……』
少し間を開け、悪魔のように笑い言う。
『僕、人間嫌いなんだー。だからさ……僕のために死んで……よ!』
そう言い、持っている大鎌を男に向けて振り下ろす。
グシャ――
部屋に嫌な音が響き、苦しそうなうめき声を上げながら男は命を絶った。
『アハハ……もう、終わりかぁ』
彼女は口では笑っているが、その青色の目には何もうつしていない。
ついさっき殺した相手も、既に覚えていないだろう。
地面に落ちているそれらを見渡し、ため息を吐くと――
〔ガチャ〕
「うわっ……今日も派手にやったな」
入ってきた濃い赤色と、毛先にいくと黄色い、特徴的な髪色をした彼を見て、彼女は本来の笑みを見せた。
『これは、これは……和君じゃん♪』
部屋に入ってきた瞬間、眉を寄せる。
「ったく……茜……じゃ、なかったな……薫、もう少し手加減しろよ……」
『そんなこと言っても、ねぇ?』
薫、と呼ばれた彼女――
その前に言った
「ハァ……服もすごいコトになっているし」
やれやれと頭をかきながらそう言う。
『ん?』
薫は自分の服を見る。薫の服は血まみれだった。
彼女は怪我などしていない。すべて返り血だ。
ちなみに、返り血は服にだけ付いているわけではない。
髪、顔、服、足元、持っていた大鎌――すべてに、これ以上ないほど付いている。
さすがに、顔は気持ち悪いのか、服の裏地を使って拭う。
そんな薫の行動を見ていた和はため息を吐く。
同時に、薫の首元で何かが光るのを見つける。
「……薫、ネックレスなんて普段付けるっけ?」
『ん? あぁ、うん……血にまぎれて、無くならないかと思って』
「?」
答えになっていない答えを返され、不思議そうな顔をする和。
そんな和を見て、少しだけ悲しそうに微笑む薫。
それは、これ以上これに関しては話す事はないという、薫なりの意思表示だった。
「……まぁ、いい……帰るぞ」
薫の思いを汲み取った和は、それ以上、何も聞かない。
『ココも家の一部だよ?』
「そうだけど……」
とても、家とは思いたくない光景が広がる部屋。
それを見て和は苦々しい顔をする。
『……ま、いいや。行こうか』
「あぁ」
そうして二人はその場を後にした。
〔リビング〕
部屋に戻り、一度血を流し着替えた薫は、和と二人で食事をとっていた。
いつもは、ほかの人もいるのだが、今日は任務などで二人だけだった。
「あ、そういえば……」
ご飯を食べていると、和が何かを思い出したように、声を上げた。
『何?』
「明日から学校通う事になったから」
『……僕も?』
「…………あぁ」
少し戸惑いながらそう言う。
『ヤダ』
「まぁ、聞けって……」
即答する薫を止め、焦りながら和が言う。
『何?』
「通う学校は……
並盛高校だ」
『!!』
それを聞いた薫は驚いたように目を開く。
「行くか?」
『……もちろん♪』
すぐに意見を変えた薫は、不敵な笑みを浮かべ言う。
「……そうか」
『じゃぁ、僕は部屋に戻るから♪』
上機嫌で部屋に戻る薫。
〔薫の部屋〕
『まさか、こんなに早くチャンスがくるとはね……』
一人、部屋で呟く。
『少し早いけど……もうすぐ楽しくなってくるよ♪
……ね? 君もそう思うよね? 〝茜ちゃん〟♪』
写真を見て言う。
そこには笑顔の茜が写っている。
そして、自分の『元』の名前を言い、また笑う。
『さて……もうすぐ始まる……僕の復讐がね♪』
そう言ってから眠る薫。
その時の寝顔は、すごく楽しそうだった……
〔次の日〕
「……きろ……おい、薫……薫! 起きろ!」
『…………ん?』
「やっと起きたか」
『うるさいな……起こすな』
朝があまり得意ではない薫。さらに起こされ、不機嫌そうに眉をひそめ、布団にもぐる。
「でも、学校……行くんだろ?」
『……あ』
すっかり忘れていた、というように声をあげた薫。
「忘れていたのか?」
『……あぁ』
特に隠したり、悪びれた様子もなく、そう言う薫。
とりあえず、ベッドからでる。
「ったく……あ、それと、はい。これ制服だから」
『知っているよ……アリガト』
そう言い、制服を受け取る。
知っている……と、いうのは、以前も薫――茜が並高に通っていたからだ。
(こうしていれば、普通の女の子なのに……)
眠そうにあくびをしている薫を見ながらそう思う和。
朝起こされる姿も、眠そうな目をしたまま制服を素直に受け取る姿も、それだけ見れば普通の高校生であることに違いなかった。
――これが、優しい彼女本来の姿であることも知っていたから。
『何? 普通の女の子?』
「いや……別に(読心術!?)」
内心、驚く和。それを表に出さずに、そう言う。
『とりあえず……着替えて行くから』
「分かった……じゃぁ、下で待っているからな」
『……ん』
そう返事したのを確かめると、和は部屋から出て行った。
薫は一つため息を吐いてから準備を始めた。
着替えてから、1階に行く薫。
『お待たせ♪』
その頃にはすっかり目が覚めたようだ。
その顔はとっても楽しそうだった。いつも通りの薫。いや、いつも以上に楽しそうだ。
「お、おぉ……なんか、楽しそうだな?」
あまりにも、さっきと変わっていたので思わずそう聞く。
『そう? だって、アイツらに会えるんだよ? 憎い……アイツらに……』
少し目を細めてそう言う薫。
微笑みながらも、その目にはしっかりと憎しみが込められている。
「……」
黙ってそれを聞く和。
『やっと……やっと…………』
それ以上は何も言わず、アヤシク笑う薫。
「……薫、俺は絶対、味方だからな?」
ポツリと、呟くように言う和。
『ん? 何言っているの?』
「あ、いや……」
『当然だよ♪ 和が居ないとツマラナイし、意味ないじゃん♪』
「……サンキュー」
予想していた反応と違い少し驚きながらも微笑みながら礼を言う。
薫の瞳からも、先ほどの憎しみは消えていた。
ただ、目の前にいる和をまっすぐ見つめ微笑んでいる。
これから、復讐に向かうとは思えないほど穏やかな雰囲気だった。
「さて、準備も終わったし……そろそろ行くか」
『あぁ、そうだね♪』
楽しそうに笑いながら言う。
「クスッ……じゃぁ、行こう」
そんな薫の表情に何だか嬉しさを覚え、少し笑う和。
『うん……あ、ちょっと待っていて』
「あ、あぁ」
突然、引き返してしまった薫に首をかしげながらも、その場に立っておく。
しばらく待っていると
『お待たせ♪』
「お、来た……帽子?」
『うん♪』
薫は、顔がほとんど見えないくらい深く、黒い帽子を被っていた。
「なんで帽子?」
『いいから♪楽しいゲームの始まりの合図だよ♪』
「……?」
薫は楽しそうに、和は不思議そうな顔をして、学校へ向かった。
ふはぁ……やっと、1話目終わったぁ~
あ、でも、私、死ネタ嫌いだから……誰か主要キャラが死んだりしないと思う。
まぁ、最初、人…死んでたけどね。
そして。書きたい小説案が人バンバン逝くかもしれない系
最終編集日 2017/12/10