悪の復讐劇   作:カオル06

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薫の事は誰にも分からない?


知らなくて良い事

〔薫の家〕

『ただいま』

「おかえりなさい」

『あ、うん。僕は部屋に居るから』

丁度会った星にそれだけ言って、部屋に入る薫。

薫自身は何気なくそう言ったつもりだった。

だが、星は何か思ったのか、横を通り過ぎていく薫をじっと見ていた。

 

 

〔薫の部屋〕

星に見られていることに気付かなかった薫は、部屋に戻った瞬間ベッドに向かった。

黙ったまま寝転がる薫。

『ハァ……どうしたものかな』

少し疲れたように。そう呟き、目を閉じる。

目を閉じながら、色々と考え事をしていたが、いつの間にか寝てしまった。

 

 

 

しばらくして

〔コンコン〕

ドアがノックされるが、薫は気づかない。

まだ、寝ているのだろうか。

「薫? 入るぞ?」

その声は、和のものだった。

どうやら、任務からは帰ってきたらしい。

そのことを考えると薫が眠りについてから、ずいぶんと時間が過ぎたようだ。

 

しばらく待っていたが、返事が無いので不思議に思ったのかドアが開く。

「薫?」

ドアから少しだけ顔をのぞかせる和。

少し部屋を見渡してから、ベッドに薫が寝転がっていることに気付き、中に入る。

ゆっくりと薫に近づく和。

服装は任務用のとは違い、普段着だった。

先に着替えてきたらしい、あるいは、とっくに帰ってきていたのだろうか。

まぁ、そんなことはどうでも良いことなのだ。

和は薫が寝ているベッドのそばまで来て、薫を見た。

『……』

薫は一定の呼吸で目を閉じていた。

「寝てるのか……?」

確かめるようにそう呟く和。

薫からの返事はない。ただ同じように目を閉じているままだ。

「……仕方ない。後でいいか」

〔ガチャ   バタン〕

どうやら急用ではなかったのか、そう言い、部屋から出て行った。

『……』

出て行ったのをドアの音で確かめると、ソッと目を開ける薫。

どうやら本当に眠っていたのではなかったらしい。

正しくは、和が来たとともに、意識は戻っていたのだ。

薫はいつ敵に襲われるか分からない身。

眠っているときはとくに敏感に気配を察知するのだ。

そのため、起きてはいたものの、結局狸寝入りを続けたのだった。

『(悪いな……今は話す気にならない……)』

そう心の中で静かに謝り、また眠った。

 

 

〔同時刻:和の場合〕

〔ガチャ   バタン〕

「……ハァ(……さっきの薫、起きていたな)」

ドアを閉めた後、小さくため息を吐く。

薫が起きていることに気づいていた和。

だが、下校時・任務前のこともあり、少し気まずいところもある。

和は薫にその気がないなら、それに従うまでと思い、何も言わず出てきたのだ。

「あれ? 和? どうした? ため息なんか吐いて……」

どうやら、ドアを閉めた瞬間から居たらしい。

裂が不思議そうに首をかしげている。

「裂……いや、別に……ただ、少し任務行って、疲れてるだけだ」

少し俯きながら言う和。

――薫の、薫の決めたことだ。

そう思いながら和は自分の気持ちを閉じ込めた。

今まで、薫が和のことを拒否したことなどあっただろうか?

覚えている限りそんなことはなかったはずだ。

だが、ここ数日は――とくに今日の薫はどうだろう。

どこか、和の様子を伺うような、疑心を持った目で見たことが数回あった。

薫はおそらく無意識だろう。だから、和も何も言わず過ごした。

おそらく、言ったところで、薫は上手く誤魔化しただろうが。

「……そうか」

裂は何か思ったのだろうか。

数秒返事に間があった。

だが、何も言わずそれだけ言った。

「あぁ……お前は? 薫に何か用か?」

「お、俺は、別に用なんか……」

突然わざとらしく、口ごもりながら言う。

「……残念ながら薫は寝ている……用があるなら、また後でだな」

「だから、用なんか無いって!!」

少し、大きな声で言う。

「何ムキになってんの?」

少しだけ、刺のある言い方をしてしまう和。

和自身あまり気にしていないように思えて、実はショックなところもあったのだろうか。

「あ……いや、まぁ……少し、話を……と、思って……」

「そうか……でも、アイツも疲れているみたいだし……少し、休ませてやろう」

そう言い、歩き出す。

「そうだな……前から思っていたけど、和って、薫の事何でも分かるよな」

少しだけ和を追いかけるように歩き出した裂がそう言う。

「そうか?」

裂の言葉に、立ち止まって、そう返す和。

「あぁ……でも、知りすぎたら、疲れるんじゃねぇか?」

「は? 疲れる?」

意味がわからない、そう言うように、不思議そうな声を出す。

「あぁ……知りたくないことも、分かるんじゃねぇか?

 そんなに、薫の事気にしなくても……ボスとしての強さは、あるんだし」

少し元気がないように見える和に対して、裂なりの励ましのつもりだった。

「でも、守らないと……何を仕出かすか分からないだろ?」

「だから……それが、お前を疲れさす原因の一つなんじゃ……」

言いづらそうにボソボソとそう言う裂。

「そんなわけ……!!」

言いかけて、あることに気づいた、というように目を大きく開け、途中で言葉がとまる和。

「……?」

完全停止してしまった和に近づき、様子を窺う。

「そうか……じゃぁ、薫にとって俺は……迷惑なのか?」

「え? それは、違うと……思う」

違うと言い切れない裂。

それでも、かすかな否定に和は少しだけ笑みをみせた。

だが、それは無理をしていないといえば嘘になるだろう。

「……俺、少し休むから……ありがと。気使ってくれて」

「別に、気とか使ってねぇし……!」

「そうか……」

そう言うと、和はヨロヨロと歩き出した。

「……仕方ないな」

そんな和の姿を見て、裂はそう呟いた。

 

 

〔薫の部屋〕

『ん……本当に寝てた?』

ゆっくり起き上がり、目を擦る。

廊下で和と裂が話している間、本当に寝ていたようだ。

(……そろそろ、敵に仕掛けないとな)

そんな事を考えていると――

〔コンコン〕

『ん? どうぞ』

つい、反射的に返事をしてしまう薫。

しまった、と思ったころにはもう遅かった。

ただ、ドアの前に居る人が誰なのかと思いドアを見つめる。

〔ガチャ〕

『……あれ? 裂? どうした?』

入ってきた人物を見て、少し不思議そうな顔をした。

「……和のこと、だけど」

いつもとは違う真剣な顔で言う。

『場所……移動するか?』

裂の気持ちを察したのか薫も少し真剣そうにそう聞く。

「いや、いい」

『そうか……で、どうした?』

「和に何か言ったのか?」

前置きはせず、率直にそう聞く。

裂自身、少し気になっていたのだ。二人の間に何があるのか。

『和に……?』

少し考え込むようなしぐさをする薫。

「……迷惑、とか」

『いや、そんなこと言っていないよ?……ただ』

もしかして、と思ったことがあり、最後にそう付け加える薫。

裂はそれを聞き逃しはしなかった。

「ただ?」

『……僕の事……気にしなくて良いとは言ったけどな』

少し間を空けてそう言った薫。

それを聞いた裂は、少しだけキョトンとした。

「それだけか?」

それだけで、あんなに落ち込むのか? と思う裂。

だが、薫は言葉を続けた。

『そうだねー……他に何かと言えば……疲れたなら、逃げて良いって、ことかな?』

「逃げる?」

また、裂は驚きを隠せずにいた。

『あぁ』

「何で、そんなこと?」

『和ってさ……ずっと、僕の傍に居てくれるんだよな……ずっと、僕を守ってる。

 守って、僕の言うこと聞いてくれて……

 それってさ、疲れるんじゃないかな? って、思ってね。

 いつか……知らなくても良いことを知ってしまうんじゃないかな』

少し笑いながら何か物語を話すような口調でそういう薫。

「知らなくて……いいこと」

先ほど、和に言った言葉を思い出す。

裂も同じようなことを言った。

『あぁ……僕の中には、誰か他の人が知ると駄目なものがたくさんある』

「なんで、駄目なんだ?」

自分で同じ事を言ったものの、どんなものがあるのか知っているわけではない。

『他の人が知るには、重すぎるんだ……僕の心の闇を知るのは重すぎる。

 こんないやな事は……僕一人が、知るだけで良い。知ると……辛いだろうし』

今度は悲しそうな顔をして言う。

その言葉には絶対に誰も自分の中に入れ込まないという重さがあるように感じた。

「……そう、か」

『別に、迷惑ではない……でも、あまり近づきすぎると……駄目だな』

「でも、和は十分薫に近い存在じゃ……」

『違うよ』

その質問には即答する。

「え? じゃぁ……だれ?」

『奈津にも言った気がするな……誰でもないよ』

少し笑いそう言う薫。

「誰でも、ない……でも、ファミリーなんだから、頼ってくれてもいいんだぞ?

 誰かに相談したら……少しは気が楽に――」

『無理だよ』

裂の言葉を遮りそう言う。

そう言った薫は、どこを見ているのか、冷たい目をしていた。

「え?」

そんな薫の表情に驚きながらも聞き返す裂。

『ハハッ、相談……か』

そう呟くと、立ち上がり、裂に近づく。

そして――

 

『……みんなが知っているように……僕は、人なんか信じないからね♪』

そう裂の耳元で呟いた。

 




今回は、裂をたくさん出してみました!!
ツンツンしてなかったけどねー……裂のツンデレ設定が崩れていくw
なんか…薫もツンデレみたいになっていく…;
ツンデレじゃないよ。素直じゃないだけだよ!!


最終編集日 2017/12/17
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