『いた……い……?』
突き飛ばされた薫は少し、よろめきながら起き上がり、自分が居た位置をみる。
そこには、和が倒れていた。
薫は大きく目を見開く。
ありえないことを見るようにして、動きが止まった。
頭の中が真っ白になった。
目の前の光景が夢のようだった。
さきほどまでそこにいたのは、自分で、倒れるのは自分のはずだったのだ。
だが、現実は違った。和が――仲間がそこにいたのだった。
「なっ?!」
ツナも驚きを隠せないようでいつの間にか、普通のツナに戻っている。
そのツナの声で、ようやく薫が動き出した。
『……和?』
薫は和に駆け寄り、和の体を揺らす。
信じられないのか、妙に口角があがり、笑顔が引きつっている。
いつものような余裕は微塵も感じられない。
「……」
紅月は驚きで声も出ない。
ただ、目の前に倒れた和と、いつもと全く違う薫を見ているばかりだ。
『おい……和、起きろ……おい!! ……くそっ』
ようやく、状況を理解したのか、悔しさで、唇を噛み俯く薫。
黙ったまま、目を閉じていて、動かない和。
数秒間、また薫が動かなくなった。
少しして、また薫は動き出した。
黙ったまま、和を抱え、帰ろうとする。
「おい……」
それを、紅月が呼び止めた。
ツナと獄寺は、まだ衝撃から帰って来れないのか、その光景を見ているだけだ。
『……何?』
薫の声は、すぐに消えるような、かすれた小さい声だった。
いつものような余裕そうな表情は、やはり、そこにない。
「いけるのか?」
『……』
その質問には答えずに、薫は和を引きずるようにして出て行った。
『……』
やっとの思いで、靴箱まで和を運んできたところで……
「お、今帰りか?」
ちょうど帰ろうとしていた、山本に会う。
『……あぁ』
「ソイツ、どうかしたのか? 具合でも悪いのか?」
和を見てそう言う山本。
その言葉に、ピクリと反応をしめす薫。
『……どうもしないし、具合が悪いわけでもない……寝ているだけだ』
「寝てる? 一人で、家まで運べるか? 手伝うけど……」
『いらない』
それだけ言うと、薫は家に向かって歩いていった。
全くいつもの笑みを見せなかった薫を山本は不思議そうに見ていた。
〔家〕
『……ただいま』
「おかえりなさい……どうしたの?」
出迎えてくれた星が、和を見てそう言う。
『……僕を庇って倒れた……聖菜姉さんに頼んで診てもらって』
「分かった」
数秒、星は驚いたように薫を見た。
何があったのか、聞きたかった。
だが、それはできなかった。
なぜか。
薫が、見せたことのない表情を――とても苦しそうな表情をしていたからだ。
そんな薫の顔を見て何が聞けるのだろう。
結局星は少し早足で聖菜を呼びに行った。
〔診察室〕
その部屋にはベッドが5つあり、その1つに和を寝かす。
「大丈夫ですよ……手当てするので、いったん部屋外で待っていてください」
だいたいを見終わった聖菜が口を開いて、そう言う。
『うん……お願い』
元気のない返事をして部屋から出て行く薫。
そんな薫を聖菜は心配そうに見ていた。
〔診察室前廊下〕
診察室をでて、近くにある椅子に座り込む。
「まぁ、大丈夫みたいで良かったわね」
星が安心したようにそう言う。
黙ったまま俯いている薫。返事はない。
ただただ、祈るような姿勢で座っている。
「大丈夫よ。薫のせいじゃ、ないんだから……」
薫の頭を撫でながら言う。
何が起こって薫を庇うことになったのかは知らないが、そう思った。
『……いや、僕のせいだ……僕を庇ったから……』
「きっと、すぐに元気になるよ」
『そうだと……いいね(僕が、もっと早く反応していれば……)』
あまり気のない返事が返って来る。
思い出されるのは、自分の名を焦ったように呼び自分を押した和の声ばかりだ。
自分がもっと警戒していれば、自分がもっと素早く反応できたら。
薫は、ただただ自分を責め立てる。
星はそんな薫の頭を数分なで続けた。
少しして、星が口を開く。
「……和は薫に任せるからね?」
『うん……』
そう返事をすると、星は歩いて行った。
その後、薫は黙ったままそこを動かない。
目を閉じ、微かに震えている。
いつもの彼女の姿はなく、ただただ、一人の人間としてそこに座っている。
いつもの彼女のような、強く余裕のある感じは全くなく、ただ弱い一人の人間だった。
しばらくすると、誰かが走ってくるような音がする。
「薫!! 和が倒れたって!!」
人一倍心配性な奈津だった。
『うん……倒れた』
「どういうこと!? 助かるの? てか、何で、和が? 誰にやられたの?」
薫の肩を掴んで、質問攻めをする奈津。
『助かる……和が倒れたのは、僕のせい……』
「えっ?」
奈津から驚きの声が漏れる。
『和をやったのは……僕』
「どういうこと?」
肩を掴んでいた手をゆっくり離し、一歩後ろにさがりながらそう聞く奈津。
『……僕を、庇ったせいで……和は…………』
「庇った? 薫が……避けられなかったってこと?」
『そうだよ……ハハッ、こんなボス……拒絶した?』
表情を見せないまま、そう言う薫。
ただ、自嘲気味に笑ったその声を聞いて、奈津は驚いた。
「拒絶なんか……しないよ?」
『……別にいいよ? 避けられるのは、慣れているから』
そう言った薫は、また弱く笑ったのだった。
とりま、弱い薫を見せてみる。
薫は、すべてを抱え込もうとしてる感じがあるので、
たぶんこんなときでも、人前では強がるだろうなぁ…みたいな感じです。
……全然強がれてないけどね
まぁ、助かるという方向で……死ネタ嫌いですのでねw
最終編集日 2017/12/22