「!!」
その時、奈津は分かった。
表情は見えなくても、薫はとても悲しそうな顔をしている、辛そうな顔をしている、悔しそうな顔をしていると。
「(慣れているなんて……嘘だ)……避けたりしない、絶対だ」
奈津はそれだけ言うと歩いていった。
その言葉は、いつもと同じ口調、でも、力強さが含まれているものだった。
それから、またしばらくして
まだ、和の手当ては終わらずにいる。
未だ薫は動く気配を見せない。
「薫……」
そこに今度は裂が様子を見に来たようだ。
『……』
「……大丈夫か?」
裂は薫の隣に座りそう聞く。
『何で、僕に言うんだ……その言葉は、和に言うべきだろ?』
その声はやはり震えていた。
それを聞いて裂は少しだけ薫のほうを見る。
薫が気付く様子はない。
そんな薫から視線をはずす。
少し複雑そうな表情だ。
「……お前にも必要だろ?」
『必要ない。僕は元気だし、普通だ……』
やはり、表情は見せずに言う。
「どこが元気なんだよ……普通じゃないだろ?」
『普通だ』
「……ほら、これやるよ」
これ以上は言っても無駄だと判断した裂は話をそらす。
そう言って、薫に一輪の花を渡した。
『……?』
その花を受け取り、花をジッと見つめる薫。
「……別に、お前に元気になってほしいと思って渡したんじゃないからな。
ただ、あれだ。その……散歩していたら、たまたまあったからだ!!」
『たまたま』を強調してそう言う。
顔を見なくても赤くなっているのがわかる。
『……あぁ』
いつもと変わらない裂に、少し気持ちが落ち着く薫。
「じゃぁな」
そう言い、少し早歩きで歩いていった。
それからしばらくすると
〔ガチャ〕
診察室の扉が開く。
「手当ては終わりました。息もちゃんとしていますし、脈も安定しています」
微笑みながらそう言う聖菜。
『……』
薫は力なく立ち上がる。
だが、少しだけ安心したような表情だ。
「大丈夫です。きっと遅くても明日には目を覚まします」
『ありがと』
「では、私はこれで」
そう言い、少し頭を下げ歩いていった。
『……』
〔 バタン〕
開いていたドアから中に入り、閉める。
「……」
和は眠ったまま。一定のリズムを刻みながら息をしている。
聖菜の言っていた通り、安定しているのだろう。
『……和……ごめん』
近くにある椅子に座り呟く。
『何で、庇うんだよ……何で、僕のことなんか……』
その後は、何も言わずに黙ったまま俯いた。
ただ静かに、和の手を握りながら。
〔コンコン〕
しばらくすると、部屋のノック音が聞こえる。
〔ガチャ〕
「……ご飯、出来たよ」
「はやく食べよう!」
「行くぞ」
「食べないと、体に良くないし、な?」
「あまり、心配させるな。し、してねぇけど」
「そこまで、一緒に居なくても、大丈夫ですよ」
「……早く行こう。仕事あるし」
そこにはみんな居た。
みんな薫を元気付けようとしているのだろう。
だが、薫は小さく首を横に振った。
『……いらない』
「え……」
『食欲、ないんだ……悪い、今日はみんなだけで食べてね』
少し笑いながらそう言う。
「えー、食べないの? 一緒に食べよ――」
「分かった……じゃぁ、今日はみんなで先に食べるね
お腹が減ったら、机に置いておくから、それを食べてね」
哉恵の言葉を遮り言う星。
そうしてみんなは部屋から出て行った。
だが、みんな同じことを思っていたのだろう。
――薫は無理して笑っている……きっと、この中で一番辛いのは……薫だ
共通してこう思っただろう。
それから時間は経ち
〔コンコン ガチャ〕
「薫……?」
心配そうな顔で入ってきたのは奈津だった。
『……どうしたんだ?』
だいぶ落ち着いたようで笑顔でそう聞く薫。
弱弱しさは感じなかった。
薫はいつものように振舞っていた。
「いや……ご飯、食べてないんだろ? 大丈夫かな……って」
少し気まずそうに話す。
『大丈夫……お腹減ってないから』
「じゃぁ、寝ないのか? もうだいぶ遅くなってきたし……」
『うん……寝る気にもならないから』
「でも、寝ないと、体に良くないよ?」
心配しているような声が聞こえる。
『別に、どうでもいい……それに、明日は休みだし、ね?』
いつもの口調、いつもの笑顔の薫。
「どうでもいいって……」
『もう壊れた体なんだしさ……大丈夫だよ……』
「大丈夫って何? 大丈夫じゃないだろ?」
拳を握りながら言う。
『……大丈――』
「やめてくれ!!」
薫の言葉を遮り、少し大きな声で言った。
今回は、ほぼ全員ファミリーの人の台詞がありましたねー
皆さんに、どのセリフが誰のセリフだったのか通じたかは謎ですけどねw
ま、たまにはいいですよね。
で、これってシリアスっていうのかな?よく分かりませんが………
奈津がとうとう怒鳴ったね…?怒鳴ったのかな?
最終編集日 2017/12/22