悪の復讐劇   作:カオル06

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その人のことを知っているつもりで知らないことは多いのですー


何も分からない

「これしか、方法が無いんだ」

『くっ……誰、だ……』

ヨロヨロと立ち上がり、痛む頭を抑え、必死にその人物を見ようとする薫。

相当衝撃が強かったようで、頭から血が流れてくる。

霞む視界の中、必死で上を見上げ人物の顔を見ようとする薫。

そこに居た人物は――

「……悪いね」

そう相手が呟いたと思うと、再び、頭に衝撃が走った。

かろうじて見えた相手の手に握っていたものは――トンファー。

トンファーを武器とする人物は、薫には一人しか思い浮かばなかった。

『……雲雀……恭、弥』

お前も謝ったりするんだな、という言葉は口にできないまま、名前だけ呼び、その人のほうへ倒れ込んだ。

その人物は、薫の言ったとおり、雲雀だった。

自身のほうへと倒れてきた薫を難なく受け止める雲雀。

「ごめんね……薫……」

雲雀はそう呟き、薫を少し抱きしめてから、薫を抱え、そのまま歩いていった。

 

 

 

「……ハァ、ハァ……ここにも居ない」

走って薫を探す和。

まだ目が覚めたばかりということもあり、体力の消耗が激しく感じる。

「そうだ……こういうときは、薫の行きそうな場所を……探……して」

そう呟きながら、立ち止まる。

息を整える目的でもあったが、それとは別に、もう一つ。

「行きそうな場所って……どこだ?」

和には分からなかった。

薫の行きそうな場所なんて、一つも思いつかなかったのだ。

いつも一緒に居たのに……

和は拳を強くにぎり、歯を食いしばる。

「何で……何で分からないんだ……」

絶望的だった。

自分は薫の何を知っているんだ? そう思った。

 

昔もそうだった。

昔――薫が茜だった頃、幸せそうな笑顔でいつも笑っていた。

本当は、いつの日からかどこか、その笑みに陰りがさしていたことに気付いていた。

だが、茜はいつも楽しそうに笑っていた。

弱音なんて全く吐かなかった。

だから、大丈夫と思っていた。

そう思っていたから、ろくに茜のことを知ろうとせず、目を背けていた。

 

昔の事も、今の事も、何も知らないままだった。

結局、何も変わっていない。

ただ、自分では分かったフリをしていただけだった。

だから、行きそうな場所なんて、分かりもしない。

「……くそっ! どこに居るんだ!!」

ただ、そうやって叫ぶしか出来ない自分が嫌だった。

大きく頭を振りながら周囲を見渡す。

すると、視界の端に何かがうつりこんだ。

 

「……ん? ……アイツ……薫!?」

 

 

『……』

薫はさっきの衝撃で眠ったまま。

全く、目を覚ます気配が無い。

「……」

そんな薫を見守るように、ずっと抱え歩いていく人物。

自分もよく知る、学ランに風紀の紋章をつけた彼。

 

 

「薫……だよな?」

二人を後ろから付けていく和。

「もう一人は……雲雀? どこ向かって……!!」

何かに気づき立ち止まる。

「……」

深刻そうな顔で、和はその場を去った。

 

 

「……」

とりあえず、家に帰ってきた和。

「帰ってきたんだな……で、どうだったんだ? 居たのか?」

真っ先にそう聞いてきたのは裂だ。

彼も言わないだけで和の様子から薫のことを心配しているようだ。

「居た……けど」

小さく首を横に振りながら言う。

その和の反応に裂が眉をひそめた。

「どういう意味だ?」

「……雲雀 恭弥に連れて行かれた」

「え? 薫が、普通についていくわけ……」

「見たところ、気を失っていた……たぶん、アイツにやられたんだろう」

拳を握りながらそう言う。

「やられた? 薫が? まさか……それに、ソイツは味方じゃ無かったのか?」

一緒に聞いていた奈津が少し後退りしながらそう言う。

「でも……間違いない……」

「何だよ、それ……それじゃぁ、アイツは裏切ったのかよ!?」

「まだ、そう決まったわけじゃない……アイツにも、何かあるのかもしれない」

「何で、和がアイツを庇うんだよ……このまま、薫をアイツに任せるのかよ!!」

和の胸倉を掴んでそう言う奈津。

「やめなさい!!」

ずっと、黙っていた星が大きな声を出し止める。

珍しく、星の声が部屋に響く。

その声で全員の視線が星のもとへ集まった。

「……ごめん」

手を離し、そう言う奈津。

それに対し和は小さく首を振る。

「とりあえず、会議にしましょう……話し合いはそこでするわ」

いつもおとなしい星の声にみんな驚き、おとなしく星に従う。

 

 

〔会議室〕

「では、会議を始めるわ……今回は『どうやって、薫を助け出すか』で、いいわね?」

「あ、あぁ」

それから、どんどん会議は進んでいく。

 

「……では、さっきの作戦を明日決行します」

「明日? 今日じゃないのか?」

驚きの表情でそう言う。

「えぇ、今日はしっかり体を休め、明日に備えなさい」

そこで、会議は終了した。

 

「……」

「和」

部屋に戻る和を呼び止める星。

「?」

「薫には、お礼言わないとダメよ」

「え?」

何故というような顔をする。

「……今日の朝までは、ずっと、和の傍に居たんだから」

「そうなのか?」

「えぇ」

それだけ言って星は歩いていった。

「そうだったのか……」

和は少し嬉しくなるのを感じた。

こんなときに非常識だとは思いつつも、笑みをこぼさずにはいられなかった。

 

 

 

「とりあえず、連れて来たものの……」

『……』

「これで、正々堂々戦えるね」

薫を見ながら、呟く。

「……君は、僕のせいで、人を信じなくなるのかな?」

その問いかけに返事はなかった。

その後も、薫は目を覚ますことなかった。

 

 

〔次の日〕

『……ん』

ゆっくり目を開け、起き上がる。

「やぁ、起きたんだね」

『!! お前……』

雲雀を思い切り睨む。

「……さぁ、僕と勝負でもしようか」

『勝負だと……?』

「そうだよ」

『やってやるよ……今度こそ……お前を殺す』

そのときの薫の目には、憎しみでしかなかった。

薫はただ、狂気に囚われていた。

その目を見て雲雀は少しだけ口角を下げ、トンファーを振り上げた。

 

 

〔その頃、和たち〕

みんな準備できたようで、玄関に集まっている。

「では、行きましょうか」

そう言葉で、みんな薫の居るところに向かう。

 

 

 

「ココだな」

そう言い、中が見える場所を探す。

「……!?」

中が見える大きな窓があり、そこで見た光景は、嘘のようだった。

「和? どうかした……何だ、あれ……」

そこで見た光景は、薫と雲雀の対戦。

ただ、いつもと違うのは、明らかに薫が負けているところだった。

 

 

『このやろぉぉぉ!!』

そう叫びながら雲雀に向かって、鎌を振る。

「……遅いよ」

そう言いながら、それを簡単に避け、トンファーを振る。

〔ガンッ〕

派手な音をたて、薫に直撃する。

『くっ……』

倒れ込む薫。

「今の君は弱いね」

少しつまらなさそうな顔でそう言う雲雀。

そんな雲雀をにらみつける。

『ふざけるな……僕が弱いなんて、許される事じゃない……!!』

痛みに耐え、立ち上がりながら言う。

さっき、トンファーが当たった場所からは、血がでている。

 

「……薫が負けるなんてこと……あるのかよ?」

「普通は無い……でも、今の薫だったらありえる……

 気持ちが昂って、自分でも体のコントロールが利かないんだろう」

「そんな……これも、アイツのせいか……」

怒ったように拳を握りながらそう言う奈津。

周りのみんなも同じように深刻そうな顔で勝負を見ていた。

 

 

『くそ!!』

自分でも分かっていた。

今の自分では勝てない事を。

でも、分かっていても止められなかった。

さっきから、雲雀はあるところしか狙わない。

そのあるところと――昨日、強い衝撃を受けた場所だった。

同じところを何回も、何回も殴られ、それでも立ち上がる。

「わぉ……まだ、立ち上がれる力が残ってるのかい?」

『……』

「でも、もうそろそろ限界だね」

そう言い、最後の一撃を薫に向けて、振り下ろす。

〔パリィィィン〕

薫の頭とトンファーとの間は数センチほどだった。

ガラスの割れる音。

その音で、雲雀の動きは止まった。

『「!?」』

同時に音のした方を向く。

そこに立っていたのは――

「ふざけやがってぇぇぇ!!」

そう叫び、銃を向ける奈津だった。

 

 




えー、今回は怒り狂った薫だったので、勝てないという………
何も考えずに、怒り任せに動くと危険だからね~
それから、和の心情(?)的なかんじのものも書いてみました。
一緒に居ても、やっぱ、分からないことは分からないですよね。


最終編集日 2017/12/28
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