(母親? でも、薫の親は……死んだはずじゃ……)
どういうことが、理解できない和。
だが、薫は今、確かに「お母さん」と呼んだ。
通話音声の聞こえていない和からすれば当然混乱することだ。
『久しぶりだね……私……茜だよ……分かる?』
「……(茜……?)」
静かに息を飲む和。
普段なら微かな気配でも気づかれたかもしれないが、今の薫にはその余裕がないのか、和に気づく様子は見せない。
和は気配を極限まで消し、耳を澄ませる。
何か、聞き逃してはならない重大なことが起こるような予感がした。
『明日ね、とっても大事な日なんだよ……
明日はね、敵も味方も……みんな、消える日なんだ』
静かに、一文字一文字を大切に扱うように言葉を紡ぐ薫。
(え!? みんな? どういうことだ……
薫は……ボンゴレだけじゃなく、俺たちも全員を殺すってことか?
……ダメだ……止めないと……明日、絶対止めないと……)
和はそう決心して、静かに部屋に戻った。
『そう……みんなだよ……きっと、成功するよね? ……じゃぁね』
〔ピッ〕
電話をきり、携帯を戻す。
『……ハァ』
ため息を吐き、部屋に戻った。
先程までそこにいた和には気づかないまま……
〔次の日〕
「おる……起き……薫、起きろ」
『……和?』
「おはよう」
少し、悲しげな笑顔を見せる和。
そんな和に少し首をかしげる。
『? ……あぁ、おはよう』
「……」
黙ったまま薫を見ている。
『どうかしたのか?』
「いや、その……きょ、今日は、いつもより、起きるの、遅かったなぁ……と思って」
必死に言い訳を探す和。
いつも起こす時間は同じだ。今日もそれは例外ではない。
『あぁ……昨日、少し寝るの、遅かったからかな?』
時間を確認していない薫は、そうなんだろう、と思いつつそう答える。
「そ、そうか……」
昨日の晩のことを思い出してしまう和。
『……何か、和、様子おかしくないか?』
「いや、そんな事……いや、おかしい、な」
静かに認めてから、薫の手を強く握る和。
『和?』
「……今日は、最後になるのかな?」
『うん? そうだな』
今日で決着をつけようとしているのだから、最後になるのは当然だ。
そう思いながら不思議そうな表情をしたまま頷く薫。
「俺……薫と一緒に居られて幸せだよ……」
うつむき、静かに、だけど力強くそう言う。
自然とつかむ手にも力が入る。
そんな和に少しだけ眉をひそめる薫。
それは手を強く握られているため、痛いから――ではもちろんない。
『……何だ、それ……なんか別れの挨拶みたいだな』
薫はすぐに表情を変え、少し笑いながら言う。
別れの挨拶、まさにそう思った。
――自分のしようとしていることを、和にばれているのでは?
そう考え、かすかに薫が眉をひそめたのだった。
「……そうだな」
そう呟いて、手を離す。
否定せず、ただ肯定だけする和に薫は少し心拍数が上がる。
『まぁ、最後の準備だね♪』
薫はそんなことはないはずだ、と思い、いつもの口調でそういう。
「あぁ」
和もどこか覚悟を決めた様子だった。
太陽が上に昇り、昼になった頃
みんなは任務に行った。
言っていた通り、薫がそうしたのだ。
〔ピンポーン〕
そして、いよいよ始まる。
〔ガチャ〕
『いらっしゃい♪ どうぞ……案内するよ♪』
そこには、ほぼ、みんな揃っていた。
だが、一人だけ足りない。
『……ところで、沢田綱吉は?』
その一人は沢田 綱吉だった。
桃を守ると公言していたのに、桃を置いてどこかに行っているのだ。
そんな状況を薫が何も言わないわけなかった。
薫の問いかけには誰も答えない。
いや、答えられないのだろう。
皆、少しツナのことをつかれた瞬間顔をしかめ、緊張が走った様子を見せた。
もちろん、そのことも薫は見逃さない。
いつものように、口角をあげ、怪しく笑う。
『怖くて逃げ出した?』
「そんなわけねぇだろ」
薫の言葉に獄寺がさらに眉間にしわを寄せながら言った。
『そう……じゃぁ、後から来るんだね♪』
そう言い、下へ降りていく。
それ以上追及してこなかったことに、少しだけ驚いた面々だが、ある意味救われたような気がした。
そして前を歩く薫と周囲に最大限警戒しながら、ついていった。
〔地下室〕
『さぁ、着いたよ♪』
「真っ暗だな……」
『いま、電気点けるよ』
〔パチッ〕
部屋が一気に明るくなる。
数人少し眩しそうに眼を細める。
『さて、早速始めたいところだけど……まだ、人数が足りないしね……待とうか♪』
そう言い、笑うと、部屋から出ようとする。
まるで逃げるように出ようとする薫をそのまま行かせるわけはなかった。
「待ちやがれ! どこへ行くんだ!!」
代表したように獄寺がそう言う。
薫は少しだけ面倒そうな顔をしたが、理由を言うことにした。
『ココじゃ、インターホンの音が聞こえないんだ。来ても分からないとダメだし。
あと、あまり動かないほうが良いよ……和、ちょっとお願いね』
そう言い、出て行く薫。
そこに、和を残して。
〔薫の部屋〕
『これ、忘れていた……』
そう呟き、それを持ち、部屋から出る。
もちろん、先ほど話した理由も嘘ではない。
実際聞こえないのだから、地下から出る必要があった。
だが、薫にとってはおそらくそれ以上の理由があった。
いつの日か、捨てようとしていたそれを握りしめる薫。
ほかの人が見ても、それが大事な物なんだとわかるような表情をしている。
数秒間、それを握りしめ身に着ける。
〔ピンポーン〕
ちょうどつけ終えたところでインターホンが鳴った。
薫はどこか覚悟を決めたような表情をする。
『……来たみたいだね』
小さくそうつぶやき、一人玄関へと向かった。
〔ガチャ〕
『いらっしゃ……い』
一瞬、言葉がつまり、驚いたような顔をした薫。
そこに居たのは、ツナだけでは無かったからだ。
「こんにちは」
薫のその反応を見て少し笑ってそう言うツナ。
そのツナに対し、薫もいつものように笑って返す。
『……招いてない人も来てしまったみたいだね』
そこに居た人たちは――
「ダメだったかな? ヴァリアーのみんなを連れてくるのは」
『いや、別に……?』
その時、薫の目には、ほとんど一人しか見えていなかった。
その人は、一番後ろに立っていた――XANXUSだけだった。
いつものように笑う。
正直、薫にとってちゃんとできているのかわからなかった。
それほど、動揺してしまったのだ。
だが、そこに確かな憎しみをこめ、薫は鼻で笑った。
「久しぶりだなぁ!!」
ヴァリアーの中で一番はじめに口を開いたのは、スクアーロだった。
『本当に……ね』
そう言い、後ろを向く。
「どうかした?」
『何も無い』
「どこ行くんですかー?」
『みんなが居るところだよ……案内するよ♪』
なるべく、いつもの口調で言う。
「入って良いのか?」
そこで、やっと喋ったXANXUS。
『……どうぞ』
一瞬、薫の動きが止まったように思えた。
〔ガチャ〕
『お待たせ♪』
「10代目! お待ちして……なっ、ナイフ野郎!?」
「うししっ♪ まだ、生きてんの♪」
「なんだと!!」
獄寺はベルを思い切り睨んでいる。
その後も、久しぶりの再会に、しばらく盛り上がっている。
『……』
そんなみんなを止めずに、少し遠くからずっと見ている薫。
「薫?」
いつもなら力を使い止めに入る薫が動かない。
そんな状況を不思議に思い和は薫の表情を見る。
和が薫のほうを見るのとほぼ同時に薫の口が開いた。
『……いいな』
ポツリと呟く。
「え?」
思わず聞き返す和。
そんな和の声にハッとした表情をする薫。
『え……あっ……何にもない……早く、始めようか♪』
そう言い、和に背を向け少し歩く。
和も驚きで薫を呼び止めることはなかった。
『さて、そろそろ始めようか♪』
わざと大きな声で言う。
「!!」
その言葉で、みんなの気が引き締まる。
さきほどまでの、盛り上がりが嘘のように、誰も音を出さない。
地下室は一気に静寂に包まれた。
『でも……その前に、見てほしいものがあるんだ♪』
薫の声が響く。
そう言うと、なにやら、SDカードを取り出し、セットし始める。
セットしている間に、スクリーンが上から出てくる。
「何、してるんだよ」
ここもまた、獄寺が問いかける。
『今から、見てもらうから、分かるよ♪ まぁ、見るだけじゃないけどね♪』
〔ピッ〕
準備が出来たのか、ボタン音が聞こえる。
すると――
〔ガシャァン――〕
上から、檻が落ちてきて、来客者たちはその中に閉じ込められた。
えー、説明は……留守電に電話したのは、母親の声が聞きたかったからです。
あの、留守電の声(?)が、母のという設定wややこしいなwww
和は、止めるって思ってたけど……どうするんでしょうね?
あと、ついでにヴァリアーも来ちゃいました☆
最終編集日 2018/01/08