「やっぱ、やめ――」
『ヤバイほど、楽しくなってきた……♪』
和の言葉を遮って、薫が言った。
その表情は本当に楽しそう。これから何が起こるかなんて考え、不安に思うことなく。
絶対的な自信を持っているようなその態度に和は、安心したような息を吐く。
「……そうか」
会話が終了した、そのとき――
<よし! 入ってこい!>
先生が言った。
『行こう♪』
〔ガラッ〕
ドアを開け、二人が中へ入っていく。
それと、同時に教室の生徒達が口々に喋りだす。
「うわ……男の人、カッコイイ」
「女子のほうは、帽子被っていて、よく見えねぇ」
「静かにしろ! 自己紹介をしてもらうからな! ……帽子は取れよ」
『……はい♪』
薫が帽子をとる。
『藤咲 薫です♪』
いつものようにニコニコしながら、自己紹介をする。
薫が帽子をとった瞬間から、教室はかなり騒がしい。
そんな生徒たちの声など聞こえていないかのように笑顔を絶やさない薫。
声に混じりながらも、静かに飛ばされる数個の殺気にも気づきながら。
「……刹那 和だ」
和も薫に向く殺気に気づきながらも、誰を見るわけでもなく、名前を言う。
「ほら! 静かにしろ! じゃぁ、席は……
藤咲は、沢田の隣で、刹那は……姫野の隣だ」
『分かりました♪』
二人が席に着く。
「和君だっけぇ~? ヨロシクねぇ~」
「……あぁ」
そんな和の反応に桃は微かに顔を歪める。
『よろしく。沢田……綱吉君♪』
「……」
ツナは黙ったままだった。
ただ、信じられないものを見ているように、目を見開いている。
その目は、憎しみが込められている。
沢田 綱吉――ボンゴレ大空。つまりボス。
(つれないな~♪ ま、僕には関係ないけどね♪)
そんなツナに対して薫はアヤシク笑っていた。
「HRは終わりだ」
そう言うと、先生は教室から出て行った。
その瞬間――
〔ダンッ!!〕
薫の机に拳がふってきた。
その犯人は――
「なんで、てめぇがココに居やがる!」
獄寺 隼人――ボンゴレ嵐の守護者。
そんな獄寺の手を見て、薫は……
『……ワァ、スゴイ。手がふってきた♪ 危ないなぁ♪』
わざとらしく、笑いながら言う。
「ふざけやがって………」
『クスッ』
薫がバカにするように笑う。
「っのやろ!」
獄寺が薫に殴りかかろうとする。
『……』
薫は笑いながら、逃げようともせず、座っている。
逃げれないんじゃない、逃げないのだ。
「チッ」
そんな薫の様子に舌打ちしつつ、殴ろうとするのはやめない。
獄寺の拳が、薫との間、数センチくらいのとき……
〔パシッ〕
「なっ!」
『ふふっ』
驚いたような表情をする獄寺。
こうなることがわかっていたかのように笑う薫。
「……」
和が、獄寺の拳を受け止めていた。
そして、そのまま薫を守るように、薫と獄寺の間に立つ。
「そこ、退きやがれ」
獄寺が、これでもかと眉間にしわを寄せ、怒りをあらわにしながら言う。
「……薫に手をだすな」
そう言い、戦闘態勢にはいる和。
和は獄寺に睨まれても、引こうとしない。むしろ睨み返している。
「「……」」
二人が睨み合っていると――
「まぁ、落ち着きなよ。獄寺君も……刹那君も……」
ツナが二人の間に割り込み、言った。
「10代目が……おっしゃるのなら……」
少し気にくわなそうだが、獄寺は引いた。
そんな獄寺を見て、薫は和の名前を呼ぶ。
その一声で、和も戦闘態勢をやめた。
それを見て薫は満足そうに頷く。
「……さて」
ツナが薫の方を見る。
「なんでお前がココに居るんだ? 茜……お前はとっくに――」
『ヤダナー☆ 僕は茜じゃなくて……薫って言ったんだよ?』
ツナの言葉を遮りそう言った瞬間――
全『ゾクッ』
(すごい殺気!?)
(コイツ……一体)
(何があったんだ……?)
薫は笑っていたが、なぜか、その笑みはすごく怖かった……
その場にいる生徒全員を黙り込ませるには十分なほど。
数人は倒れてしまいそうなほど、青ざめている。
だが、薫にとっては、なんてことはない。ただ、ほんの少しだけ殺気を混ぜた程度だ。
『……みんな、黙り込んでどうしたの?』
アヤシイ笑みをみせながら、微かに首をかしげながらそう言う薫。
「……」
クラス全員、なにも言えなかった。
だが、そんな中――
「ヤダァ~、ツナァ~、怖いよぉ~(なにこいつ……めちゃくちゃ怖い!!)」
そう言ってツナに抱きつく桃。
本当に怖がっているのだが、あくまで口調は崩さなかった。
その声に全員我に返ったような表情をする。
「大丈夫……俺が守るから」
「ありがとぉ~」
『……ハァ』
呆れたようにため息を吐く薫。
「なんだ?」
『別に……』
「きっと羨ましいんだな」
冷やかす様に、笑って言う山本。
山本 武――ボンゴレ雨の守護者。
「へぇ~、茜はツナが好きだってよ!」
「ヒュー、ヒュー」
先ほどの怯えようが嘘のように、クラスの男子が茶化す。
「やめろよ。気持ち悪いな」
そんな生徒の声にツナは本当に嫌そうな表情をしながらそう言う。
その答えはわかりきっていた、とでも言うかのように、さらに笑う生徒たち。
「ハハハ! フラレタ!」
『……ハァ』
小さくため息を吐いて、席から立ち上がる。
そして、声をあげていた生徒の前に立つ。
「な……なんだよ……」
こちらに来るとは思っていなかったのか、少しうろたえる生徒に対し、薫はニコリ、と綺麗に微笑む。
『ん? 別に? ただ……少しうるさいと思って……ね!!』
そう言うと同時に、手を振り下ろす。
〔ドンッ!
バキッ!!〕
薫が手を振り下ろすと、その衝撃で机が真二つになった……
「……」
再び、クラス全員が黙り込んだ。
『アレ? 壊れちゃった? 軽くしたつもりだったのになぁ♪』
(やりすぎ……)
そう思いつつも、何もとがめるつもりはない和。
薫があのまま行動しなければ、和が同じことをするつもりだったからだ。
ただ、少し驚かす程度で、机を壊そうとは考えていなかったが……
みんな黙り込んでいると……
〔ガラッ!〕
「今の音……何?」
「ひ、雲雀さん!」
クラスのみんなが一歩、後ろに下がる。
「いいところに来たのな。じつは――」
雲雀に対して、全く怖気づいた様子をみせない山本が説明する。
「へぇ、机を……」
説明を聞き終えた雲雀が机を見ながらそう呟く。
「あぁ」
「じゃぁ、君は後で応接室に来て……反省文50枚だね」
そう言って、雲雀は教室を出て行こうとする。
『んー……却下』
少しだけ考えた様子を見せたあと、薫がそう言う。
教室内で、生徒たちがざわついた。
何しろ、あの雲雀に逆らったのだ。無理もない。
彼は中学から風紀委員でありながら、不良の頂点に君臨している暴君だ。
そんな雲雀を生徒たちは当然怖がっている。
その雲雀に臆することなく、少し笑って拒否したのだ。当然驚くのも無理はない。
薫の言葉で、雲雀が立ち止まる。
少しだけ振り向き、その鋭い目線が薫へと一直線に飛んでいく。
そんな目を見ても、怯えた様子を見せない薫。
そんな薫に、雲雀はひとつため息を吐き……
「……来ないと咬み殺す」
そう言って、出て行った。
『……メンドイ』
雲雀が見えなくなった頃に、呟くようにそう言う。
「行くのか?」
『イヤ』
「……そう」
〔キーンコーン〕
『チャイム鳴ったね……授業始まるし、座ろうか♪』
そう言って席に座る薫。
その行動につられたクラスの人も次々と席に座る。
そんな中――
「俺の席、どうしてくれるんだよ!?」
机を壊された生徒が言う。
『ん? 知らない♪』
キッパリ言う。
「……」
その場に立ち尽くす生徒を見て、おもしろそうにしている薫。
〔ガラッ〕
「ほら! 授業始めるぞ!」
「……」
生徒たちはおとなしく席に着く。
「お前! 早く座れ!」
「いや……あの……」
「ん? お前、机はどうした?」
「色々あって壊れました」
「机が壊れたぁ!? そんなわけないだろ!?」
笑い流す先生。
「お前も変な事言うな? 机が壊れたって……じゃぁ今日は誰かと一緒に書けー!」
笑いながら言う。
全く信じていない様子だ。
ちなみに、先ほど壊した机は、雲雀が出て行った後に来た風紀委員が持っていったのだ。
証拠など、この教室にはすでに残っていなかった。
「……はい」
微かに赤面しつつ静かに友達の席に移動する。
「じゃぁ○ページを開け――――――」
先生が授業を始める。
『……』
黙ったまま、楽しそうに笑っている薫。
「おい」
そんな薫に呼びかけるツナ。
『ん? 何?』
「どうしてお前が生きているのかは知らないが……
桃たんに手だしたら、ただじゃ済まねぇからな」
『へぇ……ま、どうでもいい。僕はただ、お前らボンゴレに復讐したいだけだからね♪』
ツナの言葉に、少し目を細め、アヤシク笑いながら言った。
おぉ……今回、ツナ・獄寺・山本……3人一気に出してしまいましたね~
まぁ、クラスのメンバーを考えたら、仕方ないよね~
しかし、机って、簡単に壊れるものなのかな…?
最終編集日 2017/12/11