『えっ?』
「本気かどうかって聞いてるんだよ」
怒ったような声、でも表情は悲しそう。
まっすぐ見つめられ、少し息をのむ茜。
だが、茜も負けず真剣そうな表情をして裂を見て、口を開く。
『…本気……だよ』
その声はわずかに震えていた。
裂に怯えたわけでも、自信がないわけでもない。
ただの緊張だった。
茜はボスとしての器を、頭脳を持っているが、まだ幼い。
大人びて見えるとはいえ、まだ年齢は高校生なのだ。
こんな真剣な頼みごとは滅多にないことだ。
緊張することは自然なことだった。
「……アイツに…何か言われた?」
『アイツ…って?』
「…XANXUS…だっけ?」
『…ううん…これは、私の意志だよ』
まっすぐ裂をみて言う。
「…そっか、それなら良いけど」
『裂…少し、奈津の心配性がうつった?』
少し緊張がとけた茜は笑いながらそう言う。
「そりゃ、心配だよ……」
『え?』
「嘘だよ……ちょっと心配なだけだ」
茜の頭に手を乗せながら言う。
『…ん…ありがと』
「ちょ、ちょっとだ、ちょっと!…これっぽちだ!」
頭の上から手を離し、手で表現する。
そして照れたように後ろを向いてしまう。
『うん…分かってるよ』
そんな姿を見ながら苦笑してそう言う。
「……本気っていうなら…仕方ないな」
ため息交じりにそう言う裂。
小さい声だったが、しっかりと茜には聞こえた。
認められ、パァと表情が明るくなる。
『……ありがとう!』
「し、仕方なくって言ってるだろ」
『それでも、嬉しいよ』
「分かったから……もう、行けよ」
『わ、わかったから』
裂に押され、半ば追い出されるようにして部屋を出る茜。
茜を追い出し、赤い顔をしながらドアをしめる裂。
そんな裂の表情を見て、茜は少し微笑んだ。
そして、部屋の前で待っていたXANXUSのほうを見る。
『…これで、一応は終わったね』
「…アイツ……テメェの事………」
『え?何か言った?』
「何でもねぇ」
『?そっか』
〔その頃、和は〕
「えっ?薫が目を覚ました?」
学校についた後、ツナたちに真っ先にそう報告しに行く。
それを聞いたツナは嬉しそうだ。
獄寺や山本も安心したような表情をしている。
そんな3人を見た後に、和は再び口を開く。
「…あぁ……それで、今日の帰り、家に来てほしい」
「うん…そうだね……ちゃんと、謝らないと」
ツナたちはもちろん承諾した。
とりあえず話をつけた和は自分の席に戻ろうとする。
だが、その前にある人物が近づいて和に声をかけた。
「おい……今日、俺も行って良いか?」
「えっ?」
声をかけてきたのは紅月だった。
意外な人物に言われ少し驚く和。
「…アイツと話したい事があるんだ」
「……分かった、一緒に行こう」
部外者とも呼べる人物を呼んで良いのかと少し悩むが、いつになく真剣だったので、OKをする和。
「じゃぁ、放課後だな」
「あぁ」
そうして、紅月は自分の席に戻る。
「あ、もう一人連れて行かないとだめな奴が居たな…」
和も今度こそ戻ろうと思い、もう一度ツナたちに声をかけようとしたところでふと思い出しそういう。
「もう一人?」
「あそこに…」
そう言い、指したのは桃の席。
アレ以来、何もしてこない。
当然だ。ツナたちの説明もあり、今ではクラス全員に避けられているのだ。何もできない。
「あ、あぁ…そうだな」
ツナの声を聞き、桃の席に向かう和。
「おい」
「?」
「今日の放課後、俺たちの家……一緒に来てほしい」
「え…?」
弱々しく言う。
なぜ、とういう表情をする。
そのあとに、だんだん表情が恐怖に染まっていく桃。
まさか、守護者たちが自分に怒り狂っているのではないだろうかと、そんな考えがよぎる。
怒っている人たちのもとへ行けば、どうなるのか、弱者とはいえ、マフィアである桃には最悪の未来しかない。
「…薫が、目を覚ました」
そんな桃を見て、誤解をとくようにそう言う。
「!!」
「…来てくれるよな?」
「………」
小さく頷く桃。
「じゃぁ、放課後に」
そう言い、そこから離れた。
〔その頃、家では…〕
『…さてと、これからどうしようか?』
「俺は行くところがある……てめぇは部屋に行ってろ」
『え…うん、分かった…じゃぁね』
どんな用事なのかは聞かず、そう言い、部屋に戻っていく。
「………」
黙ったまま歩き出す。
XANXUSが向かった場所とは――
〔ガチャ〕
「何だよ、いきなり……って、お前…!!」
「…よぉ」
そこに居たのは、裂。
「何で……」
「お前に用がある」
「…俺に…?」
驚きが隠せない裂。
しっかりと警戒している。
「………」
「…何だよ」
黙り込んだXANXUSにしびれを切らしそう聞く裂。
そんな裂を見てXANXUSが口を開く。
「お前…茜のこと好きなんだろ?」
「!!」
その言葉で顔が一気に赤くなる裂。
言葉にせずとも肯定しているようなものだ。
「そうなんだな」
「……だったら、何だよ?」
XANXUSの反応からばれていると自覚した裂は何も誤魔化さずにそう言う。
いまだ、顔の赤みは引かないものの、先ほどよりはマシになり、少し真剣そうな顔をする。
「アイツは、俺のだ……手を出すんじゃねぇ」
「何、言ってるんだよ……今更、彼氏面か?」
怒っているような顔をして言う。
ようは気に入らないのだ。
一度茜を裏切った人物がもう一度茜を手に入れようとしていることに。
「………」
「言っておくけど…俺は、お前に負けるつもりはない」
「…カスの分際で、俺に勝つのか?」
バカにするように笑いながら言う。
「…あぁ…茜のためなら、お前に勝てる」
その声は真剣だった。
裂は何も疑わなかった。本当に勝てると思っているのだ。
その覚悟をXANXUSは素直に受け止めた。
もっとも、自分に勝てるとは思っていないが。
だが、勝負をする気もないので、何も言わず黙り込む。
裂もつられるように黙り込んだ。
しばらく沈黙が流れる。
少しすると裂が耐えかねたかのように、少し笑い口を開く。
「…なんてな……俺は、別に、そういう好きじゃない」
「………?」
突然の反論にXANXUSは少し不思議に思う。
「ただ単に、尊敬してるとかの好きだ…ボスとして好きってだけだ。
……お前と一緒にするな」
「そうか」
XANXUSそう呟くように返事をすると、部屋から出て行く。
もちろん、嘘なのは分かっていながら。
「…くそっ……恋愛感情に決まってんだろ」
一人、部屋でそう呟く裂だった。
「………」
『あ、XANXUS……用事はもう終わったの?』
たまたま、廊下を歩いていた茜に会う。
少しだけ嬉しそうに、でもすぐにそれを隠すように俯き、次に目を合わせた時には普段通りの表情だった。
「…あぁ」
『そうなんだ』
そう言いつつ、茜は少しだけ興味があるような目を向ける。
XANXUSがそんな茜の表情に気付かないわけがない。
だが、あえてそれには触れず、質問をしてみることにした。
「…おい」
『ん?』
「もしも…テメェのファミリーの誰かが…テメェの事好きだったらどうすんだ?」
『え……え?』
驚いたような表情で少し後退りする茜。
「…どうすんだ?」
そんな茜を逃がさないように、もう一度そう聞いた。
茜さん、裂と会話してる時さらっと嘘ついたよね?
ほら、あの「これは、私の意志だよ」って………
思いっきり、XANXUSに言われて決めたことですよね?まぁいいか………
とりあえず、紅月も家にくることになったよw