「………」
茜の呟きに何も言わないXANXUS。
いや、何も言えなかった、というほうが正しい。
微かな不安が脳裏をよぎる。
もしかすると、受け取ってもらえないのではないだろうか?
そんな不安が。
力で基本何でも手に入るXANXUSであっても、その不安は拭いきれない。
昔こうして告白した時も不安だったのだ。
一度大きな過ちを犯してしまった今も、不安なのは当然だった。
受け取って当たり前という考えも、茜には通用しない。
いつものように、力を使えば無理やりにでも手に入るだろう。
だが、XANXUSはそれを良しとしなかった。
茜にだけは、心から自分を受け入れてほしかった。
茜にだけは、自分のそばで笑っていてほしかった。
XANXUSはそれほど茜を愛していたのだ。
不安を見せないためにもXANXUSは無言を貫く。
黙り込むXANXUSに気にした様子は見せない茜は、もう一度口を開く。
『すべて、元通りにはならない……それは、自分でも分かっているつもり……でも』
そう言い、途中で言葉を切ると、ネックレスを手に取った。
「!!」
『…これが答え……返してもらうよ、私の大切なものなんだからね』
微笑みながらそう言う。
と、次の瞬間、茜はXANXUSに抱きしめられる。
「……それは、お前のものだ」
そう、静かに囁く。
他の人ではわからない。
とても嬉しそうで、安心したような声だった。
『うん……ありがと』
そう言い、茜は想いに答えるように、抱きしめ返したのだった。
〔次の日〕
今日は学校が休み。
なので、ゆっくり過ごせる。
昨日の事で、珍しく早い時間に目が覚めた茜。
『…もう、朝かぁ』
そう呟きながら、近くにあるネックレスが目にはいる。
『……夢、じゃない…よね……うん、夢じゃない!』
ネックレスを手にとって、そう言う。
その事が、すごく嬉しく感じる茜。
昨晩の出来事を思い出し、大切そうにネックレスを握りしめる。
『……捨てなくて良かった』
そう言ってから、着替え、ネックレスも付けリビングに向かう。
〔リビング〕
『あ、おはよう』
部屋に入ると、本を読んでいる裂が居た。
「…はよ」
本を見続けながら挨拶を返してくる裂。
『………』
その返事を聞き、茜は少し寂しく感じる。
あの名前変更のことを言った日から、何故か茜にだけ素っ気無い感じがする裂。
この前までなら、本を読んでいても、ちゃんと目を見て挨拶や返事をしてくれた。
もしかすると、気のせいかもしれない。
もしかすると、今いいところで目を離したくないだけなのかもしれない。
そう考えるものの、やはり突然の変化に戸惑う。
そんな裂を、黙ったまま見つめる茜。
「……何?」
そんな茜の視線に気づいた裂は視線を上げ、茜を見る。
『え、いや……何でもない………』
「……そ」
それだけ言い、読んでいた本を閉じて、部屋から出て行く。
『………』
そんな裂の態度を、少し悲しく思う。
なぜ、急にあんな態度になったのか考えるものの何も浮かばない。
名前変更の日からとはいえ、あの時は、ちゃんと受け入れてくれたはず。
ほかの原因は全く思い当たらない。
そんなことを考えていると――
「あれ?姫、おはよ……何してんの?」
後ろから、ベルの声がする。
『え……あ、いや…なんでもない…ただ、少しボーっとしてただけ』
そう言いながら、歩き出し、椅子に向かう。
「ふぅ~ん…?」
『……ねぇ』
急に立ち止まって呟くようにベルを呼ぶ茜。
「ん?」
『例えばだけどさ…仲の良い友達が、急に素っ気無くなったら、どうする?』
「え……そうだな…王子なら、本人に直接聞くし♪」
そんなの簡単、と言うように答える。
『直接…か』
内心、自分じゃ無理かな…と思う茜。
正直、それができればここまで悩みはしない。
この時ばかりはベルの勇気をうらやましく思う。
そう思いながら再び考え出そうとすると、そこに…
「そんなの放っておけばいいですよー」
いつの間にか、部屋に入ってきていたフランが言った。
「蛙…いつの間に………」
『…放っておく…って?』
「そのままの意味ですー。勝手に避けるんですからー、時期に戻るでしょー」
『…そんなもんなのかな?』
「そうですよー……ところでー、ボスと茜さんは付き合ってるんですかー?」
急に話題を変えるフラン。
『えっ!?』
「蛙!?何、聞いて…!」
その内容に、二人とも驚いたような表情を見せる。
茜はどうして知っているのかと。
ベルは二人が元に戻ったことは知らないため、その話題はタブーだと思ったため。
二人とも考えていることは全く違ったが、驚いたことに変わりはない。
「どうなんですかー?」
そんな二人の考えはフランに届くはずもなく、フランはさらに問い詰める。
『…えっと………』
返事に困っていると…
「テメェら、何してやがる」
『あ………』
ちょうど、話題であったXANXUSが入ってくる。
「あ、ちょうど良かったですー
…今、ボスと茜さんは付き合ってるか聞いていたんですよー」
「…あ?」
その言葉にXANXUSは睨むようにフランを見る。
「だからー、付き合ってるかどうかを――」
「バカ!クソ蛙!」
急いで、フランを止めるベル。
フランを止めた後、恐る恐るXANXUSのほうを見る。
「………」
『………』
二人は黙り込んでいる。
しばらくすると、XANXUSが動き、茜に近づく。
そして、茜の前まで行くと、立ち止まる。
突然目の前までやってきたXANXUSを不思議そうに見る茜。
「…カスが」
そう呟き、次の瞬間、茜を抱きしめる。
『!!』
「……ヒュー♪」
フランを離して、口笛を吹く。
一瞬で状況を理解したのだ。
少し嬉しそうに笑っているベル。
「…そういうことですねー
フランが納得したのが分かると、茜を離すXANXUS。
『………(顔が、熱い……)』
茜は、真っ赤になった顔を見られないように、みんなに背を向ける。
驚いたのか、嬉しかったのかわからないドキドキを感じる茜。
そのドキドキがようやく収まってきたときに――
〔ガチャ〕
ドアが開く音が聞こえた。
「あれ……茜、今日は早いな」
一度、周りを見渡してからそう言う、その声は和のもの。
『いや……何か、目が覚めちゃって』
誤魔化すように少し笑い、和のほうを向いてそう言う茜。
そんな茜の顔をみて不思議そうな顔をする和。
「茜…何か、顔、赤くないか?」
『そ、そうかな?あ、今日は、暑いからだよ』
手で、顔を扇ぎながら言う。
「…そうか…?」
少し不思議そうな顔をしてそう言う和。
『うん、うん……あー、熱い、熱い』
わざとらしく、そう言う茜。
「それで、さっきのことは、もうみんな、知っているんですかー?」
『えっと……まだ、知らない………』
「さっきのって?」
二人の間に割り込んで聞く。
『あ、いや!!なんでもない!!』
「………?」
何かあったのかと思うが、それほど深刻そうでもない感じなので何も聞かないことにする和。
まぁいいか、と思い、そのまま会話は終了する和。
『………(そういえば、いつ言うか、考えてない)』
そんな事を考えていると――
〔ガチャ〕
星と、聖菜が朝食を持って、入ってくる。
「…あら、茜、おはよう……まだ、みんな揃ってないのね……」
「…そうですね…あ、私、みんなを呼んできましょうか?」
聖菜がそういうと、茜が口を開く。
『それなら、私が行ってくるよ』
そう言い、部屋を出て行く。
『………ハァ』
部屋を出て、少し歩くと大きなため息を吐く。
「どうした?」
『えっ?いつの間に………』
急にXANXUSの声が聞こえ、驚いたようにそういう。
「…一緒に来ただけだ」
『そ、そっか』
「………」
『………』
さきほどのこともあり、沈黙の中、歩いていく。
と、そこに…
えー……一応、付き合うという方向になったようですね。はい………
で、裂は素っ気無いー。だか茜は全く理由をわからない!
それにしても、この前までは本を見てても目は合わせてくれるって………
案外、細かいところみてるんだなー、と今更思った。