異世界で出会った二人の日本人、人理保証機関カルデアのマスター『藤丸立夏』。
異世界の神、エヒトにより漂泊化された筈の人類史の生き残りである神の使徒『南雲ハジメ』。
そしてハジメ達が出会ったウサミミの少女、シア・ハウリアの家族を助ける契約を交わしていた筈だったが。
「藤丸の話が本当ならもう神代魔法を探す意味がない、だからここであの契約は破棄だ。残念だったな」
「そんなこと言わないで下さいよ~!!」
本来はハルツィナ樹海を案内する代わりに帝国兵から一族を守るという契約を交わしていた二人、だがハジメが目的だった魔法を獲得しても今の地球に帰ったところで意味がない。
それにシアが泣きながらハジメがの腰にしがみ付きながら涙でグチャグチャになってしまった顔で必死に懇願している。
「だが小童、ここまで深い場所まで来てしまっている中でお主たち二人でこの樹海を出ていくことが出来るのか?」
スカサハが腕を組みながらハジメに今の状況に対し質問を投げる。
方角を示すコンパスもないしこの樹海の地図もない、食料もない。
あらゆる物資が不足している状況下である事をスカサハがハジメに説明する。
「そんなの歩いていればどうにでもなる。食料もそこらへんの魔物を刈っていれば問題もない」
本来は毒にしかならない魔物の肉も迷宮で食べ続け変異したその体にはしっかりとした食料になる、ユエと呼ばれる金髪の少女も吸血種でありハジメの血さえあれば食事をとる必要もない。
だが、その中で異を唱える少年がいた。
ーーー神代魔法があれば地球へ帰れるの?
藤丸立夏がハジメに言葉を投げる。
この世界に存在する七つの各迷宮の最奥に存在する嘗てこの世界の神であるエヒトに反逆したと記録されている解放者の神代魔法を七つ集めることで地球への帰還の可能性があることを。
ならば藤丸立夏の行動方針は決まった。
泣きじゃくるシアの元へ腰を落とし手を差し伸ばし。
ーーー俺をハルツィナ樹海に連れて行ってくれないか?
その言葉を聞いてシアはポカンと口を開けて一瞬呆けるとさらに涙があふれ出る。
「男に捨てられた女ですよ?」
「おい」
ハジメの言葉に苦笑いしながら「大丈夫」と答える。
「厄介事しか持ち込まないですよ?」
うっかりが人理滅亡級の女神がカルデアにはいるのだ、それに比べたら些細な事だ。
「ありがとうございますぅ!!」
わーわーと泣きながらシアが感謝を言うがハジメはため息を吐きながら後ろへ振り向く。
「それじゃあ俺たちはこの樹海から出ていく。短い付き合いだったな」
ハジメとユエが歩き出そうとするのに立夏は待ったをかける。
「なんだよ? もう俺たちが神代魔法を探す理由も無くなったんだ。その残念ウサギを連れてさっさと樹海の奥に行きな」
ーーーハジメ君たちも俺たちに力を貸してほしい。
「何?」
ハジメへ今のロムルスたちの霊基がカルデアからの魔力供給が途絶え非常に不安定なことを話すと一緒にこの世界での手助けを頼む。
「それに対して俺へのメリットがない。だから俺は力を貸さないし借りもしない」
ーーーメリットならある。
ーーー俺たちが帰還したら必ず地球を元に戻してみせる。
「はぁ? お前バカか? 俺ならこの世界で暮らせる様にする。お前もハウリア族のもとで暮らしたらどうだ? そんな使命感に駆られないで」
だがハジメの言葉に立夏は首を振る。
ロシアにいたヤガの青年が言った事を思い出す。
『負けるな。こんな、強いだけの世界に負けるな』
無数の銃弾を浴び、血だらけになりながらも必死で叫んだ言葉。
北欧の女王が言った。
『征け、カルデアの者たち』
炎熱の巨人を殺し、新たな未来が見えていたはずの異分帯の女王が背中を押した。
この先に進めと。
『よって殴る。殴って決める。殴り返すことも特別に赦す。そして最後まで立っていた方に、未来の希望を託すものとする!』
人を極めた中華の皇帝が汎人類史に未来を明け渡した。
ならばこそ藤丸立夏は前へ進まなければない。
だからハジメに助けを請う。
自分があの世界へ帰るために。
ーーーだから南雲ハジメ、君の力を貸してほしい。
ハジメは立夏の目を睨みつけるがそれに一切怯みもしない、その覚悟を決めたその瞳に目を伏せ。
「ユエ、すまないが…」
「いいよ、ハジメがそうしたいなら私はハジメと一緒に行く」
「ありがとう、ユエ」
義腕でない方の腕を立夏へ差出し。
「いいぜ、契約だ。お前が帰って必ず地球を元に戻せよ」
ーーーありがとう、ハジメ君。
差し出された手を握り、契約を交わす。
「であるならばいざ行かん、
「ローマじゃねえよ。どうにかしろよこの男」
苦笑いをしながらローマだからしょうがないよ答えるとハジメは頭を押さえながらため息を吐きだしながら樹海の最奥に存在するであろうハルツィナ迷宮へと向かっていった。
「はぁ、それはそれは。ハジメ殿と同郷の方々であるならば安心です」
シアの父であるカム・ハウリアとその他のハウリア族の民と合流し樹海の奥に存在する亜人たちの集落へと向かう際中、突然カムの足が止まった。
彼は魔物の気配を感じ取ったのだ、ならばとスカサハがクナイを投げ飛ばした途端に四本腕の猿が木の蔭から零れおちる。
「すげえなあの女、あんな小さなクナイで魔物を仕留めるのか」
「彼の者は影の国の女王、自国の数多の魔物、英傑たちと戦い続け神すら殺せる事を証明した人類史の星」
「星? なんだそりゃ?」
ハジメがロムルスの言葉に問いかけをする。
「ローマを含め英霊には天、地、人の三種の分類が存在する」
「神たる神霊が英霊の身として現界した者たち、それを天。伝承、英雄譚として語り継がれた者たち、それを地。
人類史に直接その功績を残した者たち、それを人。これを天地人の三属性と呼ぶ」
「じゃあ星ってなんだよ?」
「星、人類が不可能と言われていた事を可能と証明させた者たち、それを星と呼ぶ」
不可能を不可能のまま可能とした者たち。
フランシス·ドレイクの世界一周の航海、神の力と言われていた雷を人類の手で使えることを証明させたニコラ·テスラ。
人類史に新たな可能性を開拓し歴史の転換期を産み出した一種の特異点たる英霊たち。
歴史の転換期を産み出した英霊には星から膨大な霊格が付与されることが出来、その霊器の強度は英雄王の振るう対界宝具である開闢の星すらも耐えうる。
「じゃあ、あの女は本当に神を殺したって事か?」
「然り、それこそが女王が三千年掛けて証明させた神殺したる由縁、人の力で神霊を殺戮した歴史の転換期を産み出した者」
ハジメがスカサハの方を見ながら言う。
「三千年生きてるって完全にババ」
なにか言いかけた瞬間、必ず投げつけた相手の心臓に命中させる因果律改竄の朱槍がハジメの頬を切りつけた。
「なにか言ったか小童?」
朱槍をさらに二本、どこかから取り出しハジメへ笑顔で言う。
「ハジメ、女性に年齢はダメ」
ーーーそうだよハジメ君。特に師匠は問答無用でゲイ・ボルクを投げつけるから。
一体それでどれだけのランサーが死んでしまった事か、すでにその回数を数える事が出来なくなってきたカルデアあるあるの内の一つだ。
カムが周囲の探索を行い、スカサハとハジメがそれを殲滅を何度か繰り返していくとカムが足を止める。
立夏にも感じ取れる程の殺気、それも一つではない。
何十と感じ取れる殺気にシアや他のハウリア族の子供たちも青ざめる。
「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」
虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人が立夏たちに鋭い爪の生えた指で刺し威嚇する。
「わ、私たちは…」
カムが事情を説明しようと前へ出るとさらに虎の亜人が吠える。
「貴様! 報告にあったハウリア族か! 忌み子を庇うだけでなくに今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」
虎の亜人が号令を言う前に聞きなれた轟音が樹海に響く。
「今の攻撃は、刹那の間に数十発単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」
「な、なっ……詠唱がっ……」
この世界の魔法は詠唱がなくては発動が出来ないことはどんな種族の子供でもわかる。
だが、ハジメの使った拳銃はこの世界には存在しない武器だ。
未知の道具に驚き虎の亜人を含んだ包囲している者たちは警戒を強める。
警戒を強める亜人たちの前に両手を上げて立夏は前へ出て行く。
「おい馬鹿! 勝手に前へ出るな!」
大丈夫とアイコンタクトで示すと虎の亜人は立夏に言葉を掛ける。
「人間族のお前、ここへ何をしにきた?」
ーーー神代魔法を求めて迷宮へ向かう際中です。
真の迷宮を求めてこの地へやってきたことを立夏は虎の亜人に説明すると長老との謁見の許可を貰い暫くすると霧の奥から耳のとがった皺を生やした老人が現れる。
ハジメが老人に迷宮で拾ったオスカー・オルクスと呼ばれる解放者の遺品を数個見せると長老は樹海の元まで行く事を許可してくれたがそれ霧が晴れた数日後、それまで立夏たちは待つことになった。
蛇足感のある話だったけど次回は覚醒兎の回です