とある少年の独白。
最初はあの残念ウサギどもを俺の手で生きていけるように戦闘訓練をつけるつもりでいたんだ。
我ながらそんなお人好しなことをするものだと思っていたんだ。
だがよ、この世界で出会った地球の人間の連れていた女の目が光ったんだ。
地球の人間、藤丸が女の前に立ちジュラシックパークで見たヴェロキラプトルを制止するポーズで『ケルトブートキャンプはやめて!!』と立ちふさがった。
なんだよケルトブートキャンプって?
え? 死ぬか生きるかの境を行き来するじゃなくて文字通り臨死体験をするレベル?
光の御子と同等の修行? いいじゃないか、こいつらの再教育にはいい具合だろう?
俺もあの女の訓練には賛成だったが藤丸が反対するから渋々決行されなかったんだ。
だがよ...。
「この男に訓練を任せる方が間違ってただろ!!」
黄金の冠を被った大男、ロムルスが戦闘訓練を受けてしまった結果が…。
「ローマとはなんだ?」
綺麗に並んだウサミミの男女一杯に腹に息を吸い込み雄たけびを上げる。
「「「ローマ! ローマ!」」」
目つきが初めて出会ったときとは違った、なよなよしたモヤシのような奴は誰一人いなかった一人一人がその胸に新たな信仰を得てウサミミたちは変わってしまった。
「ローマ達の中にローマはあるか!」
「「「然り! 然り!」」」
全員が足踏みを鳴らしロムルスの呼応に応じる。
目の前に見えているのは軍隊なんて目じゃない、これは一個の塊。
「ならば往かん、ローマの地へ!!」
「「「ローマ!!」」」
「誰ですかこの人たちは!!」
ーーー見よ、あれがローマだ……。
「藤丸さん、どういうことですぅ!?」
ーーーこれがローマである。
「藤丸さんもおかしくなったですぅ!!」
「
「ロムルスさんどうかみんなを元に戻してくださいですぅ!」
シアはハジメと共に戦闘訓練を受けたことによりロムルスの訓練というものを見ていない、この十日間の内に一体何が起きたのかハジメも想像がつかなくさらにロムルスのマスターでもあるはずの立夏もローマ汚染を受けてしまっている様子にハジメは後ずさりしてしまっている。
「目を覚ませマスター」
ーーーあれ? 師匠?
「ようやく目を覚ましたかマスター。全く、修行にかまけているばかりに…」
「おい、どういうことだよスカサハ。ハウリア族がローマ市民になってるぞ」
「ふむ、あれが建国の神祖の持つカリスマだ。常人ならすぐにあのようになってしまうぞ。マスターも覚えがあろう、海の聖女の拳」
ーーー水着、同人誌、姉……う、頭が。
「お前大丈夫か?」
ルルハワでの記憶を奥底から思い出そうとすると頭痛を催した立夏は頭を押さえる。
「だがよロムルス、こいつらは戦えるのか?」
「然り、ローマは原初のレギオン。その胸の内にローマがあるならばローマたちはいかなる者にも立ち向かう強靭な精神を持ち、強靭な肉体を宿す。ローマはこの者らにローマとは何かを教えただけ。その身にローマがあるのであればそれこそがローマである」
ーーーつまりローマこそが根源?
「それもまたローマである」
「その前にローマってなんですか!!」
シアが家族の豹変ぶりに泣きわめき落ち込み地面に伏せているとその肩にやさしく手を置く人物がいた。
それが父である族長のカムである。
「シアよ、泣き止みなさい」
「と、父様ぁ」
シアが顔をあげると以前と比べ物にならないほどの父性、すべてを包み込む程の包容力を身に着けていたことが一目でわかった。
「神祖は我々に教えてくださったのだ。何かへ立ち向かわなければいけないことを」
「父様ぁ」
覚悟を胸に、一族を率いる一人の族長として生まれ変わっているカムを見てシアはさらにその目に涙を溜め。
「そして我々は一人一人がローマなのだ!」
「父様がおかしくなってるですぅ!! うわあああああ!!」
「いざ往かん、我らのローマへ!!」
「「「うぉおおおおおおおお!!」
ロムルスが建国の槍を天へと向けて高らかに叫ぶとされに続いて新生
「おい、藤丸。ちなみにスカサハが訓練をつけたらどうなっていた?」
ーーーたぶんみんなが酒、女、戦いって感じのケルトになっていたと思う。
「ならこっちの方がいいな」
「よくないですぅ!」
>>>>>>
「どうなってる! あのハウリア族だぞ! 最弱の種族の筈だぞ!!」
族長たちの決定に納得のいかなった熊族の亜人レギンは逃げる。
人間と最弱の種族のハウリア族への報復へと乗り込んだはずだった。
奇襲したはずの自分たちが逆に追い込まれていることに今でも信じる事ができない。
「我が同胞たちよ、今こそ我らのローマを全亜人族に見せる時が来た!」
カムが他のハウリア族の先頭に立ち鼓舞する。
「我らの心はどこにある!?」
「「「ローマ!」」」
「そうだ、ローマこそ我らの力の源。我らの中にローマが存在する限り敗北はない!!」
「「「然り! 然り!」」」
「いざ往かん、ローマへ!」
それは一方的な蹂躙、一人一人は脆弱であるが全員の心を一つにする事でどんな格上も倒すことができる。
実際にそれを証明した少年もいたのだ、ならばその胸にローマがある限り決して負けることはありえない。
「た、頼む。どうか俺の命だけで済ましてくれ。他の仲間は俺についてきただけなんだ」
「レギン!!」
「頼む、ハウリア族の族長」
頭を下げ、許しを斯うレギンの元までカムは手を差しのばす。
「バントン族のレギン、頭を上げなさい」
「ハウリア族の族長、頼む」
「いいのだ、その過ちを許すこともまたローマである」
「ロ、ローマだと?」
聞いたことのない言葉にレギンはカムに尋ねる。
カムもただ黙って首を縦に振り応える。
「そうだ、ローマこそが世界、世界こそがローマ。ローマの心を持つ者であるならばその過ちも許される」
奇襲した自分たちを許そうというカムの言葉に差し延ばされたその手を両方の手でしっかりと握りしめ。
「ありがとう、本当にありがとう。この恩は絶対に忘れない」
今ここに、新たな芽が芽生え始めた。
いまだ小さな芽であるもののいつしかそれは大木へと成長していく。
その進んだ先にこそ新たなローマが生まれる物だと建国の王、ロムルスは見守る。
星は永遠ではない、いつかその輝きは消え去る物だ、だがその心にロマンを抱いていれば次代へと続いていき人は永遠に
続いていく。
それを芽生えさせ守る事こそ永遠になれなかった星である英霊となった神祖の務めであるのだから