来週こそは一話を更新させます。
それでは、どうぞ!
とある静寂が支配する森の中、一人の少女が木の枝の上に座って空に無限に広がる星空を眺めていた。
そんな時、ふと右ポケットに入れていたスマホからの着信音が鳴る。
「ん?電話?………もしもし、ジャック、どうしたの?………分かったよ。近くにそれっぽい気配があるから、ついでにやっておくよ。……フフ、そんなことで礼を言うなんて、君も老けてきたのかい?…………冗談だよ、それじゃあ、またね」
相手は彼女にとって、誰よりも愛してやまない大切な人からだった。
その愛しの人が告げた内容は、最近になって堕天使達が暴走して神器狩りや人外狩りを行ってるから、もしいたら捕まえ欲しいとのことだった。
最近となって運動もしていない彼女は、それを承諾。
そんなことがなくても、彼の言うことなら大抵は聞いてしまう甘い彼女である。
彼女の名はエルキドゥ。
『
※ジャックはあまりこの呼び名が苦手で自分から名乗ろうとしない。
名前から察せる通りボスは三人おり、全員が各神話勢力の上位神に匹敵するほどの実力者だ。
ここで驚きなのが、その全員が
ちなみに、彼女はその三人の内の強さで言えば“二番目”である。
一番の者は、もはや各勢力の主神クラスに匹敵するほどなので、他二人からよく「お前本当に同じ人間か?」と聞かれている。
三番目は真っ正面から戦えば各勢力の幹部クラスだが、本来は暗殺や諜報と言った裏仕事の方が得意なので、搦め手や罠と言った何でもありの勝負なら彼は神すらも倒せる。
いや、神滅具を使えば主神も倒せるが、彼自身にとってもそれは諸刃の剣なので使うことは滅多に無い。
………まあ、その三番目と二番目のエルキドゥは夫婦の関係で、かなり仲が良い。
一番目はハブられたと思ってしまうかもしれないが、一番目も結婚してる。
こちらはまだ初々しいところがあり、まだキス止まりだ。
いや、二年間いてキスも数回しかできてないのはどうなのだろうか?
……………今はこの話題を止めておこう。
彼の名誉ためにも………。
閑話休題。
エルキドゥは連絡を受けた後、溢れる喜びのオーラが抑えきれないのか、満面のニコニコ顔で拠点に戻る。
そこは森の中にある小さな洞窟で、中には数人の男女が薪に火を付けて囲っていた。
その内の一人がエルキドゥに気づき、彼女に手を振る。
「あ、エルキドゥさぁん!どこ行ってたんですかぁ?」
手を振ったのは金髪の女の子らしい可愛い顔をしていながら、紳士服を来た少年………俗に言う“男の娘”と言う奴だ。
彼の名はギャスパー・ヴラディ、『探索部門』の長だ。
彼と『信念の方舟』の出会いは、吸血鬼連中との戦争の途中だった。
自己中心的な考え方が激しく、民間人にも被害が出ていたのでそれに耐えれなかった“三柱の王”指揮の下、戦争を開始した。
そして、その途中で彼女が二人の子供の吸血鬼を見つけた。
しかも、デイウォーカーと呼ばれる日中を歩いても大丈夫な吸血鬼で、人間とのハーフでもあった。
それが、このギャスパーと後の『財政部門』の長であるヴァレリーだった。
エルキドゥは二人が神器所有者だと気づき、あんな吸血鬼達と共にいれば明るい未来が無いのを一瞬で悟った。
だから、二人を保護し、他にも同じ境遇の子供がいないかを探したが、保護できたのは二人だけだった。
結果で言えば、吸血鬼達との戦争は『信念の方舟』が勝利した。
戦争途中、トップの意志に賛同できなかった吸血鬼達ーーーヴァレリーやギャスパーの親類もいたーーーが付いたりしたおかげでかなり楽になったが、逃げ出した吸血鬼もいたので、今も捜索は続けられている。
そこから、二人は優秀に育っていき、二人とも各部門の長という、『信念の方舟』の幹部になることが出来たのだ。
ちなみに、彼は16歳という、各部門の中でも最年少の長だが、実力・知識両方とも、どの長達にも引けを取らない。
まあ、彼をそうしたのは…………………ここは彼の名誉のためにも黙っておこう。
彼も必死に努力して、長に認めて貰った実力者ということを皆に理解して欲しい。
「全くだ。近くでこいつらが、今か今かとお前を心配してる姿は流石に鬱陶しかったぞ。あまり後輩を心配させてやるな」
エルキドゥに注意する若い男の声。
その主の名はアスクレピオス。
とはいっても本人ではなく、“アスクレピオス”の末裔だ。
彼は神器『
効果は杖に巻き付いてる蛇の操作と四肢欠損までの傷を一瞬で治癒できる。
彼は元々スラムの出だが、その能力を教会に買われ、その後に洗脳を受け、道具同然のような人生を送ってきた。
しかし、項羽がその教会のトップの不正を暴き、その教会所属の者達を全員捕まえた後に彼を発見したのがエルキドゥだ。
当時、彼には洗脳魔術がかかっており、項羽がその洗脳を解いたは良いものの、何があったのか“
未だその結果は出ていないが、その過程で生まれた様々な薬品や治癒系魔法陣などの功績が認められ、『医療部門』の長になった男だ。
「…………………(ソワソワ」
洞窟の端っこで、エルキドゥを見ながら無言でソワソワしてる小学生低学年並みの少年がいた。
少年の名はレオナルド。
彼もエルキドゥを心配してた一人だ。
この場にいる人達は全員が一般人じゃないのはおわかり戴けるだろう。
ならこの少年もその一人だ。
彼は、幼くして神滅具『
しかも四つある内の上位神滅具の内の一つでもある。
彼は今回二番目に拾われた者で、元々この洞窟に引き籠もっていたのだ。
しかもただ引き籠もるだけじゃ無く、『魔獣創造』の力で様々な魔獣を作り出して、それを護りとしていた。
そのために、それを不審に思った者が『信念の方舟』に依頼を出して、エルキドゥ達が出ることになったのだ。
ちなみに、レオナルドが創造した魔獣はエルキドゥの『
もうギャスパーの神器である『
本来ならば、自分の魔獣達を瞬く間に殲滅したエルキドゥに恐怖を覚えるはずなのに、レオナルドが覚えたのは尊敬なのは…………どうなのだろうか?
恐らく、自分と似たような物量戦を得意とすると思ったのだろう。
だが、ぶっちゃけて言えば、レオナルドの方がかなり凶悪である。
エルキドゥの『民の叡智』は全て土製で、耐久値で言えばそこまでない。
代わりに『天の鎖』ならば、耐久値はあるものの『民の叡智』のように変幻自在に姿形を変えれるわけでは無い。
エルキドゥはこれを上手いバランスで戦術を組み立ててるために成り立ってるのだが、レオナルドの神滅具はその上を行く。
今はまだ成長段階だが、彼を鍛えることによって無限とも言える数の魔獣を作り出せ、それぞれ特色が違う魔獣も作り出すことも可能なのだ。
上位神滅具とは全てこのように理不尽なまでに強いのだ。
レオナルドの含めて上位神滅具は四つあり、他の上位神滅具の内、『
残りの一つは『
天界が保護したデュリオ・ジェズアルドが所持している。
『
まあ、簡単に言ってしまえば『信念の方舟』は千にも満たず数で他神話勢力に匹敵するのである。
そんな勢力をそのまんまにしておく勢力が無いはずが無く、実際に須弥山や北欧以外から攻撃を受けており、その最初が堕天使である。
今も一部の勢力から攻撃を受けてるが、その敵対してる中にはテロ組織も有り、これまた面倒くさい奴らばかりだが、今はこの話はやめておこう。
要はレオナルドの神滅具は存在自体がヤバくて、そのヤバいのが更に他勢力からヤバい奴しかいないと言われるヤバい組織に入ったということだ。
結論、ヤバいことになった(語彙力放棄)。
「あの……大丈夫でしたか……?」
おずおずとそう声を掛けたのは金髪の美少女。
名をアーシア・アルジェント。
彼女は神器『
元々は教会に所属しており、ある日に傷だらけの悪魔を神器で癒したことにより教会から魔女認定され、教会から追い出されたのである。
そこを、今回遠征に来ていたエルキドゥ達に拾われた。
いや………彼女が意味も無く彷徨っていたところをアスクレピオスが発見し、拉致してきたのである。
それを理解したエルキドゥはアスクレピオスに説教を喰らわしたが、彼女が追放された身だと知り、保護する事にしたのだ。
「ごめんごめん。実はさっきまで星空眺めてたんだけど、途中であの人から電話があってね。ちょっとした話と、ついでに依頼が来たよ」
その言葉を聞いて少しは真剣になるが、空気は柔らかい。
それもそうだ。
まだ幼いレオナルドや精神的に弱いアーシアもいる状態で、空気を変えてしまったらそれこそ不安で心がいっぱいになってしまうだろう。
なので、空気を変えないようアスクレピオスが問う。
「ほう。その内容は?」
「………暴走してる堕天使の捕縛又は処分だってさ」
『!!』
その言葉の意味を理解し、驚くギャスパーとアスクレピオス。
彼らはアザゼルの性格を知っているために、エルキドゥの夫で有り、ボスの一人でもあるジャックが、仲の良い彼の部下に勝手にそんな事をするはずが無いのは既に分かり切っている。
なら、誰の指示か。
それは他ならぬ堕天使の総督であるアザゼルしかいないだろう。
アザゼルの元部下が神器狩りで他勢力に迷惑をかけてるのだと悟り、それでアザゼルが思いきったことに二人は驚いたのだ。
アザゼルにそこまでやらせる部下の命運は…………ご愁傷様です。
だが、今は夜なので、行動は明日からすることになった。
それで今夜の過ごし方を知らないであろうアーシアとレオナルドにエルキドゥが説明する。
「ここには四人の神器使いがいるからね。神器から漏れ出る波動は尋常じゃないので、奮発しようと思います」
「…………おい、何か嫌な予感しかしないんだが?」
アスクレピオスが何故か焦る中、エルキドゥは無言で荷物入れの中を漁る。
レオナルドとアーシアはよく分かっていない様子。
「無言で荷物を漁るな!」
「お、あったあった♪」
「………僕たち大丈夫ですかねぇ?」
「………“蘇生薬”創りたかったな………」
「アスさん!?」
「アスさん」とは、彼と仲が良い者達から渾名である。
何故彼らが焦ってるのかというと、エルキドゥが取りだした物が原因だった。
彼女が取りだしたのは
その効果は並の神器よりも強い。
それも理由の一つで、アスクレピオスとギャスパーは焦る。
「解放するなよ?というか、何故それがある?」
「え?今回の旅に行く直前にジャックがくれたよ?」
((あの人かああああああああああああ!!??))
やらかしたのはジャックの方だった。
しかも、渡された本人はあまりよく分かっていないどころか、ただの凄い防衛システム的な神器としか考えていない。
ここに来てエルキドゥの天然が発動してしまい、二人は心の中で頭を抱える。
しかし、それが並の神器より強いだけじゃ二人はこんなに焦らない。
まだやらかしたな程度で済むのだが、持ってきた物自体に問題があった。
実はアレ……………項羽の最高傑作の一つなのだ。
出来たのは一年前だが、その効果がハッキリ言って異常なのである。
まず、指定空間の存在隠蔽。
これは指定した空間の存在を
これの恐ろしいところは存在理由を隠すことによって、気配察知や魔力探知どころか生命力感知でも中にいる者を見つけることは不可能なのだ。
二つ目は空間内にいる者の体力・魔力の自動回復促進と状態異常の無効化。
説明しなくても分かるだろうが、簡単に言えばそこにいる限り体力と魔力はどんどん回復していき、呪いや毒と言った有害な物質を無効化するので、殆ど無敵である。
例え、即死攻撃を食らってもすぐに最低限は生きてるので、その間に回復すれば生き返るので半不死状態になる。
そして、後数回使用できる。
ハッキリ言ってチートである。
ちなみ、これの制作にはアザゼルも関わっており、項羽とアザゼルがこれを出来たときには思わず二人してハイタッチをかました程である。
…………どうしてそんな代物を今回の遠征のためだけにエルキドゥに渡したジャックの過保護ぶりに、項羽に怒られるんだろうな、と思う二人だった。
しかも、その後逆にジャックが項羽に向かって
「お前だって相手が虞姫さんだったら同じことするだろうが!」
という発言で項羽が撃沈する未来も見えてる。
そんな事を考えてる内にエルキドゥが人口神器を発動し、その直後に辺りがエメラルド色に輝いたかと思うとすぐに消えた。
神器が無事に発動した証である。
もうこの時の幹部の二人の心中は、もうどうにでもなれ、と達観していた。
ちなみに、何故洞窟で夜を過ごそうとしてるのかというと、レオナルドの頼みのためだ。
実は彼と和解したのはほんの数時間前だ。
その時には既に夕刻だったのと、エルキドゥが偶には自然で夜を過ごしたいと言ったせいだ。
これにはギャスパーもアーシアも問題は無かったのだが、意外なことに医療に関しては面倒くさい性格をしているアスクレピオスが賛成したのは意外だった。
理由は、もしかしたら自分の知らない症状が出るかもしれないという、何ともある意味探究心の強いものだった。
まあ、そんなこんなもありながら彼女達はその日の夜は無事に過ごした。
~翌日~
神器の効果を止めて洞窟から出た一行は、本来の任務である神器使い探しとジャックの頼みの暴走堕天使の捜索を開始した。
一週間後、未覚醒・覚醒済みの神器使い10人が『
ちなみに、帰ったエルキドゥはジャックを捕まえてどこかへ消えたらしい。
オアツイコトデ………。
アザゼルの方はもう栄養ドリンク片手に常備し、部下も同じ状態という地獄絵図になっていた。
それを知ったジャックが『神の子を見張る者』本部にアスクレピオスを送るまであと数日。
アスクレピオスはFGOに出て来る第一再臨の姿です。
この世界のエルキドゥの胸の大きさはC~Dくらいですが、いつもブカブカの服を気に入って来てるので外から胸の大きさは分かりにくいです。
次回、本来ならばコカビエル戦になりますが、この世界のコカビエルは『信念の方舟』で戦闘欲求を満たしてるので関わっておりません。
代わりに、バルパーが見つけたオリキャラを出します。
それでは次回をお楽しみに……。