グラウンドを離れ、職員室へと向かう。やがて、目的の職員室にたどり着く。数回ノックをし、中からの返事が返ってきたことを確認してから、
「失礼します。転校してきた結乃です。」
そう一言告げてから、室内に入る。
「結乃君、こっちである。」
声のする方を見てみると、部屋の奥に強面の男性がいる。どうやら先ほどの声の主は彼らしい。彼のもとまで行き、あいさつをする。
「ウム、おはよう。吾輩が君のクラスである2年2組の担任を務める坂本英彦である。時間通りの行動であり安心したのである。吾輩のクラスにいる遅刻魔にもぜひ見習ってほしいものだ。」
そう笑いながら話す。どうやら転入先のクラスには遅刻魔がいるらしい。
「君にはSHRの時に吾輩と共に教室に向かってもらうのである。吾輩が合図をしたら教室内に入ってきてくれたまえ。」
「わかりました。」
-それでは行くのである。そう言った先生の後に続き教室へと向かう。
「そういえば、君は前の学校ではサッカー部に入っていたのであったな。」
「あ、はい。」
急に話しかけられたこともあり、少しドキッとした。
「吾輩は、サッカー部の顧問をしているのである。昨年に創設されたばかりであって部員は少ないが、皆いい表情で練習しておる。今朝もグラウンドで練習していたであろう。」
「はい、みんな楽しそうにやっているように見えました。」
声が暗くなってしまう。その様子に心配したのか先生が声をかける。
「どうしたのだね?転校初日で緊張しているのか。なに、心配いらない。吾輩のクラスは問題児を除き、皆良い生徒である。それよりも、どうかねサッカー部に入部しないかね?」
「...考えてみます。」
ーサッカーはもうやめたんです。頭ではそう思っていても口では言えなかった。
ああ、中途半端な自分が嫌になる。やめるって決めたのに、結局サッカーから離れられないでいる。
そして、教室につく。先生にここで待つようにといわれ、教室のドアの近くで待つ。
すると、正面から一人の少女が走ってくる。
「やばい!!また遅刻だ!また坂本先生に怒られちゃうよ!」
その言葉を聞いて彼女が件の遅刻魔であることが分かった。相当に焦っていたのか入り口付近にいた自分に気づくことなく教室に入っていく。
「---に入ってきてもら「ごめんなさい!!遅れました!!」舞埼!君はまた遅刻をしてきたのであるか!!」
「先生、これには深いわけが...」
「君の言い訳は聞かん。早く席に着くのである。君が急に入ってきたせいで転校生が入ってこれないではないか。ゴホン、では結乃君入ってくるのである。」
中でひと悶着あったみたいだが、名前を呼ばれたので教室に入ることにする。教室に入り黒板の目まで行く。教室内の視線が自分に集中する。先生に促され自己紹介をする。
「転校してきた結乃要です。よろしくお願いします。」
「結乃君の席は窓際の空いている席である。席についてくれたまえ。」
先生の言葉に従い席に着く。すると、隣の席に座っていた先ほどの少女が話しかけてくる。
「キミ、さっきボール蹴ってくれた人だよね!ボクは舞埼友紀!!よろしくね!!サッカー部に入るの?」
「よろしく。部活に入るかはまだ考えてる。」
「えぇ~、あんなすごいキックができるのにもったいないよ!」
「舞埼!SHRの最中である!私語はやめるのである!」
「ごめんなさい!」
ーやっぱりあの時ボールを蹴り返さない方がよかったのか。なんて考えたが、サッカー部に誘われたことは素直にうれしかった。
本心ではサッカーがしたいと思ってる。でもそれはできない。自分のせいでこれ以上サッカーを嫌いになりたくないから。
チームのみんなで戦うはずのフィールドには俺しかいない。そんな経験はもう二度としたくないから。
近いうちに、そう思っている自分が変わるきっかけが来るということをこの時はまだ知る由もなかった。
ここまでお読みいただきありがとうございました。