本小説では、必殺技の威力ゲームシステム上の数値では考えてはいません。
なんでこの技が簡単に破られるのか、と考える方がいるかもしれませんがこのような理由ですのでご了承ください。
グラウンドへ向かっている間、ずっと考えていた。
俺は、またサッカーをすることができるのか。今まで自分の本心を隠していた殻は小代によってヒビが入った。これは自分自身と向き合うための試練なのではないか。
そういった気持ちと、これを最後にサッカーから離れよう。そういった気持ちに挟まれていた。
グラウンドに着いた。すでにサッカー部の面々は揃っているらしい。
彼らの自分に向ける反応は様々だ。
好奇心の目を向けるもの、値踏みをするように見るもの、我関せずの反応をするもの。
そんな彼らの前を横切り、小代の前まで行く。
「ちゃんと来てくれたみたいだな。」
「自分の好きなものから逃げたくはなかったからな。」
古代の言葉に対し、ぶっきらぼうな態度で答える。
「このグラウンドに慣れていだろう。何本か蹴ってグラウンドの感覚をつかんでもらって構わない。」
「そうさせてもらう。」
勝負を始める前に、何本かシュートをするなどしてコートの感覚をつかみ、本番に備えた。
「では、始めるとしよう。勝負は君がペナルティエリアの外からシュートを放ち、俺がそれを止める。シュートを止めれば俺の勝ち、止められなければ君の勝ちだ。3回中先に2回勝った方の勝ちだ。」
「わかった。」
そういった後、小代はゴールの前に立つ。彼からとてつもないプレッシャーを感じる。それと同時に、なんだか懐かしい気がする。こんな風に勝負をするのは何時ぶりだろうか。
これから起こる勝負を前に、サッカー部の面々はそれぞれの思うことを話していた。
「彼奴が舞埼と小代が誘ったていうやつか?チームメイトになるかは知らんが、俺様が見極めてやろう。」
「そうだよ!小代との勝負もきっとすごいものになると思うよ!!」
「キャプテンとの勝負、おれスッゲー楽しみだ!」
ひときわ大きな体を持つ茶髪の男子と、これから始まる勝負に興味津々といった様子の舞埼が話をしていて、元気のある小柄な男子が食い入るように見つめる。
「んにゃー、かりぇをどこかで見たことがありゅ気がすりゅんだよねぇ。」
「綿雲さんが見たことあるならどこかで活躍していた選手だったんですかね?」
ふわふわとした印象を与える活舌の悪い女子と、雪のように白い長い髪を持った少女が話す。
「あの人、相当鍛えているわね。」
「そうみたいだね~。さっきシュートしてた時も体の軸がまっすぐだったし。」
「体の軸がまっすぐってすごいことなんッスか?」
「実際はすごいことだと思うッスよ。ジブンはどうしても重心が利き足の方に傾いちゃうので。」
冷静に結乃の分析を行う若干つり目の女子に、真面目そうな銀髪の女子が続く。
それに対し、活発な男子と、ヘッドフォンを首にかけている女子が話す。
そして、勝負が始まる。
1本目。
俺はボールの右側を擦り上げるように横回転をかけて、上がったボールにボレーシュートを行う。
『スパイラル...ショットォ!』
蹴られたボールは螺旋状に空気を裂きながらゴールへと向かう。
それに対し、小代は灰色のオーラを纏い始める。
「ハァァァァァ!『マジン・ザ・ハンド!!』」
小代の声に呼応するように背後にガラクタによって形作られた、所謂「ガラクタノマジン」が現れる。マジンの巨大な手が向かってくるボールを受け止める。
しばらく拮抗した後、ボールは完全に小代の手に収まった。
「キミの実力はこんなものか!!全力でこい!」
今のシュートは本気ではあったが、全力ではなかった。小代のことを甘く見ていた。いや、俺自身が自惚れていたんだ。全員が俺よりも下なんだと、そんな考えだから止められた。
向こうは全力の勝負を望んでるんだ。なら、俺も全力で答えなければ、サッカーを愛する者に対して無礼に当たる。心は決まった、この後どうなろうと今の俺の全力をぶつけてやろう。
「次は、次こそは決める。」
2本目。
「ありがとう。お前との勝負のおかげで気持ちが吹っ切れた。この後がどうなろうと、俺は俺の全力でお前からゴールを奪う。行くぞッ!」
俺はボールを頭上へと蹴り上げる。
『ゲイ...』
蹴り上げたボールに全力を込めたオーバーヘッドキックを行う。
『ボルグ!!』
ボールは、紅いオーラを纏った鋭い槍のようになり、一直線にゴールへと迫る。先ほどのシュートとは威力も速さも違う、俺自身の全力だ。
小代は先ほどと同じようにオーラを身に纏い、自らのマジンを顕現させる。
『マジン・ザ・ハンド!!』
マジンの巨大な手に紅い槍が突き刺さる。
「ウオオオオオオオオッ!!」
そして、紅い槍となったボールは、マジンを貫くようにしてゴールに入った。
「これが、君の全力か。今のシュートから、君の思いは伝わった。次は必ず止める。俺たちとサッカーをしてもらうために!」
3本目。
「これが最後だ。俺は、必ずお前からゴールを奪う!」
「望むところだ!必ず止める!」
「「勝負ッ!!」
俺は再び全力を込めたシュートを放つ
『ゲイ...ボルグッ!!』
シュートを放った瞬間にわかった。これは、今までで1番威力の籠ったシュートであると。
そして、小代もまた感じ取った。このシュートは先ほどよりも強くなっていることを。
「ッ!…見事ッ…!だが、止めて見せるッ!」
小代は、細い目を見開き、前傾姿勢を取る。そして灰色のオーラを出し、向かってくるシュートを睨み付け、両手を強く握りしめる。
すると、先ほどとは違い、背後から「古びた部品や歯車等をごちゃごちゃにしてできた竜の咢」が現れる。
「『屑鉄の咢』!!」
その竜の咢は向かってくる紅い槍を小代ごとかみ砕く。
大きな力と力のぶつかり合いにより砂埃が舞い上がる。
小代は止めたのか、止められなかったのか結乃を含めサッカー部全員が砂埃が収まるのをじっと見つめる。
やがて、空を舞っていた砂埃が消える。そこには、両手と自分の体で挟むようにシュートを受け止めていた小代の姿があった。
小代はニヤリと笑って
「止めたぞ。この勝負俺の勝ちだ!」
そう高らかに宣言した。
――――悔しい、とてつもなく。
自分の中で最高のシュートが止められた。でも、悔しさのほかにどこか満足をしている自分がいた。
「約束だ。サッカー部に入ってくれるな?」
「ああ。約束だからな。また、勝負しよう。次は必ず勝つ。」
「何時でも相手になろう。これからよろしく頼む、要。」
こうして俺は、小代との激戦の末サッカー部へと入部したのであった。
今回まで小代を主軸に添えたストーリーとなりましたが、次回以降ほかの皆様のキャラクターを絡ませていこうと考えております。
ここまでお読みいただいたことに感謝いたします。