バグ多きこの世界で生き残れたら上等だと思う【旧名:昔だからこそ】 作:翠晶 秋
『僕の蔵の財産は孫のテテロテロテロに渡す』
……。
なんなのだろう、この遺言は。
昔から俺のじいちゃんは頭がおかしかった。
俺の名前……テテロテロテロをつけたのもじいちゃんだ。
「幼稚園の絵?『僕のおじいちゃん:なまえ、まおう ててろてろてろ』か。懐かしー」
そう。
磨皇テテロテロテロ。
それが俺の名前。
あだ名はテロでどうにかなってるけど、うん。
じいちゃんの頭バグってんだろ……!
で、現在。
俺ことテテロテロテロはじいちゃんの───否、俺の蔵に侵入していた。
財産以前にあのじいちゃんのことだ、爆弾を抱えててもおかしくねえ。
突き進んでいると、ひときわ大きな箱を発見。
……怪しい。
だって見た目がまんま宝箱だ。ゲームで出てくるような。
「ハイ開けまーす」
うん?『テロスター=サーガ』?
見たところゲームのソフトっぽいけど……。俺の名前の由来これだろ。
ソフトの周りには昔のゲーム機と、手入れ道具、攻略本。
え、このテロスター=サーガやるためにこの宝箱置いたの?
攻略本は……。あれ、虫食いが一つも無い。
箱に入ってたからかな。
何とはなしに開くと。
『やれ』
「……は?」
じいちゃんの字で、攻略本を開いた瞬間にやれと書いてあるのだ。
タイトルの下に。
「いや、うん、ええ?」
『やれ』
「んなこと言われてもねぇ」
『やれ』
「一言だけでめっちゃ威圧感出すなじいちゃん!」
わかったよ、わかりましたよ。
わかったから字から恐ろしい殺気的ななにか出すのやめてもらえませんかね。
ゲーム機とソフト、攻略本をそのまま取り出して抱えると、さっきからあった圧迫感はとうに消えた。
んっんー、幽霊ですかね。
とりあえず、これはウチにもって帰る。
んで、自室でやるしかないか……。
◇
眠い。
時計は午前3時をさしている。
なんだよこのクソゲー、ヒロインのドットは荒いし、バグも多い、お前にアクションゲームなのにラグがありまくりじゃねえか。
あー、紅茶何杯めだったか。
カフェインが足りぬ。やだ。やだ。眠い。
寝たいよぉ。もうこのゲームやりたくねえよ。
はいもうごろん。お休み。このゲーム絶対やらn
『やれ』
ちくしょおおおお……。
なんなんだよじいちゃん!明日が休日だからってでしゃばりやがって!
じゃあなんで死んだんだよ!テメエがやれよアホンダラぁ!
「…………」
コントローラーを握る。
もう呪いじゃん、これ。
えっと、次のクエストは囚われのヒロインを助け出す。
攻略本は……『ここから先は君の目で確かめろ!ヒロインを助け出すのは君だ!』……使えねぇ。
えと、中ボスはクラウドドラゴン。序盤でに戦うボスだ。
強さのインフレ。
対処法は最初の村で買える消耗品のうちわ。……うちわ。
いっかいアイテムで帰ってまたヒロインの囚われてる塔に登る。
多分流れ的に次のボスはヴェノムドラゴンだから解毒草をたくさん買って対さkkkkkkkkk。
◇
「ふぁああああ」
うーむ、まだ気だるい。
目覚ましは鳴ってない。休日だからな。
……あー、寝落ちしちゃったのか。
ゲーム、ゲーム。コントローラーは……。
むにゅん。
「あっ……」
……?
グリップはどこですか……。
「あふ、んっ、やめ……」
なんか女の子の声が聞こえる。
これアレか。ヒロインのセーリャちゃんの声か。
でもおかしい。彼女は今塔に囚われているはずで……。
「いい加減に起きないと……怒ります」
「へぶっ」
!?!?!?
右頬に衝撃。
思わず目を開くと、そこにいた。
しゃがみながら俺の頰をぺちぺち叩く少女が。
「やっと起きました。どなたかはわかりませんが、ここで寝ると死んじゃいますよ」
「……パンツ見えてる」
「!?」
寝ぼけ眼で起き上がると、そよ風が俺の頰を撫でた。
屋外?
視線を上に移すと……。
……。
……ん?
……はぁっ!?
「宙に浮かぶ島。地上のマップ、セーリャのセリフ。これって……!」
テロスター=サーガ!
「せ、セクハラですよ。殴りますよ」
「ッ!!」
「逃げた!?」
セーリャは今はどうでもいい。
俺がいるのは空島。
空島の中心には大きな樹があって、そこでアクションのチュートリアルがある。
ツルを登り、ダッシュで勢いをつけてジャンプ。
樹の周りをぐるぐる回って登っていき、やがて樹の上に登ることができた。
当たり判定のある葉っぱの上に立つ。
遠くに見える一際大きな空島。じゃあ向こうには……。
あった!
描写が雑すぎてドットっぽくなってるけど、ヒロインの囚われる塔!
これって、これって、まさか!
「テロスターの世界……?」
それが俺の、冒険の始まりだった。