バグ多きこの世界で生き残れたら上等だと思う【旧名:昔だからこそ】   作:翠晶 秋

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お世話になり申し候

「……厄介ね。変態が同じところに泊まっているだなんて」

「いや変態じゃないから!!この服だって仲間の物で……」

「はぁ。何でも良いけど、少し運命を恨むわね……」

 

え、そんなに?

そんなに俺のこと嫌いになった?めっちゃショック。

アリスは序盤中盤においてかなりのメインアタッカーになるから、制作系などでうろちょろしていても必要不可欠な存在だ。

教会で会うのがいつもの定番だったから、警戒もされていなかったんだけど……冗談かって思うほどに警戒されているぞこれは。

 

「その、とりあえず、信じてもらうために教会に行きたいと思うんだけども」

「警察にご厄介になろうとは?」

「教会の子供たちと仲良くなっちゃったから、一緒にお風呂入らないといけないんすよね」

「……はぁ。分かったわ。納得はしておいてあげる」

 

まったく……俺が女装癖のある一般男性だったらどうするつもりだ。

趣味は人それぞれだろうが。いやそんな事ないけども。

 

「……名前は?」

「ん?俺の?」

「あなた以外に聞く名前があるかしら?」

「……テロ。俺の名前はテロだ。お前は?」

 

知ってるけど。

 

「アリス。旅人の、アリスよ」

「良い名前だな」

「そう、かしら」

 

どうにか会話を繋げなければ。

アリスは初期の頃は生活に関する魔法程度しか使えないが、実際のところ、割り振れるスキルポイントの幅が多い。

たとえば俺は今スキルを4つ解放できる。剣、魔法、召喚、ラッキースケベ。中盤で訪れるはずの神殿でスキルを合成して【スキルツリー】を開放して、ようやく自由な幅ができるか否かと言うくらいだ。

だが、アリスは現段階でも、俺よりスキルが多い。俗に言う育成キャラ……という奴だが、全スキルに1でも振れば、その時点で万能な魔法使いになりうる。

 

なによりも。

 

 

強さ

テロ

セーリャ◀︎

 

 

強さ:セーリャ 残りスキルポイント8

槍術2

魔法3

絆0

???0

 

 

そう。セーリャのスキルにもある【絆】というスキル。

アリスも持っているスキルで、これは絆スキルを持っている同士が連携すると、強力な力を解放して大ダメージを与えることができるというスキルだ。

これが強い。初めて知ったときは、なんで知らなかったんだって思うくらい強い。

セーリャの回復は瀕死状態から全回復し、アリスの魔法攻撃はアルラウネ三匹を一撃で粉砕した。

もちろん、序盤で。

アリスの存在は、この世界を攻略するのに必要不可欠。

 

だから、こんなに警戒されているとこの先仲間にできるか不安だなぁ……。

とか思いつつ、必死に頭を回転させる。

 

「ええと、アリスさんは……」

「さん呼びは結構よ。敬語だっていらないわ」

「あ、そう……。あ、え、アリスは。アリスは、こんな夜中になにをしてたんだ?」

「…………」

「あぁ、なにか言いづらいなら別に言わなくても良いからな」

 

アリスはこう見えて、両親がいない。

覇王の軍勢に殺されてしまった大魔法使いと、それを支え続けた薬剤師。それがアリスの父親で、母親だ。

アリスの物語はそれほど明らかにされていない。

そこまで考える余裕が無かったのか、それとも、なにがしかの本や続編を出して、真相を明らかにするつもりだったのか。

どっちにせよ、アリスや他のキャラの情報は明らかになっていない。

じいちゃんが保管していた当時の記録も攻略のために調べてみたが、プレイヤー間でかなりの考察が行われていたようだ。

 

『アリスの最強と言われている装備にはそれぞれモチーフが別の神話だから、隠しクエストで神、それに仕える天空族との関わりがあるのではないか?』

『プレイヤーが「これが最強だ!」って言っただけのつぎはぎ装備だから、それは関係ないかと思われ』

『魔道士の家でアリスのお母さんの名前だけはギリギリわかったんだけどなぁ』

 

ふむ……やはりここでアリスを勧誘するとかいうはじめての試みはやめておいた方が良いだろうか。

本来は次の街で会う予定のやつだ。俺はワイバーン運送があったからかなり早めに着いたからアリスと出会えただけで、正規の方法で街を目指すと、ついた頃にはアリスはすでにここを発っている。

 

「魔物を倒していたわ」

「まもの」

「えぇ。皮肉なことにお金がないのよ。明日の身も知れないくらいに」

「そうか。同じ境遇だな。……俺のところは、主にこの買い物でほとんど失ったけど」

「……本当に、仲間の物なのね」

「だからそう言ってんだろ。夜道を女の子に歩かせるわけにも行かないし、本人も気付いてないからな。ちょっとしたサプライズってやつだ」

 

アリスは歩みを止めず、空を見上げる。

 

「どうした」

「いえ、この先どうしようかと」

「この先?」

「……初対面のあなたに言うには、少し怖いわね」

「そうか。ま、しばらくは同じところでご厄介になるんだ。俺の仲間は聞き上手だし、仲良くなったら相談でもすればいいんじゃないか」

 

アリスがこちらを見つめる。

その目には、どんな感情が含まれているのか、想像もつかない。

そもそも、テロスター=サーガの主人公は「はい」と「いいえ」以外に喋らない。

俺が意思を相手に伝えるなんてこと自体知らないシナリオだし、いくら早くここに来たって、アリスと会うのは1日2日後のはずだ。

この時点で、俺の知らないシナリオに変わっている。

 

喋れるのは吉だが、一体どうなっているのか……。

 

「…………」

「アリス?どうした?」

「……う」

「アリス?」

 

目の前で、少女がバランスを崩した。

赤髪が、はらりと舞う。

冷たい地面。お世辞にも、寝転がるのに快適とは思えない、冷えたレンガの地面に。

アリスが、倒れた。

 

「……アリス?」

「…………」

「ちょっと待て。……アリス!!」

 

ここまできたら全く持って予想外だ!!

アリスに一体なにが起きてる!?

とにかく、ここであたふたしてもなにも変わらない。

気を失ったアリスを、背負い、俺は走り出した。

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