バグ多きこの世界で生き残れたら上等だと思う【旧名:昔だからこそ】 作:翠晶 秋
「見つけた……すばしっこいですね……」
「……君は」
「初対面で胸を揉んで下着を見てその上で逃走ですか!卑劣!まさに卑劣!私の魔法で消し去ります!」
魔法で空中に足場を作ってこっちに来たセーリャがワンドをこちらに構える。
セーリャは中盤から馬鹿みたいな破壊力の魔法を使うが……テロ様は知っている。
「ふははっ!見掛け倒しの魔法など取るに足らぬ!」
「な、なんですって!?」
「俺は知っているぞ!お前は俺に魔法の使い方を教えない限りお得意の魔法が放てない!」
「何を抜けた事を……っ、あれ?あれ?」
なぜならそれは……仕 様 だ か ら だ !
アクションチュートリアルでこの天空に浮かび樹に登り、セーリャから魔法の使い方を教えてもらう───チュートリアルをクリアし、最後にセーリャと二人で……おっと、不要なネタバレは炎上のもとだ。
「とにかく、俺は魔法の知識はあっても魔法の使い方は知らないの。教えて教えて」
「は、はぁ。……まだ怒ってますからね。教えた瞬間にぶっ放します」
ちなみに主人公がセーリャの胸を揉んでパンツを拝むのも仕様だったりする。
「魔法とは、文字通り魔の法則です。ああしたい、こうしたいという強い思念が具現化し、現実の心理を捻じ曲げて火や水になるのです。これを魔術論と言い───」
「千何年か前に偉大なる魔法使いが長い研究の末に編み出した。違うか?」
「な、なんで知ってるんですか……」
何回かセーブする前に電源切れてデータ飛んだからな。
何回もループしたから覚えてる。
ちなみにこれが徹夜してもクリア出来なかった理由に一番近い。
「お前が言うセリフは全部わかるんだよ。これから魔力とはなんぞやってのをやろうとしてたろ」
「…………」
「その次はお前がだいだい受け継ぐ天空魔法と一般的な魔法の違いを説明するつもりだった。そのあとにお前はこう自己紹介する。『私の名前はセーリャウス・アインスタッフ。天空魔法を操るテロスターの家系の生き残り』と」
「な、名前まで……」
「早く魔法を教えてくれ。そんでもって俺に魔王……じゃなかった、覇王を倒させてくれ」
ゲームのテロスター=サーガはバグが酷かった。
画面が入り乱れたり、たまに主人公のグラフィックがバラバラになったりしたものだ。
もしもそれが、この世界でもあったとしたら……?
「いいか。俺は最速で覇王を討伐する。んでもってどうにかしてあの空の向こうに帰る。そのためには、お前の力が必要だ」
「っ……」
「俺についてきてくれ。大丈夫だ、不自由にはさせない」
「……じゃっ、じゃあ……これを」
ずずいと近寄った分後ずさりながら、セーリャは自らが付けているのと同じ指輪を取り出した。
そしてソレをこちらに向けて来る。
「こここ、これを身につけてください。ステータスが上がる代わりに、1つ呪いがかかる代物です。そこまでする覚悟があるのなら、私も……」
「縛りプレイってやつか。良いだろう」
「えっ」
セーリャから指輪を受け取り、左手の薬指にあてがう。
もちろんサイズが違うが、不可思議な力によって指輪俺の指にピッタリのサイズに調整された。
「どんな呪いか知らんが……一刻も早く覇王を討伐すると決めた以上、セーリャの力は必要だ。それくらい、やってやるさ」
「えっ、ちょっ、本気……」
何故か慌てるセーリャを横目に、俺は指輪を付け根まで通した。
『おめでとうございます!あなたとセーリャは婚約しました!』
「…………なにこれ」
「……それは……天空の一族が求婚の際に使う神具の指輪で……お互いのステータス分を自らのステータスに加算するという能力があって……」
「……呪いってのは?」
「………………………………私が妻となります」
………ゔぇっ。
ゔぇっ、なんでそんなもの持って……ゔぇっ。
思い返してみる。ゲームの事を。
セーリャが拐われる前に、主人公とセーリャの結婚イベントがあった。
そのときのセーリャのセリフは……。
『天空の一族が滅ぼされたときに、母上に貰ったんです。いつか必ず、これを渡す相手が現れる、と。この指輪の天辺にある宝石は天翔石と言って、すごく珍しいんだそうです。売れば高いし、誰かに渡せばステータスが跳ね上がるのですが、母上の形見なので装備品袋に入れたままでした。……おかしいですよね、装備品は装備品袋に入れたままじゃ意味がないって話をしたのは私なのに。……でも、もう決めました。私は、この指輪をあなたに渡したい。〇〇さん、どうか私と……婚約、してくれませんか』
あのときの指輪かあああああああ!!!!
「すっ、すまん!それに関しては完ッッッッ全に忘れてた!」
「ばばばばっ、ばばばっ、馬鹿なんですか!?そこは嘘でも幸せにするって言うべきですよ、乙女心がわかってないです!だいたい、もう外せないですからね!それ、ロマンチックではあるけれど効果を考えると呪いの品ですからね!?私なんて婚約したって呪い以外のなんでもな───あっ」
セーリャが動揺のあまり空中に作った足場から足を踏み外す。
それを見た瞬間体が勝手に動き出し、足元のツタを掴んで飛び降りる。
一瞬でセーリャの高度にたどり着くとその腰を引き寄せ、ツタを引っ張った。
「……」
「…………」
ツタにぶら下がりつつも互いに相手の目を見つめて10秒。
短い銀髪とエメラルドグリーンの瞳が美し……はっ。思わず魅了されかけていた。
「あの……そろそろ浮いてくれ」
「あふあっ、ごめんなさい」
足場を作って爪先から降りるセーリャ。
ちゃんと立ったのを見てからツタをよじ登る。
普段ではこんなことできないんだけどな、腕力的に。
樹の当たり判定の上で休んでいると、セーリャが一冊の本を持って上がってきた。
「これ、あなたと一緒に落ちてきて……」
「落ちてきて、って、やっぱり俺は落下してここに来たのか」
「凄いびっくりしました……」
受け取った本は……じいちゃんの攻略本だ。
『まgぢはjhlxvぃっdゔqlvqgくxq』……文字化けしている……ゲームのアイテムにないのだから当然か。
開くと大体の項目は文字化けしているが、この指輪のアイテムだけ文字化けではない日本語で書かれていた。
『天空の指輪 紅・蒼』:天空の一族が求婚の際に使う指輪。天翔石を使っており、結ばれた者同士は固い絆と永遠の愛に目覚める。紅の指輪を妻が、蒼の指輪を夫が持つ。
スキル1 装備した夫婦は互いにステータスが共有される。紅+蒼のステータス、蒼+紅のステータスとなるように。
スキル2 装備した夫婦は互いに親愛度が急上昇する。なお、お互いに心を許しあった状態で婚約した時のみ、このスキルは発動する。
「……なんて書かれているんですか?」
「えっとな。この指輪をつけると、互いに好感度が爆上げされるらしい」
「ああなるほど。それでこんなにもカッコよく見え……いえ、なんでもないです。つまりは、私のこの愛は仮初めということですね」
「互いに心を許しあった状態でのみ発動って書いてあるぞ。そこまで俺に嫌悪感抱いてないんじゃないか?」
「!?」
他にも文字化けしていないページはないかと攻略本をめくっていると、ふいに背中に柔らかい感触が押し付けられた。
この慎ましやかな胸……セーリャだ。
「おいどうした」
「か、勘違いしないでくださいね。これは指輪のスキルのせいなんですから」
「……そういうことにしておく」
背中越しに小刻みに跳ねる心臓の音が聴こえているんだがな。
おまけの攻略本コーナー
キャラクター一覧
【セーリャ】:天空の一族であるテロスターの最後の生き残り。天空の一族の姫であり、幼い頃から天空樹で修行してきた。面倒見も良く、可憐で清楚な美少女だが、欠点は天空樹で修行していたから少々世間知らずな所。物覚えは良いので、教えれば
メインウェポン:いでいbcいwcd
サブウェポン:hゔぃfscおbk
アクセサリー1:天空の指輪 紅
アクセサリー2:無し