バグ多きこの世界で生き残れたら上等だと思う【旧名:昔だからこそ】   作:翠晶 秋

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エンデル平原

 

「テロさん、起きてください。テロさん」

 

気を失っていたようだ。

セーリャが俺を起こそうとしているらしい。

 

ゆっくりと目を開く。

 

「パンツ見えてる」

「!?」

 

体を起こし、頭を振って意識を起こす。

涼やかな風が俺を撫でた。

 

「も、もう!テロさん!セクハラですよ!殴りますよ!」

「へいへい。それよりも」

「……はぁ。そうですね、来たんですよね」

 

ふくれっ面でセーリャが言う。

エンデル平原。

主人公が初めて訪れるフィールドの名前だ。

 

「清々しい気分だったのに急に最悪になりました」

「見せる方が悪いんだろ。んなことよりもだ。まずは王都を目指すぞ」

「覇王を倒すんですよね。勇者候補として立候補するつもりですか?」

 

そう。

まずは王都に向かい、『俺勇者なる!』って立候補する。

すると、王都で一ヶ月分の食事が無料になったりとかギルドに無料で登録できたりなど、様々な特典があるのだ。

無論、試験官と戦ってようやく受けられる制度なので簡単ではないのだが、それまでにモンスターと戦ってスキルレベルを上げておけばいい。

 

この世界にレベルという概念はなく、代わりにスキルレベルという概念がある。

これは、モンスターを倒したり特殊なアイテムを使ったりすると少しずつたまり、スキルツリーにポイントを割り振るとそのスキルが貰えたり……なんてシステムだ。

 

「そうだな。立候補するだけでこの先の生活がだいぶ楽になるから、ここは可能性があるなら立候補するべきだろ。もっとも、覇王を倒しに行くんだから本気の志願だけど」

「ですね」

「なあ、お前はいいのか?覇王だぞ?強いんだぞ?付いてきていいのか?」

「覇王の討滅は天空族の悲願でもありますから」

 

そう言って微笑むセーリャ。

ま、ゲームの世界なんだから、どんな理由を言ってもセーリャは付いてくることになるのかな。

そんな事を考えると、少しセーリャが可哀想になった。

 

「セーリャ、リンゴ食うか?」

「当分の食料になるんですよね?だったら勿体ないですよ」

 

見透かされていた。

当面は食べられるアイテムをドロップするモンスターを探さないと。

ゲームはリスポーンがあったから空腹度死になんて結構してたけど、この世界でそれがあるかわからない。

エンデル平原で食べ物を落とすモンスターって言ったら……。

 

「猪みたいな形で……岩みたいにゴツゴツした牙のやつ……」

「ああいうのですか?」

「ブモ?」

「そうそう、ああいう……おるやんけ」

 

瞬時にナイフを取り出すと、セーリャも杖槍を構えた。

猪は敵対するモブじゃない。攻撃されたときか、プレイヤーが飯を食ってるときにだけ攻撃してくる。

 

「セーリャはこのまま寄っていって。俺は向こうから」

「はい」

「3、2、1でかかるぞ。3、2、1……」

 

二人で猪に獲物を突き刺す。

猪は俺たちを突き飛ばそうともがくが、手首を捻ってナイフをねじ込むと大人しくなった。

猪のHPバーが全て消え、俺たちの獲物は血の滴る肉を二枚ずつ貫いていた。

 

「あぶなっ」

「ナイフはリーチが短いですからね、落とさないよう気をつけてください」

 

ま、そんなことより。

 

「肉ゲット!」

「やりました!」

 

このまま狩りを続ける事になり、もう何体の猪を狩っただろうか。

夜の帳が降りる頃には、沢山の収穫を抱えて平原に生活スペースを作っていた。

 

「『ファイア』」

 

足元の枝が燃える。

薪森から薪を持ってきて日に当てて乾燥させ、、ナイフで太い木を掘り抜いて水筒を作った。……苦労した。

セーリャは果実やら何やらを集めてきてまさに疲労困憊といった様子。箱入り娘のお姫様には酷なことをさせてしまった。

二人の作業が終わった頃にはもう夜になっていて、それじゃもう野宿しよかということになった。

 

「セーリャ、木の枝を」

「はい、どうぞ」

 

肉を一枚、枝に突き刺す。

もちろん枝はナイフで木串のようにカットしてある。

枝に刺した肉に味見して酸味が強かった果実を絞りかける。

雑な料理工程だけど、味がないよりはマシだろ。

同じものをもう一本作って火にかける。

焼き加減は拘らずに無難なミディアム。

 

「できた。猪肉のワイルド焼き」

「美味しそうですね」

「こればっかりは予測だから分からん。猪肉が水分の少ないタイプだったらサバサバしちゃうしな。……ま、食べてみるか」

 

二人でワイルド焼きを手にする。

そんじゃ、お上がりよと。

 

「「頂きます!」」

 

ワイルド焼きを口に入れた瞬間、冷ましてなどいない熱さが口の中で弾ける。

ハフハフと口の中を転がしながら次第に噛み進めていくと、だんだんとプリッとした食感がわかるようになっていき、控えめな酸っぱさが唾液を増量させた。

要するに、メチャクチャ美味い。

脂身の少ない肉は肉そのものの味をこれでもかというほど主張し、焼いたままだとしつこく感じるであろう味の濃い肉汁を、果実の酸味が程よくまとめている。

 

「こっれ、うんま……」

「おいひいです……」

 

互いにワイルド焼きを頬張りながら胃を満たしていく。

喉越しもいい。味付けもいい。

ゲームの世界の料理だから少し不安だったが……どうやら大成功みたいだ。

 

「猪肉は臭みが強いと聞きましたが……そんなことはない見たいですね」

「多分ここだけじゃないか?餌が豊富だったとか、環境の問題とか?」

「その線もありますね……とにかく、これは美味しいです。あむ、んむんむ……」

 

ワイルド焼きにかぶりつき、口の周りを汚しながら食べるお姫様。

 

「……?どうひたんへふか?」

「いや、料理は人を変えるな、と」

「どういう意味ですかそれ……」

 

料理人の料理を食べたらまた反応が変わるのだろうか。

だって俺、料理なんてほとんどしたことないもん。母さんの手伝いくらいしかしてないし。

ガツガツとワイルド焼きを食べ進め、肉一枚が消えるのは遅くなかった。

 

「「ご馳走さまでした!」」

 

ぺろりと綺麗に。ワイルド焼き、完食。

 

「いやー美味かった……バグってんなあ、食材」

「ばぐって……どこの言葉ですか、それ?」

「あー……意味は『メチャクチャ』とか、『不具合』って意味だな。今回の使い方だと、『不具合が起きてるんじゃないかってほど美味い』って意味……かな」

「なるほど……」

「あっ、とは言えど、俺の出身地の言葉だから使っても理解されないと思うぞ?うん」

「そうですか……ではお腹も膨れましたし、眠りますか。明日も早いですし」

 

そういうとセーリャは横になり、五分も立たないうちにすやすやと寝息を立ててしまった。

ベッドとか無くて良いのかと思ったが、あの空島は葉っぱのベッドがあった。半サバイバル状態だ。

強かなお姫様だなー……。

 

「まぁいいや。今のうちに図鑑を調べましょっか」

 

焚き火の前に座り、メニューを開く。

 

 

 

メニュー

アイテム ずかん◀︎

そうび 地図

はなす ???

 

 

 

図鑑を選ぶと、左手に図鑑現る。

図鑑は後で調べるから置いといて……。

 

 

 

メニュー

アイテム◀︎ずかん

そうび 地図

はなす ???

 

 

 

アイテム。どれくらいあるかな……。

 

 

 

アイテム

バブルゼリー×2

薬草×3

リンゴ×10

 

 

 

よしよし、順調だな。あとは今集めてきた果実やらを放り込んで……。

 

とりあえずとしては……無限増殖、始めてみますか!!

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