バグ多きこの世界で生き残れたら上等だと思う【旧名:昔だからこそ】 作:翠晶 秋
「すやあ……すやあ……」
ぱちぱちと弾ける焚き火の前で、メニューからアイテム欄を開く。
「確か、アイテムを使うんだよね」
手順はこう。
アイテムメニューを開く→増殖したいアイテムを『アイテム整理』で欄の一番下に持ってくる→適当なアイテムを使う→使う瞬間にメニューを閉じる。
原理は知らんけど一番下のアイテムが増えるんだと。
今回は肉を増やしたいから……。
「使うアイテムは……バブルゼリーかな」
バブルゼリーって一応食べられるんですよね。
もっぱら、味は悪いらしいし空腹も満たされないのでプレイヤーには不人気だけども。
「そんじゃま」
メニューを開き、肉を一番下の欄へ。
バブルゼリーを手元に、そして口の前に持っていく。
タイミングが重要だ。
食べる!と、同時にメニューを閉じる!!
「もぐもぐごくん。さてどうか」
この方法はメニューのアイテムが『減る』タイミングでメニューを消すことにより、数値をバグらせて増やすとかなんとか。
もう一度メニューを開くときにリセット状態だったアイテムが2倍の数に……だった気がする。
メニューを開く。
アイテム
バブルゼリー×1
薬草×3
リンゴ×10
肉×4
【調味料】×18
【調味料】ってのは果実のことかな。
そんなことより、肉がちゃんと増えている。
成功だ。
この調子で、どんどん増やそう。
「むにゅ……ふぁ……」
「っ……寝てる?寝てるよな?」
……一瞬起こしてしまったかとびっくりしたが、杞憂で良かった。
セーリャのサラサラの髪を弄ってみる。
……もしも覇王を倒したら、俺はどうなるのだろう。
ゲームクリア。
元の世界に帰れるのか、そのまま暮らせるのか。
ゲームでの結末は……わからない。クリアしたことがないから。
でも多分、この時代のゲームにクリア後の要素は無いと思う。
だからこそ、エンドを見るんだ。とりあえずは覇王を倒す。それを目標にしよう。
「あとは図鑑を調べないとな」
横に置いておいた図鑑を手に取る。
見た目はまんま攻略本だ。
タイトルはやっぱり文字化けしてて読めないけど。
パラパラと開いていく。
この前は指輪だけ読めたんだっけか。
「……ん?読めるところが増えてる?」
薬草とリンゴと……。
キャラクター図鑑はまだ未開放。
モンスター図鑑は……バブル、アルラウネ、イノシシ。
ははぁん。
つまりこれは、手にした事のあるアイテムや倒した事のあるモンスターだけ文字化けしなくなるんだな。
ってことは、装備図鑑は……。
やっぱり、ナイフと自然のポンチョだけ文字化けが治ってる。
厄介なシステムだなぁ……。
【小さなナイフ】:ショボいナイフ。1家庭に一本はあるだろう、やっすいナイフ。クラフトアイテム。
そういえばあったな、クラフト機能。
◇
「んにゅ……」
「お、起きたか」
「おふぁようございます……」
セーリャがくあ、とあくびを漏らす。
「朝ごはんできてるぞ」
「はい。……そういえば、朝からお肉なんですよね……」
「そういうと思ったからな、これをくれてやろう」
そうして、今作っていたのを手渡す。
「……なんですかこれ?」
「ステーキサンドだ」
「……そうですかぁ。ステーキサン……ステーキサンド!?」
そう。セーリャが持っているのはまごう事なきパンである。
ステーキサンドを手にワナワナと震えるセーリャ。ドッキリ大成功だ。
「どどっ、どどど、どうしたんですかコレ!?」
「見張りをやっているとき気づいたんだ。アイツは肉食だけどイノシシがいるってことは、近くに主食となる麦があるような場所があるんじゃないかって」
調べたらビンゴ。
麦が自生してる場所があったのだ。
数は少ないけど関係ない。こっちには無限増殖があるしな。
で、小麦増やすじゃん?
ナイフ使ってクラフトするじゃん?
そしたらパンの出来上がりよ。
「わあ……」
「パンなんて作ったことないから粗造りだけど」
「いやでも、凄いですよ……あれ?なんたら菌が必要なんじゃありませんでしたっけ?」
それは知らん。
ナイフのクラフト機能でパンが出来るだけだし、イースト菌とか俺は知らん。
「まぁまぁそんなことより、だ。いただこうじゃないか」
「……そうですね。せっかくの朝食です」
さぁ、朝ごはんだ!
なお、食事は次回の模様。