バグ多きこの世界で生き残れたら上等だと思う【旧名:昔だからこそ】 作:翠晶 秋
召喚スキルによる戦力や兵力の強化はとっても便利。
ドラゴン種と戦うときに、良くワイバーンに乗って戦ったものだ。
……召喚スキルには『なつき度』という概念がある。
これは何回か召喚していると溜まっていくステータスで、こいつが1とMAXとでは全然違う。
召喚した生物は初めからある程度の命令を聞いてくれるのだが、『なつき度』が上がるとなにも言わなくてもこっちのやりたいことを汲んでくれたりする。
結論:めっちゃ便利。
でもこの世界では初めて呼んだし、ゲーム時代であれだけ上げたなつき度はおじゃんかぁ……。
まぁくよくよしたってしょうがねぇ!最速の移動手段であることに変わりはないんだ。
「よし、乗るぞー……ってなにしてんだ」
「あの、さっきの、召喚ミスの……」
「あぁ、サキュバス?」
サキュバスは財政や暗殺に向いている。
……基本サキュバスには性別がない。なんでかって?
女の姿をしているときはサキュバス。男の姿をしているときはインキュバス。
女にも男にもなれるから、正確な性別というものはないのだ。
「あの、テロさんは、ああいうのが好みなんですか……?」
指をいじいじしながら上目遣いで聴いてくる。
……?あぁなるほど。
「この淫乱ロリめが」
「淫乱!?淫乱って言いましたか!?テロさんだけには言われたくないです!」
「なっ、俺のどこが淫乱なんだよ!」
「初手セクハラ!」
「あれは不可抗力だろうが!!」
「ぐおおおおお!グオオ!!」
「「…………ッ」」
あ、ごめんねワイバーン。待たせてたね、うん。
「移動しながら話すか」
「……はい」
ワイバーンに飛び乗り、手を差し出す。
セーリャはちょっと顔を赤くしながら俺の手を掴み、その小さな体でワイバーンに飛び乗った。
俺の前に座ってるからすっぽりと収まる感じだ。非常にコンパクト。
「なんか失礼なこと考えてませんか」
「なんも?」
「はぁ……。まぁいいです。で、なんで私が淫乱ロリなんですか。ロリはまぁよしとしましょう。自分でも容姿が幼いとは思ってますし」
かかとでワイバーンの脇腹をとんと軽く叩くと、ワイバーンはゆっくりと飛翔し始めた。
「え?サキュバスと同じ格好がしたいとかそんなもんだろ?」
「違いますっ!!なんであんな格好しなくちゃいけないんですか恥ずかしい!!」
「じゃあなんなんだよ。インキュバスになってもらって奉仕でもしてもらう魂胆か?」
「そんな浮気みたいなことしません。信じてください。……こほん。あの、ですね。その、サキュバスの、胸回りが……」
あぁー……。
たしかにセーリャと比べると山と平原の差だ。
「あの……おっきいほうが、好きですか?」
「そりゃあ男のロマンだしなぁ」
……………。
「そこは嘘でも『小さくても構わない』というところでは?」
「俺がそんな気の利いたこと言えるわけないだろう阿保めが」
「いばるとこじゃないです!もう……」
ワイバーンの上から辺りを見渡す。
ふむ、風が心地よい。
人の全力疾走よりも、馬よりも速く。
それでいて高くて、景色がいい。
「ふぅ……これだからワイバーンライダーはやめらんねぇ」
「ワイバーンライダー?」
「一部ではそう呼ばれてるやつもいたそうだ。……久しぶりにあれやるかなぁ……今のなつき度でできるかなぁ……」
ワイバーンに乗ったとき、その自由度の高さに誰もが一度はやったであろう操作。
右スティックを上に向かしつつ、左スティックを下に向かす。
そうつまりは。
「シャトルループッ!!」
「ひぎゃあああああ!?」
「ひゃっほぉぉぉぉう!!!!」
ぐるんと空中一回転。なつき度が少し上がりました。
「気持ちいいー!!」
「冗談じゃありません!冗談じゃありません!冗談じゃ……「それもう一回」みゃああああああ!?」
やっぱりワイバーンって最高だな!
速いし、高いし、かっこいいいし、強いし!
「ワイバーン!お前最高だ!」
「グォォォォォォォォ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ……あの、次からは、事前に言ってくださ「じゃあやりまーす!!」ちょっ待っ心の準備があああああああああ!!」
王都を目指しながらのんびりと遊覧飛行をする。
風に上着がはためき、肺一杯に新鮮な空気が流れ込む。
「う、恨みますよ!?殴りますよ!?」
「わりぃ、わりぃ。……でも、気持ちいいだろ?」
「正直気が気でなりませんが……いつ落ちるのかと」
「空島に住んでて何をいうか」
「……たしかに」
納得した。勝利。
この地平線のずっと奥に、王様がいて、勇者候補がいて、それで覇王がいるんだ。
まだまだ物語はつづいている。
俺たちの冒険は、まだ始まったばかりだ!!
なんちゃって。
「それで、王都に行ったらまずは何を?」
「観光」
「そういうことではなく……宿屋とか、金策とか、色々あるでしょう」
「観光」
「え、観光……え?」
「観光だ。まずは観光」
俺が何よりも観光を望む訳はもちろんある。
何が悲しくてたかだか観光のために重い荷物を持たねばならんのだ。
まぁ重いと言える荷物なんて無いけども。アイテムは収納できるし。
「……わかりました。観光ですね?何を見るんですか」
「それはついてからのお楽しみ。だがまぁ覚悟はしておけ」
「覚悟!?なんですか、なんなんですか!?」
ふふふのふ。
ついてからのお楽しみと言ったろうに、愚者が。