「んごっ――朝か……」
ゆっくりと起き上がり、んぎぎぎ……っと、背筋を伸ばす。
バキボキバキッ!!とかいう凄い音が鳴った――疲れが抜けないのかねぇ……。
「……飯、の前に顔を洗うか」
さてはて、今日も面白可笑しい平穏な日常を過ごせます様に……とか、考えるのはフラグかしらん?
***********
「よし、今日も男前だぜ!!」
顔を洗い、バンダナを結んで気合い一発!!
ちなみに、バンダナは眉毛まで隠す――布地を広く使う巻き方を採用している。
――ろくブルのマーシーとか、カッケェよね。
尚、俺のルックスや顔は藍跳の肌を標準的日本人にした様な風体なので、結構な男前である――髪型も藍跳本人に近い……若干、俺の方が髪は長いな。
勿論、歯を磨くのも忘れない――歯を磨くのは飯を食う前と後、どっちが良いのだろうか?
俺は起きてから磨く派だがね。
「さってと――本日のメニューは……と」
制服に着替えた俺は、早速調理に取り掛かる。
飯は限界一杯まで炊くとして、オカズだな――。
***********
「よし、出来た!」
○本日のメニュー
・白飯〜圧力釜一杯
・鮭の塩焼き
・納豆卵ネギ〜小丼一杯分
・焼き海苔
・なめこの味噌汁
・白菜の漬け物
「うん、我ながらどれも美味そうだ」
比較的オーソドックスなレパートリーながら、その匂いは日本人なら胃袋を直撃すること請け合いだ。
俺は丼に飯をおてんこ盛りによそって、味噌汁を汁椀に注ぐ。
「では――いただきます」
まず、白飯をそのまま一口――うん、美味い。
炊きたての飯の香り、米自体のほんのりとした甘みが口の中に広がって、ふっくらとした食感が実に素晴らしく、今日という日が等しく素晴らしいモノになるのだと思わせてくれる。
味噌汁を一口啜る……うん、うん――。
やっぱりなめこの味噌汁だよな……このヌメッとした食感と、なめこ特有の香りが病み付きなんだ。
アクセントに加えた豆腐も、良い味してるよ。
味噌汁自体も、濃すぎず薄すぎず――実に良い塩梅だ。
「さて、まずは……」
鮭の塩焼きを戴こう――身を解して……パク!
う〜ん、塩加減が丁度良い!!
これは飯が進む進むっ!!
っと、皮を忘れちゃいかんね。
焼き方が中途半端だと、皮の脂身が生臭くて駄目だって人も居るが、皮はパリパリになるくらいに焼くと最高のオカズになる。
あまりやり過ぎると身が焦げるから、匙加減が難しいね。
いっそのこと、皮は別で焼いた方が楽かも。
軽く醤油を掛けた皮をパクっと――!!
うん、良いね――ご飯と鮭の風味に醤油が合わさって最強に見える……というか正に最強。
メシウマメシウマ!!――あっ、飯が無くなった……よそい直してっと。
此処で箸休めの白菜漬け――浅漬け派と深漬け派と居るかも知れないが、飯のオカズにするなら断然深漬けだと俺は思っている。
酸っぱさを感じるくらいに漬かった白菜に醤油を掛けて――それを一口。
くぅ〜、美味しっ!!
これもご飯が進む!!この酸味が、食欲をこれでもかと刺激してくれるんだよなぁ……。
白い部分もはんなりしてて美味いけど、俺のお勧めはなんと言っても緑の葉っぱの部分!!
コレをこう……ご飯に巻いてですね――それをパクりっ!!
ご飯の温かさ、ふうわりした甘み、香り、白菜の漬け物の酸味に醤油の風味が加わって――あぁっ、日本人に生まれて良かったぁー!!
……あっ、ご飯と味噌汁が無くなった。
安定のおかわりである。
さて、続いて登場せしめたのは海苔にござい。
コレは聞いて驚け、何と浅草海苔様にあらせられまするぞ!!
実はコレ、学園都市の実験養殖の成果という触れ込みの、学園都市限定の商品である。
大抵、こういう怪しい学園都市限定品に触れるつもりの無い俺でも、浅草海苔のネームバリューに釣られて、普通の海苔の10倍近い値段を惜し気もなく払ったが―――ハッキリ言おう、後悔はしていないっ!!!
その海苔を丁寧に、パリパリに炙った物をご飯に巻く――醤油をちょこっと付けるのも忘れない。
それをパックんと―――天上楽土たぁ、このことよ……!!
今まで食ってた海苔とは何だったのか……そう思わせる程に海苔の香りが強い!
そこに醤油が加わることで、海苔の香りをより際立たせる!!
確か、某寿司漫画でウニの軍艦巻きに最高の海苔を使った話があったけど――結局、海苔の香りとウニの香りが喧嘩して一発アウトだったんだよな。
コレだけ強い海苔の香りなら、納得だわ。
そして、空になった丼に飯をよそいつつ――どん尻に控えましたるは、納豆と卵とネギを合わせた――スーパーウルトラコラボレーション作品!!
今回、飯は山盛りにはよそわない――納豆卵ネギが溢れちゃうからね。
作り方は至って簡単。
まず納豆をよく混ぜて粘り気を出して、そこに卵を入れてまた混ぜて――最後に刻んだネギを投入して混ぜて――仕上げに醤油を適量入れて混ぜて完成!!
それをね、丼飯にね、ドッボドッボ掛けちゃうんだぜ?
さて、それじゃあメインディッシュを――いただきますっ!!
間髪入れず一気にかっ込む!!かっ込む!!
――そして咀嚼して、飲み込む。
これこれ、これですよ……。
や、やばい……正に幸せの大洪水や〜♪
どこぞの新聞記者が『納豆に混ぜ物したら納豆の味が濁るから、納豆はそのまま食うべき』みたいなことを言っていたが――ケケーッ!!そんなモノは混ぜた時の美味さを知らん奴の方便じゃいっ!!
確かに、納豆だけを純粋に楽しみたいなら納豆だけが良いだろう――俺だって、納豆だけで飯を食いたい時はあるし、卵だけで飯を食いたい時もある。
だがしかし!!この二つを合わせることで、決して一つでは味わえない満足感が得られるのだぁ!!
卵は食材の味を円やかにする――言い方を変えれば味が濁るということになるのだろうが……そこをキリッと引き締めるのがネギだ。
卵の円やかな味と風味、納豆の独特な香り、ネギの苦味とも言える風味――そこに醤油が加わって渾然一体となって……正に至福の一時……っ!!
しかし、日本人には醤油は欠かせないね、うん。
今日の料理も中々美味く作れたが、もし醤油無しで今日のメニューを作れと言われても絶対に無理だし。
「――うん、御馳走様でしたっ!!!」
キッチリ、飯も味噌汁も空にした俺は、今日も美味い飯に感謝した。
満腹感にはまだ遠いが……まぁ、腹八分目くらいが丁度良いらしいしな!
「さて、準備準備……」
後片付けをしてから、俺は我が学舎へと向かうことにした。
準備は既に万端、時間は――許容範囲内。
「よっしゃ!そんじゃまぁ、いってきまーすっと」
靴を履いて、玄関を出ていざ出ぱ「おっ?忍足 空悟じゃないか、おはよー」って……ガーンだな。出鼻を挫かれた……。
「……おはよう土御門妹。兄貴はもう出勤したのかね?」
「おいおい、私には土御門 舞夏って立派な名前があるんだぞー。ちゃんと名前で呼べよー」
この微妙に間の抜けたというか、惚けた喋り方をするメイド服の少女は土御門 舞夏(つちみかど まいか)。
御察しの通り、土御門 元春の妹だ。
もっとも、義理の――と、頭に付くけどな。
ちなみに、義理の妹云々は所謂原作知識であって、周囲には普通の兄妹として認識されている。
確か……土御門が学園都市での動向を怪しまれない様にするための妹役――だったか。
「分かったよツッチー妹」
「それ、全然分かってないだろー……まぁ、良いかー。忍足 空悟だしなー」
「……お前の中で、俺ってばどういう認識なワケ?」
学園都市名物、清掃ロボットに乗っているこの妹ちゃんは、クルクルクルクル回りながら失礼なことを宣いやがりました。
「で、我が愛しの愚兄ならとっくに学校に行ったぞー?」
「……お前って、兄貴に対してそんなに毒舌だったっけ?ケンカでもしたんか?」
少なくとも、端から見たら仲の良い兄妹を地で行く――時折、仲の良い兄妹以上の雰囲気を醸し出していたのだが。
「聞いてくれるかー?あの愚兄は、こともあろうに私に堕天使メイドセットなる、紛い物のコスプレを――懲りずにさせようとしたんだぞー?」
「オッケー、大体分かった」
この土御門 舞夏、メイドの養成学校に通っておりプロのメイドを目指して日夜学んでいる。
プロのメイドであろうという意志、或いはその目指す目標に対して誇りを抱いている。
それゆえ、俗に言うメイド喫茶などのコスプレメイドの存在が許せないらしい――。
ツッチーの奴は当然、そのことを知っている。
……にも拘らず、アイツはことあるごとに妹にコスプレを嘆願し――制裁を受けているらしい。
「懲りないねぇ、アイツも……」
「全くだ。罰として弁当抜きの刑にしてやったけどねー」
「それは、何とも恐ろしい……」
育ち盛りの男子にとって、その罰は厳しすぎる……特にツッチーは舞夏を妹の枠を越えて溺愛している――そんな妹の手料理をお預けとか……奴のテンションが駄々下がりしているのは確定的に明らかだな。
「まぁ、程々にしてやれよ。アイツもお前のコスプレだから見たいんだろうし――」
って、なんで俺がリア充のフォローをしなきゃならないんですかねぇ……。
「ぬぅ……けどメイドを志す身としてはなぁ……」
「だったら、メイドとか考えないで只のコスプレだって考えれば良いじゃん」
「いや、普通のコスプレなら幾らでもしたっていいんだよ……ただ、あのメイド服はなぁー」
なんか、本格的に面倒臭くなってきた……つーか、何で俺が土御門のフォローをせにゃいかんのだ――リア充爆発しろ!
「まぁ、良いや。んじゃ、俺も学校に行くから」
「ん?おー、気を付けてなー」
「その台詞は、上条さんに言ってやれ。まだ起きて来てないだろ、アイツ」
「おぉ、そう言えば上条 当麻は見てないなー」
大方、俺の忠告通り目覚まし時計はセットしたけど、電池切れで止まってるとか……そう言うオチだろう、きっと。
……いや、あの上条さんのことだから俺の予想の斜め上を行く不幸現象に見舞われている可能性が――。
まぁ、起こしに行っても良いんだが……前に起こしてやったら『美人の管理人さんに起こされるという俺の夢を、よくも壊してくれたなぁッ!!』と、半分寝惚け気味にキレられたので――目覚まし(物理)をくれてやったのは清々しい思い出の一ページであろう。
そんなワケで、俺はカミヤンは放置することにしている。
――まぁ、ギリギリで遅刻して小萌先生の補習地獄に苛まれると良いさッ!!
でーひゃひゃひゃっ!!!
……まぁ、可哀想だし一応声くらいは掛けてやるか――。
***********
「オイスー」
「おう、オシヤン。おはようさん」
教室に入った俺を最初に出迎えたのは、今日も変わらぬ糸目の持ち主――青髪ピアスその人であった。
「オッス青ピ……で、そこで負のオーラを撒き散らしてる物体はなんだ?」
「ナニって、ツッチーに決まっとるやん――いや、僕も最初に見た時は何事かと思ったんやけどね」
俺は青ピの居る、負のオーラの集約点――自分の席に突っ伏して、この世の終わりを身体で表現している土御門を指し示した。
案の定この男、絶望モードまっしぐらであった。
仮に魔法少女だったら、即魔女化しそうな雰囲気だな。
「何でも、妹になんちゃってメイドコスさせようとして逆鱗に触れたらしいぞ?」
「妹って、舞夏ちゃん?そらあかんわ土御門く〜ん。気持ちは痛ぁ〜いくらいに分かるけど、舞夏ちゃん本気で嫌がってるって理解してるやろうに……」
普段は飄々としている土御門が、こうして暗黒オーラを撒き散らすのを見るのは、何もコレが初めてでは無い。
俺も青ピも、カミヤンや他のクラスメイトだって幾度となく見てきた。
しかもその理由が全部、妹に堕天使メイドコスをさせようとして失敗したせいとあっては――クラスメイト全員、呆れて声も掛けないのは当然と言えよう。
「いい加減諦めたらどうだ?普通のコスプレならしても良いって言っていたぞ?」
「……いや、俺は諦めない……舞夏に、堕天使メイドセットを着てもらうまでは……絶対に、諦めないぜぃ……!!例え、兵糧責めにされようと……必ず……ッ!!」
「……その妹魂魂『シスコンスピリッツ』は、僕も見習わないといかんね……流石やでツッチー!!」
「見習うなよこんなモンを……」
とりあえず土御門には『諦めろ、試合終了だ』という某安○先生のAAコピペをプレゼントしたい。
そんな風に相も変わらずの馬鹿な会話をしていると……。
「相変わらず、馬鹿な会話をしてるのね」
「一緒にすんなし。おはようさん吹寄」
心の声を読まれたのかと、一瞬本気で思う程の適格なツッコミを下さった女子生徒――皆さんお馴染み、吹寄 制理(ふきよせ せいり)さんその人である。
「おはよう忍足。で、一体何の話なの?」
「知らずにツッコミ入れてたのかよ!」
「どうせ四馬鹿の内、三人が揃っていれば馬鹿な会話にしかならないでしょう?」
「だから一緒にすんなし。確かにこの上なく馬鹿話だが」
俺は甚だ不本意であると隠しもせず、馬鹿話であることは認めた。
そもそも、コレは土御門が懲りれば丸く円満に収まる話なのだ。
人の業、人の性のなんとも悲しいことよ――それこそ、生まれ変わりでもしなければ懲りないのかも知れないな――。
つまり、とっとと爆発しやがれっと。
「で?もう一人の馬鹿は何やってるのかしら?もうすぐホームルームが始まるんだけど?」
「一応、声は掛けたんだがねぇ……へんじがない、ただのしかばねのようだ――だったので」
「?何よそれ?」
「ん〜、要するにオシヤンはカミヤンに声は掛けたけど、返事が無かったから放置してきた言うことやね」
「ドラ○エとか懐かしいですにゃー。まぁ、このままいけばカミヤンは王様に死んだことを嘆かれるが如く、小萌先生に怒られるのは火を見るより明らかですたい」
「……要領を得ないけど、上条は遅刻ってことで良いのね?」
「まぁ、その可能性が高いってこと」
俺のジョークを理解出来なかった吹寄に、内容を噛み砕いて説明する青ピに、俺のジョークに乗っかってくる回復したツッチー。
――あの、吹寄さん?その類は友を呼ぶ的な目で俺を見るのは止めて戴けませんでしょうか?
「……にしても、類は友を呼ぶって本当ね」
「……吹寄って、読心(リーディング)能力者だっけ?」
「そんな能力が無くても 、端から見たら同類にしか見えないのよ貴様らは」
ぐぬぬ……この女、言いたい放題抜かしおってからに――。
……よーし、そっちがその気なら。
皆さんご存じだろうが、吹寄は慢性的な肩凝りの持ち主である――それは何故か?
この吹寄さん、美少女な上にスタイルが大変よろしい――ぶっちゃけ、胸がデカイのだ。
このデカさは並では無い――擬音にしたら『どたぷーん』と鳴るのは確定的に明らか。
それでいて全体的にスタイルが素晴らしく、決してお下品にならない。
詳しくスリーサイズを述べるなら、目測で上から――。
「ふんっ!!」
「ぬぉ!!?」
前触れも無く容赦の欠片もない拳が襲い掛かって来たので、咄嗟にスウェーで避ける。
追撃の気配があったので、直感に従いバックステッポゥ!!
「おいィ!?なにいきなり殴り掛かって来てるわけぇ!!?」
「今、不穏なことを考えてる気配がしたから」
「お前、絶対エスパーだろぉ!?」
というか、ニュータイプか!?
つーか、気配がしただけで殴り掛かって来るんじゃねぇ!!
仮にも忍空使いの俺が、冷や汗かく程のパンチとか――おっそろしいわッ!!!
「つまり、やっぱり不穏なことを考えていたと――」
「不穏ちゃうわっ!!あまりに吹寄がしつこく三馬鹿の同類扱いしやがるから、意趣返しにその大層なお胸様を鑑賞―――あ」
「死ねぇっ!!!」
「くっ、死ぬものかッ!!!」
こうして、ホームルームが始まるまで、俺と吹寄によるバトルが勃発したのであった――俺は逃げるだけだったが。
……逃げるだけで精一杯だったとも言う。
俺ってば忍空使いなんだぞ?何で吹寄相手に苦戦してるわけ?
何か目に見えない補正でも働いているんじゃないだろうな!?
「おお、避ける避ける。俺らなら容赦なく喰らってるぜぃ」
「流石はオシヤン、ギャグ補正でもお構い無しってわけやね――まぁ、逆に笑える状態なんやけども」
「くっそぉ!!ギャグ補正ぬぁんか、どぅわい嫌いだあああぁぁぁぁっ!!?」
「えぇい、ちょこまか避けるなぁ!!」
「嫌じゃぁ!!当たったら痛いやんけぇっ!!」
「……せやけど、オシヤンの似非関西弁はなんとかならんもんかな?」
「……それ、青髪ピアスさんが言っちゃいますかにゃー?」
外野が何やら五月蝿いが、俺は吹寄のショットガン並のラッシュを避けることに必死なので、突っ込んでる余裕がねぇ……!!
くっそぉ!!当たりはせん、当たりはせんぞぉ!!!
――その後、俺と吹寄の攻防は小萌先生が来るまで続けられた……俺は何とか生き残れたことを神様に感謝した――ありがとう神様、俺に忍空の才能をくれて……本当にね、鍛えていて良かったですハイ……。
――ちなみに、カミヤンは遅刻ギリギリに登校することが出来て、小萌先生のお叱りは免れることが出来た……が。
「上条 当麻!!貴様弛んでるんじゃないの!?」
「いやそれがですね、起きたらセットした筈の目覚まし時計が動いてなくてですね?」
「忍足が起こしに行ったって聞いたけど?」
「いやそれで飛び起きたのは良いんだけど、携帯は踏み潰して壊すわ、そのままスッ転んで頭を強打するわ、忍足さんに貰った漬け物をぶちまけるわ……上条さんの不幸は鰻登りですのことよ?」
「結局、貴様の注意力が散漫なだけでしょうが!!何でもかんでも不幸のせいにするなっ!!大体、上条はね……っ!!」
「ふ、不幸だ……」
委員長気質な吹寄に捕まり、延々説教されてましたとさ。
まぁ、吹寄の標的が俺からカミヤンに変わったから、その辺は感謝しよう――カミヤンは犠牲になったのだ。
……しかし。
「俺の端正込めて作った漬け物ちゃんをぶちまけるとはな……漬け物は我が子同然という格言を知らん様だな……」
「それって、糠漬けの糠の話じゃなかったかにゃー?」
「どちらにせよ、カミヤンの不幸が更に鰻登りになるのは確実やね……」
大体、吹寄は上条さんのタラシ菌『カミジョー属性』に唯一感染しない『カミジョー属性絶対防御の女』とか言われているが……アニメや原作を知ってる俺には分かるっ!!
その絶対防御も、ちょっとした可能性でコロリとイッちまうモノだと。
そも、吹寄は不幸を理由に全力を尽くさないのが嫌いなのであって、もしカミヤンが実は全力を尽くす様な男だと知ったら――後は分かるだろう?
ついでに、クラスメイトの女子や他クラスの女子もかなりの確率でカミジョー属性に感染していたりする……当の上条さんに自覚はコレっぽっちも無いが。
「その辺も含めて……思い知らせてくれようぞ上条 当麻……!漬け物の恨みは重いのだッッ!!」
そう、コレは漬け物の恨みなのだ……決して、リア充爆発しろとか思ってない。
カミヤンクラスならそれでは足らんのだ……むしろ爆発させなければならない――この俺が、爆発させてやろうぞ!!!
***********
「あっ!!という間に放課後なワケだが」
「誰に言ってるんだ忍足?」
「気にするなカミヤン」
まぁ、吹寄の説教が終わった後、上条さんに漬け物のありがた〜い話をして差し上げた以外は、何事もなく授業も終わり――今日は昼に終了ということで、帰りのホームルームを済ませた後、いつもの腐れ縁四人が揃って教室で駄弁ってるワケですが。
「どうする?腹も減ったし、ファミレスでも行くか?」
「俺もオシヤンに賛成するぜぃ。……家に帰っても、マイシスターの手料理は期待出来そうにないしにゃー……」
「僕も今日はバイト無いしええよ――けど、そうなるとオシヤンが入れる店ってネックがあるなぁ」
「まぁ、そうなるといつものファミレスじゃないか?忍足は美味い不味いってうるさいから……」
「どうせ食うなら美味い飯の方が良いだろうが――まぁ、上条さんの言う通り、いつものファミレスが無難かね」
この学園都市は学生をターゲットにした商売をしているだけあって、色々な飲食店が存在する。
中には30分以内にメニューを完食すれば金一封――的な、大食い早食いメニューを扱う店舗も存在する――。
しかし、そういった店は大抵荒らし回っ……食べ歩いてしまったので、不本意ながらそれらの店には『忍足禁止』の御触れが出回っているらしい。
大食い店じゃない店でも、『何故か』俺が行った店の半数以上に『忍足禁止令』が広まってしまったという理不尽ぶりである……。
その上、全部が美味い店では無いので行ける店も限られてくる。
その点、いつものファミレスは俺が行っても入店出来るし、値段の割にはそこそこ美味い。
「あっ、そう言えば――最近食い放題の焼肉屋が新しく出来たとか――」
「ほほう?土御門君、その話を是非詳しく教えてもらおうか?」
「おいおいオシヤン。生きた情報ってのはそれそのものに付加価値がつくものなんだぜぃ?」
「こんにゃろう……足下を見やがってからに――オッケー、分かった。お前ら纏めて、その食い放題を奢っちゃるわい!!」
「よっしゃ、交渉成立ですたい!!」
「よっ!オシヤン、男前!!」
「流石は忍足さん!!そこに痺れる憧れるぅっ!!――って、本当に良いのか?正直、俺は助かるけど――」
土御門の情報を即行で『買った』俺の判断に狂喜乱舞する三馬鹿。
そんな三馬鹿の中でも比較的良心な上条さんが、俺の懐事情を心配してくれる……昨日買い出ししたばかりだって知ってるからな。
「問題ねぇよ。仮にも大能力者だぞ?それなり以上の奨学金は貰ってんよ。それに食い放題ならそんなに掛からねぇだろ?――とは言え、俺プラス野郎三人だから、少〜しサイフ事情に不安が残りますがねぇ……だもんで、まず銀行に寄りたいんだが――」
自分の食費で大能力者の余裕なんざ何処吹く風だが……それでも節約出来る所は節約して、貯金も結構していたりする。
ぶっちゃけ、男四人が食い放題に行ったって余裕なくらいには。
「俺は構わないぜぃ。時間はたっぷりあるんだしにゃー」
「僕も構へんよ。いやぁ、カミヤン程やないけど……僕も生活費キツキツやったから、正直助かるわ〜」
「俺も勿論良いぞ!……良かった、これで一食分浮く……いや、今日の分を食い溜めすることだって――!!……神様はこの哀れな子羊を見捨てていなかったんですね……最近、上条さんの不幸もストップ高の傾向ですよ!!おありがとうございますッッ!!!」
色々ツッコミたいが……とりあえずカミヤンよ、ストップ高は駄目なんじゃないのか……?
それにさっき、吹寄に不幸が鰻登りとか言っていた様な……?
「よう、空悟!何か面白そうな話をしてるじゃん?」
んで、早速行こうぜーと、教室を出ようとしたら廊下から楽しそうな声で誰かが俺に呼び掛けてきた。
――俺を空悟と名指しで呼ぶ人など、この学園都市では一人しか居ない。
「――黄泉川先生、チーッス」
長い黒髪を後ろで纏め、ジャージ姿なのにそのスタイルの良さは些かの陰りも見せない。
皆さんご存じ、教師兼警備員(アンチスキル)の黄泉川 愛穂(よみかわ あいほ)先生でござる。
「おいおい、私と空悟の仲じゃんよー。もっと気楽に愛穂さんで良いじゃん――もしくは愛穂先生」
「――誤解されるような発言はしないでもらえますかねぇ……」
さて、何故に黄泉川先生こと愛穂さんがこんなに親しげなのか?
それは、俺がカミジョー属性が霞む程の……年上キラーだからッ!!
――ではなく。
学園都市に住む親父の知り合いの教師とは何を隠そう、愛穂さんのことだったのである。
何でも、親父は愛穂さんにとって恩師みたいなものらしく、かつて色々世話になっていたらしい。
――俺の知る限り、親父は普通のサラリーマンだと思ったのだが――教師でもしていたのか、それとも何か裏事情でもあったのか。
SASで教官をしていた的な……それ、何処のマスターなキートンさんだっつー話だな。
つか、俺が小学校か中学校かの時に何度か顔を合わせていたらしい――正直、言われるまで忘れていたが。
当時から、俺は忍空の修行に夢中だったので、『綺麗なおにゃの子ずらな〜』くらいにしか思わんかったと思う。
「誤解も何も、空悟は私のことを『そういう眼』で見てたんじゃんよ?」
「ぐぬぬ……」
ニヤニヤしながら人の黒歴史を掘り下げてきおる愛穂さん……くっ、前世の人生経験をプラスすれば俺の方が年上なのだが――いかんせん仕方ないとは言え、何とも嫌〜んな弱味を握られたモンだ……。
本人はちょっとしたスキンシップ的な意味で、からかっているつもりなのだろうが……基本、俺は弄るのは好きだが弄られるのは好かんのよ。
「何やオシヤン、黄泉川先生とイ・ケ・ナ・イ関係なんか?オシヤンが年上好きなんて知らんかったなぁ」
「教師と生徒はあかんぜよオシヤン。背徳の香りがするですたい」
「青ピ、敢えて言わせてもらうが……俺は年上が好きなんじゃない――年上『も』好きなんだ。それと土御門、リアルシスコン野郎に背徳云々言われたくねぇぞ俺は」
青髪ピアスさんみたいな言い回しをしてしまったが、最初に言っておく――俺は奴程に守備範囲は広くねぇ。
ついでに言えば、土御門さんみたいに限定的でもねぇが……。
「で、実際の所はどうなんですか?」
「――上条さん、貴方はもう少し空気というモノを読むべきだ」
私、気になります!状態な上条氏には馬耳東風だろうが――彼はもう少し空気を読める御仁だと思ったのだが……空気を読んだからか、逆に。
「アッハッハッ!!残念ながら、少年達が期待する様なことは一切なかったじゃん?本当の所はさー」
――そして、愛穂さんは暴露しやがりました。
学園都市に来た当初、俺は愛穂さんの住居に世話になっていた時期があり、俺の切実な希望により俺は一人暮らしをすることになったと――。
「その時の空悟の台詞が『これ以上愛穂さんと一緒に居たら、餓えた狼になる自信があります!――ぶっちゃけ、性欲をもて余す』とか、真剣な表情で言ってきてね?いやぁ、あの時は大爆笑だったじゃん!」
全く似せる気のない俺の真似をして、ケタケタ笑う愛穂さん。
まぁ、確かに一言一句間違いなく俺が吐いた台詞だが……一応言い訳をさせて欲しい。
考えてもみて欲しい……愛穂さんの住居ということは、後にセロリさんや打ち止めちゃんが暮らすことになる場所なんだぞ?
あの二人にとって、少なからず心の拠り所になっていた筈。
だからこそ、一通さんが暗部に戻らざるを得なかった時は、敢えて距離を置いたんだし――。
そんな中に、俺みたいな異物が紛れ込んだら二人の――或いは二人と愛穂さんとの間を繋ぐ何かの、邪魔になると思ったんだ。
――いや、本当だからな?誰だ、嘘だッッ!!!!とか、某妖怪お持ち帰りみたいなことを言った奴は?
怒らないから正直に名乗りでるべきです、お?
――あぁ、そうだよ。それだけが理由じゃねーよ。
ぶっちゃけ愛穂さんに言った台詞も、まんま本心なんだよ!
考えてもみてくれ。
明け透けというか、竹を割ったような性格の美女と、一つ屋根の下で暮らすんだぞ!?
ラッキースケベなイベントこそ無かったけども――分かるかなぁ?魅惑的な色香とかは無いんだが、健康的な色気というか――ふとした時に感じる女らしさというか……。
そういうのを感じてしまったら、色々と悶々としてしまってだな――。
しかも、俺は忍空マスターというチート能力を身に付けているワケで……その気になれば、力ずくでどうにか出来ちゃうじゃん……とか、ヤバめのことも考え出す様になり――前々世という悪夢の様な事実がある以上、ガチで冗談じゃ済まねーなコレ、と。
共同生活では、自家発電で賢者モードにもなれねーしな……。
まぁ、そういう事情があったわけだよ――蛇足だが、大能力者である俺が――こんな風に至って普通の高校生活を送れるのも、愛穂さんが身元保証人になってくれているからに他ならない。
そうでなければ、何処ぞの能力者の名門校に入って能力開発漬けの生活を送るか、暗部にでも回されて血生臭い生き死にの世界に身を投じるか――。
まぁ、それは極端な事例で能力者名門校でも普通に学生生活を謳歌している奴も大勢いるだろう……まぁ、そうなったら全力で逃げ出すけどな!
特に後者は断固拒否する!!――だもんで、なるべく裏には関わらない様にせねば……俺の『予測』って、能力的に結構貴重らしいし――原作を鑑みるに、暗部の連中は身元保証人とかお構い無しだしな……逆に人質とかに利用されたり――って、あまり考え込むとフラグになりそうだから止めよう……。
……まぁ、なんだ――感謝と邪な後ろめたさが合わさって、愛穂さんには頭が上がらないんだな、うん。
「HEY、ス○ーク!幾ら伝説の傭兵だからってチキン過ぎやしねぇかい?」
「ホンマや。せっかくの一つ屋根の下のウフフなイベントを棒に振るとか……キンタ○ついてるんかオシヤン!?」
「――よーし分かった。飯は俺とカミヤンだけで行ってくるわ。あばよお前ら」
情報を買った時点で、土御門から焼肉食い放題の店の場所を聞いていた俺は、好き放題言いやがる馬鹿二人に宣告してやる……今や、お前らの胃袋の運命は俺の掌一つなのだ――と。
「「サーセンっしたぁっ!!!」」
「……憎めない奴等め」
綺麗に90度の角度で頭を下げてくるツッチーと青ピに、苦笑いを浮かべざるを得ない。
「というか、結局何の用だったんですか愛穂さん……俺の黒歴史を曝す為に来た――とかだったら俺の怒りが有頂天ですよ?」
「いやいや、偶々教室の前を通り掛かったら、面白そうな話が聞こえてきたから声を掛けただけじゃん?――結構、楽しそうにやってるみたいで安心したじゃんよ」
「……ウッス」
そういう、微笑ましく見守る様な目で見られると……なんつーか対応に困る。
「しっかし、昼から焼肉とは豪勢だねぇー。私もお相伴に与りたいものじゃん?」
「――アンタ、教師と警備員で結構稼いでるでしょーがよ。生徒にタカってるんじゃねぇ――つか、まだ仕事が残ってるだろうに」
「冗談冗談!まぁ、確かにそれなりには貰ってるけど、高レベル能力者程じゃないんだよねぇ……特に、教師の仕事の安いこと安いこと――まぁ、仕事としては満足してるけどね」
ふむ――そう言えば小萌先生は、滅茶苦茶安い……築ウン十年クラスじゃねーのコレ?ってアパートに済んでたっけか。
愛穂さんにしても、住居は超高級マンションだが――テスターだか、実験協力だかという名目があるから住めるって言ってたな……。
教師にしろ警備員にしろ、公務員だろうに……いや、学園都市内はある意味では日本の法律に縛られない様な独立地帯みたいなもんだし――。
けどなぁ――仮にも超能力訓練を授業に組み込んでいるんだから、教師もある種の専門家ばかりだろうに――もう少し給料的に優遇されても良いんじゃなかろうか?
「空悟の言うように、仕事が残ってるのは本当だから、お相伴に与るのは次の機会にしようかね」
「――今の話を聞いた後だと冗談に聞こえないんですがねぇ……」
「奢ってくれるなら、いつでもウェルカムじゃん?まぁ、たまには遊びに来なよ。お姉さんが美味しい手料理をご馳走してあげるからさ」
裏表の無い、綺麗な笑顔でそんなことを言ってくれる愛穂さん――その気持ちは素直に嬉しい。
「相変わらず『炊飯器の魔術師』なんですか?」
――しかし、黒歴史を曝してくれた意趣返しはさせてもらおうか?
「『炊飯器の魔術師』?なんだそりゃ?」
「ああ……愛穂さんは料理は上手いんだが――その調理方法には全て、炊飯器が使われているんだ」
カミヤンが疑問符を浮かべたので、俺はその問いに答えた。
そう、愛穂さんはあらゆる料理を炊飯器で作ってしまうのだ。
「けどオシヤン。それって普通――ではないけど、別に珍しくないんやないの?」
「ほう?炊飯器で飯だけでなく、パンやパスタ――肉じゃがみたいな煮物系は勿論、目玉焼きやポークソテー、焼き鳥まで作ってのけるのが――珍しくないと?」
「そ、それは……凄いのかも知れんが――」
青ピは今時、炊飯器調理なんて珍しくないと言うが――愛穂さんは炊飯器で『作れない』様な物まで作ってしまうのだ。
故に、炊飯器の魔術師なのである。
土御門は苦笑いを浮かべているが……本当に苦笑するのはこれからだ。
「炊飯器は万能調理器、それは黄○伝説でも証明済みじゃん!」
「……まぁ、百歩譲ってそれは良しとしましょう――でも、あんなに何十個も炊飯器は必要無いでしょうよ」
「な、なんじゅ……」
得意気に胸を張る愛穂さん――相変わらず中々にご立派な……もとい!炊飯器万能調理器説を唱える愛穂さんに、俺はその異様な炊飯器の数を指摘――カミヤンも顔をひくつかせている。
「人聞きの悪いことを言うなよ空悟。少年達が誤解するじゃん?」
「誤解?俺の記憶が確かなら、愛穂さんは炊飯器を20個に届きそうな勢いで所持していたと思ったんですがねぇ……」
「……今は、27個じゃん?」
「――増えてるじゃん?」
思わず、愛穂さんの特徴的な語尾を使った俺は……決して悪くないじゃん?
もうね、絶句ですわ、お?
「し、仕方ないじゃんよ!?此処は科学が進んだ学園都市じゃん!?炊飯器も日に日に良いものが出てくるじゃんか!」
「――古いのを捨てるなり、売るなりすれば良いじゃん」
「……いやぁ、やっぱり長い間使ってると愛着が湧くじゃん?」
「………」
想像してみてくれ――台所一面どころか、高級マンションの一室が炊飯器で埋め尽くされる様を――。
きっと君は、言葉では言い表せない安らぎ『以外の何か』を感じてくれると思う――現に俺は感じてる。
「お、忍足……大丈夫か?」
「フッ、カミヤン……まるで悪い夢みたいだろ?ところがどっこい……現実です……これが現実……ッ!!!」
「そ、そこまで愕然としなくてもいいじゃんよぉ……」
したくもなりますわい――この調子じゃ、いずれあの住居全体に炊飯器が広がるんじゃないか……?
いや、原作でもそこまで酷くなかったから大丈夫だと思う……思いたい……。
「――上条さん、この人の炊飯器収集癖っていう幻想を、ぶち殺してやって下さいよぉ」
「ごめん、それ無理」
「ですよねぇ〜」
幻想でも何でもないからね……戦わなきゃ、現実と……。
「愛穂さん、今度遊びに行かせて貰いますよ……不必要な炊飯器を片付ける為に」
「ちょ!?不必要な炊飯器なんてこの世に存在しないじゃん!?ちゃんと調理器具として平行活用してるし……そもそも、それは遊びに来るのとはちが――」
「シャラップ。30個近くの炊飯器を常時同時運用なんてしやせんでしょーが。毎日フルコースでも食ってるんですかアンタは」
「いやいや、それぞれの炊飯器にはご飯用、パン用、肉用、魚用とそれぞれの役割があってだね――」
「黙らっしゃい。このまま放置してたらゴミ屋敷ならぬ炊飯器屋敷になるのは確定的に明らか――」
***********
愛穂さんとの長い立ち話を終えた俺らは、いざ肉の祭典という名の戦場へと向かう――前に、軍資金を仕入れる為に銀行へ向かう。
「んじゃ、俺はチョロっと金を卸してくるからそこのコンビニで時間を潰しといてくれ――まぁ、10分は掛からないと思うけどな」
「――忍足さん、いったい幾ら卸すつもりでせうか……?」
「カミヤン――それは愚問って奴だな」
まぁ、食い放題なのでいくら高くても諭吉さんが四人いらっしゃれば十分だと思うが――。
一応、念には念を入れておきたいのだよ。
「了解だぜぃ。まぁ、焦らず急いで行ってこいよ」
「あいよ〜」
さてさて、時間は有限――愛しのお肉ちゃんの為に、さっさと金を卸してくるとしますか。
銀行へは、このコンビニから真っ直ぐ行って、大通りの突き当たりを右に行けば直ぐだ。
さてさて、何を食べようかな〜?ロースにカルビ、ハツにミノ――カシラにコブクロ、ハラミ――牛タンも忘れずに〜♪
***********
それは偶然だった――。
彼女がその場に居合わせたのは――。
彼女達がそこに居合わせたのは――。
偶々、銀行強盗に出会した――偶々、近くに遊びに来ていた――偶々、治安維持組織のメンバーだった――それは偶然だ。
しかし、見るものが見ればそれは必然だと答えただろう――。
そう、必然なのだ――。
一人の少女が、強大な力を持っていたのも……一人の少女が、何の力も持たなかったのも……全ては必然。
「ねぇ、何処に行くの?」
「いいから来いっ!!」
「ダメッ!!」
治安維持組織――風紀委員(ジャッジメント)に所属する大能力者(レベル4)の少女、白井 黒子(しらい くろこ)の活躍により、銀行強盗は蹴散らされ――唯一取り逃がした強盗の一人は、その場に居合わせた男の子を人質にして逃走を果たそうとし――それを止めようと無能力者(レベル0)の少女、佐天 涙子(さてん るいこ)は決死の覚悟で強盗の男に掴み掛かる。
男も無能力者ではあったが、大の男と少女では力の関係からどのような結末になるかは、火を見るより明らかである。
「この……っ、離せよっ!!」
「――っあ……!?」
――少女は男に蹴り飛ばされ、それでも男の子を助けるに到る。
「こ、の――っ!!」
人質を取ることに失敗した男は、人質を諦めて車に乗り込む――それを見ていた強大な力を持つ少女、学園都市に僅かにしか存在しない超能力者(レベル5)――序列3位、御坂 美琴(みさか みこと)は怒り、突撃してきた男をその能力を持って、車ごとブッ飛ばす――それが本来の流れ――必然……『だった』。
「「「……は?」」」
蹴り飛ばされた筈の少女は――何故か、次の瞬間には学園都市名物『清掃ロボット』に変わっていた。
そう、『変わっていた』のだ――周囲の空気が固まる。
強盗のリーダーを足蹴にしている白井 黒子も、その強盗自身も、そして今まさに飛び出そうとしていた御坂 美琴すらも――。
「ぐげぇっ!!?」
「えっ!?」
次いで聞こえてきたのは、潰れたカエルの様な声――咄嗟に振り向いた美琴の視界を掠めて吹っ飛んできたのは、人質を取って逃げようとしていた強盗の男。
(な、何なのよ一体!?)
二転三転――地を転げ回った男は漸く動きを止めた――どうやら気絶している様だ。
美琴は思考する――強盗の男が吹っ飛んできたということは、吹っ飛ばした『誰かが』いたということ……。
その答えに瞬時に辿り着いた美琴は、改めて視線を前方に向けるが……。
「……?」
そこには人質にされ掛けた男の子が不思議そうに首を傾げているだけ。
「ま、まさかあの子が――って、んなわけないわね……」
咄嗟にそんな風に考えが到った美琴だったが、それを一笑に伏した。
あの子供にそんな力があるのなら、もっと早くに使っていた筈だ――それこそ、佐天が蹴り飛ばされる前に――。
「って、そうだ佐天さん!!」
彼女は思い出す――蹴り飛ばされた瞬間、清掃ロボットに変化していた佐天だが、よくよく考えたら人間がロボットに変化するなど有り得ない。
そういう風に『見せる』能力ならあるかも知れないが――美琴は佐天と知り合った時に、佐天が無能力者であることを告げられている。
――その時には、超能力者である美琴に対する皮肉が多分に混じっていたのはさておき。
つまり、何らかの理由で『刷り変わった』というのが妥当であり、ならば清掃ロボットと入れ替わった筈の彼女が、何処かにいる筈なのだ。
周囲を見渡すと、佐天は清掃ロボットが蹴り飛ばされた方向とは、まるで正反対の場所に居た。
ぺたんと座り込み、何かを呆然と眺めている様子だった――。
とりあえず、美琴は彼女に事情を聞こうと駆け寄ったのだった……。
***********
――最初は意地だったんだと思う。
レベル0の私だって、何かの役に立てるんだ……って。
だから、銀行強盗が男の子を連れていこうとした時、必死にしがみついたんだ――酷い話だよね?
男の子のことは二の次だったんだから……あっ!勿論全く心配してなかったワケじゃないけどね――。
……まぁ、そんなことを考えていたからか――私は銀行強盗に振りほどかれて、そのまま蹴り飛ばされそうになった。
よくよく考えたら、何の能力もない私が男に力で勝てるワケがなかったんだけど……そんなことも分からないくらい、冷静じゃなかったんだね私は――うん、やっぱり男の子が心配だったんだ私。
あの一瞬だけは、心配する気持ちが――絶対になんとかしなきゃって気持ちが強くなったんだ。
あ〜あ、アレに当たったら痛いんだろうなぁ……なんて、何処か他人事みたいな気持ちでやってくる衝撃に備えていると――。
「口閉じてろ。舌噛むぞ」
「えっ――」
声が聞こえたと思った瞬間、私を襲ったのは衝撃ではなく浮遊感。
風を切る感覚――そんなものを感じた時、私は信じられない物を見た。
今まで私が居たであろう場所で、私の代わりに蹴られた清掃ロボット――理解が、追い付かなかった。
「あ……」
ふと感じる地面の感触と温かさの喪失――どうにも私は、誰かに抱き抱えられていたらしい――私は見上げた。
一瞬だった――その人が背の高い男の人で、バンダナをしていたってことだけ、辛うじて分かった。
顔とかを詳しく見る前に、その人が消えてしまったから――。
いや、消えたんじゃない……瞬きをした間に、銀行強盗に接近していたんだ。
――私に見えたのは、その人のやたら大きく見える背中と、今まさに銀行強盗を『風の塊』みたいな何かで殴り飛ばした瞬間と――。
その人に付き従う様に蠢く『龍』の姿だけだった――。
「―――」
男の子に、何か一言二言告げてから――今度こそ、その人は『消えた』。
周囲を見回す――でも、その人らしい人は居なかった。
「夢じゃ……ないよね?」
まるでキツネかタヌキに化かされた様な感覚――って、言うのかなコレ。
「佐天さーんっ!!」
「あっ……初春――」
向こうから走ってくるのは、私の友達――初春 飾利(ういはる かざり)だ。
あーあ、心配そうな顔しちゃって……。
その向こうからは、白井さんと御坂さんも向かってきてる。
……いやはや、心配掛けちゃって申し訳ないやら恥ずかしいやら……。
「さて、と。何て言って説明しようかなぁ……」
まぁ、ありのままに起こったことを話すしか無いんだけど――そう言えば、初春ってパソコンが得意だったっけ?
――もしかしたら。
「大丈夫ですか佐天さん!?怪我とかしてないですか!?」
「いやぁ〜ハハハ、私は大丈夫。ご覧の通りピンピンしてるよ。心配かけてゴメンね?―――で、ゴメンねついでに、一つ頼みたいことがあるんだけど」
――パソコンが得意で、風紀委員の初春なら――あの人のことも調べてくれるかもしれない。
助けてくれたお礼も言えなかったし――出来るなら会って話がしてみたい。
一瞬見えた、龍のこととか聞いてみたい――何故か、分からないけど……あの人に会うことが私の転機になる――そんな気がしたから。
***********
あ、ありのままに起こったことを話すぜ――銀行に金を卸しに行ったら銀行強盗が居て、ソイツが男の子を連れ去ろうとしていたのをJCらしき女子がドズ○中将の如くやらせはせんぞーっ!!していたが、力負けして蹴り飛ばされそうになったのを見て咄嗟に飛び出した俺でしたが、視界の端に上条さん曰くビリビリ娘なレベル5三位と、それに変態的な劣情を抱く変態テレポーターの姿を見つけてギャースってなったがしかし、今更助けないって選択肢は無かったので『小細工』を労しながら突っ込んで女の子を『変わり身の術』で救出、その勢いのまま『空圧拳』で野郎をブッ飛ばして、男の子に大丈夫か聞いたら大丈夫だと言ったので、それは良かったと言ってワシャワシャ頭を撫でてやって――。
『おにいちゃん、スゴいんだね!』
『鍛えてますから』
シュッ!と、やってから空中へ跳躍して戦線離脱――学園都市名物、空飛ぶ広告塔(飛行船)に潜伏するに至る――今ココ。
何を言ってるのか分からないって?
まぁ、色々と察してくれ――。
「にしても……何で御坂 美琴と白井 黒子があんな所に居るんだよ……」
飛行船の天辺に寝そべりながら、頭痛が痛い的な懸案を愚考する。
他にも、頭がお花畑なJCらしき少女も居たから――多分、初春 飾利なんだろうな――。
まぁ、ちょっと考えたら分かりそうなモンで――実際、俺にも理解出来た。
「『とある科学の超電磁砲』、か。すると、さっきの女の子は佐天 涙子ってことか」
成程、前世の二次創作では銀行強盗イベはお約束だし、佐天さんもアニメや雑誌でも見たことがあるな――。
……もうお気付きの方もいるかも知れないが、俺は『とある魔術の禁書目録』のスピンオフ作品である『とある科学の超電磁砲』の内容を知らない。
正確には、二次創作とかは散々見てきたが原作を知らない――ってことだ。
アニメの方はチラッと見たことがあるが……いや、なんつーか――やっぱ『とある』の主人公は上条さんだろJK?って気持ちや、女主人公で百合百合しいのはちょっと……って嗜好の問題とかが重なって、見てなかったんだよな――まぁ、二次創作で超電磁砲を舞台にした物は結構あったし、二期も始まるしで、そこから少し気になって見てみることにしたんだよな――結果、俺の食わず嫌いでしかなかったことに気付いて、折角だからコミックスも含めて全巻制覇してやるぜっ!!――といった矢先に転生することになったワケですけども――。
「うわぁ……つまり無理して助けなくても――いや、結局佐天さんは傷付かなくて済んだんだから結果オーライなの、か?」
確かアニメでは、佐天さんが傷つけられて御坂さんがブチギレる――って、流れだった筈だ。
コレが二次創作だと、オリ主がフラグをかっさらって行くんだよな――つまり、俺も佐天さんや御坂さんにフラグが起ったよ!やったね、空ちゃん!!
――誰か、おいばかやめろって突っ込んではくれまいか……?
そも、御坂 美琴のフラグは嫌なフラグしか思い付かん――上条さん曰く、幾度も勝負を挑まれているらしく、それが今日の御坂氏の『バトルジャンキー』という悪印象を植え付けるに到ったのだ。
だがそもそも、御坂は強い奴なら誰でも良いと言うワケでは無く、自分の能力を理解の及ばない方法で封殺した上條さんだからこそ、興味を持ったワケで――その感情がやがて恋愛感情にハッテン……もとい、発展したワケだ。
――そんな御坂さんであるからして、俺に対して妙なフラグが起つことは無いと思う……多分。
つーか、既にカミジョー属性に侵されているであろう彼女のフラグを、命懸けでかっ拐う程の無謀さなんて無いし――NTRとか大っっ嫌いなんよ、俺――前々世の俺なら喜んでやってそうだがソコはスルーするとして……それならむしろ、上条さんにけしかけて面白おかしく鑑賞していた方が百倍有意義だ。
「そして佐天 涙子、ね」
彼女を助けてフラグが起つ――なんてのは二次創作じゃ、ご都合主義を通り越したお約束だ。
まぁ、数多の二次主人公の御多分に漏れず、俺もそれなりにイケ面なのでフラグが起っても可笑しくはない――というか、折角生まれ変わったんだから彼女くらい欲しい!!
むしろフラグ大歓迎っ!!……と、言いたいところなのだが――如何せん、此処は陰謀渦巻く学園都市。
そんな学園都市で、大能力者で未来予測という能力を持ち、忍空という――ともすれば、多重能力者と見紛う力を持つ俺――。
もしも何処からか、暗部に情報が流れた日には……原作の一通さんみたいになりかねん。
勿論、生半可な奴には負ける気はしないが――もし、大切な人を人質に取られたら?
学園都市の暗部は、それくらい平気でやってのける――誇張でも何でもなく、それが真実。
なので学園都市で平穏に過ごすためには、極力情報の漏洩は避けたいのさ。
――だもんで、フラグは起てるのでは無く――断たねばならない。
だから、俺は俺に繋がるであろう情報を、徹底的に閉ざした。
「けど、念には念を入れて――な」
俺は飛行船を通して、学園都市のデータベースと映像記録にアクセスする――アクセスするってのは正確じゃないな。
『寅忍』の精霊の力を借りる能力と、『卯忍』の光を操る能力を応用したってのが正解だったりする――。
以前、万物には龍脈が流れているって話をしたよな?
草花や、タンス等の物にさえも――そしてそれ等には等しく精霊が宿っている。
それは学園都市の誇るスーパーコンピューターも例外では無い。
そも、此処は人工的に天使を産み出す様な場所である――コンピューターに精霊が宿っていても、別に不思議では無いだろ?
けど、万物に宿る精霊の存在感は微々たるモノ――この科学一辺倒の学園都市では認識すらされないだろう。
……何処ぞの統括理事長サマは、もしかしたら認識しているかも知れない――いや、無いか。
精霊ってのは自然の流れの中に存在する者だ――故に自然をねじ曲げる魔術や科学とは縁遠い――魔術師(ソーサラー)と精霊使い(シャーマン)では、畑が違うのだ。
――が、相手は元・稀代の大魔術師、アレイスター・クロウリーだ――シャーマニズムにも精通していそうで恐い……。
いやマジで、あの理事長サマなら俺の秘密に気付いてやがりそうで恐い……。
話が逸れたが、要するにスパコンの精霊や、監視カメラの精霊にお願いして俺の存在を誤魔化して貰った。
だがネットの世界は広大だ――故に俺は光を操り、『光情報』としてデータを円滑に伝達するために、光を使って精霊さんをサポートしたってワケだ――。
……ワケが分からないよって?
まぁ、ぶっちゃけ言えばネギ○のコスプレネットアイドル眼鏡っ子の仮契約カードのアイテム――もっと突っ込めばAI止○のAI娘たちみたいなことが出来るって解釈でいい。
ネットの海へ直にダイブしているワケじゃないから、擬似的に再現してるだけだけどな……まぁ、ハチワン○イバーのネット版とでも思えば良いと思うよ――別に、パソコンの前に立って『ダイブッ!!』なんて言う必要は無いけどね。
確か、初春は守護者(ガーディアン)とか言われる位のトップクラスのハッカーだった筈だ。
学園都市のデータベース等から俺に辿り着く可能性もあった――。
しかし、如何に世界レヴェルのピエ――ハッカーだとしても、今の俺には絶対に辿り着くことは出来ない。
ボールは友達という、某サッカー少年の様にスパコンの精霊と友達――つーか鬼ダチ?な、寅忍能力を持つ俺。
情報を引き出そうにも、フォーマットを司る精霊さんが俺の味方なのだ――もう何も怖くないっ!!
……嫌なフラグばかり起てるなって?
いや、ぶっちゃけ本当に怖くも何ともないんだよねぇ――。
仮に、精霊の防護を突破したとしても……学園都市のデータベースからでは、絶対に俺には結び付かないんだよ――そう、『絶対』にな。
もし、俺の情報から『俺』の存在を引き出せる奴が居るとしたら、それは某ヒューマノイドインターフェース位では無かろうか?
――あんま言うと本当にフラグ起ちそうだから、この辺にしとこう。
「Thank You、精霊さん。コレなら大丈夫そうだ――さて、銀行で金を卸せなくなっちまったなぁ……」
事後処理とかあるだろうし、何より舞い戻ってフラグ成立なんざ論外である。
「――あ、コンビニにもATMがあったよな」
ATMだと一度に卸せる金額が銀行より少ないし、手数料も掛かるからなぁ――だから、決して選択肢に無かったワケじゃない……わ、忘れてたワケじゃないんだからねっ!?
等と供述しつつ、適当な建物に飛び降りて何食わぬ顔で地上への帰還を果たしましたとさ――めでたしめでたしっと。
***********
「オイスー」
「おうオシヤン、遅かったな。待ちくたびれたぜぃ」
待ち合わせ場所のコンビニで、立ち読みしとるツッチーとカミヤン……青ピの姿が無いが……あっ、スナック菓子コーナーに居た。
「いや、それが銀行に行ったら銀行強盗が入ってたらしくてよ――とても金を卸せる状態じゃなくてな」
「銀行強盗って……大丈夫だったのか?」
「俺が行った時には、もう鎮圧された後だったよ――腕章を着けた女子学生が居たから……多分、風紀委員が鎮圧したんじゃないか?」
上条さんが心配してくれたので、無問題と返す俺ッチ。
まぁ、俺も関わったりしちまったが……言わぬが花って奴なんでしょうねぇ……。
「銀行強盗に出くわすとは、オシヤンの不幸も磨きが掛かってきてますにゃー」
「カミヤンの不幸が感染したんだ、きっと」
「ちょ!?上条さんは事実無根ですのことよ!?」
まぁ、実際にカミヤン程の不幸に見舞われたワケじゃないから、感染は言い過ぎなんだが――それでもカミヤンと知り合ってから不幸が絶えない……巻き込まれてるとも言うが。
「あっ、そう言えばカミヤン――前にカミヤンが言っていたビリビリ中学生も居たゾ?」
「ゲェッ!!?」
「まだ居ると思うから、今から行けば会えるかもよ?」
「やめてください死んでしまいます」
カミヤンが、強敵の超人と戦うキン肉○ンを見るテリー○ンみたいな表情をしたので、会いに行ってみたらと聞いたら――真顔で返された……そんなに嫌なんか?
――まぁ、無理もないか。
カミヤンにとっては、ガチで生死が関わる問題だろうしな――。
「けど、それじゃあどうするんだ?今から他の銀行に行ってたら、ランチタイムが終わっちまうぜぃ?」
「ツッチーよぉ、コンビニにはATMという文明の利器があるんだぜぇ?」
「……オシヤン、得意気に語ってるがお前……ATMの存在を忘「わ、忘れてませんしおすし?ちょーっと思考の隅に追いやってただけだし?」――そうか」
おいばかやめろ――この話題ははやくも終了ですね。
土御門クンと上條クンの生暖かい眼差しに、俺のストレスがマッハなんだが?
……さっさと金を卸してくるかね。
つーか――。
「青ピは何してるんだよ?」
俺は近くにあったATMで金を卸しながら、それとなく聞いてみた。
「ああ、何か新作のポテトチップスが笑えるとか何とか――」
「確か……ゴーヤメロンキューカンバー味――だったかにゃ〜?」
「何そのカオス」
メロンとキューカンバー……胡瓜ってだけでもキワモノなのに、そこにゴーヤを突っ込むとかキチガ○にも程があるだろJK?
しかも、コレ……ポテチなんだぜ?
林檎と蜂蜜が恋をした……なんてレベルじゃねぇ。
むしろポテトを巡った三つ巴の終末戦争(ラグナロク)だよ……。
とりあえず、学園都市の相も変わらない意味不明な商品ラインナップに、戦慄を禁じ得ない俺であった……どっとはらい。
***********
ガツガツムシャムシャ――なんて、生易しい擬音では足らない勢いで肉を喰らう修羅が四人。
「食ってやる!一週間分は食ってやるっ!!もうしばらく肉はいらねぇや――ってぐらい食ってやるぅっ!!!」
一人は切実な食料事情から――。
「うォーんっ!!舞夏ぁっ!!俺は諦めないからなあぁぁ!!」
一人は心の傷を癒す為に――。
「あ、あかん……オシヤンとカミヤンが爆走するんは分かりきってたけど、ツッチーまでうォーん状態に……って、それは僕が育てたカルビやぞっ!!?」
一人は周囲に追い立てられて仕方無く――。
「すいませーん、上カルビ10人前とハラミ10人前――それから特性サーロイン5人前、あと季節の野菜セット15人前追加オナシャース」
……そして一人は、平常運転でありながら他を引き離す程に修羅と化していた……。
ソコは戦場……ソコは地獄……。
「お、お待たせしました……」
配膳をする店員の少女(アルバイト)の笑顔が、引き吊ったものになるのも……止むを得ないというもの――。
しかし……。
「どーも。あっ、ライス特盛おかわりと、冷麺特盛に、白コロとミノとハツを5人前ずつね」
(ダブル特盛ってなにーっ!?って、まだ食べる気なのこの人おぉぉっ!!?)
「じゃ、俺はタン塩二人前――あっ、ご飯は普通で良いんで」
「ちょっ、ツッチーそれ僕の育てたロースやって!!?ホンマにもう――あっ、お姉さん。トントロ三人前追加でお願いします」
「ロースは犠牲になったのだ――俺の心の傷を癒す、その犠牲にな……それじゃあ俺はカルビクッパと、ぼんじりを頼みましょうかにゃー」
(いやあああぁぁぁぁぁっ!!?ヘルプ!!ヘェェェルプッ!!?)
一人が異様に抜きん出ているが、他の三人もまた、修羅の道を突き進む武士(もののふ)――配膳の少女は……否、店員一同が悲鳴を上げていた――。
尚、銘銘が腹を満たして満足する中――最後にジャンボチョコパフェとジャンボ苺パフェ、それにジャンボ抹茶パフェを追加で二つずつ頼んだ剛の者が居たが――それが誰かは語るべくも無いだろう。
ただ、その者は伝説を刻み――新たに出禁の店を増やしたことだけは、此処に記しておこう――。
ちなみに、肉の魔力に心奪われた残り三人もまた、出禁になったが……甚だ余談である。
***********
今日の忍空技!
『空圧拳』
手のひらに空気の塊を作り出し、相手に叩き付ける子忍の忍空技。
拳で殴る力の、数倍から十数倍の威力を叩き出し、また手先の技なので加減が容易。
この特性から、原作やアニメ忍空では風助が好んで使用していた。
今のキッズに分かりやすい例えをするなら、回っていない螺旋○。
というワケで、実質的な第一話でしたが……この主人公がマトモな戦闘をするのは、もうしばらく先になりそうです――そして更新ももうしばらく先ry
気長に待って戴けたら幸いです(*^-^*)