勇者オルガ~オルガ・イツカは勇者である。~ 作:御れんじさん
「むかしむかし、あるところに勇者がいました……」
あの後目が覚めた俺は、どういうわけか病院に居て、大赦とやらに拾われた。そして、そいつらの手引きで、中学に通うことになった。まあ、学校に行けるっているのは有り難い。俺はともかく、ミカのヤツはまともに字も教われなかったからな。それに、俺だってここの字は読み書きできねぇし、歴史や文化も知らねぇ。いつか鉄華団に戻るにしても、まずはこの世界で生きていかなけりゃあいけねぇからな。鉄華団は大赦の要求に乗ってやる。
それで、今はその中学校の部活動の一環として、幼稚園児達に人形劇を見せてやっている。鉄華団でチビ達の面倒は見ていたからな。こういうのは、結構好きだ。
「君を悪者になんてしない! ……あ!」
……と、演技に熱の入った友奈が、舞台の仕切りを倒してしまう。
その向こうには、園児達の驚きの眼差し。情けねぇじゃねぇか……俺はいつだって粋がってカッコイイオルガ・イツカでなきゃいけねぇのに……
「何やってんだぁぁ!」
「勇者パーンチ!」
「……っ!」
思わず叫んだ途端、友奈の勇者人形に殴られる。
……そういうことかよ。失敗をカバーするために、俺を使い捨ての駒見てぇにして、園児達の機嫌をとろうって魂胆か。
……ああ、わかったよ! やるよ!
「樹! ミュージック!」
『テンテンテンテン♪ テンテンテンテン♪ ……』
聞きなれた伴奏も流れて来た。姉に指示された樹のアドリブだろう。サンキューな。
「団長……何やってんだよ!団長!」
心なしか、ライドォ……の声まで聞こえてきちまったじゃねぇか……
「俺は……摘果団団長……オルガ・イツカだぞ……! こんくれぇなんてことぁねぇ!」
子どもたちの期待の眼差しが、俺に向けられる。……あの目は裏切れねぇ。みんなの母さんの血が騒ぐぜ。
「……お前らが止まんねぇ限り……その先に俺はいるぞ……!」
俺は床に倒れこみ、左手を前へ掲げる。俺の十八番であるそのポーズを見た子どもたちは、一斉にわぁっと歓声を上げる。
なんだよ……結構ウケんじゃねぇか……ヘッ
『キボーノハナー♪』
「だからよぉ……止まるんじゃねぇぞ……」
タイミングもバッチリ。勇者部の仕事をするようになってから、死に芸にも磨きがかかってきている気がする。
「と、いうわけで。オルガの力で魔王は改心し、祖国は守られました」
え? ……どういうことだ? と聞きたくなるような強引な締めだが、それでも園児たちは満足してくれたようだ。みんな立ち上がってはしゃいでいる。
これが、俺達、勇者部の活動だ。
次話は300年後です。