結果から言って、フルボッコはなかった。
内心ガクブル物だったけど何とかなった。
彼女は思った通りライドウらしいのだけど、俺の知っているあの14代目前転お化けとは違って大体三十代目のライドウだそうな。
まあ、それでもライドウに変わりはないのでやっぱり強いようだった。
だって近くに来たなんかでかい悪魔を仲魔も召喚せずにさっさとぶった切ってたからね、実際コワイ。
さて、そんな俺だが絶賛連行中である。
道中話を聞く限り、俺がいろんなところに現れては悪魔を倒していたのが都市伝説みたいな扱いになっているらしく、葛葉的には放っておいたらなんか大変なことになるんじゃないのかというわけで捕まえに来たのだとか。
どうやら結構な迷惑をかけていたようでこちらとしては大変心苦しい思いである。
何か贖罪でもできないかと聞いたら、とりあえず何もしないでほしいとのこと。
……うん、完全に腫れもの扱いだねわかるとも! はぁ。
「ん?」
落ち込みながらもついていくと何やら変なものが視界に映った。
いや、正確にはかぶっているバケツ頭の中に顔の前に画面が出てきた。
画面には周囲一帯の地図が映っているみたいで、ところどころに赤いオニマークがある。
おそらくだけど、このマークが悪魔の位置を表しているのだと思う……だけどこれは。
「……」
「どうかしましたか?」
急に立ち止まった俺にライドウさんが疑問の声をかけてくるが、その声が俺の耳に届くことはなかった。
なぜなら、地図上に現れるオニマークが次々と出現し始めたからだった。
「まずいなこれは……」
……この町、もしかして霊的防御とかガバガバなのでは……?。
なんとかしなきゃ(使命感)
「まずいなこれは……」
そう言うと、突如としてバケツの男は走り出した。
「ちょっと!?」
先ほどまで友好的な態度でこちらに従っていたのに、突如として動き出すにバケツ男に驚愕してライドウは彼の逃走を許してしまった。
即座に足を動かし高速に動こうとするが、バケツの男はライドウに捕まることなく走り去ってしまった。
「しまった、逃げられた……」
これは通常ありえない事である。
なぜなら彼女はライドウだからである。
――ライドウ、その名前は伊達や酔狂で名乗ることを許される物ではない。
厳しい鍛錬を越え、認められ、そして選ばれた者のみが名乗ることを許される名である。
当然、その身体能力は人を軽く超えている。
多少強い程度の超人であれば即座に捕獲、並びに殺害も可能なのである。
そんな彼女が逃すということ、それはバケツの男が少なくとも自身並み、それかそれ以上の力を持っているということに他ならない。
過去の14代目と呼ばれるライドウであればどうとでもなったかもしれないが、あのレベルにはまだ至ってはいない。
「しょうがない」
ライドウは身に着けている管に手を付ける。
そして、自身のマグネタイトを流し込み中に封じてある仲魔を召喚する。
緑色のマグネタイトの光とともに現れるは、細長く白い犬の頭の悪魔。
「探せ、イヌガミ」
「アオーン」
イヌガミと呼ばれた悪魔はライドウの命令を聞き、空から探しに行った。
「……また日本中を探すのはいやだなぁ……」
疲れた声でため息をつくライドウ。
目的の人物に逃げられておいて弱音を吐くなど! など言われそうではあるがしょうがないことだろう。
なにせ、目的の人物は神出鬼没、どこに現れるかはわからない、情報を手に入れて現場に急行するも肩透かしを食らったのも一度や二度ではなかった。
なので、今回せっかく捕まえることに成功したというのに、あっさり逃げられてしまったことは、彼女の精神に大きなダメージを与えていた。
だが、燻ってもいられないそう考えたライドウは走り出す。
周囲にいた一般人への配慮し、認識疎外の術を使いながら、人並外れた身体能力で住宅街の屋根を伝っていきバケツの男を探すが見つからない。
「一体どこへ」
五つ目の家の屋根を踏み越えたその時だった。
所持していた携帯端末からの着信音が鳴った。
周囲を見回しながらも携帯端末を起動する、画面には登録してあるライドウが所属する組織の一人の名前が表示されていた。
「すいません、今任務中なので後でかけなおし……え?」
ライドウはそう言って通話を切ろうとするが、通話の主からの情報で固まってしまった。
その内容とは
「……冗談ですよね?」
町の至る所から悪魔があふれ出したという内容だった。
普通であればまずありえない、そうならないためにあるのがライドウが所属する組織である。
当然この町にも対策である霊的結界が張られている。
結界が破壊されたという報告は受けてなどいない、ならばなぜ? そう思考するライドウに一つ心当たりがあった。
「アオーン!」
ライドウがその人物を思い浮かべたと同時に、探しに行っていたイヌガミが戻ってきた。
どうやら、目的の人物を見つけてきたようだった。
「とりあえず、話は見つけてからになるわね」
ライドウは思考を胸に秘めながら、イヌガミの案内で再び住宅街の屋根の上を移動し始めた。