マップのオニマークに従って街の中心部へと走り込むと、そこでは悪魔たちが大量に召喚されていた。
見る限り、ジャックフロストやジャックランタン、そのほか低位の悪魔たちばかりのようだけど、普通の人たちにはただただ脅威でしかない。
いつの間にか握っていた銃を悪魔へと向けて発砲して悪魔たちを倒していくことにした。
「なんだあれは!?」「かぼちゃのお化け!?」「俺の足が!?」「冷たい冷たいよう……」「誰か水を持ってきてくれよう俺の友達が燃えてるんだよう!?」「おかあさん……おとうさん……」
町の中は阿鼻叫喚で、子供から大人、老若男女の区別なく、悪魔たちに襲われていた。
自分がここに来るまでにも多くの人々が襲われてしまったようだった。
「まずは悪魔たちの数を減らすことが先決だな」
自分でも驚くほどに冷静に状況を判断していることに驚きながらも悪魔を倒していく、殴って撃って蹴り飛ばしそれを繰り返していた。
女神転生ならば仲魔でも召喚するという手段もあるはずなのだけれど、生憎と仲魔の欄は空っぽで召喚なんてできなかった。
交渉しようにもどうやら本能の赴くまま暴れているようで会話すらできない。
撃ち続けている弾丸が玉切れしない様なのが一番の幸運かもしれない。
そのまま戦っていると、凛々しい声があたりに響いた。
「ケルベロス、クー・フーリン」
その声とともに召喚されたのは、魔獣ケルベロスと幻魔クー・フーリン の二体の悪魔。
現れた悪魔はすごい勢いで悪魔たちを倒していく、これならこれ以上犠牲を出すこともなさそうだ。
これなら安心、そう思った時だった。
自分の背中にライドウさんが銃を突き付けてきたのは。
……何か悪いことした!? 。
ライドウがイヌガミの誘導で街にやってきたとき、その場所は地獄であった。
様々な人々が悪魔に襲われたようで、痛みや恐怖を訴える叫びをBGMにアスファルトが赤い絨毯と化していた。
転がる死体を軽く数えてみればその数は十人ほど、そのほかには怪我をしながらもなんとか逃げることに成功したようだ。
そして、件の人物であるその存在は、悪魔たちの中で戦っていた。
いつの間にか持っていた銃で弾丸をばら撒きながら、手当たり次第に殴りつけている。
ライドウは探索を任せていたイヌガミを管に戻すと、身に着けていたほかの管に手を伸ばした。
その数は二本。
緑色のマグネタイトが流し込まれ、中にいる二体の悪魔が召喚される。
一体は魔獣、全身これすべて白の獣。
もう一体は戦士、装束を着た槍を持る顔のいい人型の悪魔。
「ケルベロス、クー・フーリン」
「グルル……」
「クー・フーリン、ここに推参!」
「悪魔たちを殲滅せよ!」
「オオオオオオン!」
「委細承知!」
ライドウの指示で、人々を襲う悪魔たちを倒しに向かった。
そしてライドウは刀を抜き、バケツの男の下へと駆けた。
「はあああああ!」
雄々しい気合一線でバケツの男の後ろにいた悪魔はいともたやすく両断する。
そして、腰に下げていた銃をバケツの背へと向ける。
「……これは何の真似ですか?」
バケツの男がライドウへと疑問を問いかける。
よもや、この状況でライドウが自身に武器を受けるなどとは思わなかったのだろう。
「単刀直入に聞きます、これはあなたが起こしたのですか」
「違うと言ったら納得してくれるのか?」
バケツの男は静かにそう返す。
ライドウやバケツの男に襲い掛かっていた悪魔たちは、召喚されたクー・フーリン達によって倒されている。
そのおかげで、二人はゆっくりと話すことが可能となっている。
「それはあなた次第で……」
ライドウがそう言葉続けようとした時だった。
二人の足元に召喚陣が現れたのは。
「しまっ!?」
召喚陣によって即座に召喚された悪魔はライドウへと向けて魔法を放つ。
だが、その攻撃はライドウに当たることはなかった。
「危なかったな」
バケツの男の手が悪魔の魔法を受け止めていたからだった。
魔法を受けた手は綺麗なままで、まるで効いていない様だった。
「ふん」
バケツの男が足で悪魔を思い切り踏みつけて、悪魔を倒す。
「大丈夫か?」
バケツの男はライドウに傷はないかと語りかけてくる。
「大丈夫です。 ありがとうございました」
「どういたしまして」
相対していた男に助けられ少しばかり自身が情けなくなりながらもライドウは感謝の言葉を返した。
ふと、ライドウが周りを見れば、召喚した仲魔たちが悪魔たちをあらかた倒し終えたようだった。
耳を傾ければ襲われているような叫びも聞こえなくなっていた。
これで終わったのか? そう思いながらも戦闘態勢をとくことはないライドウ。
「終わったのか?」
バケツの男が銃を構えたまま言う。
「……いえ、おそらくまだ終わっていないかと思われます。少なくとも、あなたが引き起こしたことではないということはわかりました。ですが、そうなるとほかに犯人がいることになります、まだ戦闘態勢は解かないでください」
二人がそのまま戦闘態勢を解かないまま三分ほど経っただろうか、ライドウが刀を下し鞘へと戻した。
それに倣い、バケツの男も銃をどこかへと消し去り、戦闘態勢を解いた。
そして、ライドウが話し出す。
「とりあえずお疲れ様でした。 なぜこのような事態が起こったのかはわかりませんが、後始末や隠ぺいはこちらの組織が受け持ちます。 あなたにはついてきてもらいたいのですがよろしいですか?」
バケツの男は少し考えてから
「わかった」
と答えて今度こそついていった。
ライドウとバケツの男がいた場所を少し離れた場所で見つめる金髪少年がいた。
少年はにやりと口を歪めながら彼女たちを見つめている。
「へぇ、面白そうなやつがいるじゃないか」
少年の視線はバケツの男へと向けられていた。
「大いなる意志との闘いに必要な悪魔の誕生にはまだまだかかるし、彼で遊ぶのもよさそうだ」
少年は楽しそうにそう言うと、二人が街から消えるまでじっくりと見つめていた。
空には丸々ときらめく満月が一つ、そして月の光に照らされて首に輝く物がある。
それは、持ち手には丸い宝玉を中心とした五芒星、剣の刃がついた鍵のような物体だった。
ただのアクセサリーだろうか? 否、これは世界を救うことも滅ぼすこともできる力への鍵の一つ。
それは、とある場所ではこう呼ばれていた。
――ノルンの鍵と。
続くかな……?