鳴海、ライドウ、バケツの男が囲むテーブルに、茶封筒の中身の資料が置かれる。
置かれた資料はいくつか種類があるが、特に目を目を引いた物は一枚の写真だった。
そこには、トノサマバッタに能面のような白い顔が張り付いた、不気味な生き物が映っていた。
「これは?」
ライドウが気味が悪いという顔で鳴海に聞く。
鳴海は資料を見ながら説明を始めた。
「これは、最近この町に出回っているという生き物でね、何でもこいつを手に入れれば”運”がよくなるんだとか」
「運? 運勢を操作する力を持っているというのですか?」
「さあ、そこまではわからないけど、実際にこれを手に入れて豪運を手に入れたっていう話が上がってきているそうだよ」
鳴海は資料をライドウに手渡した。
「君たちにはこの資料にある、最近景気のいい人たちを探ってほしい、これが今日のお仕事だよ、それで……」
鳴海がバケツの男へと顔を向ける。
「ライドウちゃんが動くにあたり、監視対象である君にも動いてもらいたんだ、いいかい?」
バケツの男は、特に深く考える様子もなく肯定の返事を返した。
「よし、なら二人ともお仕事頑張ってきてくれ!」
そうして、ライドウとバケツの男は探偵社から出た。
ドキドキデート大作戦! ポロリ(首)もあるよ全員集合! ……うん、ないわ。
でも、実際女の子と二人きりでいろんなところを歩き回るのだから実質これはデートなのでは? え? 命がかかわる可能性がある場所を回るのはデートとは言わない? そんなー。
「まずは、ここから行きましょうか」
ライドウさんについていくこと数分、たどり着いた場所は藤原組と書かれた看板が印象的な日本屋敷……あれこれヤクザでは?。
「すまないライドウ、自分の目がおかしくなっていなければここはヤクザの本拠地にみえるんだが」
思わずライドウさんにそう聞いてしまう。
たしかに悪魔がらみの事件であるならば裏にも顔が利くだろう場所を調べるのも不思議ではないだけど、一発目からこんなところに来るとは思わなかった。
「? そうですが?」
だというのに、ライドウさんは何を当たり前だと言わんばかりのかをでそう返してきた。
え? 俺がおかしいの? 。
呆ける自分を置いてライドウさんは門を開けてずかずかと中へと入っていく。
中ではどう見ても堅気の人間じゃない人たちがこちらにやってくる。
まずいと思い、いらぬ心配かもしれないがライドウさんの前に出ようとすると、
「「「お久しぶりです! お嬢!」」」
と、歓迎の声が聞こえてきた。
……どうやら知り合いのようだ。
しかも一度や二度の付き合いでもないみたい。
「あの、毎度言っていますがお嬢はやめていただけませんか……」
ライドウさんは、中にいた人たちに奥に連れられて行ってしまった。
「お嬢?」
つぶやく疑問に答えをくれる者はいなくなってしまった。
ついていっても大丈夫かな……?
「はっはっは、相変わらずうちの奴らに人気のようだのうライドウよ」
連れていかれたライドウさんについていけば、豪快に笑う着物を着た強面の白髪の男性がいる部屋へと通された。
うん、組長ですね、わかります。
「お気持ちは大変うれしいのですが、お嬢はちょっと……」
ライドウさんは、組長さんの前で顔を少し赤らめながら正座している。
自分もそれに倣って横に正座する。
「はは、それだけお前さんが気に入られてるってことだよ……さて、今回は一体何の様だい?」
組長さんは取り出したキセルを吸いながらこちらに聞いてくる。
「はい、これをご存じですか?」
ライドウさんは下げていた鞄から茶封筒を取り出し、写真を見せる。
写真を見ると組長さんは少し目を細めた。
「ここ最近幸運をもたらす虫という内容で出回っている虫なんですが……何か知りませんか?」
「ふむ」
組長さんはキセルを台に置くと、口を開いた。
「やっぱりお前たち側の奴だったか」
「やっぱりというと?」
「ああ、最近俺のシマで妙に金の周りがよくなった奴がいてな、家の
「へい」
組長さんが廊下に立っていたヤクザの人を呼び出して何かを取りに行かせる。
戻ってきたヤクザの人は、小学校でよく見た緑色の虫かごを持ってきた。
「こいつを大事そうに抱えてやがったんだ」
組長さんが見せてくる虫かごには、写真に有った虫が入っていた。
「これを持っていた奴はな、俺たちから多額の借金をしていた奴でろくに働きもしないくせに突然全額返金しやがったんだ。 しかも多額の利息も一緒にな、まあ、それだけなら別によかったんだがさすがに気味が悪くてな、調べさせてみればそれを見つけたってわけだ」
組長さんは再びキセルを口へと運んで煙を吐いた。
「そいつの話によれば、この虫は変なガキからもらったんだとよ」
「子供?」
子供がこんな気持ちの悪い虫を捕まえて配ってるっていうのか……まあ、悪魔かもしれないけども。
「ああ、
ん? 今なんと?
「割り込んで済まないが、そばに誰かが立っていたとかそんな話はなかったか?」
「……ライドウ、さっきから気になってたんだがこいつは?」
「協力者と考ええていただければ」
「ほう、協力者ねぇ……まあいいか、ガキ一人だったようだ」
「そうか……すまない続けてくれ」
付き人はいない、けれど得体のしれない物を配る金髪の少年……まさかねぇ? 。
そのあとも、ライドウさんが話を続けていたけれど、話は入ってこなかった。
あの妖怪上着剥ぎ、また変なことしてるん……?