わたしはどこへゆく   作:konoyo

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まだプロローグしかないのにも関わらず、お気に入り、感想、評価等々いただけて本当に感謝感激です!

にも関わらず沖縄に行って投稿がとてつもなく遅い作者です……。

ということで、やっと(?)本編です。どうぞ!


001話 美しき世界は変わり行く

 

“ゆk……じゃなくてミーナです。「目の前が真っ暗」になったことはありますか?ゲームの話じゃないですよ。ほら、現実で……ってここもゲームの中でしたね。”

 

 

 

 

 

「リンク・スタート!」

 

 

合言葉とともに来る体の力が抜けていく感覚は1年前のあのときよりも早く、脳からの信号はすぐさまにナーヴギアへと情報が送られるようになったなぁと実感する。

これも先生が改良したのだと思うとやはりすごい。

 

 

事前に作っておいたアカウントのIDとパスワードを入力し、《Mina(ミーナ)》のセーブデータを選択する。

 

 

独特な機械音に歓迎されて私は遂に、そう、ついに《ソードアート・オンライン》の世界に足を踏み入れたのだ。

実際の私の足はベッドの上だーとかそういう理屈は置いといてね?

 

 

ということで私のいるこの場所はファンタジー系のゲームにはよくありがちな中世風の街並みに囲まれたところである。

足元を見ると石畳がズラーっと敷き詰められている。

そして、そのまま視線を上げると大きな宮殿らしき建物が見える。

 

 

ここは、このゲームのスタート地点であるアインクラッド第一層《はじまりの街》……って、うわぁこんなにたくさんの人がダイブしてきたのか。

まぁ、その中に私もいるからみんなの気持ちもすごくわかる。

 

 

だって、こんなにもこの世界は美しいのだから。

 

 

今ここにいるコアなゲーマーのほとんどは私みたいにこれからの冒険に胸を弾ませているはずだ。

また、今回の10,000人に入れなかった人も次の機会を今か今かと伺っているはずだ。

そのほかにも、普段の社会での疲れの癒しを求めてこの世界で家を買い、のんびりと過ごそうとしている人だっているはずだ。

 

 

改めて見渡すと、やはり多種多様なプレイヤーがいる。

βテスターだったのか迷うことなく裏路地の方へ駆けて行く者。

知り合いを探しているのか手を振りながら大声を上げている者。

私みたいにこの世界に圧倒されて辺りを見回す者。

 

 

そんな多種多様な私たちの共通点はみんな生き生きとしているということだろうか?

それはやはり、誰もがこの世界に魅せられているからだろう。

 

 

多くの人が渇望した仮想世界でのMMORPGが発表されたときの盛り上がり様はとてつもないものだった。

何週間もの間、トップニュースを飾っていたことなんてここ最近であっただろうか?

 

 

っと、話が大きく逸れてしまったがとにかく、この世界を創り出した先生の教え子としてここに立てていることがとても嬉しくて仕方がない。

 

 

とりあえず、ほかのプレイヤー観察もここら辺にして、辺りをぐるっと回ってみるかと思い中央広場の外へ向かう。

宮殿らしきものの壁はガラスの様に薄っすらと反射していたので、今一度《ミーナ》を見てみる。

 

 

うん、流石だね私、と思ってしまうくらいにこれ以上にいないってレベルの整った顔立ちをしている美少女がそこには映っている。

うん、やっぱ何時間もかけた甲斐があったわー。

 

 

現実の私と同じところは髪と目が黒いところくらいしかないんじゃないかな?現実ではできないけど、ここなら髪型も変えちゃえって思ってショートボブにもしちゃったしね。

 

 

改めてアバターを確認した後、中央広場から出てみると道沿いにビッシリと出店が並んでいた。まずはこの辺をぶらりとしますかねー。

おー、流石にたくさんのプレイヤーでごったがえしてますなー。

あれ?思ったよりも男女比は酷くはないね。男が6〜7割ってところかな。やっぱネカマっているのかな?

 

 

出店では武器やらアクセサリーやら飲食物、日用品など様々なものが売られているね。お店の人はNPCかー、よくできてるなー。現実世界に戻ったら先生にNPCのAIについてとかもっと詳しく教えてもらおうっと。

 

 

というか、私の所持金はいくらあるんだ?そう思って右手の人差し指と中指をまっすぐ揃えて掲げ、真下に降る。これでゲームの《メインメニュー・ウインドウ》を開くことができる。

 

 

えっとー?1,000コル?コルってのが単位なのね。これは多いのか少ないのかわからないけど、ある程度の初期装備を整えることはできるのかな?まー、良さげなのがあれば買ってみますかね。

そう思いながらぶらりとしているとき、ある出店の輝きに目を奪われた。

 

 

あっ、このアクセサリー好きかも。

そう思ったアクセサリーはシルバーに輝く金属の縁に赤いガラスを組み合わせた太陽を模したものだった。

げっ、75,000コル……。全然足りないじゃん……。というか、何かしらの武器買えよ私。

 

 

ということで、アクセサリーは後々買うとして武器屋を見て回りますかね。

にしても、どんな武器を使おうか迷っちゃうなー。んー……とりあえず短剣を試してみますかね。

 

 

ほら、AGI特化で手数で勝負みたいなのもかっこいいじゃん?あとは、ヒットアンドアウェイを繰り返す感じとかもありだと思うし。あと、対人でもおもしろそうな動きができそうだしね。うん、とりあえず短剣を試してみよう。(本当は弓があればいいんだけど、この世界にはないからしゃーないね)

 

 

あ、これくださーい!750コルですか……、ほいっと。おー、スマホ決済よりも早くて楽だね!

ありがとうございまーす!NPCのおにいさん!

 

 

よし、とりあえず短剣の練習してみますか。

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

ということで、《はじまりの街・西フィールド》まで来てみました。

いやー、ここまでたどり着くのにも一苦労だね。街にはマップがあってもすごく入り組んでる+人がたくさんということで本当に疲れたよ。おかげさまで13時にダイブしたのにもう16時になってしまった。

 

 

おや?先着のプレイヤーが2人いるみたいだね。モンスターがPOPするのを邪魔しないように少し離れたところまで行きますか。

 

 

さてと、この辺で練習しますかね。

お、いたいた。青いイノシシみたいなやつ!名前は《フレンジーボア》って言ったっけな?

 

 

こっちに気づかれる前に背中からサクッといこう。サクッとね。

まだ《はじまりの街》の路地裏にいたときに剣技(ソードスキル)については説明書を読んだから大丈夫でしょ。

 

 

もし、某天使風にヤラレチャッタってなってもまた《はじまりの街》で蘇生できるから問題はないけど、時間が惜しいからサクッといきたいね。うん、サクッと。

 

 

標的であるフレンジーボアの後ろから少し離れたところで短剣基本技のソードスキルの構えをする。

……ッ!!きた!この感覚は!!そう思ったときには体が突き動かされるように動き、フレンジーボアを切り裂いていた。

 

 

おぉぉーーー!!これがソードスキルかーー!!すごい感覚だな!!いや、本当にすごい。こうやって語彙力がなくなるくらいすごいよ。いやー本当にす「ゴハッ!!」

 

 

ソードスキルの感覚に思い浸っていたときに、さっきの青イノシシを倒しそびれてたらしく後ろから反撃されたようだ。

痛みはないけどなんか変な感じがする。

衝撃はあるのに痛みはない。やっぱ、不思議だな感覚だ。

 

 

そのあとは油断することなく、そしてソードスキルの感覚に浸りながら青イノシシを狩りまくった。

 

 

うん、最ッ高ーーに楽しいね!これ!

 

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

 

もう、陽も傾いてきて空はオレンジ色となってきた。時間を見たら17:23となっている。

 

 

もうそろそろ一旦現実世界に戻って休憩しますかね。

えっとー、ログアウトはーっと…………?

 

 

ん?ない?

いや、まさか。そんなことはないよね。

ヘルプは…………ログアウトボタンを押すとログアウトできます。って言われても、ないんだけど。バグってるのかなー?

とりあえず他の人に聞いてみますかね。

 

 

ということで、さっきの2人組を探す。

 

 

あ、いたいた。ちょっと休憩してるみたいだし行ってみますかね。

 

 

「あのー、私ミーナって言うんですけど、少しいいですか?」

 

「んー?……ッ!?いいぜ、お嬢ちゃん。用ってなんだ?」

 

「おい、ちょっと待てクライン」

 

「待てって、なんだよキリトよぉ」

 

 

最初に私に反応してくれた赤みがかった長髪に額のバンダナ、そして革鎧を装備しているこの男の人は《クライン》というらしい。

 

 

そして、クラインの隣にいる黒髪で、いかにも主人公みたいなイケメンフェイス、そしてこちらも同じく革鎧を装備しているこの男の人は《キリト》というらしい。

 

 

「この状況で話を聞けるわけないだろ」

 

「いやぁでもよ、俺たちにも何もできねぇだろ?」

 

「いや、でも……」

 

「しかもよぉ、こんなかわいいお嬢ちゃんが困ってんだぜ?ここで放っておいたら、男が廃るってもんよ!」

 

「いや、アバターが女だからって中身も女とは限らないぞ?」

 

「え!?そーなのか!?」

 

 

ちょっと、私そっちのけで話しちゃってるし。そう思った私は、わざとらしく咳払いをしてから再び話しかける。

 

 

「あのー、ログアウトボタンってありますか?」

 

「───ッ!!やっぱり、ねぇよな!?オレもねぇんだよ!」

 

「はい、私もログアウトボタンがなくて……。もうそろそろ戻りたいんですけど……」

 

「でもこの状況なら、運営サイドは何はともあれ一度サーバーを停止させて、プレイヤーを全員強制ログアウトさせるのが当然の措置だ。なのに……俺たちがバグに気づいてからでさえもう15分は経っているのに、切断されるどころか、運営のアナウンスすらないのは奇妙すぎる」

 

「む、言われてみりゃ確かにな……それに、SAOの開発運営元の《アーガス》と言やぁ、ユーザー重視な姿勢で名前を売ってきたゲーム会社だろ。なのに、初日にこんなでけぇポカやっちゃ意味ねぇぜ」

 

「まったく同意する。そr「でも!アーガスはきっとすぐにどうにかします!だって先生は───」

 

 

突然、リンゴーン、リンゴーンという鐘の音が鳴り響く。鐘の音なのにどこか不安を感じる嫌な音だ。その音に驚き、私たちは飛び上がった。

 

 

「んな……っ」

「何だ!?」

「きゃっ!!え、何!?」

 

 

戸惑いの声を上げる中、私たちはお互いの体を見て再び仰天した。

私たちの体が鮮やかな青い光に包み込まれたのだ。

 

 

え、何これ!?しかも、周りの景色が段々と消えていくんだけど!?

 

 

怖くて目をつぶっているとキリトとクラインに声をかけられて瞼をそっと開ける。

そのとき私の目に入ったのは、さっきまでの夕暮れの草原ではなかった。

 

 

この景色は…………、《はじまりの街》の中央広場。

 

 

周囲を見渡すと、そこにはたくさんのプレイヤーがいる。数えることなんてできないが、恐らく、1万人近くはいる。

ということは、今ログインしているプレイヤー全員が、私たちと同様にこの広場に集められているのだろう。

 

 

これから運営から全体に不具合の説明をするのだろうか。そう思っていると周りからは、さまざまな怒号(クレーム)が聞こえる。

これは無理もない。

先生は大丈夫かなぁ?今ごろ、大変なことになってるんだろうなぁ。

 

 

そんなことを考えてるうちに「上を見ろ!!」という声が辺りを突き抜けて行った。

 

 

私たちは、反射的に顔を上げるとそこには異様な光景が広がっていた。

空一面に広がるのは赤く表示されるのは【Warning】、そして【System Announcement】の文字。

 

 

やっぱり、運営からのアナウンスか。と安堵していたのも束の間、まるで血液のように真っ赤な(しずく)がどろりと垂れ落ちた。そしてそれは、空中でまとまりフードの付いたローブをまとった巨大な人の姿に形を変えた。

 

 

しかし、フードの中には何もない。人の形をしているが中身が見えないのだ。

キリトやクラインを見ても何がなんだかわかってない様子だ。

 

 

その後、私の聞き覚えのある落ち着いた男の声が降り注いだ。

 

 

『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』

 

 

そう、先生の声である。何を言ってるかは分からなかったけど、声を聞いて私は安心した。

先生なら大丈夫だ。と。

そう思っていると先生からの言葉は続く。

 

 

『私の名前は茅場(かやば)晶彦(あきひこ)。今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

 

 

先生の声に安心感を覚えるが、どこかが引っかかる……。隣にいるキリトも「な………」っと喉を詰まらせているし。

ちょっと待って。

“唯一”って言ったの?なんで?先生が作ったゲームだけど、先生はGM(ゲームマスター)なんてことはしないはず。どうして、どうして先生が……。

 

 

そんな風に頭をフル回転させていると、また声が降ってくる。

そして、私はこの先の言葉を聞いて自分の耳を疑った。

 

 

 

 

ログアウトボタンがないことは不具合ではなく、本来の仕様!?

 

 

自発的にログアウトすることができない!?

 

 

外部からナーヴギアが外されるとナーヴギアによって脳が破壊される!?

 

 

HP(ヒットポイント)がゼロになっても同様に脳が破壊される!?

 

 

私たちがこのゲームから解放される条件は第百層のクリア、つまりこのゲームのクリア……。

 

 

 

 

頭の中がまとまらない。

でもわかる。

先生が言うのだからこれは本当のことなんだと。

先生はこんな嘘はつかない。

ナーヴギアも私たちの脳を破壊することは可能だ。

信号素子が高出力のマイクロウェーブを発生させれば。それに必要なバッテリも内蔵されてる。

 

 

先生が話している間、キリトやクラインは非難の声をあげている。

それもそのはずだ、普通はそうなるだろう。でも、私は───

 

 

『───諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれ給え』

 

 

アイテムストレージを見るとそこには《手鏡》の文字。

取り出して私の顔を見てもただかわいいアバターが映るのみだ。周りを見ても皆同じような反応をしている。

 

 

───突然、キリトやクライン、周りのアバターを白い光が包んだ。

そして、そう思ったときには私も光に包まれる。

 

 

数秒後、目の前の光景は変わっていた。

 

 

キリトのいたところには、男の子か女の子なのかわからない線の細い顔立ちの少年?が。

 

 

クラインのいたところには、無精ひげが浮いている、まるで山賊?のような青年が。

 

 

「お前……誰?」

「おい……だれだよ」

「え……誰?」

 

 

それぞれが誰に対して言ったのかはわからないが、それぞれが呆然と呟いた。

 

 

え、ちょっと待って。てことは…………。

 

 

急いで《手鏡》を覗くとそこには現実世界の私の顔があった。

 

 

「はぁ………」

「うおっ……………オレじゃん……」

「え、私?」

 

 

私たちはもう一度2人の顔を見て同時に叫んだ。

 

 

「クラインとミーナか!?」

「おめぇがキリトでこっちがお嬢ちゃんか!?」

「え!?キリトとクライン!?」

 

 

私たちの手から鏡はスルッと落ちていき、パリンという音と共に消えてしまった。

周りも同じように現実の姿となっているのだろう。

あ、やっぱネカマは多かったみたいだ。

 

 

そんなことを考えていると再び先生からの言葉が───

 

 

『───この状況こそが、私にとっての最終的な目的だからだ。この世界を創り出し、鑑賞するためにのみ私はナーヴギアを、SAOを造った。そして今、全ては達成せしめられた。……以上で《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の──健闘を祈る。そして、()はどう生きるのか楽しみにしている』

 

 

 

 

そんな……先生………先…せい……。

 

 

 

先生はこのために……このために……、こんなにも…美しい世界を創り出したのですか……?

 

 

 

そんなの、あんまりです……。

 

 

 

私は……私は………わた…し…は……、どこへいけば…いいのですか……?





ここまでお読みいただきありがとうございます!

次回投稿はいつかわかりません。でも、なるべく早くします。

誤字、脱字等ありましたらご報告ください!

評価、感想の方も何卒よろしくお願いします!

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