それでは本編をどうぞ!
“ミーナです。雪崩の後に残るのはただ真っ白な雪景色のみですね。雪の下に何があったかなんてことはわからなくなってしまうものです。”
私にとって先生は目標だった。
先生のもとで研究をして、いつか私も先生みたいに……と憧れていた。
先生や先生の知り合いの方たちと過ごす日々はかけがえのないものだった。
だからこそ、この日常はいつも通りだと思っていた。
あぁ、私の研究もあと少しだったのになぁ……。
たくさんの人に相談はしたけど、なんだかんだ言ってこの研究は私にとって初めての大きな試みだ。自力で何とかしようとして、思っていたよりも多くの時間がかかっていた。
でも、あと少しで届きそうだったのに先生は……、
私を置いて更に遠くへ行ってしまうのですね。
私はどうすればいいのですか?
先生が渇望していた世界がこれなのですか?
私はなんでそれを止めることができなかったの?
なんで、どうして───。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「なんで…、どうして…」
「「おい、大丈夫か!?」」
怒号や悲鳴が飛び交う中、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった私に優しく手を差し伸べる人がいる。
キリトとクラインだ。
「どうした!?具合が悪いのか!?」
「立てるか!?お嬢ちゃん!?」
あぁ、大丈夫だ。
私は安堵した。
ゲームの世界に閉じ込められ、デスゲームを強いられてもなお、温かい優しさで手を差し伸べてくれる人がいることに。
この絶望の中では、自分のことで精一杯だろうに……。
周りを気遣ってくれるその優しさがあればいつか、そう、いつかは元の世界に戻れる、そんな日が来てくれるのではないだろうか。
そんなことで…と思う人もいるかもしれないけど、私にはなんとなくわかる気がする。
このような優しさを持つ人がこの世界を導き、照らす希望の光となってくれるのだと。
私も希望の光に当てられて、わかった気がする。私が、先生の姪であり、先生の弟子である私がこの世界でやらなくてはいけないことが。
もう、覚悟はできた。やってやるんだ。
私が先生を止めるんだ。
「うん、もう大丈夫だよ。2人とも心配かけてごめんね」
「なら良かった(ぜ)」
「クライン、ミーナ、ちょっと来い」
2人に謝って、立ち上がるとキリトが急にどっかへ行ってしまう。私とクラインは頭に?を浮かべながら混乱に飲み込まれている人たちの間を縫って、キリトについて行く。
まだ多くの人は叫び、泣き、ぶつけようもない怒りを地面に叩きつけ、茫然としている。
まさに阿鼻叫喚な地獄絵図である。
キリトはそんな人たちを意にも介さずに進んでいく。
キリトが路地の一本に入ると、こちらに振り向いた。そして、真剣な表情で口を開いた。
「………クライン、ミーナ。俺はすぐにこの街を出て次の村に向かう。お前たちも一緒に来い」
「なるほどね。この街の近くのモンスターはしばらくしたら、狩り尽くされてしまうかもせれないからね」
「そうだ。だから、今のうちに次の村を拠点にしたほうがいい。ミーナには言ってなかったかもしれないけど俺はβテスターだったんだ。だから俺は、道も危険なポイントも全部知ってるから、レベル1の今でも安全に辿り着ける」
このアイデアはなかなか良いものだと思う。この街の近くだと、
そう思っていたが、ここでクラインが口を開いた。
「でも……でもよ。おりゃ、他のゲームでダチだった奴らと一緒に徹夜で並んでソフト買ったんだ。そいつらももうログインして、さっきの広場にいるはずだ。置いて……いけねえ」
「「…………」」
キリトと私は押し黙ってしまう。
キリトはさっきβテスターって言ってたけど、そんな彼でも1人を守るのが精一杯で、2人目は正直きついんじゃないかと思っていた。それでも、彼は私たち2人にこの提案をしてくれた。本当に優しい人だ。
だけど、流石にそれ以上は責任を負いきれないのだろう。だから、押し黙ってしまう。
「いや……、おめぇにこれ以上世話んなるわけにゃいかねえよな。オレだって、前のゲームじゃギルドのアタマ張ってたんだしよ。───だから、おめぇとお嬢ちゃんは気にしねぇで、次の村に行ってくれ」
クラインはこの提案にただ首を縦に降るのではなく、友人をどうにかしないと、ということを考えている。でも、彼もそれがどんなに重要なことなのかがわかっている。だから辛そうにして言葉を振り絞ったのだろう。やはり、彼も仲間を思いやる優しさがある。だから、キリトに迷惑をかけないようにしたいのだろう。
「……なら、ここで別れよう。何かあったらメッセージ飛ばしてくれ。」
「……うん、そうだね。クラインとはしばらくお別れだね。……あ、そうだ!クラインとフレンド登録してないよ!しよ!」
「お、おう!フレンドになろうぜ!お嬢ち「ミーナでいいよ」わかった。ミーナ、何かあったらメッセージ飛ばしてくれよな」
「うん、わかった。それじゃあ今度こそお別れだね」
「ああ、そうだな」
踵を返して歩き始めたキリトに私はついて行く。直後に再びクラインが後ろから短く叫んだ。
「キリト!ミーナ!」
「…………」
「へ?」
「おい、キリトよ!おめぇ、本物は案外カワイイ顔してやがんな!結構好みだぜオレ!!そして、ミーナ!キリトに言われてから、本物は中身が男だと思ってたけど、やっぱりカワイイお嬢ちゃんだったな!悪りぃな!!」
「お前もその野武士ヅラのほうが十倍似合ってるよ!」
「私は元から女の子だからね!あと、クラインもそのバンダナなかなかイカしてるよ!」
そして私は、この世界でできた初めての友人に背を向けて、もう1人の友人と共にまっすぐと、歩き始めた。
大丈夫。
そして、今は
私は大きな期待を胸にはじまりの街の北西ゲートへと向かった。
急ごうと言って走る彼の背中を追いながら。
そして、私はどこまでも続くこの世界を走り抜けて行くのだ。
私の運命に多くの人を巻き込みながら───
「そういえば、私ってキリトとフレンド登録してないよね?しようよ」
「お、おう。そうだな」
こうして私のフレンド一覧に《Kurain》と《Kirito》の文字が追加された。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
小説を読み返してると割と忘れてるところもありますよね?
自分はキリトが最初は自身のリアルの顔を嫌ってる?(間違えてたらすみません……)ってところを完全に忘れてました。
あとは、アニメとの違いもあるので、ゆっくりと読みながら見るのも楽しいものだなぁと思いますね。
よかったら、試してみてください。
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