召喚の儀から数日が経過した。“黒”の陣営が籠もるミレニア城砦は、ルーマニアの長閑な日差しの下に、静かに佇んでいる。
敵陣営も七騎のサーヴァントを召喚したことは分かっている。
未だ闘争は起こっておらず、互いが互いに神経を張り詰めながらも様子見に徹しているというのが現状だった。
平穏な時間が流れている。しかし、誰もが理解していた。この凪いだ空気は見せかけのものでしかなく、水面下では熾烈な情報戦が行われている。武力を叩き付け合う以前の段階でしかなく、それもほぼキャスターとダーニックが行っていることであって、その下につく他のマスターやサーヴァントには関わりがない作業だった。
よって、この数日間を、マスターとサーヴァントたちは各々自由に過ごしていた。
本格的に闘争が始まる前の、この僅かな一時は、マスターとサーヴァントが互いを知る上で重要な時間である。
ダーニックはランサーを王として迎え、臣下の礼を執る。
ロシェはキャスターを師と仰ぎ、その技術、思想を残さず吸収しようと懸命に学びを深めている。
セレニケはライダーの強すぎる好奇心に辟易しながらも、その可憐な容姿を如何にして汚すのかを思案する。
ゴルドはセイバーが口を開くことを禁じた。セイバーもそれを是とした。互いに言葉を交わすことなく主と従僕の関係に終始することを選んだのだ。
フィオレの弟のカウレスはバーサーカーと何とか意思疎通をしようとして健気に話しかけている。バーサーカーの狂化のランクが低いことから、コミュニケーションは可能かもしれない。
そして、フィオレは――――
「あなたは、本当によくわからない人なのですね」
未だ、アーチャーのことが理解できていなかった。
二人の関係は良好だ。アーチャーは皮肉屋で、時折子どもっぽい部分が垣間見えることもあるが、それが人間臭くてフィオレには好ましく思えた。ランサーのような王者であったら、こうして同じ部屋にいるだけで息が詰まってしまい、戦う前からグロッキーになっていたことだろう。
その点、アーチャーは優秀だ。
足が動かないというフィオレのハンデを理解し、それに合わせて的確なサポートをしてくれる。サーヴァントとしてではなく、一個人として信頼に足る、と思える程度には、二人は言葉を交わし、互いの理解に努めていた。
フィオレは、ティーカップをソーサーの上に置いた。
仄かな紅茶の香りが、室内を満たしている。
「あなたが淹れてくれたこの紅茶、とてもおいしいわ。香りもすばらしい。いったい、どこでこのような技術を身につけたのですか?」
フィオレは、ユグドミレニアの才女であり、魔術の総本山とも言えるロンドンの時計塔で学んでいたのだ。もともと、ユグドミレニアは魔術師の間では軽蔑の対象となっていたが、魔術協会を離反する前まで、ダーニックが協会の上位層に食い込んでいたこともあり、地位そのものは低くなかった。
そういった事情から、フィオレは本当においしい紅茶というものを知っている。
仮にも紅茶の本場であるロンドンで暮らしていたのだ。こと、紅茶に関しては舌が肥えている自負がある。そのフィオレをして、素直においしいと認めざるを得ない完成度。手順も完璧であり、茶葉のよさを知り尽くしているからこそ可能な技だ。
フィオレが、感心しながら尋ねたことに、アーチャーは肩をすくめて答えた。
「さてね。残念ながら、それも思いだせん。記憶が無いにも関わらず身体が技術を覚えているのだから、奇妙なものだ」
「サーヴァントは完成された存在。生前の技能は余さず使えて当然ですものね」
紅茶を淹れるのが上手い。サーヴァントとして必要な技能ではないが、傍に置くには申し分ないといったところか。
それに、この技能一つである程度アーチャーが生きた年代が絞れるはずだ。
紅茶がヨーロッパに伝わったのは、貿易で躍進していたオランダが中国から持ち込んだことを契機とする。
イギリスには、西暦1600年代中ごろに入った。初めは薬として王侯貴族の間に広まり、その後、労働者階級に普及したことで、現在の紅茶大国としての地位がある。
つまり、アーチャーの正体は紅茶がヨーロッパに受容された十七世紀以降の英雄に絞られる。なるほど、それならばステータスが低いのも頷ける。神秘は重ねた歴史の分だけ重く、強くなる。歴史の浅いアーチャーのステータスが低いのは魔術の常識に照らし合わせれば至極当然のことなのだ。
しかし、十七世紀はロングボウが廃れ、マスケット銃が発展し始めた転換期に当たる。確かに、初期のマスケット銃よりは、ロングボウの方が威力で勝っているが、しかし、銃火器が台頭してきた時代にあって、果たして弓術で英霊まで上り詰めることができるのであろうか。
そこまで、考えて、フィオレははたと気がついた。
もしかしたら、アーチャーは、武名を上げ、人々からの信仰を得て英霊になったわけではないのかもしれない、と。
英霊は基本的には人々からの信仰を得て、人の魂が精霊の域にまで昇華したものである。
しかし、中には信仰ではなく、恐怖や憎悪といった負の感情が一周回って信仰心となったものもある。歴史に名を残した大悪人や、英雄に討伐された怪物、悪鬼などがそれである。そういった者は、正統な英雄ではなく、『反英雄』というカテゴリーに入ることとなる。
もしかしたら、アーチャーはそれではないだろうか。この聖杯大戦は、ダーニックが手を加えたことで英雄としての側面を持つだけの存在でも召喚を可能としている。弟が呼び出したバーサーカーなどはその典型例だ。それならば、このアーチャーもまた、正統な英霊ではないのかもしれない。
中世後半から近代にかけて、武器の発達と共に一個人が武名を上げる機会は大きく減った。しかし、メディアの発達に従って一個人が悪名を轟かせる機会は大幅に増えた。現代は、悪人の方が『座』に近い時代となってしまったのだ。
だが、フィオレは茶菓子を仕舞うアーチャーの背中を眺める。
このアーチャーが我欲に従って悪事を為すだろうか。
答えは否だ。
たった数日の付き合いでしかないものの、アーチャーの人となりはなんとなく感じることができている。
このアーチャーは、私利私欲で動くタイプではない。
これは、自分のサーヴァントが、そのような存在であって欲しくないという願望が多分に内包された思考であったが、フィオレは確信に近いものを感じていた。
知らず、フィオレの中にアーチャーへの信頼が芽生えていたのだ。
思考の海に沈みながら、アーチャーが淹れてくれた紅茶を口に運ぶ。
途端、口内に広がる豊かな芳香に頭がくらりとする。身体の内側から温まり、活力がみなぎってくるようでもあった。
紅茶でここまでの多幸感を得ることができようとは。
フィオレにとって、それは初めての経験であった。
「
冗談めかしてフィオレは言った。
「ふむ、そうだな。おぼろげながら、執事の真似事をしていたような気もする。もしかしたら、生前の私の立ち位置は、そのようなものだったのかもしれん」
「あら? そうなの?」
フィオレは、意外です、と言おうと思ったが、存外似合っているので言葉にできなかった。
「ああ」
と、アーチャーは認めながら、視線をやや下方に向けた。
「しかし、そのことに関して思い出そうとすると、どうにも不愉快な気分になるというか……少なくとも、私の中では封印しておきたい類のモノなのだろう」
「そうなのですか。すみません」
「いや、君が謝ることではないさ。ところで、君は何をしているんだね?」
アーチャーが視線を向けた先。フィオレは、なにやら布を手に取り、何かを磨いているようだった。
「これですか。ペンダントのお手入れをしているのです」
フィオレが首にかけていたペンダントは、普段は彼女の服の内側に隠れている。故に、アーチャーもその存在に今の今まで気づくことがなかった。
フィオレが掲げて見せたペンダントは、銀の鎖の先に真っ赤な大粒の燃えるように赤い宝石がついていた。手の平サイズのルビーは、緩やかなカーブを描く逆三角形。
「その、宝石は……」
アーチャーが珍しく、目を見開いた。それも非常に僅かな間だけで、すぐにもとの質実剛健とした表情に戻ったが。
「この宝石が何か?」
「いや、キャスターが多くの宝石を欲していたのを聞き及んでいるのでね。てっきり、そういったものは供出されているのかと思っていた」
アーチャーは取り繕うように、多少口早にそう言った。フィオレはアーチャーのそうした変化に気づくことなく、頷いた。
「そうですね。これは、キャスターのためにおじ様が取り寄せた宝石の中にあったものです。気に入ったので、無理を言って分けていただきました」
フィオレは、よほど気に入っているのであろう。ペンダントの表面を愛おしそうに撫でてから、首に掛け、そして、それを衣服の中に仕舞いこんだ。術を施し、魔除けの力を込めている。これから先、魔術師との戦闘で少しは役に立ってくれるだろうという思いからだが、魔術師としての合理性と、少女としての貴金属への憧れを両立させる手段としているのは明らかだった。
一方、フィオレの答えを聞いたアーチャーは、神妙な顔つきだ。
「……なるほど、そういうことか」
彼は、彼なりに思うところがあったのか、それ以上の詮索をすることはなかった。
それをフィオレは怪訝に思う。
「もしかして、宝石はお好みで無いのかしら?」
「いや。特に好き嫌いがあるわけではない。私は光物には興味がない」
「そうですか」
英霊になってまで貴金属に執着するのは、むしろ意地汚いとも思える。このアーチャーは、金銭に執着はないようなので、きっと生前からそうだったのだろうと、彼の過去に思いを馳せる。
無欲というか、朴訥としているというか。
いまいち、このアーチャーが何を望んでいるのかわからない。
「あ……」
フィオレは、そこで小さく声を漏らした。
「ん。どうしたんだね?」
アーチャーが、そんなフィオレに声をかける。フィオレは、間抜けなことをしてしまったことを恥じ入り、顔を紅くした。
「いえ、なんでもありません」
フィオレは誤魔化すように首を振った。
「ただ、此度の聖杯大戦における、あなたの望みを聞いていませんでした」
フィオレに聖杯に掛ける望みがあるように、アーチャーにも望みがあるはずだ。聖杯戦争に召喚されるサーヴァントは、基本的にそういう者たちで構成されるからだ。
「聖杯に掛ける望み、ということか?」
「はい」
フィオレは首肯して、アーチャーの次の言葉を待った。
「私は記憶が曖昧で、願いも何もないのだが……」
アーチャーは困ったように呟いて、苦笑する。
「しかし、ここにいる以上は、あなたには聖杯で望みを叶える権利があります。もちろん、それはわたしたちが聖杯を無事手に入れてからの話ではありますが、その時に望みはない、というのでは困るでしょう?」
アーチャーの記憶が無いことは百も承知。しかし、それでは困るのだ。パートナーであるからには、互いに確固たる目標を定めておく必要がある。フィオレは是が非でも聖杯が欲しい。この動かぬ足を癒し、大地をしっかりと踏みしめたい。だが、アーチャーのモチベーションが低ければその望みは叶えられない。
「そうは言ってもな。本当に聖杯に託す望みなど無いのだがな。記憶の有無に関わらず、望みは無いと答えたであろうし」
「望みがないサーヴァントなどいるのですか? 誰しも聖杯で叶えたい望みがあるから召喚に応えるのでしょう?」
人の手に負えない高位の存在を使役するからには、それ相応の準備がいる。令呪などその際たるものだが、精神的な縛りというのも有効だ。サーヴァントの現界にはマスターが必要不可欠だ。マスターなくして聖杯戦争に生き残れないのであれば、積極的な裏切りには発展しにくい。そういった事情から願いを持つ英霊に呼びかける形で、召喚は行われるはずなのだが。
「そうとも限らん」
しかし、アーチャーはそれを否定する。
「特に聖杯に興味がない者でも召喚には応えるものだ。例えば、より強力な敵と戦いたい、などという理由で召喚に応じる者もいるだろうし、単純に第二の生を謳歌したいという者もいるだろう。結局は、その者次第だ」
なるほど、とフィオレはアーチャーの説明に納得した。聖杯戦争に召喚されるサーヴァントの多くは、世界的に有名な武人だ。そういう者は、ひたすら武を競いたいと思い召喚に応じるのだろう。それは、確かに納得のいく話だ。
「俄然、あなたの望みに興味が湧きました。あなたは聖杯に託す祈りはなく、それでいて武人として生きてきたようにも見えません。果たして、あなたは、如何なる望みを聖杯に託すのか。……たとえ、記憶はなくともいいのです。今のあなたが何を望むのかということのほうが重要ですから。教えていただけませんか?」
「なかなかに難しい注文だな」
「ですが、わたしの望みはお教えしました。あなたの望みを知らないのでは釣り合いが取れません」
少し拗ねたように言うフィオレに、アーチャーはため息をついた。
彼女の言うことが尤もなことに思えたからであり、ここまで言われて口を噤む意味もなかった。本当に、大した望みはないというのに。
「そうだな。強いて言えばだが」
観念したように、アーチャーは嘆息する。そして、得意げな顔になって、己の望みを口に出した。
「世界の恒久的平和、などはどうだろう」
□
「もう、まったくゴルドおじ様ったら!」
アーチャーが暫定的な願いを口にした翌日のこと。鼻息も荒く、フィオレは自室に戻った。車椅子を押すのは、当然、最も傍にいるアーチャーの役割になっていた。
フィオレが、らしくもなく憤懣やるかたないという表情を見せているのは、ほんの数分前にセイバーのマスターであるゴルド・ムジーク・ユグドミレニアと廊下ですれ違ったことに端を発する。
「ご自身が優秀なセイバーを召喚したからって、鼻高々になっているんだわ。ええ、そうに違いありません!」
簡単に言えば、サーヴァントを馬鹿にされたのだ。さすがに、直接的に言われたわけではないが、アーチャーという特性も加味して、聖杯大戦は自分たちに任せていればいい。アーチャーは後方に控えていれば、勝利は決まる、などといった類のことを言われたのである。
「まあ、そう憤ることもあるまい。あれは、もとよりそういう類の人間だ」
「あなたは、なんとも思わないのですか?」
「仕方あるまい。彼が言ったことは事実だ」
アーチャーがあっけらかんとゴルドの言葉を認めたことが気に入らず、さらに不機嫌になるフィオレ。
「セイバーが前衛。私が後衛。なんの不思議もないだろう。彼が仕留められなかった敵を、私が仕留めれば聖杯大戦も早期に決着する」
アーチャーの言ったことが理解できず、フィオレは一瞬だけ思考を空白にした。それから、信じられないといった様子で口を開く。
「つまり、セイバーが倒せなかった敵を倒してみせる、と?」
「それくらいせねば、あれの鼻を明かしてやることはできまい」
フィオレは意外そうな顔で、アーチャーを見た。
「もしかして、ずいぶんと怒っているのではありませんか?」
「あの程度で気を悪くするほど、私は狭量ではない」
と、言いながらも、アーチャーから漂う雰囲気からは、明らかに機嫌を損ねていることが分かる。
フィオレは、そんなアーチャーが可笑しくて吹き出してしまった。
「何かね?」
「ごめんなさい。何でもありません」
ここ数日で、フィオレとアーチャーの仲は非常に良好なものとなった。
召喚前に抱いていた偉人達への畏敬も、召喚直後に抱いた落胆も、どちらも今のフィオレにはない。このアーチャーを召喚した事実を受け止めるには十分な時間が流れたし、その人柄に触れ、使い魔というよりも一個人として接するくらいにはなれた。そのため、笑顔で軽口を交わすことは茶飯事なのだ。
「それにしても、あの程度のマスターに使役されることになろうとは。かの大英雄も哀れなものだ」
「アーチャー。あなた、まさかセイバーの真名を知っているのですか?」
セイバーの真名は、ダーニックとランサーしか知らないはずだ。同じ陣営にありながら、真名の開示が致命的との理由から、ゴルドが真名を明らかにするのを拒否したからだ。
そのため、“黒”の陣営の中には真名不明のサーヴァントが、セイバーとアーチャーの二騎存在していることになる。
「真名は知らんが、推測することはできる。私の特技は、刀剣類を解析することでね。召喚時に彼が背負う大剣を解析したのだよ」
「な……」
フィオレは、絶句した。
解析の魔術は、比較的初歩の魔術だ。特定の分野に特化したフィオレは、多くの魔術を不得手としているが、それでも解析程度は使用できる。だが、宝具クラスを解析しようとは思わない。神秘のレベルが違いすぎるからだ。解析しようとした瞬間に脳が焼かれてしまうかもしれない。
しかし、アーチャーはそれを可能とした。しかも、今の口振りでは、その真名まで解き明かしているようだ。
「なぜ、それを早く言わなかったのですか?」
「君ときちんとしたコミュニケーションが取れる段階までは秘すべきだと判断したまでだ。まともに話し合いもできない関係で、火種を放り込むわけにもいかないからな」
火種、とはゴルドとの関係だろう。
フィオレがセイバーの真名を知ったとなれば、ゴルドはいい顔をしないはず。そのあたりの情報が揃い、また、フィオレの人となりを知るまでは、迂闊に口に出すことはできなかったということだろうか。
マスター同士の人間関係も、この聖杯大戦では考慮すべき要素の一つである。
「ゴルドおじ様には、悟られないようにする必要があったわけですね」
「ああ」
「では、ゴルドおじ様が召喚したあのセイバーの真名は、いったい?」
フィオレは、アーチャーに改めて尋ねた。
セイバーの正体に興味がある。知名度補正が最高であるランサー――――ヴラド三世に見劣りしないステータスを持つ剣士。真名の開示は致命的だと言わしめるその伝説。そして、尚且つ自分のサーヴァントが、初めて能力を見せた瞬間だった。ゆえに、セイバーの正体を聞いておきたかったのだ。
「あくまでも、剣からの類推に過ぎないが、構わないかね?」
「構いません」
フィオレが、首を縦に振るのを見て取って、アーチャーは答えた。
「あの剣は、ニーベルング族に伝わる聖剣・
「ネーデルランドの竜殺し――――ジークフリート」
アーチャーの言葉を受けてフィオレはセイバーの真名を口に出す。
そして、胸の内から湧きあがる大いなる畏怖に、息が止まりそうになる。
ジークフリート。
北欧神話のシグルズと起源を同じくするとされる竜殺しの剣士。
悪竜ファブニールを倒した際、全身にその血を浴びて不死の肉体を得たという。
そうだとすれば、ゴルドが真名の開示を渋ったのも頷ける。ジークフリートは如何なる攻撃も弾き返す鋼の如き肉体を持っていたが、その防御力は背中にまでは及ばない。竜血を浴びた際に、背中に張り付いていた菩提樹の葉のために、竜血が背中にまで届かなかったからだ。英雄ジークフリートの最後は、裏切りの刃をその背に受けたことによる。
それほどまでの大英雄を、セイバーのクラスで召喚した。ゴルドの自信は、虚栄でもなんでもなく、最強のサーヴァントを召喚したという事実に基づいたものだったのだ。
「さて、私がセイバーの真名を見破ったということは、ランサーには報告しておいたほうがいいだろうな」
「それは、なぜですか?」
「彼は、我々の王なのだろう? 私のような正体不明の者が彼から信頼を勝ち得るには、こちらから情報を公開していく努力が必要だろう」
「なるほど。確かに、そうですね。それでは、そのようにしましょう」
フィオレは、納得してこれからの予定を頭に浮かべる。
くれぐれもゴルドと鉢合わせをしないように気をつけながら、ランサーが機嫌のいい頃合を見計らおう。いざとなれば、アーチャーに紅茶でも淹れさせればいい。
そのようなことを考えながら、フィオレは車椅子のタイヤに手を伸ばしたのだった。
次話が最終話になるかと思います。
エミヤがApocrypha世界でどれくらいいけるか考えましたが、意外といけるんじゃね、という結論に落ち着いた今日この頃。
対“黒”のランサー戦。固有結界で勝利確定。結界内はルーマニアではない。
対“赤”のアサシン戦。上に同じ。バビロンの外では無力なセミラミスでは取り込まれた瞬間に敗北確定と見た。
対“黒”のキャスター戦。遠距離からの狙撃。もしくは固有結界。物量、威力共にエミヤが上。例の大軍宝具次第か。
対“黒”のライダー戦。あまり問題ないかと。近接ナメプして槍を喰らわなければ負けはないはず。解析で危険性も分かることだし、なによりホムンクルスを気にしてライダーが本気で戦おうとしない。
対“赤”のバーサーカー戦。
対“黒”のセイバー戦。ヘラクレス相手に六回も命を奪っていることからAランク宝具を六種類以上使えることは確か。それで遠距離から狙撃すれば、ダメージは与えられる。
“黒”のバーサーカーは問題ないはず。雷切とか投影できれば、電撃にも耐えられるかも。
このあたりまでなら、弱点をつきつつなんとかなりそう。アキレウスは、対神宝具が効くかどうか。カルナとかはムリゲー。勝てる気がしない。
ところで、アキレウスさんには