インフィニット・ストラトス DEEP   作:右左右 右左

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戯れ 二章
凰 鈴音という少女


リーグ・マッチ襲撃事件から数日、あの戦いも嘘であったかのようにいつものIS学園の日々が続いている。

 

そんな平和な学園の中で・・・

 

視線を感じる。

 

昼休みも終盤、楯無と廊下を歩いていると、後ろから視線を感じた。

 

「?」

 

振り向いて見ると、誰もいない。

 

「どうたの、薪君?」

 

「いや、なんか誰かに見られてる気がしてな」

 

「ああ、さっきから私達の事つけてる子?」

 

「え、わかってたの?」

 

流石は楯無、凡人の俺には気づかない事を当たり前のように気づいているな。

 

「まあ、バレバレだからね、ほら、あそこ」

 

「ん?ああ、あれか・・・」

 

楯無が指を指した方を見ると、廊下の通路の先の曲がり角からツインテールとおぼしき髪が片方だけ出ているのが見えた。

 

隠れているつもりなのかはわからないが、あれでは頭隠して尻隠さずと言った所になっている。

 

「なんだあれ・・・」

 

「あの子よ、あの子。酢豚の子よ」

 

「ああ、酢豚の・・・」

 

酢豚の子。以前一夏からの相談で出てきた、お味噌汁を毎日作って上げるではなく、酢豚を毎日作って上げると過去に一夏と約束をした少女の愛称である。

 

「中国の代表候補生 凰 鈴音。わずか一年間で、ゼロから代表候補生の座まで上りつめた、中国の期待のエースと言った所かしら」

 

「凰 鈴音ねぇ・・・そんな子が何だって俺達を?」

 

「多分、薪君を追ってきてるんじゃない?」

 

「えぇ?何だってまた」

 

中国の代表候補生にケンカなんか売った覚えなんてないぞ、一夏じゃあるまいし。

 

「聞いて見ればいいんじゃない?」

 

「近づいただけで、今にも逃げ出しそうな奴にか?」

 

廊下の角の端からでているツインテールはピクピクと触角のように動いている、近づいたら確実に逃げるな。

 

「じゃあ、待ち伏せすればいいじゃない」

 

「待ち伏せってどこで・・・ッ!?ちょッおい!」

 

楯無にガシッと手首を捕まれ、引っ張られる。

 

廊下の曲がり角を曲がり、そのまま近くにあった、掃除用ロッカーの中に引きずり込まれる。

 

密閉された真っ暗な空間、楯無を前にして背中に箒や塵取りの感触を感じ、僅かな隙間から外を見ることが出来る。

 

「ここなら、バレないわよ」

 

「・・・・」

 

いや・・・狭い!ロッカーの中に二人は狭い!

 

完全な密着状態、いやもうミッチミッチって感じだ。

 

「あれ?、あの二人は何処に!?」

 

外から声が聞こえる、ロッカーの隙間から見るとツインテールの活発そうな女の子がいた、制服は自分なりにカスタマイズされて肩が露出したものになっている。

 

「ふふ、見失ってる、見失ってる」

 

「・・・楯無、すまんがもうちょいそっちいけないか?」

 

無理やりロッカーに押し込まれた為、今楯無と俺は完全密着した状態になっている。

 

胸はもちろん、楯無の息使いまで耳元で聞こえ、ちょっとまずいのが楯無の股の間に俺の太ももが入っているのだ。

 

「なに、薪君・・・気にしてるの?」

 

ニヤニヤとこちらを見てくる楯無。

 

コイツ、楽しんでやがるな・・・

 

だが、ここで恥ずかしがっても男として恥、なんとか平穏を装って、この状況を打開するのだ。

 

「・・・いや、暑苦しいんだが」

 

「むぅ・・・薪君、女の子がここまで密着してるのに暑苦しいからどいてとか、それはないんじゃない?」

 

「お前は何を求めてるんだ、今はそういう状況じゃないだろ、というか押すな!背中の箒が刺さってるんだよ!」

 

更にグイグイと胸と身体全体を押し付けてくる楯無。

 

「ちょ、やめろ!普通に痛い!」

 

「サラや朱理の時みたいに薪君はもうちょっと私に対しても反応を見せるべきよ!」

 

「あれは向こうが気づいてないからだ!お前みたいにわかってて押し付けてくるのは・・・こう・・・あるだろう?」

 

「何よ!それ!」

 

ガッタン、ゴットンと楯無と俺が動く事によってロッカーが揺れる、外から見たらロッカーが生き物のようにすら見えるだろう。

 

「じゃあなんだ?美乳ですね、とでも褒めればいいか?」

 

「そういうのじゃなくて!こうもっとウブで困った感じの!」

 

「そんなの一夏にやれ!アイツは絶対ウブだから!」

 

コイツ・・・なんとなく、そういう傾向があると思ってたが、結構グイグイくるタイプなのね。

 

なおも、身体を寄せてくる楯無、意地でも俺の困った反応が見たいらしい。

 

「む・・・だったらこれはどう!」

 

「ちょっ!耳たぶを食むな!いだだだだ!箒が背中に!いいから!向こうに行け!」

 

「うわ!ちょっと!押さないで・・・きゃ!?」

 

「うぉ!?」

 

バン!という音と共にロッカーから出てしまう。

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

いや、倒れ方が悪かった・・・俺は今、ガッツリと楯無の胸を鷲掴みにして押し倒した状態になっている。

 

「・・・イヤン」

 

「・・・えっと・・・いい美乳ですね?」

 

「・・・・」

 

あ、これは蹴りが飛んできますわ。

 

そう覚悟した時、側に誰かがいるのを思い出す。

 

「・・・先輩達・・・何やってんの?」

 

「「あ」」

 

ツインテールの追跡者に見つかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、どうして俺を追ってきたんだ?」

 

凰に見つかったのを起点に、楯無の制裁を回避した俺は面と向かって凰と話す事にした。

 

「・・・・」

 

凰は無言でこちらを睨み付けてきて、一切話そうとはしない感じだ。

 

「はぁ、どうしたもんか・・・」

 

逃げないだけ、ましと言うべきか、しかし、話してくれないんじゃあ、これからも俺の事をつけ回すのだろうか。

 

困ったものだ、楯無の強制セクハラ以上に。

 

「薪君、今、変な事考えなかった?」

 

「いや、全然」

 

なんで、こんなに勘が鋭いのだろうか。

 

「まあ、任せて薪君、私が聞き出してあげる」

 

楯無が前に出て凰に対峙する。

 

なにやんだ?

 

「・・・あんた誰?」

 

「あら?自分の学園の生徒会長も知らないなんて、少し、痛めつけた方がいいかしら?」

 

なんだか不穏な空気が二人の間に漂う。

 

おいおい。

 

「おい、楯無。頼むから荒事は・・・」

 

「ぬふふ、任せてって言ったでしょ薪君」

 

楯無がワキワキと指を動かしながら手を広げる動作をする。

 

「な、あんた、まさか・・・」

 

凰が何かに気付き、逃げようと体を後ずさるが。

 

「イッツ・ショーウターイム!!」

 

「きゃ、きゃあ!ちょ、止め!!」

 

そこからは楯無の一方的な蹂躙が始まった。

 

くすぐりと言う名の。

 

「ちょ!あは、あははは!!やっ、止め!」

 

「ん〜?ここか?ここの方がいい?」

 

「や、止めって!ヒィ!あははははは!」

 

廊下中に凰の悶え苦しむ笑い声が響いている。

 

「楯無、それ意味あんのか?」

 

「先輩の言う事を聞かない子はこうした方が一番なのよ、人を強制的に笑顔にさせる私の処世術。後、趣味」

 

「おい」

 

くすぐりが趣味って・・・また、嫌な趣味を。

 

「ふ、ヒヒヒ!もう止めて!わかったから!」

 

「本当に〜?薪君の後をつけてた理由を教えてくれる?」

 

「ほ、本当にだから!だからくすぐりはもう止めて!」

 

はぁ、と楯無から解放される凰。端から見たらただの後輩をいじめている上級生二人なわけだが。

 

「で、どうして俺の事を?」

 

「それはゼェ・・・一夏のゼェ・・・先輩ゼェ・・・だからゼェ・・・」

 

息も絶え絶えに、言葉を絞りだす凰。

 

やり過ぎだろう楯無・・・

 

「何だって、一夏の先輩だから追ってくるんだ?」

 

「・・・・」

 

一度大きく深呼吸し、息を整える凰、そして、ポツポツと話し始めた。

 

「一夏と私は・・・幼なじみで、昔、よく私のせいで一夏が上級生とケンカする事があったの・・・」

 

「・・・・」

 

「私・・・こんな性格だし、態度が悪いとか、気に食わないとかで、男の上級生が私に手を出そうとした時は一夏がいつも守ってくれたの」

 

「・・・・」

 

「その時は、いつも怪我して帰ってくるのに、笑顔で・・・もう、大丈夫とか言ってくるし・・・」

 

過去を思い出したのか、少し凰の目元に涙が浮かんでいる。

 

「・・・なるほど、だから今度は自分からどんな上級生か確認して、大丈夫な奴かどうか見定めようとしたのか」

 

「そんな、所・・・」

 

確かに、凰は攻撃的な性格と言えばいいだろうか、上級生である楯無や俺に対しても敬語などは一切使わない、そういった所に目をつけられたのだろう。

 

「で、どうだった?俺は大丈夫な奴か?」

 

凰は顔を上げ、俺を見る。

 

「一夏からもあんたの事は聞いているし、今もこうしてなにもしない奴だから、安心してる」

 

「そうか、それは良かった・・・」

 

どうやら、放って置いても勝手に解決したものだったらしい。変に思われてたらどうしようと考えていた。

 

「さっきのがなければ」

 

「え?」

 

凰の目が再び鋭いものに変わる。

 

そして、キーンコーン、カーンコーンと昼休みが終わる鐘の合図がなる。

 

「女子をロッカーに連れ込んだ挙げ句!押し倒していやらしい事をする奴なんて!絶対に!一夏の先輩だなんて認めないから!」

 

「ちょ!待て凰!それは誤解だ!!」

 

こちらに指を指しながらツカツカと廊下を歩き、捨て台詞を吐く凰。

 

「あんたみたいなエロ魔神!いつか私が成敗してやるんだから!!」

 

「エロ魔神!?」

 

廊下の角を越え、姿が見えなくなった。

 

「・・・はぁ、俺達も教室に帰ろう、楯無」

 

凰の事はとりあえず諦めて、今は午後からの授業を受けに行こう。次会った時は誤解を解かねば。

 

「ねぇ、薪君?」

 

「ん?」

 

楯無に肩を捕まれる。

 

「私に何か言う事は?」

 

えっと・・・凰から聞き出してくれた事だろうか?それとも・・・

 

「あ、ありがとうございました?」

 

「フン♪」

 

「ぐぼっ!」

 

楯無の綺麗な回し蹴りが決まり、ロッカーにぶちこまれる俺。

 

あれ?これ何言っても蹴られたのでは?

 

その日の5時限目、俺は目を覚まさずロッカーの中で過ごす事になった。

 




なんだかほとんど楯無のスケベ話になってしまった。
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