余りものチーム
襲撃事件からしばらく経ち、6月の頭、月曜日。
「では、朝のSHRを終わります」
「起立、礼」
先生が教室を出ていき、ザワザワと教室内が騒がしくなる。
こう見るとただの高校なんだけどなぁ。
そう、思いながら、朝に先生に配られた、プリントを見る。
学年別個人トーナメント
文字通り、学年別で行われるトーナメントだが、この前のリーグ・マッチと違う所は全員強制参加と言う、見るからに長ったらしい事になる行事だ。
専用機持ちも専用機を持ってない人も参加のごちゃ混ぜトーナメントな為、全行程を一週間かけてやる。
そして、この前の襲撃事件を考慮し、今回はペアを組んでタッグマッチになるという事だ。敵が来ても四人でフルボッコにしろよ。との事か。
「てな訳で、楯無」
「無理よ」
「なんでだ!」
撃沈。
楯無と組めば楽々と優勝まで行ける気がしていたのに。
「私はもう組む相手決まってたから、薪君は頑張って探してね」
「ぐぬぬぬ」
飄々と俺をあしらう楯無。
羨ましいぞ楯無と組む相手、国家代表が味方とか絶対楽じゃん。
「薪君には強くなってもらわないと困るんだから、私と組むんじゃなくてもっと別の子と組んでみたら?」
「んなこと、言われてもなぁ」
「もちろん、薪君は私が育ててあげるから、何か分からない事があったら言って、お姉さんが優しく教えてあげる」
きゃるんと自分のほっぺたを人差し指で押さえながら、ウインクしてくる楯無。
それを無視しつつクラスの後ろを見る。
「なら」
国家代表ならうちのクラスにはもう一人いる。
席を立ち、ソルの座る席まで移動し、正面からお願いしてみる。
「ソル、俺と」
「ああ、すまない薪、さっきサラと組む事になったんだ」
「早い!」
轟沈。
さっきから、最後まで言わせてくれない。
二人連続のお断り、なんだか泣きたくなってきた。
「組む相手がいないのか薪?」
「そんな所だが、後他に誰がいいか・・・」
「なら、霞はどうだ?あの子は私達位に強いし、味方なら頼もしいぞ」
霞・オウアランダー。このIS学園に入って最初の頃にやった、クラス代表決定戦にて、国家代表を押さえて、クラス代表になった子だ。一様、俺自身、副代表な為、面識がない訳ではないが・・・
「無理だ」
「なんでだ?」
「アイツとはコミュニケーションをとれそうにない、相方になるなら、それは致命的だろ、というかアイツ俺の事避けてる気がするし」
そう、オウアランダーは上がり症で人見知りなど、人との会話がとにかく出来ない。この前も話しかけようとしただけで逃げられてしまった。
「む?・・・薪には興味がありそうな感じだったのだが」
「ないないって、それなら、せめて会話くらいはしてくれるって」
「そうか・・・」
「ああ、そうだ、すまんなソル」
「いや、こちらこと期待に答えられなくてすまない、薪、頑張って相方を探してくれ」
ソルに手を振り、席に戻って突っ伏す。
楯無が全て分かってたように笑いながら聞いてくる。
「どうだった?」
「駄目でした」
「まぁ、国家代表だものね、そう易々と組めるものじゃないわよ」
「くそぉぉ・・・」
嘆いていても拉致が明かない。
席に戻ったのも束の間、再び席を立ち上がる。
「どこいくの?」
「トイレだ」
「ああ、遠いものね」
男子トイレはIS学園にて少ない。一番近くて一年生の廊下の奥だ、急がねば。
「そう言えば薪君、伝え忘れてた事があるんだけど」
「あ、何がだ?」
「SHR中に新しく入ってきた二人の一年生の転校生の話ししたじゃない?」
「ああ、一夏は人気だなって、何だって二年生には転校生がこないんだか・・・」
朝のSHRの楯無との小さな声の会話、その時はタッグトーナメントの事で頭が一杯でまた一夏目当ての子が来たのかと気にしてなかったけど。
「それなんだけど、片方は男の子らしいのよ」
「へぇ・・・え?」
男?ようやく俺と一夏以外にも男が見つかったのか。だけどニュースなどではそんな男性操縦者が見つかった話しなど全然見なかったが。
「それでね、その男の子なんだけど」
「ああ?」
「その子には、気をつけてね、薪君」
「?」
楯無が少し真剣に言ったその事をその時はさして気にも留めなかった。
「男性操縦者ねぇ」
そうぼやきつつ階段を降りると遠くから誰が走ってくるのが見える。
一夏だ。そして、その手で誰か一人女の子を引っ張ってこちらに走ってきている。
「ん?おい!一夏、廊下は走るな!」
「薪先輩!?」
俺の前で急停車する一夏ともう一人の女の子。
また、一夏が女の子をたぶらかしているのか。
金髪の髪の毛で後ろは結んでいて、瞳は緑色。背は中くらい、胸はほとんど無く、中肉中骨の・・・
いや・・・女の子じゃない?男子用のスラックス履いてるって事は・・・
「すみません先輩、あ、コイツ、俺達と同じ男の操縦者のシャルルって言うんです、こっちは先輩の薪先輩だ」
「えっと、シャルルです、よろしくお願いします、薪先輩」
「お、おう・・・よろしく・・・」
また、イケメンか!
一夏のように格好いいとはまた違ったベクトルの、綺麗、可愛い、と言った感じの子。
男の娘か!
神様は理不尽だな・・・
そう思っていると、一夏達が走ってきた方向から黄色い悲鳴が上がる。
「いたわよ!」
「待って〜!織斑君!デュノア君!」
「こちらAチーム!目標を補足した、Bチームは先回りしろ!」
ヌーの大群ってこんな感じと言わんばかりの女子達が廊下を走ってくる。
「すみません先輩!俺達急いでるんで!行くぞ!シャルル!」
「え?キャ!?」
再び走って行く一夏達、イケメンは大変だな。というか今女の子の声が聞こえた気が。
「全く、やれやれ」
一夏達の背中を見送った後、俺は一人、迫りくるヌーの大群(女子生徒達)の正面に立つ。
時には先輩らしくアイツらに威厳を見せないとな。廊下は走るな、ルールはルールだし、しっかり言えばアイツらも止まるだろう。
一度大きく息を吸い込んでから、両手を組んで言う。
「お前ら!廊下ははし・・・って!、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「「「「「キャァァァァァァ!!!」」」」」
ドドドドドッと俺は大群に引かれた。
聞いた事がある、とある牧場がヌーの大群に対抗するために有刺鉄線(バッファローフェンス)を置いたにも関わらず、全員突っ込んできて、牧場が荒らされてしまったと言う事を。例え何か障害があったとしても、彼らはそれすらも踏み越えて行くんだね。自然って凄い。
奴らが通った後はペンペン草すら残らない、服に足跡をつけられながら、俺は倒れこんでいた。
「わー、ってあれ?マッキーどうしたの?」
「・・・・」
ノリで後をつけてきたのか大群から大きく遅れて、本音が来た。
「マッキーボロ雑巾みたいだね」
チョンチョンと座り込んでこちらをつついてくる。そんな本音を見ながら俺は最後の息を振り絞って言う。
「イケメン・・・死すべし・・・」
俺はそこで息絶えた。
昼休み 食堂
はじめましてッス。ギリシャ代表候補生のフォルテ・サファイアって言いまっス。
今は相方のダリル先輩とお食事中ッス。
「ダリル先輩〜、食後のデザート持って来たッスよ」
「おお・・・ありがとな」
持って来たのは、ダリル先輩にモンブランと、私用にチーズケーキ。
どっちも美味しそうッス。
「すみませんッス。ダリル先輩が食べたかった有里 千秋さんが作ったスペシャルデザートは完売してたみたいで、普通のデザートになってしまったッスけど」
「いや・・・別にいい・・・」
ハムッとさっそくチーズケーキを一切れ、口の中に頬張る。
む〜ん、やっぱりIS学園のデザートは美味しいッス。そこら辺で売ってる、ケーキなんかよりも格段に違う、そんな美味しさを感じるッス。
そんなケーキに舌包みを打っていると、ダリル先輩が未だにモンブランに手をつけないのを発見する。
「ダリル先輩、食べないんッスか?、食べないなら、そっちのモンブランもちょっぴり食べさせて欲しいんッスけど」
口をあ〜ん、と開けモンブランを口の中に入れてくれるのを待つ。
あ、私とダリル先輩はぶっちゃけると実は恋人同士なんッス。女性同士が付き合っているなんて、って思われるかもしれないッスけど、私はダリル先輩のサバサバしてるけど、時折格好いい所見せてくれる所が好きになったッス。
性別は関係ないんッス。好きになった人がたまたま女性だっただけッス。
それに、全く別の所で作られたはずのISの相性も抜群でスッし、もう、運命しか感じられないッス。
「・・・・」
「あれ、どうしたんッスか?ダリル先輩?」
「・・・ああ、いや、ちょっとな・・・」
動かないダリル先輩、いつもなら文句を言いつつも私の事を甘やかしてくれるんッスけど。なんだか今日のダリル先輩は悩んでるみたいッス。ご飯を食べてる時も、口数が少なかったッスし。
「ダリル先輩らしくないッスよ、私達恋人同士なんッスから、隠しごとは無しで話し合いましょうッスよ」
「隠しごと・・・そう、だな」
ダリル先輩の顔がいやに真剣なものになる、それはさて置き、くれないなら、ダリル先輩のモンブランを頂いちゃいますッスか。
手を伸ばし、モンブランが乗った皿を手に取ろうとした瞬間、ダリル先輩が口を開く。
「オレ達・・・別れないか?」
「え?」
カランと私が持っていたフォークが落ちる音がした。
どうしてッスか・・・
ダリル先輩との昼食を後に私は一人、負のオーラを撒き散らしながらトボトボと廊下を歩いていた。
猫背な背中がいつもより猫背に、時折心配そうに見てくる視線すら感じるけど、そんな事はどうでも良かった。
「なんで・・・いきなり・・・あんな事を・・・」
オレ達・・・別れないか?
フラッシュバックするあの光景。
「ダリル先輩に聞いても、すまないの一点張りッスし、何だって・・・いきなり・・・」
まさか!
「ここ最近の私の態度のせいッスかね・・・ダリル先輩と私、二人とも面倒くさがりやのマイペースッスし・・・私がいつの間にかダリル先輩に負担をかけていてそれで・・・」
思い出すのはちょっと前の機体調整の時。ダリル先輩が早く終わらせたいのに私は風見野と喋ってましたし。
「あの時か?、いやまた別の時かもしれないッス・・・」
ふと最近の自分の行動を思い出すと、ダリル先輩にとってマイナス点がちらほらと上がってくる。
「そんな私に見切りをつけて、別れ話なんかを・・・私のせいッス・・・」
ダリル先輩はしっかりしている、私の用な子でなくとも、ダリル先輩のような人なら引く手あまただろう。
「はぁ・・・私・・・ダリル先輩と別れたくないッス・・・でも、どうしたら・・・」
トボトボと歩いていると廊下の張り紙が目に入る。
そこには。
学年別個人トーナメントの案内
そう書かれていた。
「ああ、もうそんな時期ッスか・・・って言っといてもうちのクラスはバケモンばかりで優勝なんて・・・」
そう思いつつ、張り紙を見ていると最後の優勝景品に目がついた。
優勝景品
有里 千秋が作る、スペシャルデザート優先権ペアチケット
「これッス!」
確かダリル先輩はかなりの甘党だ、ちょっと前からスペシャルデザートは食べたそうにしてたし。これを入手してダリル先輩と一緒に食べれば・・・関係の修復が見込める!
以下妄想シーン
いつもの食堂、私達の前にはドデカイパフェが置かれている。
「凄いッスね、ダリル先輩!さっそく頂いちゃいましょうッス!」
「ああ、そうだな・・・って・・・」
ダリア先輩の方にあるパフェをジッと見ているとダリル先輩が私の視線に気づく。
「なんだ、フォルテ?これが食べたいのか?なら・・・口移しで食べさせやるよ」
「そ、そんなダリル先輩・・・回りに人も居まッスし・・・」
「別に気にする事なんてねぇじゃねぇか、むしろ回りに見せつけてやればいいじゃねぇか」
顎を捕まえられ、顔を向けさせられる。ダリル先輩の綺麗な顔が目の前にある。
「ダ・ダリル・・・先輩・・・」
「フォルテ・・・」
二人の影がゆっくりと近づいていき・・・そして・・・
「ぐはぁ!完璧ッス!」
妄想から脱却した私は大きくガッツポーズを取る。
「なら、さっそく相方を探すしかないッス・・・でも・・・」
多分、他の専用機持ち達は既に、相方の目星はつけられているであろう。
今朝、風間野が、楯無とソルには既に断られているのを見ている。
「じゃあ・・・強い奴で探すなら、霞とか・・・いやコミュニケーションとれなくて無理そうッス、だったら、専用機は持ってないッスけど、クリスかサラか・・・いや、既に二人とも決まってそうッス」
ぬがぁぁぁぁと頭をかきむしる。
国家代表や一般生徒でも強いパイロット科の連中と対等に戦うにはどうしたらいいのか・・・
「「はぁ、どうしたもん(ッス)かね〜・・・ん?」」
いつの間にか近くに誰かいた。
その顔を見て、コイツならと決心した。
ここに二年生専用機持ちの余りものチームが結成する事になる。
はい、フォルテと組みます。
ダリル先輩はそれなりの考えあってフォルテに別れ話を切り込みました。
原作ブレイク?まぁ、最後までみて下さい。
シャルロットとラウラにはそれなりに接触していく予定です。