インフィニット・ストラトス DEEP   作:右左右 右左

23 / 24
後輩達のいざこざ

「凰とオルコット、そしてドイツの子か・・・」

 

アリーナ休憩室

 

月曜日の放課後、サファイアと一緒に訓練の為に第三アリーナを訪れたのだが、今は一年生の三人が二対一の変則マッチを行っていて終了するまではアリーナ内に出る事が出来ない。

 

その為、休憩室で待機し模擬戦が終わり次第、訓練をやろうと言う事になった。

 

しかし・・・なんだか気まずいな・・・

 

今休憩室には俺、サファイア、そして、楯無と鴉堕がいる。

 

休憩室にあるベンチに座り、後輩達の戦闘を見ている鴉堕を見る。

 

土曜日にお前に勝つとか言った手前なんとも話しかけ辛くなってしまった。

 

まぁ、もともと余り話す間柄でも無かったから深く気にしてはいないのだが。こう、敵として同じ部屋の中にいると・・・

 

気まずい・・・

 

「薪〜君、どう?上達してる?」

 

そう思っていると楯無が隣に座ってきた、それも密着するような形で。

 

今は互いにISスーツを着ている状態、普段はこうして触れて来ても制服を着ている為、気にならなかったが。ISスーツのせいで肌と肌が直に触れあうように感じてしまう。

 

「ああ、サファイアの指導のお陰でな、タッグ戦の知識量は増えて来たよ、後少し離れろ」

 

「いいじゃない、まだ汗なんてかいて無いし、それとも・・・気になる?」

 

少し、上目遣いで挑発するようにこちらを見てくる楯無。

 

ISスーツラインがくっきりと見える胸も目に入る。

 

「・・・止めてくれ楯無、お前とのこういったやり取りは疲れるんだ」

 

「むぅ・・・こう言うの絶対好きな癖に」

 

うっせぇ、好きだよ!だが今はそんな事してる場合じゃない!後学の為にも後輩達の戦闘を研究しなければ。

 

自制心を呼び覚まし、楯無から距離を取ろうとする・・・が。

 

「そうやってずっと根を詰めてると疲れるだけよ薪君」

 

腕を捕まれ楯無の胸の前まで持ってかれる。

 

「人間って柔らかい物を掴むと癒されるんだって・・・」

 

いや、待て・・・それはつまり胸を掴めと?

 

「大丈夫よ、この前みたいに蹴らないし、私としては・・・薪君に癒されて欲しいだけだから」

 

楯無から胸を揉んでいい許可が降りただと!?待て俺!!ブレーキ!ブレーキをかけろ!絶対何かある!

 

「わ、悪いが、楯無・・・その手には乗らんぞ・・・どうせ、嘘で〜すとか言うんだろ?」

 

「・・・・」

 

あれ、マジ?そこで無言は心理戦においては強いぞ!いやでも楯無の顔が全然赤くもなってないし、若干笑ってるし・・・でも、もう握れば掴んでしまう距離まで来ている。

 

・・・ちょっとだけなら。

 

自制心というブレーキがスッポ抜けてしまい、俺は生唾を飲んで楯無の胸を・・・

 

「何やってんッスか!!」

 

「腕がぁ!?」

 

サファイアの踵落としが俺の腕を蹴り落とす。今一瞬腕がくの字に曲がった気がする。

 

「よし成功!大丈夫、薪君?」

 

「何私の目の前でイチャイチャしてんスか、見せられてるこっちはフラストレーション溜まりまくりなんスッけど?」

 

「楯無、テメェ・・・」

 

まぁ、確かにこんな場所で楯無が仕掛けてくる方がおかしかったのだ、サファイアがアクションを取ってくるのを見越した行動だったのか・・・

 

「楯無・・・この借りは必ず返す・・・」

 

「返す所か、借金まみれにしてあげるわよ薪君」

 

痛む腕を押さえていると休憩室の入り口から何人か入ってくる。

 

「やぁ、君達も待ちの状態かい?」

 

「ごきげんよう、風見野さん、楯無さん、フォルテさん、舞姫さん」

 

「あら?みんな居るのね」

 

「・・・・」

 

休憩室に入って来たのは上からソル、ウェルキン、クリスさんにオウアランダーの四人だった。

 

「やっぱり、見に来たのね、ソルとサラは」

 

「いきなり始まった事には驚いたが、互いの後輩の試合だからな、二対一というハンディキャップマッチだが、ラウラなら問題はないだろう」

 

「あら?そうでしょうか?セシリアと凰さんはここ最近仲がよくなり始めたと聞きましたので、むしろ二人のコンビの前になすすべもなく負ける可能性もありましてよ」

 

「でも、見た所、二人は劣勢の状態ねソルちゃんの後輩の方が一枚上手みたい」

 

「流石クリスだ、一瞬で見抜いたか。ラウラは強いぞ、候補生には太刀打ち出来ない位にはな」

 

「・・・・」

 

あの銀髪の子、ラウラって言うのか。

 

突然ワイワイと騒がしくなる休憩室。誰が喋ってるかわからなくなってくる。

 

というか今この休憩室には・・・楯無、ソル、サファイア、鴉堕、ウェルキン、クリスさん、オウアランダーという、二年生のエースが勢揃いしている、一瞬で恐ろしい空間になってしまった。

 

「そう言えば、あの噂本当なのか?」

 

自動販売機で飲み物を取り出しながらソルが聞いてくる。

 

「噂?」

 

全然知らん。というかこの学園、いつの間にか色々な噂が広がっている所があるんだよな、女子高ならではなのか、まぁ、男子である俺はいつも耳にする事すらないんだが。

 

「ああ、学年別トーナメントで優勝したら学年問わず織斑君と交際出来るって噂?」

 

「そう言えば、そんな噂もあったな、まぁ恐らくその噂は間違いだろうがな」

 

楯無がソルに反応して答える、って一夏、また変な事に巻き込まれてるのか・・・

 

「じゃあ、どの噂よ?」

 

「あれだ、薪が舞姫に決闘を申し込んだという噂だ」

 

は〜ん、決闘ね〜そういう噂もあるのか〜・・・って・・・

 

「ちょっと待て!なんで知ってんだよ!」

 

まさかの二日前の出来事が早くも漏れだしてる。

 

「ほぅ、噂は本当だったか」

 

「うわ〜、本当だったんスか、バカッスね〜風見野」

 

「今度こそ、ジャイアントキリングなるか、と言ったとこかしら」

 

「あら、応援してますわよ、風見野さん」

 

「・・・・」

 

みんな知ってる感じだ!

 

何でだ?確かあの時いたのは俺と鴉堕とオウアランダーだけだったはずだ、オウアランダーは余り誰かと喋るヤツじゃ無いし・・・

 

そう思い、鴉堕の方を見る。

 

「なんや、ウチがそうベラベラと話すヤツに見えるか?」

 

いえ、全然。

 

「じゃあなんで・・・」

 

一体どっから話しが漏れたんだと思っていると、俺と鴉堕以外が全員、楯無を見る。

 

「あ、ゴメンね、薪君、私が言ったの」

 

「楯無ぃぃ!?いや、なんで知ってんの!?」

 

「私の情報収集能力を舐めないでね」

 

楯無が扇子を広げて笑う、その扇子には情報戦の三文字。

 

「諦めろ薪、もう二年生全体にはこの噂は広がってる」

 

「そうですわね、あまり目立った争い事のない二年生にはあっという間に広がってしまいましたからね」

 

な、何だってー!

 

なんという事だ・・・俺と鴉堕の勝負が二人の間の決め事だったのに、学年全体が知っているだと!?

 

勝負の内容までは知られてはいないみたいだが、事の次第が大きくなっていくにつれて不安も大きくなっていく。

 

「なんや、風見野、んなガタガタ震えて」

 

俺の様子を見た鴉堕がニヤニヤとしながら聞いてくる。

 

「いや、震えてはねぇよ、ただ・・・話しがデカくなり過ぎ・・・」

 

「なんなら、学年別トーナメントと言わず、今からタイマンで勝負してもええんやで」

 

「え!?」

 

今から!?一対一で!?

 

「ええやろ、今ならここにいるメンツだけやし、おまんも気は楽やろ」

 

「それはそうだが・・・」

 

「それとも何か?フォルテがいないと戦えへんほどおまんは未熟なんか?」

 

「ッ・・・」

 

今のはムカッと来た・・・

 

俺は鴉堕の前に立つ。

 

「なんや、怒ったか?」

 

「ああ、流石にそこまで言われたらな・・・」

 

「ほぅ、ええ顔しとるやん」

 

「鴉堕・・・俺と一対一で勝・・・」

 

勝負しろと言いかけた瞬間。

 

「あれ・・・危ない・・・」

 

いつの間にかアリーナを見渡せる窓にべったりとくっついていたオウアランダーがボソリと呟いた。

 

その場にいた全員がオウアランダーを見た時、大きな音がアリーナに響いた。

 

「な!?」

 

「なんや!?」

 

何が起こったのかと窓に近寄り、アリーナの中央を見るとそこには。

 

「セシリア!?」

 

「何をやっているんだ!ラウラ!」

 

「うわ・・・ひどいッスね」

 

そこには、二人を蹂躙しているラウラとボロボロになったISを纏っている凰とオルコット。

 

そして、その間に突撃していく零落白夜を発動させた一夏の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一夏がラウラを相手取って、戦闘が開始されたが劣勢、それを見かねたシャルルが一夏の開けたアリーナのシールドの裂け目を通り乱入・・・だが。

 

後輩達のいざこざは結果的には織斑先生の介入によって事を終えた。

 

だがその件が終わる際、アリーナ内全ての生徒に織斑先生が放った一言。

 

「では、学年別トーナメントまで私闘の一切を禁止する。解散!」

 

その言葉もあり俺と舞姫の一対一の勝負も流れてしまった。

 

燻る感情にいまいち集中が出来なかった俺は訓練を少しやった後、後輩達がいる保険室に向かった。

 

「おう、大丈夫かお前らって・・・」

 

「なによ?」

 

「なんですか?」

 

ベッドにはムッスーとした顔の凰とオルコット、想像通りだな。

 

二人とも顔や腕に包帯が巻かれている、見るからに酷い状況だ。

 

「後輩がケガしたって聞いたんだ見舞いに来ない先輩はいないだろう」

 

「別にあんたが来なくたって・・・」

 

「これくらいのケガ心配される訳が・・・」

 

「やっぱ、一夏の方が良かったか?」

 

「「・・・・」」

 

図星ですか。

 

ちなみに一夏はいない、ちょっと前までいたようだが用が済んだら帰って行ったそうだ。

 

「やっぱり好きな人にはずっといて欲しいよな〜」

 

「うっさいわね!ッ――!?」

 

「鈴さん、あまり騒いだらお怪我に触りますわ」

 

少し騒ぎ、痛そうにする凰をオルコットがなだめる。

 

「セシリア、アンタはコイツにからかわれてていいの?」

 

「わたしくしは・・・一夏さんに側にいてくれたら嬉しいのは本当ですし・・・」

 

「な――!」

 

少し恥ずかしそうに答えるオルコットに凰が唖然とする。素直な子だなオルコット・・・なら、素直な子にはそれなりの報酬を。

 

「じゃあ、後で一夏にオルコットの面倒を見ろって俺から言っておくよ、そしたらアイツも動くだろうし」

 

「まぁ、本当ですか、薪先輩!」

 

「な――!」

 

パァと笑顔の花が咲くオルコットに再び唖然とする凰。

 

「せ、先輩・・・私は・・・」

 

「頑張れ」

 

「そんな・・・」

 

酷く落ち込む凰、まぁ、オルコットを看病したら凰も見に行けって一夏に言って置くか、こんなケガで流石に可哀想だし。

 

そんな、一夏を中心とした話しや二人がISの損傷により学年別トーナメントに出れなくなったなどの話しを聞いていると突然保険室の入り口がスパーン!と開け放たれる。

 

「セシリア!大丈夫ですか!」

 

「サラ先ぱ!?ウプッ!?」

 

保険室に飛び込んで来たのはウェルキンだった。ウェルキンはセシリアを見るやいなやその豊満な胸でセシリアの頭を抱き抱える。

 

「ああ!セシリア!こんなケガを沢山して・・・大丈夫ですか?腕は?頭は?失明なんてしていませんよね!?」

 

「さ、サラ先輩・・・く、苦し・・・」

 

ギュウギュと胸に締め付けられるセシリア、今にも窒息しそうな勢いだ・・・しかし、大きなスイカが重なり合うように四つ・・・

 

「うわ・・・」

 

「どうした凰?羨ましいか?」

 

「それは、どういう意味で言ってるのよ」

 

「・・・大丈夫だ凰、一夏もわかってくれるって」

 

「先輩、ケガ治ったらコロス・・・」

 

最近、やけにコロス宣言されるな俺そろそろ寿命が尽きるか・・・

 

セシリアの体の状態を調べ尽くしたウェルキンが目に涙を貯めながら俺の方を向く。

 

「風見野さん、わたくし、やはり我慢なりませんわ!セシリアをこんな目に合わせて・・・あのラウラとか言う、小娘を今すぐにでも血祭りにあげて・・・!」

 

「バカやめろ、後輩達の間で起きた事だぞ、俺達先輩が出て行って何になる」

 

「イギリスの面子にかけてもこのままでは!」

 

「そういうのをやめろって言ってるんだ、お前が出たら向こうはソルが出てくる羽目になるだろ」

 

「しかし・・・しかし・・・」

 

「あの子がやった事はソルも怒っていた、多分何かしらの行動をソルなら移すよ」

 

涙を堪えて訴えくるウェルキン、どんだけ後輩LOVEなんだコイツは・・・

 

IS学園は世界稀にみる多国籍学園だ、それも軍事絡みの。多分今までも学生内での衝突が国にまで響いた事は何度かあるだろう、恐らく織斑先生はそういった経験からサラがラウラに向かって衝突をさせないように全学年に向かって私闘の禁止を言い渡したのか。

 

「あの、サラ先輩・・・すいません、私が勝手な判断をしたまでですので・・・結果こうなってしまったのはわたくしのせいです」

 

オルコットが申し訳なさそうに言う。凰もこの状況をみて自分が起こしてしまった事態に少し反省しているようだ。

 

「セシリア・・・わかりましたわ」

 

涙を拭い、落ち着いてから椅子にすわるウェルキン。

 

「セシリア、わたくし、スコーンを焼いて参りましたの、紅茶と一緒に頂きませんこと?」

 

「はい、もちろん頂きますわ、サラ先輩」

 

はぁ、良かった・・・ウェルキンが暴走しなくて。

 

安堵し俺はそろそろお暇しようと席を立とうとした時。

 

ジャムを縫ったスコーンが俺の前にも出される。

 

「どうぞ、風見野さんも」

 

「ああ、ありが・・・」

 

はッ!?

 

待て、確かウェルキンって出汁を取るのにフィッシュ&チップスを使うようなヤツだよな!?

 

受け取ってしまったスコーンに目を落とす、その間にもウェルキンは凰にもスコーンを渡し紅茶の準備まで終えてしまっている。

 

「では、頂きますわ」

 

「スコーンか、久しぶりに食べるわね」

 

「いや・・・え・・・」

 

後輩二人が躊躇なく・・・かぶり付く!

 

しばらくの間の無言が保険室を支配する。

 

「・・・どう、だ?」

 

「・・・うん、美味しいわよ?」

 

「ええ、サラ先輩が作るスコーンは美味しいんですの、作る度にその美味しさが高まっていくような」

 

「さぁ、風見野さんも食べて見て下さいな」

 

なん・・・だと?

 

メシマズでは無いのか!?

 

正直、鴉堕に勝負を挑もうとした時より震えている手を押さえ、そのスコーンを口に運んでみる。

 

「・・・・」

 

「どうですか?」

 

外はサクっと、中はホロリと崩れるような食感、味はプレーンの為インパクトはないがほんのりとした甘さにジャムが乗っかり互いを尊重し合っている、ここは保険ではない、まるでイギリスの王宮にいるような気分にさせ感じらる。

 

「うまい・・・」

 

「まぁ、良かったですわ、紅茶も召し上がって下さいな」

 

「ああ・・・」

 

どういう事だ・・・?出汁にフィッシュ&チップスを持ち出すような子だぞ・・・何故、何故こんなにも美味しいスコーンを作れるんだ?

 

学園生活は早くも2ヶ月、色々な問題を抱えながらもさらにクラスメイトの謎が一つ増えてしまった・・・

 

いつの間にかアリーナでの燻りは消え、俺はスコーンと紅茶をたらふく堪能した。

 




サラは面倒見のいい優しい先輩ですが、セシリアの事となるとキレます。

そりゃもう、キレたら国家代表レベルです。

サラの料理は今後も度々出てきます、バリエーション豊かな素敵な料理も。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。