インフィニット・ストラトス DEEP   作:右左右 右左

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A・F・O

クラス代表決定戦の全試合が終了し、俺は倉庫に戻っていた。

 

薄暗い倉庫の中、パーツの残骸に腰掛け、照明に照らされたISをただジッと見つめる。

 

不恰好なその機体を先程まで自身が身に付けて、戦っていたとは・・・

 

「どうしたの、黄昏ちゃって」

 

「ん?ああ、楯無か・・・」

 

楯無が倉庫の中に入ってくる。そのままISを見ながら、俺の隣に立つ。

 

「いや、今更ながら、自分が本当にISを使えるんだと実感してな」

 

「本当に今更ね、もう一週間も使ってるじゃない」

 

「なんだかな、お前と戦ってからそう感じたんだよ」

 

自分はISを使える、ちょっと前まではそんな事考えもしなかった。ある日突然、自分は特別な人間だと言われても信じられない。だが楯無と戦って自分は本当にISに乗っているんだと信じる事が出来た。

 

「戦ってね・・・、貴方との試合が一番面白かったわよ」

 

「面白かったって・・・お前、ほとんど遊んでいただろ」

 

「まあ、そりゃ本気は出してないけど?使ってない武装もあるし」

 

「やっぱりか・・・」

 

「強者の余裕って奴よ」

 

楯無との試合、自分でもなにやってんだと言いたくなるような試合だった。今思えば、あの砂塵を使った駆け引きも、砂塵が出来上がるまで楯無は待ってくれていたのだ、楯無が瞬時加速などを使えば試合はもっと早く終わっていたはずだ。

 

「でも、薪君が瞬時加速を使って来るとは思わなかったわ」

 

「どっかのスパルタ教師の教え方が上手いもんでね」

 

一週間の間での練習量はバカにならない程だった。毎日、放課後が始まったら、アリーナの終了時間までみっちり練習させられるのだ。

 

そりゃ、嫌でも覚える。

 

そんな、俺の言葉を聞いて、楯無が笑う。

 

「じゃあ、そのどっかのスパルタ教師に感謝しないとね」

 

「ああ・・・」

 

暫くの間の沈黙。それが少し経ってから楯無が思い付いたように言う。

 

「ねぇ?・・・このISの名前はどうするの?」

 

「名前?」

 

楯無は俺の隣に腰掛けて、ISを見上げながらそう言う。

 

「だって、コイツとか、薪君のISとかじゃあ。この子も寂しいじゃない?」

 

「確かに・・・名前か・・・」

 

いきなり言われても思い付かない、そんな事全然考えていなかったのだから。

 

「色々なISのパーツを使ってるからキマイラとかコカトリスとかはどう?」

 

「なんでそんな、神話の生物名ばかり上げるんだ・・・」

 

まあ、確かに神話の生物の名前から由来を取っている武器などはあるけど・・・安直過ぎないか?

 

「ん〜・・・」

 

色々なISのパーツか・・・コイツの特徴はそこだもんな。

 

「そう言えば、色々な国のパーツ使ってるけど企業の連中に怒られないかしらねコレ」

 

「・・・え?」

 

突然、不穏な事を言う楯無。

 

「基本的にISって一つの国の企業が独自に開発していく物だから、こういうキメラ型のISって無いのよね。正直、世界初よ」

 

なん・・・だと・・・。

 

確かに、ISってそれぞれの国が独自に開発している物だ。テレビでもそんなIS見たこともない。

 

「まあ、IS学園産のISとでも謳って置けば大丈夫でしょ。国際IS委員会が何か言ってくるなら話は別だけど」

 

「・・・・」

 

先行きが不安だ・・・。

 

「で、名前、何か思い付いた?」

 

楯無はそんな俺の気持ちも露知らず、無邪気にも先程の話題を聞いてくる。

 

全く、コイツの言動といい行動といい。暫くの間は振り回され続けそうだな。

 

「そうだな、じゃあ・・・」

 

世界中のISのパーツを使っている。各国がISの技術競争をしている中、こんな機体名があってもいいだろう。

 

腰掛けていたパーツから立ち上がり、ISの正面に立つ。そして、楯無に振り向いて言う。

 

「[All・For・One(オール・フォー・ワン)]、全ては一つの為にだ。」

 

そう聞いた楯無が少し笑って言う。

 

「万人は一人の為に、じゃあなくて?」

 

「人じゃないからな」

 

「確かにね」

 

振り返り、オール・フォー・ワンを見て言う。

 

「せっかく世界各国のISのパーツを使ってるんだ、いつか世界の技術が集約されたISにしてみせる」

 

「大層な夢ね」

 

「夢はでっかい方がいいだろ?」

 

「フフ・・・応援してるわ」

 

薄暗い倉庫の中、照明に照らされたオール・フォー・ワンと名付けたその機体はなんだか、頼もしくも思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「では、皆さんも知っての通り。クラス代表は霞・オウアランダーに決定です!」

 

朝のS・H・Rが始まり、王先生がクラス代表の発表をしたのだが。その結果に俺は驚愕していた。

 

「おい、学園最強さん、負けたのかよお前」

 

直ぐ様、隣の席の楯無を問い詰める。

 

すると楯無は照れたように言う。

 

「いや〜、霞ちゃん。ISの戦闘に関しては本当に強いのよね」

 

やっちまった〜、みたいな軽さで言われてもな。

 

「はッ、じゃあこれで学園最強はあの子の物か?」

 

「いえ、生徒会長の座を賭けた戦いでもなかったし。私の方がまだ物理的に強いからね」

 

つまり、ISを使わずに戦った場合は自分の方が強いと?いやだから、物理的に強さを求められる生徒会長ってどんな生徒会長だよそれ!

 

「それにね」

 

楯無が指先を教卓に向ける。そこでは王先生に連れられて、教卓まで来た、オウアランダーがいたのだが。

 

「さあ、霞ちゃん!クラス代表としてクラスの皆さんに何か一言!」

 

「王・・・先生・・・・・・」

 

「一言でいいんですよ!」

 

「え゛・・・あ゛・・・」

 

静かになる教室。

 

ああ、成る程。話すのが苦手な子なのか。確かに生徒達を引っ張る、生徒会長としては向いてないな。

 

暫く続く沈黙の後、オウアランダーが口を開く。

 

「よ、よろしくお願い・・・します・・・」

 

クラスから拍手が起こる、俺も拍手をする。

 

しかし、ああゆう、話すのが苦手な子を皆が注目する場所に立たせるのは酷じゃあないか、先生?

 

「じゃあ、次はMVPの発表です。前にも言った通り、MVPには副代表をやってもらいます。さて!今試合のMVPは〜?」

 

まあ、人と接して話すのも結局は慣れみたいな所があるからな。オウアランダーの成長の為に、先生もそうしたのか。

 

「風見野 薪君です!」

 

・・・・・・

 

え?ごめん全然聞いてなかった。

 

クラス全員がこっちを見てる。

 

「?」

 

思わず口に疑問符を出してしまった。

 

「風見野君が、今試合のMVPですよ。さあ、教卓まで来て下さい」

 

「いやいやいや、なんで!?」

 

俺がMVP!?国家代表やら候補生がひしめくパイロット科で俺がか!?初戦に敗退した俺じゃなくてもっと他にいるだろ!楯無とか!

 

「風見野君の一週間での成長ぶりや国家代表との戦いに置いての作戦などが評価されてMVPに選ばれました」

 

そう言ってタブレットを取り出してこちらに見せてくる王先生。そこには試合のデータや投票数、後俺が砂塵を巻き上げている画像などが映っていた。

 

「そんな・・・」

 

「さあ、観念して教卓に来るのです」

 

王先生の小さな手に引っ張られ教卓に連行される俺。教室の真ん前に立ちクラス全体を見渡す。あ、楯無口押さえてめっちゃ笑ってる。

 

「MVPで副代表の風見野君!何か一言!」

 

「えっと・・・」

 

「あ、二言でもいいですよ!」

 

「オウアランダーとの対応違いすぎませんか、先生!?」

 

突然そんな事言われても困る。ごめんオウアランダーさっき話すの苦手な奴とか言ったけど、誰だって唐突な事には対応出来ないわ!

 

暫く続く沈黙の後、俺が口から捻り出した言葉は・・・

 

「・・・よ、よろしく?」

 

クラスから拍手が起こる。

 

「では、以上でS・H・Rを終了します!休み時間に入って下さい!」

 

王先生が教室から出ていく。

 

「完全にスベった・・・」

 

最悪だった・・・

 

そう感じていると突然フラッシュがたかれる。

 

「はーい、新聞部でーす!期待のルーキー風見野 薪君と二年のエース霞・オウアランダーさんの取材に来ました!」

 

今度はなんなんだ突然。

 

「あ、私は二年整備士科の黛 薫子。新聞部副部長やってまーす。ああ、風見野君は朱理から色々聞いてるから、よろしくね」

 

「ああ、よろしく・・・」

 

朱理と知り合いなのかコイツ。

 

「ほぅ、朱理が言ってた通り大人びてるけど、幸薄そうな感じ・・・」

 

「初対面の人間に対して中々ないいようだな」

 

「まあいいや、写真撮らせてね!はい!、カマンベール」

 

チーズってか・・・

 

フラッシュがたかれる。そのまま俺、そしてオウアランダーの写真を何枚かとられていく。

 

「よし、最後に代表と副代表が握手してるとこ撮らせて」

 

「握手?わかった」

 

代表と副代表が握手か。まあ、そういう写真はあるよな。

 

そして、手をオウアランダーに出すのだが・・・

 

「あ゛・・・あ゛・・・」

 

手を出したり引っ込めたりするオウアランダー。

 

顔も大分赤い、照れているという訳ではないようだが・・・

 

「おい、大丈夫か?オウアランダー?」

 

「ああ゛!?・・・ッ!・・・」

 

「ちょ!?おい!?・・・」

 

そのまま、手を繋ぐこともなくオウアランダーは教室を飛び出してしまった。

 

「あちゃ〜、やっちゃたわね薪君」

 

「あ、たっちゃん!」

 

「やっほー、かっちゃん!」

 

そう言って後ろで会話する楯無と黛。お前ら知り合いだってのか。

 

「どうすりゃ良かったんだ楯無」

 

「霞ちゃん、話すの苦手だし、人見知りだし、上がり症だから、接するのが難しいのよね。私も中々会話出来た試しないし」

 

だからあんな勢いで飛び出していったのか。

 

「ふーん、霞・オウアランダーさんはそういう人なのか」

 

そう言って新聞部らしくメモを取る黛。

 

「じゃ!パイロット科も色々大変だと思うけど頑張ってね風見野君!新聞にはクラス代表にフラれた副代表って書いとくから!」

 

「おいちょっと待て!それは不味いだろ、色々!!」

 

「じゃあね〜!素敵な一時をありがとう!」

 

「おいぃぃぃぃい!!」

 

教室からすばやく去っていく黛、捕まえようとした時には既に遥か彼方に消えていた。

 

「色々大変ね薪君」

 

「本当だよ・・・」

 

楯無に慰められるが朝から食らっているこの心の傷はそう癒えるものではない。

 

「ったく、ゴシップ部め・・・」

 

「まあ、ああ言った子達が学園を盛り上げてくれてるからいいじゃない」

 

「餌になる身にもなって欲しいんだが・・・あ、そういや」

 

そう言えば、この横にいる楯無と約束をしてたのを思い出した。

 

「楯無、お前に一撃でも食らわしたらいい事してくるっての言ってたけどあれはどうなった?」

 

「ん?ああ、あれね。いいわよ、ちょっと待ってね」

 

そう言ってメモ用紙を取り出して机に向かって何かを書き出す楯無。

 

その場で作るんかい。

 

少し経ってから、楯無が振り向いてからメモを渡される。

 

「はい、どうぞ」

 

「ああ、ありがとッ・・・!?」

 

そのメモ用紙には。

 

[更識 楯無を1日中好きに

 

いやいやいや!!不味いぞこれは肩叩き券の最上位版の人の事を好きにしていいよ券じゃないか!?こんな物、男子高校生が貰ってしまった日には何をしでかすか・・・

 

そこで楯無の指が離れ、文字が見えなかった部分まで見えるようになる。

 

[更識 楯無を1日中好きに練習につれ回していい券]

 

「・・・・」

 

「嬉しいでしょ?」

 

「ウン、ソウダネ」

 

また、練習か・・・

 

「これからも頑張りましょ薪君」

 

「ああ、よろしく頼むよ。楯無」

 

少し苦笑いをした後、チケットを手に教室の窓から見える青い空を見る。

 

アリーナで見たあの空と同じだ。

 

このISによって狂わされた人生。

 

俺はどこへ行けるだろう。

 

翼はある、それをどう育てるかは俺次第か・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、織斑 一夏達(彼ら)よりちょっぴり大人の少年少女が彩る、DEEP(ディープ)なお話し。

 

 




とりあえず第一章完です。

更新速度は3日に一回位のペースですすんで行きます。

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