昼休み
「腹へった・・・」
午前中の授業も終わり、午後からはISを使った実習をやる。
いかんせん、この実習が非常に辛い。なぜなら、まだ、ISに対しても馴れていない状況で一年生の基礎訓練をすっ飛ばし、いきなり二年生の応用、実戦訓練をやらされるのだから。
専用機持ちである俺は、専用機を持ってない一般の生徒などを相手にするのだが。
「ぐべぁ!」
「風見野君が地面に上半身突っ込んでる!?大丈夫!?」
「すまん、助かる」
とか。
「ぶべぁ!」
「薪さんがヘッドスピンかましながら壁に大の字になって埋まっているわ!?大丈夫!?」
「大丈夫ではない」
とか。
「あ」
「キャー、薪君が放った流れ弾が機材に当たって爆発したわ!」
「おい待て楯無!!今のはお前のランスに内臓してある四連装ガトリングの流れ弾だろうが!!」
など。
クラスメイトには迷惑をかけてばかりなのである。
流石、パイロット科だけあって俺より上手い奴しかいない。だが彼女達は例え俺が初心者でもちゃんと最後まで付き合ってくれる。いや本当、いい子達ばかりだよ。
そんなクラスメイトの為にしっかりと期待に答えなければ!よし、まずは腹ごしらえから。腹が減っては戦はできんと言うしな。
そう言って、意気揚々と食堂へと向かって行く最中に見慣れた二人が見える。
一年生のオルコットとクラスメイトのウェルキンだ。
「サラ先輩・・・私どうしたら・・・」
「大丈夫ですわよ、セシリア。私にいい考えがありますわ」
二人は同じくしてイギリスの代表候補生だ。代表候補生と言っても国の名を背負っているもの同士、何か不安や疑問、もしくはISの戦闘方法などの相談をしているのだろう。
「男性の心を掴むのはやはり料理。料理を作って織斑さんにめしあがっていただいては?」
「料理・・・どんな料理がいいでしょうか」
「織斑さんは日本男子、ここは日本料理にしましょう」
「ですが、日本料理なんて私には・・・」
「簡単です、日本料理の決め手はやはり出汁。出汁させえなんとかなれば問題ありません」
「出汁・・・魚や昆布、色々ありますが・・・」
「ふふ、しかしただの出汁ではインパクトがありません」
「?」
「ここは、我が祖国イギリスの魚料理。フィッシュ&チップスから出汁を取りましょう!」
「魚!!、フィッシュ&チップスなら私でも出汁が取れそうですわ!」
違ったただのテロリストの密会だった。
というかフィッシュ&チップスって揚げ物だよな、なんで既に揚がってる料理から出汁を取ろうとするんだこの子達。
こんな密会は見なかった事にして早く昼食を取りに・・・
「あら、風見野さん・・・!せっかくですし風見野さんから意見を聞きましょう!」
見つかった・・・
ウェルキンに腕を掴まれオルコットの前まで連れていかれる。
「風見野さん。日本男子である貴方に聞きたい事が・・・」
「知ってる聞いてた」
というよりかは聞いてしまったと言った方がいいか・・・
目の前には早く助言が欲しいと言わんばかりに目を輝かせているオルコットがいる。
これは、言うしかないのか、日本人として正しい事を。
「あー、オルコット。とりあえずフィッシュ&チップスからは出汁はとるな」
「え、それはどうしてですか?」
「え、じゃなくて・・・出汁ってのは出来上がった料理からではなく、食材そのものから取るんだ」
「「まあ!そうなのですか!」」
なぜ、二人して驚く・・・
「はぁ、とりあえず馴れない料理にはいきなり手を出すな、まずは出来る事から。そうだな・・・家庭科の教科書あったろ、まずはその辺りから練習してみろ」
「はい!ありがとうございますわ、薪先輩!」
「ああ」
ってあれ?、オルコットの俺の呼び方が名前に変わっている?
「早速夜に練習してみますわ、では一夏さんと昼食の約束をしていたので、失礼させていただきます」
「ええ、セシリア、頑張ってね」
「はい!頑張ります!」
鼻歌混じりに去っていくオルコット、その背中を見ながらウェルキンが一言漏らす。
「セシリア・・・遂に恋まで覚えて・・・先輩として嬉しい限りですわ」
「ずいぶん、後輩を溺愛してるなウェルキン」
「ええ、私よりISに対しては才能がありますし・・・あの子の家系は色々複雑な所があって」
「家系?」
「家系というより・・・あの子、実は独り身なんです・・・」
「・・・そうなのか」
「まだ、あのような年齢で家督を継ぎ、両親の残した財産を守る為にあの子は一人奮闘してましたわ」
「・・・・」
案外、高飛車お嬢様かと思いきや結構根がしっかりしてた子なのか・・・
「先ほど、風見野さんを名前で呼んだのは彼女なりの親しみだと思います」
「親しみ?」
「あの子、元々父親と少し仲が悪くて、男性そのものに対して余りいいイメージを描いていなかったんです。なので度々研究所でも男性研究者とのトラブルがあったり・・・」
「・・・察するとその問題は一夏が解決したようだな」
「はい。織斑さんとの決闘で何か感じる事があったのかも知れません。勿論、風見野さんと楯無さんとの決闘を見て学ぶ事も多くあったようですけど・・・」
「・・・そうか」
もう見えなくなったオルコットの背中を見終えて、ウェルキンがこちらを見てくる。
「話しが戻りますが。私があの子を溺愛してるのは、そんなあの子を守ってあげたいのと、単純に妹の様に思っているからですわ」
「いい先輩だな」
「例えあの子が、専用機持ちでもまだ私よりかはまだまだ未熟、これからも操縦技術の指導を続けていくつもりです」
ウェルキンのその顔は優しい顔をした本当の姉の様にも見えた。
「よし、ウェルキンとりあえず俺達もごはん食べに行こうぜ。午後からはまた実習だし」
「はい、ご一緒させていただきます」
二人して食堂に入っていく。
クラスメイトは優しい奴らばかりだが、まだまだ知らない事だらけだ、こうして自分からスキンシップを取るのも悪くは無いかも知れないな。
「むぅ・・・未だにこのヌルヌルした芋はつまみづらいですわ」
「里芋は箸じゃ難しいか、フォーク持ってくるか?」
「いえ、ウェルキン家の名に懸けて必ずしやこの里芋とやらを掴んで見せます」
「芋を取るために家の名を懸けるな・・・」
早速、食堂にてウェルキンと昼食を取っていたのだが、一年間日本で過ごしていても馴れない物は馴れないか。
今日の昼食で互いに食べているのは、日本定食。
白ご飯、鮭、味噌汁、キュウリの漬物。そして里芋が入っている筑前煮だ。よくありそうな日本定食だな。
「あっ・・・」
ウェルキンが持ち上げかかっていた里芋がスルリと落ち、コロコロとトレーの上を転がっていく。
「・・・こうやって、挟むんだよ」
その里芋を箸でつまみ。そのまま自分の口の中に入れ、食べる。
「あっ・・・ちょ、風見野さん・・・」
「ん?トレーの上だから汚くは・・・」
ウェルキンの顔がちょっと赤い。
あ、やばいな。ウェルキンが箸をつけた物だったから失礼だったか。
「い、いえ・・・なんでもありませんわ・・・」
「あ〜・・・いや、すまんな」
ちょっとデリカシーが無かったか。
お互いの間に流れる沈黙。
どうしよう、かなり気まずい・・・
何かないかと、白いご飯を口にしながら考えていると、そもそも目の前に話題があるのに気づく。
「そいや、オルコットに料理について教えていたが、ウェルキン自身は出来るのか?料理?」
「はい、淑女の嗜みですからね」
「ほぅ・・・」
フィッシュ&チップスで出汁を取るとか言ってた時は料理経験が一切無いもんだと思っていたが、出来るのか料理。単純に日本食に対して知識が無いだけか。
そんな単純な発想をしながら、筑前煮の中の里芋を取る。
しかし、次のウェルキンの発言に俺は驚愕する。
「実はクラスの皆さんに食べて頂いた時、皆さん、涙を流しながら食べていたんですの!」
「・・・・」
箸でつまんでいた里芋が机の上に落ち、コロコロと床に転がっていく。
「あら、風見野さん落ちましたわよ、里芋」
「あ、ああ・・・」
え?涙流すレベルの料理なの?
床に落ちた里芋を取り、トレーの端に置いておく。
「きっと、美味しくて堪らなくって涙を流したし違いありませんわ!だから私、料理には自信がありますの!」
「そ、そうなのか・・・」
「はい!」
満面の笑みで答えるウェルキン。
「そうですわ!、いつか風見野さんに私の料理を振る舞わせていただきませ!」
「お、おう。期待しておく」
涙を流すレベルのウェルキンの料理。
この時の約束を俺は後々、何回も後悔する羽目になる。
サラ・ウェルキンってどういうキャラにしてったらいいんだろう?
そう思ってとりあえず、セシリア2号にしていく予定。
セシリアが料理下手なのは実はサラが教えて為とかどうでしょう