とは言ってもこの章では薪自身が大変な目に会うため鈴とは接触しません。ごめんね鈴ちゃん好きなみなさん。
チームメンバー
朝の教室、自分の机に座りながら、左手首に付いている物をまじまじと見る。
グレーをメインに様々な色の糸が編み込まれたミサンガ、両端の部分は結ばれていて、その部分にビーズのような小さい珠がついている。
一見ただのミサンガだが、驚く事なかれ。なんと、これ、俺のIS、オール・フォー・ワンの待機状態なのだ。
ISは専用機持ちの操縦者が持ち運びしやすいように、待機状態という姿に変えて操縦者の体にアクセサリーとして装備される。
ブレスレットやブローチ、ロケットやメガネなどISは様々な物に姿を変える。まあ、操縦者はその形を決める事は出来ないので完全にIS任せになるが・・・。
猫耳とかになったらどうすんだろ。
そんな事を考えながら、今度はミサンガを引っ張ってみる。
ん〜、まんま、ミサンガだ。耐久性に不安しか残らないな。
「おはよー、風見野君」
「おはよう、工藤」
「おはよう、風見野」
「ああ、おはよう、佐渡さん」
もうそろそろ朝のS・H・Rだ。
転校して来てからしばらくたった。IS学園にもそろそろ慣れ始め、女子生徒だらけの環境にも大分耐性がついてきた。
クラスのメンツにも話しかけられる様になってきたし、クラスの副代表として行事の進行などもなるようになり、コミュニケーションを取る頻度も上がった。
まあ、本来リーダーシップを取るべき、オウアランダーの性格がコミ障の極みともいえるモノなので、俺が変わってやってる訳だが・・・
人間慣れだな。
「マッキーおはよう!」
「おはよう楯無。ってその油性ペンみたいな呼び方止めろ」
「あら、不採用?」
楯無が俺の隣の席に座ると同時に王先生が教室に入ってくる。
「さあ、みなさん。S・H・Rを始めますよ!」
いつものように始まる朝のこの時間。だか決まっていつも隣から声が聞こえてくる。
「ねぇ、薪君。聞いた?一年生に新しい代表候補生が入ってくるって」
「いや、知らん」
楯無は毎日朝、S・H・Rの最中に小声で話しかけてくる。
こいつは本当に生徒達が模範とすべき生徒会長なのだろうか。まあ、俺も小声で返すんだが。
「もう、薪君は噂に疎いんだから。なんでも中国から来た子らしいわ」
「中国か・・・王先生の後輩にあたるわけだが、まだ、4月後半だろ?こんな時期に珍しいな」
「でしょ、なんでも織斑君目当てにやっぱりきた子らしいわ」
「・・・アイツも大変だな」
今日の話題は一年生の転校生の話題らしい。
「つっといても、一年の転校生なんて俺達には関係ないだろ」
「あら?同じ転校生として興味はないの?」
「あんまり・・・」
実は転校生なんかより今は別の事に集中しなければならない事が俺にはあるのだ。
「楯無、次の行事のリーグ・マッチなんだが」
「貴方のチームについて?」
「ああ」
リーグ・マッチ。
一年生達はクラス代表戦としてクラス間で戦う事になっているが二年生からは各学科の生徒達がチームを組んで戦うトーナメント形式の行事だ。
チームは基本的に一つのISに2~3人のパイロットがついてそれを整備士科の生徒とシステムエンジニア科の生徒が気に入ったチームに入っていく訳だが。
「俺、整備士科とシステムエンジニア科に知り合い全然いないんだが」
「流石にこれは転校生である薪君には不便よね」
そう、いないのだ他クラスで知ってる人間が。
いや、いない事はない。最初にオール・フォー・ワンの基礎を組み上げてくれた整備士科の色彩 朱理、そしてシステムエンジニア科色彩 藍理の双子姉妹。後はちょっと前にあった黛 薫子くらいか。
なら、すぐに話しかけてチームに誘えばいいじゃん・・・とは、上手くいかないのが現実である。
「俺をどんな人間か知らないって事はそもそも信用も0からスタートか」
「そうねぇ、信用や信頼は大事よ。特に自分達の成績がかかってるからね」
成績。
IS学園は学校である。
無論、ISに対しての行事には評価がつけられてしまうのだ。トーナメントで優勝したチームの評価は高いし逆に負け続けるチームは評価が低い。
それを考えてみろ、どこの馬の骨とも知れない人間に自分の今後の人生を預けるなんて普通は無理だ。友達だったり、知り合いだったり、ある程度仲が良ければ信頼関係が生まれる。慰めあったり、励ましあったりそんな素敵な青春みたいな事が出来るんだ。
だが俺は転校生だ。本来一年生の間で築き上げるべきモノが俺にはない。
あるのは男性操縦者って事の知名度位だ。
どうすりゃいいんだ・・・
そんな、頭を抱えている俺に楯無が励ましてくれる。
「まあ、とりあえず人がいない事にはチームは組めないわ。まずは、当たって砕けなさい」
「・・・だな、結局はそれか」
信頼、信用は道端に落ちてなどいない。無い物ねだりなどせず、今あるものでなんとかしなければならないのだ。
「よし、まずは黛 薫子だな。アイツ新聞部だろ、男性操縦者って事で興味を・・・」
「あ、かっちゃんは私のチームの整備士リーダーだから無理よ」
えぇぇぇぇ!?
いきなり候補が一人消えた!
「じゃあ、色彩姉妹に当たるか・・・」
「頑張ってね、確か今あの二人フリーなはずだから」
!
まさかのフリー!
これは、チャンスがあるぞ俺!
「ただ、あの二人。腕は確かだけど癖が強いって聞くから気をつけてね」
「・・・・」
そっち系の問題抱えてるのかよあの二人。
朝の教室、途中から躊躇なく話す俺と楯無を物凄い剣幕で見る。王先生の顔をクラスの皆は見ていたらしい。
昼休み
早速、多くの女子生徒達が賑わう食堂で赤い頭と青い頭を探す。
手に持つトレーにはミートスパゲッティが乗った皿が一つ、チームに誘う事が出来たら一緒に昼食でもと思っていたのだが、誘う事が出来なかったら・・・一人寂しく食べるか・・・
食堂を見渡して二人を探すが、海外から来た子もいるので金髪、銀髪、緑、黄、紫。特徴的な髪の色をしている人は沢山いる。
「流石に人が多いと中々見つからな・・・」
目がチカチカしてきた、そう思った時、四人席に座っている赤色と青色を見つけた。
「いた」
赤と青のセットならあの二人だろうと近づいていく。
「でさぁ、その授業中に先生がさぁ」
「はい、姉さん」
思った通り、赤色と青色の双子。朱理と藍理だった。二人は丁度食べ始めたばかりのようだ。
よし、上手く、誘うぞ俺。
少し緊張している自分に言い聞かせ意を決する。
って、デートに誘う訳でもあるまいし!普通にチーム組みませんか?でいいじゃん!
自分の心の中にツッコミを入れつつ、二人の座る席に到達する
「隣いいか?」
「お、薪!おひさ〜」
「お久しぶりです、薪さん」
藍理が横にずれて、席を空けてくれる。
とりあえず座り、トレーを置く。
さて、少し食ってから本題に・・・
「そいや、薪。次の調整いつやんだ?」
「え?」
「だから、調整だよ、調整。あれから全然手つけてないだろ?」
「そうですね、そろそろ薪さん自身のデータが取れてきた頃ですしブースターのエネルギー効率にも変化を入れた方がいい頃合いですし」
「え?え?」
突然の事過ぎて会話が追い付かない。調整?エネルギー効率?やってくれるの?
「ま、まて。まだ俺らチーム組んでないし二人にそんな事してもらう訳には・・・」
カラン、と音を立てて朱理が持っていたフォークが落ちる。ちなみに朱理が今日食べているのはラザニア、藍理は蕎麦だ。
俺の言葉を聞いた朱理は手をワナワナさせながら答える。
「わ、私達・・・チーム組んで無かったのか?」
朱理は席から立ち上がるとツカツカとこちらに歩いてきて俺の胸ぐらを掴む。
「薪!私と硬い握手をした時、その時が私達のチーム結成の瞬間だったんじゃないのか!?」
「ええぇぇぇぇぇ!?」
まさかの予想外の方向だった。
「あれは嘘だったのか!薪!」
「ちょ!ちょっと・・・まっ!」
ガクガクと俺の首を揺さぶり抗議してくる朱理。
うぉ!?力強い!?
中々、朱理の拘束から逃れられないでいると俺の隣にいた藍理が助け船を出してくれた。
「あの、姉さん。私達なにか勘違いをしているようなので、とりあえず席に座ってから話し合いましょう」
「・・・・っむ。わ、わかった」
渋々と元の席に戻る朱理。うぇ、まだなにも食べてなくて良かった。
少し落ち着いてから、再び話し始めようそう思った時、朱理がいきなり机に突っ伏した状態になる。
「はぁ〜あ、ようやくチーム組めたと思ったのに・・・」
ゲンナリした顔で喋り始める朱理。
「前いたチームにも追い出されちゃったし、頼みの綱の薪にも断られちゃったからもう私達どうすればいいんだよ〜」
「もう、素直になにもせずにチーム内にいれば良かったんですよ姉さん」
「でもよ〜」
あれ?コイツら天性の朱藍コンビとかって言われてるんじゃなかったけ?もっと人気があるもんだと思ってたが。
落ち込んでる二人をそのままにする事は出来ず、とりあえず本題に入る。
「待てお前ら、まだ断ったわけじゃない」
「え?」
朱理が顔を上げる。
「単純にチームに勧誘しにきたんだよ俺は、まさかもうチームとして成り立っていたとは思わなかったがな」
「・・・・!」
その言葉を聞いて朱理の顔が明るくなる。
「本当か薪!」
「ああ」
「やったぁぁぁ!」
周りがこっちを向くくらい大きな声で喜ぶ朱理。
「よし!薪今日からチームとして頑張ってこうぜ!」
「ああ、よろしく。藍理もそれでいいか?」
「はい、よろしくお願いします薪さん」
かくして俺のチームは朱理、藍理を正式に迎え入れる事で決まった。
まだ、チームメンバーとしては少ないがそれはこれからの頑張り次第だろう。
・・・・
「・・・そういえば、なんで前のチームを追い出されたんだ?」
「え゛?」
疑問に思っていた事を口にしてみる、天性とまで言われているこの二人だ、腕は確かなはずだが・・・
「えぇぇと、それはその・・・」
両手の人差し指をくっ付けて何か言いづらそうにしている朱理。それを見かねて藍理が口をだす。
「姉さんがISを改造しまくるのが問題なんです」
「改造?」
「あ、藍理、言わないでって・・・」
「この前のチームにいた時は、打鉄の椀部にロケットくっ付けて射出出来るようにしてしまいましたし、その前の前は専用機にオーバースペック武装を取り付けて自壊させてしまって企業に怒られたではないですか」
「むぅ・・・」
朱理の頬が膨れる。
「だったら藍理だって訓練プログラム弄ってパイロットに嫌がられてるじゃん」
「あ・・・姉さんそれは」
「軌道訓練コースなんて、物理法則を無視したようなコースにしてさ、あんなん只のジェットコースターだよ!」
「あ、あれは!ISでしたら確実に動けるように調整されたコースだったんです!」
「あくまでISを使うのは人なんだから、机上の空論だよ。なんなコース出来る人間この世にいたらバケモンだよ!」
「むぅ・・・」
今後は藍理の頬が膨れる。
「机上の空論というのでありましたら!この前姉さんが設計してた武装も無茶苦茶な物でしょう!」
「あれは絶対成功する武装だって!確率は・・・」
俺を置いていい合いを始めてしまった二人、話しを聞く限り、腕は確かだが問題はあるようだ。
果たしてこんなチームで俺はリーグ・マッチを戦っていけるのだろうか。
「よし!始めるぞ薪!」
「ああ、頼むぞ二人とも」
「はい、ではこれより飛行訓練を開始します」
放課後。俺達は早速リーグ・マッチに向けての調整の為第3アリーナを飛んでいた。
飛行訓練なら本来は第6アリーナを使うべきなのだがあいにく、3年生が大人数で使用してた為、クラス代表決定戦でも使ったアリーナを飛んでいる。
「・・・・」
この飛んでいる感じは好きだ、ヘリや飛行機とも違い、体に風が当たる感触。そして操縦捍なんて握らずとも自分の意のままに動ける。
ISに乗れて良かった。そう思える事の一つだ。こんな体験を男性で感じられるのが世界に二人しか居ないなんてもったいないものだ。
アリーナの上空を旋回しながらそう考えていると再び藍理から通信が入る。
[薪さん、カスタム・ウイングとブースターのエネルギー効率の調整をしました、これで、0,15%のエネルギー削減になります]
「0,15%って微量過ぎないか?」
[藍理の調整に文句言うんじゃねぇ、なんなら何も弄らず0%の方がいいか?]
「・・・すまん、藍理」
[いいえ、まだ薪さんのデータが沢山取れているわけではないので、まだこんなものです。薪さんの戦い方や移動する際の癖などがわかってきたらよりよい調整が可能となります]
「わかった」
まだ、俺もISを動かしてから1ヶ月もたってない、そりゃデータもすくないか。
これから成長していけばいい。
そう思い、飛行を続ける。
時折、飛んでくる藍理の指示や朱理の冷やかしなどを受けつつ、訓練は進んで行った。時間が過ぎて行きそろそろ終わろうかという所で異変が起きた。
「ん?」
警告音、目の前のモニターに機体に異変がある事を知らせるアラートが鳴り始めた。
[薪さん、左部のカスタム・ウイングに異常が出ています。目視して確認して見て下さい]
「ああ」
確か左側のカスタム・ウイングは朱理がジャンクパークのみで組み上げた、ロケットエンジンのような物だったはずだ。楯無との戦いの時にも異常なんてでなかったはずだがいきなりどうし・・・
「・・・・」
そんな朱理お手製のパーツから火花が沢山飛び散っていた。
「えぇぇぇぇぇ!?ひ、火花が出てるんですけどぉぉぉぉ!?」
バチバチと火花をチラシながらガクブルと震えるカスタム・ウイングを見ながら俺は絶叫した。
[っ!?薪さん急いで地面に着地してください!!]
「わ、わかった!」
藍理に言われた通り急いで地面に急降下する。
何だっていきなり!?そんな事を思っていると朱理が通信に入ってくる。
[えぇ?火花が出てる?さっき点検した時に異常は・・・なんだこのネジ?・・・・あ、わり、薪!ネジ一本閉め忘れたわ!]
「ふざけんじゃねぇ!朱理ぃぃ!」
まさかの整備ミス。
「ネジ一本閉め忘れただけでこんなにもポンコツになるとかドラえもッぶぁ!?」
急降下していた際に火花を散らしていた左のカスタム・ウイングが爆発した。
「うぉぉぉぉ!?」
急な爆発によって制御が効かず、きりもみしながらくるくると地面に落ちていく。
そして地面には。
「あわわわわわ!?」
よりにもよってISを纏っている子が一人いた。一年生なのか咄嗟の出来事に動けないでいるようだ。
「ど、どいてくれぇ!?」
これはぶつかる!!
そう、思った時。
黒い影が俺の前に現れた。
「うぉ!?」
何もしていなのに一瞬だけ、ガクンと俺の体は空中に止まる。
そしてその黒い影は俺の事を抱き抱えて地面にフワリと着地した。
「まったく、飛行訓練は第6アリーナでやるべきではないか、薪?」
「ああ、すまん助かった・・・って、え?」
助けてくれたそいつは俺の事をゆっくりと地面におろして腰に手を当てて言った。
「え?ではない、クラスメイト位わかるだろう」
「えっと、お前は・・・」
その子はセミロングのブロンドの髪をしていて前髪の一部を片方だけ三つ編みにして後ろにまわしている。
「クラスメイトの名前くらい覚えたまえ、私の名前はソル・エンゲルベルト。ソルで構わないよ、薪・・・」
黒いISを身に纏いソルと名乗った少女はニッコリと笑った