魔獣創造って最強だよね   作:超高校級の切望

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魔獣創造者の娘

 その子供はペットが欲しかった。テレビで見たのだ。犬と楽しそうに戯れる人間を。そしたら、影から犬が出てきた。その光景を見ていた両親に、悪魔の子!と頭を灰皿で殴られ家を燃やされた。

 だが犬が助けてくれた。

 その子供は頭を叩かれた衝撃で思い出す。嘗て多くの神を生み出したことを。魔獣を生み出したことを。しかしそれは自分の記憶ではない。

 自分の中に封印された女神達の記憶だ。

 メソポタミア神話の祖神、ティアマト。神器の制作者である神に偽物を造られた哀れな女神だ。

 次にイザナミ。日本神話における死の概念を作り一日に1000の命を奪う力を持った女神。

 最後にリリス。神が造った最初の女。完全なる女。完璧なる創造物。魂だけ抜き取られ肉体は夫にグチャグチャにされたらしい。

 少年は尋ねる。お前達の力を貸してくれないか、と。女神と女悪魔は応える。好きにすればいい、どうせお前に逆らえない、と。

 少年は尋ねる。逆らえない、というのは、従いたくないという事か、と。

 三柱の女達は顔を見合わせる。どうなの?さあ、私別にやりたいことないし。あ、私も……私は聖書の奴等も今の悪魔共も苦しんでる姿がみたい。イサナギの顔面思い切り殴りたいなぁ、などなど。

 少年は尋ねる。あなた達の動物の力を作る能力を借りれば、器を現世に作れないだろうか、と。

 

 

 

 

「………懐かしい夢を見たなぁ」

 

 ふぁ、とあくびして起き上がる王神(みかど)。隣で一糸纏わぬ美女の黒髪を撫でる。

 

「ミカド……起きました?」

「んー、起きた起きた。あっちも起きた。早速朝の一回戦と行こうぜ」

「ふふ。仕方ない人ですね……寺子屋はどうするのです?」

「すぐにすませるって」

「そうか、ではすぐにすむように気持ち良くしてあげます」

 

 と、黒髪の美女が妖艶な笑みを浮かべた瞬間、扉が勢いよく開く。

 

「お父様~、イザナミお母様~、朝っですっよ~!」

 

 元気良く扉を開けて入ってきたのは金髪の美少女。今まさに重なり合おうとしていた2人をみてあら、と固まる。

 

「お邪魔でした?ま、それよりみてくださいお父様!」

 

 帝と一歳ほどしか違わない見た目ながら彼を父と呼ぶのは王神(みこと)。彼女は彼の通う学校の女子制服を見せるようにクルリと回る。

 

「えへへ、可愛いですか?」

「可愛い可愛い。流石俺の娘。でも学校では父と呼ぶなよ」

「はーい!私もこれで花の女子高生かぁ……えへへ。あ、ティアマト母さんがごはんできたって」

「AA────」

 

 命の言葉と同時にひょっこり顔を除かせる海のような鮮やかな青い髪をした女が顔を除かせ、ジト目でイザナミを睨んでいた。

 

「きょう、は……もう、わたしの……ばん」

「朝ぐらい良いではありませんか。貴方も明日、朝すればいいでしょう?」

「あしたは、リリス、のばん……だから」

「お母様達もお父様も好きですね~。そんなに気持ちいいの~?」

「「うん」」

「…………へぇ」

 

 母2人の言葉にジッ、と父と呼んだ少年を見つめる命。

 

「………命もやるか?」

「じゃあ明後日……けど、お父様性欲強いですね~。子供なんて簡単に作れるのに生殖本能とか残ってるんですか?」

「バカにしてんのかてめぇ。まあ、これはあれだ……俺の妻の一人、完全なる女リリスだし」

「あー、あの人がそもそも好き者ですしね。お父様ってそういう人が好みなんですか?他にも傾国の美女が愛人だったりしますからね」

 

 ヘラヘラと楽しそうに笑う命。父も母も楽しそうに笑う。平和な光景だ。多分。

 

 

 

 

「お隣ですね、よろしくお願いしますね」

「……はい」

 

 綺麗な子だな、と塔城小猫は隣の席になった少女を見つめる。細い金の髪はとても艶やかで、大きな瞳は銀色。肌は白く白人のようだが日本人らしい。ハーフ?

 胸は………仲間だ。ニコニコ笑顔を浮かべて、人懐っこい印象を受ける。

 実際彼女はあっという間に人気者になった。何故か自分も。目立つようなことはしてないはずだが。

 

「小猫ちゃんは可愛いですし。私の妹程じゃないですけど」

「………妹がいるんですか?」

「いますよ~。素直じゃないけど可愛い子でしてね。双子なので同じ学年ですよ、会ってみますか?」

 

 つまり彼女は姉と言うことか。そう思うと、少し見る目が変わる。その視線に気づいたのかコテリと首を傾げる命。

 

「妹さんは、大好きなんですか?」

「大好きです。妹を好きじゃない姉なんてこの世にはいませんからね~」

「………………」

 

 

 

「ふんふ~ん♪やっぱり高校生活は楽しいね~。友達も出来たし、舞はどうだった?」

「問題ない」

 

 と、命の言葉に黒髪ショートヘアの少女が応える。ニコニコ笑顔の命と異なり無表情だ。

 休日、姉妹水入らずで買い物に出かけていた。荷物持ちは舞。命はあれが欲しいあれ気になると次々買っているがその全てを舞は疲れた様子もなく運んでいる。

 

「………ん?」

「どーしたの舞」

「……人払いだ。紛れ込んだ」

「えー、人払い~?やだな~、何か変な事件に巻き込まれちゃった?勘弁して欲しいな」

 

 と、ぶつぶつ文句を言う命は公園から出ようとして、噴水近くで男が女に腹を貫かれていた。

 

「大変だ!すぐに手術しなきゃ!」

「え?な、誰!?何者!」

 

 女が叫ぶが命は気にせず男の服を脱がせると片手を押し当てる。その片手が溶け、男の腹と融合した。

 

「止血はこれでオッケー。ちょっと待っててくださいね。今から内臓、神経系、血管、リンパ、解析して作るので」

「き、君は……一年の……」

「はいはいそうですよ~。意識はしっかりしてますね……何か言いたいことはありますか~?」

「おっぱい、もみた………あ、ない……」

「………舞、おっぱいを……」

「断る」

 

 力なく持ち上げ、何かを揉むように動かされる手。その顔は悲痛を彩り命は自分より胸のある妹にキリっとした顔を向ける。

 

「死の間際に母性を求めてるのよ!可哀想だと思わない!?」

「思わない」

「貴様等、さっきから私を無視するな!」

 

 と、女が叫ぶ。黒い翼を広げ、光の槍を生み出し投げてきた。舞はそれに対して腕を振るう。腕から飛び出した鎌が槍を砕いた。

 

「───な!?」

「舞~、殺しちゃ駄目よ~。生きてるって、それだけで素晴らしいことなんだから」

「殺さず生け捕り……容易い。任せろ」

「───っ!なめるな!私は、至高の堕天使になる女だぞ!」

「至高?その言葉は、母さん達と父さんにのみ相応しい」

「………相変わらずお父様達大好きだな~舞は。さぁて、移植移植………あれ、この人……」

 

 腕から内蔵や血管、糸のような神経をズルリと出して五指全てが鋭い刃物に変形した命は不意に手をピタリと止める。

 

「んー……これは、事後承諾だけどそもそもこの人の力だし、こっちの方が今後役立ちそうだなぁ。うん、こっちにし~よお」

 

 

 

 

「………ただいま」

「お父様、ただいま帰りました。今日は私の番でしたけど明日の舞と入れ替えて良いですか」

 

 帝は帰ってきた娘達の声を聞きテレビから視線をはずす。

 

「良いけど、なんだそれ…」

「堕天使ですよ?みたことありませんでしたっけ~?」

「あるけど何で持って帰ってきた」

「手術します。少し大変で材料も心許ないけど、記憶を読んでみたら放っておけなくて!」

「そうか。材料なら今日ぶち殺してきた堕天使三匹お前のプレゼントとして冷蔵庫に入れたから好きに使え」

「あ、また殺したんですね?もう、お父様ったら私に全ての命に奉仕する、なんて本能を植え付けておきながら私の近くで人を殺すなんて……嫌いになっちゃいますよ」

 

 ぷぅ、と頬を膨らませる娘をみてすまんすまんと肩をすくめる帝。

 

「私に嫌われたら悲しいですか?」

「ああ、悲しいな」

「なら仕方ないから許して上げますね」

 

 そういってポス、と膝の上に乗ってきた命の頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。やる気がでたぞー!と万歳した命は気絶した堕天使の足を掴んで運んでいった。

 

 

 

 

 堕天使レイナーレ。下級堕天使で力も弱く、そのくせ自分より弱い者は見下す典型的な小物は堕天使総督であるアザゼルに思いを寄せていた。

 しかし自分には何の力もない。だから、力を求めた。それは見下している人間にこそ宿る力。神器と呼ばれる力だ。教会から追放された神器持ちの少女を偽の情報で呼び出し神器を奪い、アザゼルが危険視しているリストにあった男を殺して、誉められるつもりだった。しかし、男を殺した後妙な連中が現れ───

 

「───う」

「あ、おきました~?」

「───!?」

 

 目をあけると妙な連中の一人だった少女がニコニコ笑顔を向けていた。とっさに光の槍を生み出し投げつける。

 

「うわっと──」

「───え?」

 

 それはあっさり弾かれた。しかしレイナーレが驚いたのは、自分が放った槍の大きさだ。

 

「私、今……これだけの力を………?」

「ああ、はい。改造しましたから」

「………改造?」

「堕天使……というか人外には魔力や光力、神力などといった特別なエネルギーを発生させる器官があるんですよね。それは大きさは変わりませんが筋肉と同じで酷使すれば鍛えられますが、限界はあります。貴方のそれはもう成長限界が来ていたので、これ以上強くなることは不可能でした」

「───ッ!!」

 

 どれだけ鍛えても強くなれなかった過去を思い出し苦虫を噛み潰したような顔をするレイナーレに、命は気にせず話を続ける。

 

「ですが発想の逆転です。器官が成長しないなら、器官を植え付ければ良い!」

「………器官を?」

「はい。ちょうどお父様が死体を三つ手に入れたので、その死体から取り出して貴方に移植しました」 

「死体……三?それ、まさか───!?」

 

 死体とその数を聞き顔を青くするレイナーレだったが、続く言葉を聞いて固まった。

 

「残念ながら私は死者を生き返らせる事は出来ませんからね~。だから、愛しい人のために頑張る貴方の為に使いました~」

「─────」

 

 そうだ、アザゼルの為、強くなりたかった。自分は、強くなれた。それに、他の三人を殺したのは自分ではない。

 

「じゃあ拒絶反応押さえる処置はしたけど、定期的に検診にきてくださいね~」

 

 

 

 

 強くなった。確かに強くなったが、まだ足りない。幹部のメスブタは、アザゼルと仲のいいクソ女はもっと強い。

 あの娘は成長限界があると言っていた。自分が集めた奴らも、自分と同様力に伸び悩んでいた連中ばかりだ。おそらくここから成長することはない。ならば───

 

 

 

 

「……え、器官をさらに植え付けて欲しい?ま、まあ良いですけど器官の培養って時間かかるんですよね。今手持ちないし」

「死体ならあるわ」

「あ、そうですか……あー、こりゃもう蘇生は無理ですね。頭ないし……大規模な殺し合いでもあったんですか?」

「良いから移植しなさい」

「はーい……それじゃあこちらへどうぞ」

 

 

 力が上がった。それでも中級だ。しかし、力が上がった自分に秘密を聞こうとする者は数多くいる。そいつ等を誘い、殺して、奪って、移植して、腸の一部や胃の一部、肺の片方などを捨てて体に空白を作り埋めていく。

 どんどん強くなっていく。これなら───

 

 

 

「たく何が目的だったか同族をこんなに殺しやがって………」

「アザゼル、何も貴方が動く必要は……」

「何言ってんだ。どうやったか知らねーがこの数日で上級に匹敵するようになったんたぞ、成長速度が異常なら一番強い奴をさっさとぶつけるのが一番だろ」

 

 

 

「最近あの人こないな。もう満足したのかな?」

 

 命はグチャグチャと堕天使の死体を弄くりながら首を傾げる。

 

「それはもう何の力もないんじゃないのか?」

「そんなこと無いわよ。器官は取り出したけど力を伝える神経のようなものがあってね、それを組み合わせることで器官の再現を出来るの」

「それ以外もとっているようだが?」

「取り敢えず心臓と胃と腸、肝臓、肺などなど最低限生命維持が必要な程度にはね。手足は別にいらないかな。羽もつけておこっと──」

 

 

 

 そして、一時間後。

 

「お父様、みてください完成しましたよ!」

「おお、何だそれ」

 

 命が自慢げに見せてきたのはバランスボールほどの球体。堕天使の翼が生えており、継ぎ接ぎだらけの皮膚の各所に眼球が存在する。

 

「本物の光力伝達器官を集めて造った人工光力発生器官に脳とかを与えて造った魔獣ですよ。お父様たちみたいに0から作るのは無理ですけど、お父様の役に立ちたくて」

「そうか。命はいい子だな」

「脳はなかったんじゃないのか?」

 

 パタパタ飛んでいる球体生物をみながら尋ねる舞に、命はああ、と手を打つ。

 

「ほらこの数日で何度もきてた堕天使さん。さすがに内臓もこれ以上取れないから、脳を生命維持必要なぶんだけ残してそこに器官を埋めたのよ。体形を変えたくないって言うからね………ま、好きな男がいるなら女として体形は命だものね。で、取った脳を培養して使用したの」

「………その堕天使、大丈夫なのか?」

「きちんと生命活動も出来るし、遺伝子を少し弄って脳が正常だった頃の動きを再現できるようにはしたわよ?」

「………そうか」

「もう来ないって事はきっと愛するアザゼルさんと結ばれたのね。良かったわ、また一人人を幸福にしてしまった……」

「ところでこっちにはその堕天使の記憶あるのか?」

「海馬は大部分切除しましたから、記憶はないと思いますよ。あったとしてもそれは並の堕天使を越える強さを持っているんですから本人も大喜びでしょう。あ、そう考えるともう一人幸せにしてるのか……えへへ、お父様ほめてください!」

「おう、偉いぞ流石俺の娘だ」

「………なんか泣いてるように見えるのは私だけ?」

「涙腺の調整が甘かったのかな?後で直しとこっと」




王神命(おうがみみこと)

 リリスの特性(原初の女。神にゼロから生み出された生命。悪魔)を濃く受け継ぐ王神三姉妹次女。
 医療用に創られた魔獣でもある。悪魔という特性から願いを叶える本能を持っているが、それが正しい形とは限らず対価も発生する(主に肉体の一部)。
 しかし価値観は狂っていても生命に奉仕するという本能があるため目の前で死にかけている存在を放置できない心優しき少女。将来の夢は母達どうよう己の力のみで命を生み出すこと。
 モデルはフランケン・ふらんのふらん。可愛いよねあの子。頭はあれだけど。個人的には左右に分かれた時のポワポワした子が好き。

王神舞(おうがみまい)

 イザナミの特性(死を生んだ神。神産みの神。女神)を濃く受け継ぐ王神三姉妹末妹。
 戦闘用魔獣。死を与える物体を体から建言できる。常識人。神格持ちのためかなり強い。改造されてるのでめっちゃ強い。
 凶悪な能力の持ち主ながら常識人で、頭のネジが外れた家族に胃を痛める日々を送っている。

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