「なにやら匙が勝手に動いているようです」
「へぇ、お前も大変だね……」
生徒会室で書類の整理をしながら頭を抱えるソーナにケラケラと笑うミカド。どうやら匙は、教会の使者達と協力関係を築き聖剣使いを捜しているらしい。聖剣に人生を狂わされた木場の為の行動らしく、発案者はイッセー。協力者は小猫。
木場を含めた悪魔組とイリナ、ゼノヴィアの教会組で二手に分かれ聖剣を一本だけ破壊するつもりらしい。
「木っ端悪魔が聖剣の破壊なんて、教会の上層部になんと言うつもりなんでしょうね」
「協力して破壊した(ドヤ)」
「なるほどバカですか……まあ、例えば聖剣が合体したりして、あの聖剣使いがデュランダルやコールブランドレベルの聖剣を持ってるなら、ギリギリ言い訳はつくでしょうね。だとしても、聖剣使いを倒せたところでコカビエルが倒せる訳ないのに………」
「魔王は?」
「ルシファー様は『リーアたんが居るから大丈夫だよ』と言いつつ、妹が自分をもっとも尊敬してくれるタイミングを伺ってるでしょうね。ベルゼブブ様は『レーティングゲームの調整がある』、アスモデウス様は『眠い……』お姉様は、呼んだら町ごと氷付けにしかねませんので却下………というわけで、手を貸してください」
ソーナの要請。思ったより早くきた。頭を撫でながら、いいよ、と返すと嬉しそうに微笑んだ。
しかし魔王ってのは何とも自分勝手な………いや、悪魔らしいからいいのか?よくわからん。
「とはいえ、今から手を出したところで、余計なことを、私達で十分だったのに、って言われるだろうしな。取り敢えずは死なない程度に監視をつけといて、最終決戦あたりで乗り込むか……」
「それがいいかと。リアスも絶対巻き込まれて同じようなことを言いますよ」
「だろうな……おい、ペスト………」
ミカドがパンパン手を叩くと何処からともなく黒いネズミが現れる。ヒクヒクと鼻を振るわせるそのネズミは
「適当に守ってやれ」
「───」
コクリと頷くペストと呼ばれたネズミ。そのままとっとこ走っていった。
「今のは?」
「俺の部下だ。基本的に何奴もこいつも旅行ばっかしてるがたまに帰ってくる」
「ネズミ、ですよね?ペストさんの使い魔ですか?」
「いや、ペスト本人だ……赤虫よりはずっと強いぞ」
「ということは私より強いんですね。ネズミなのに……精進しなくては」
「何なら俺が鍛えてやろーか?」
もしくはミコトに寝て起きたら最強になる改造をしてもらうか、と提案するミカド。その時は是非鍛えてくださいと改造手術をやんわり否定するソーナであった。
アーシア・アルジェントはエクスカリバーの担い手である。
湖の乙女から所有権を受け取ったミカドは己自身が担い手になることも担い手を選ぶこともできる。そしてアーシアを選んだのだ。
「うう、でも私が伝説の剣の担い手なんて力不足ですよ」
「そんなことはないさ。私なんて、中に眠る血の気配で嘗ての主と勘違いさせただけ。貴方より、よほど異端だ」
そう、ミカドがミコトと共にフリードに施した改造は性格の矯正とその身に宿っていた北欧の英雄の因子を活性化。その活性化によりオリジナルである北欧の英雄の一人シグルドの気配を、才能を強く身に宿すようになったのだ。
途端に魔剣グラムが『シグルド!ああ、シグルド!』とでも言うように勢いよく飛んできた。
「でも、私剣なんて使ったことないですよ?なんか、使い方解りますけど……頭の中で女の人の声が戦い方を教えてくれるんです」
「女?男ではなく?」
と、その時だった。殺気を感じ、アーシアがエクスカリバーを抜き放つ。剣は、見えない。しかしギィン!と金属音が響いた。
「だ、誰ですか!?」
「今のを防ぐか……貴様が教会から派遣された聖剣使いだな?」
「え?違いますけど」
「問答無用!」
「じゃあ何で聞いたんですか!?」
きゃあー!と叫びながらも剣を構えるアーシア。アーシアに襲いかかってきたのは、聖剣を持った神父服姿の男。恐らくコカビエルに協力したはぐれ悪魔祓い。その剣を、フリードが止める。
「ふ、フリードさん!」
「フリード!?貴様、姿を消したと思えば何をしている!」
「アーシア、下がれ!」
フリードはアーシアを背にかばい、仲間のはずのフリードが敵対したことに目を見開くはぐれ悪魔祓い。前のフリードは性格こそあれだが実力は本物。それを知っているはぐれ悪魔祓いは顔をしかめる。と、そこへ───
「見つけたぜ!ラインよ!」
「よし、行け木場!」
「────!!」
悪魔達がやってきた。しかも、フリードには目を向けず自分に狙いを絞って。
「待て!そいつはそこそこの実力者だ!おまえ達では、私が───!」
「おっと、お前の相手は俺だぜ」
「祐斗先輩の邪魔はさせません」
「────っ!」
が、兵藤一誠と塔城小猫はフリードの前に立つ。
その瞳は義憤にもえており、フリードが忌々しげに舌打ちする。空気に酔っている。こういう連中が、一番やっかいだ。
小猫とイッセーの攻撃を回避する。殺すのは簡単だがそうすると主であるミカドに迷惑をかける。
「いけるぜ!ドラゴンショット!」
「───!!」
山一つは消し飛ばしそうな攻撃が、町中で放たれる。仲間のために戦う自分に酔うのは後にして欲しい。正面から受け止めようとしたフリードだったが、アーシアが前に飛び出してくる。
「エクスカリバー!」
眩い光がドラゴンショットを弾き、悪魔達にダメージを与える。はぐれ悪魔祓いがその隙に逃げ出し何時の間にか来ていた教会組が後を追う。
木場も光に焼かれふらついた体を奮い立たせ走り去る。
「木場!くっ、お前等よくも邪魔してくれたな!」
「フェ!?ご、ごめんなさい!普通に弾くつもりが、思ったより光が出ちゃって───」
『気にするな娘よ。この者達では、真の力を使うまでもなくその剣の光で死んでもおかしくないのだからな』
イッセーがフリード達に突っかかろうとしフリードが背に庇う。アーシアは涙目になり謝り、不意に何処からともなく聞き覚えのない声が聞こえてきた。周囲を見回しても誰も居ない。
『懐かしい気配だ。まさか、再びその剣の担い手に出会えるとはな』
「────へ?」
発生源が己の籠手だと解り固まるイッセー。籠手から流れる声は懐かしげな声をアーシアに向ける。
『ドジそうなところが彼奴の若い頃を思い出す。お前なら、きっといい使い手になるだろう』
「ひょっとして、アーサー王様のお知り合いですか?でも、私は、血筋ではありません………」
『血筋など関係ない。血筋だから渡せ、などと言ってきたら切り刻んでやれ』
その後、リアス・グレモリーとソーナが眷属の回収にやってきた。リアスは光に焼かれダメージを受けたイッセー達を見て文句言ってきたがソーナがたしなめ、帰って行った。
「───っ、う………こ、ここは?」
イリナはゆっくりと目を開く。ここは、何処だ?自分は確か、はぐれ悪魔祓いを追って、その後コカビエルに出会い………
「あ、起きました?」
「貴方は、確か……異教徒の妹さん……私、どうしてここに?」
「ペストが運んできたので簡単な治療を……改造はしてないので安心してください」
「治療?あ、確かに全然痛くない………よし、これなら戦える!」
「剣もないのに?お勧めはしませんけどね」
「───っ。例えそうでも、私は神に身を捧げた戦士、最後まで戦うわ!」
「…………そうですか。なら、止めませんけど………あー、じゃあこれ使います?」
と、異教徒の妹、ミコトは一本の日本刀を取り出す。
「日本刀!?最高じゃない、借りてくわね!」
「お大事に~。ちゃんと返してくださいね~」
一応日本神話から受け取った……というか頼まれ取り返した神殺しの剣だ。好きにして良いと言われたが、貸すのはともかくあげるのはやっぱり駄目だろう。