魔獣創造って最強だよね   作:超高校級の切望

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ペスト

 ペスト。

 ペスト菌による症状は腺ペスト、皮膚ペスト、眼ペスト、肺ペストなどがあるが、多くの者が想像するのは敗血症により肌が黒く染まる黒死病を想像することだろう。

 14世紀の大流行は、世界人口を4億5000万人から3億5000万人にまで減少させた程の感染爆発を起こした病気の名である。

 星の記憶(世界の歴史)にまで残るレベルの、神代であれば邪神としての神格か神の怒りとしての御技に昇華していたであろう伝染病。

 

「ペスト?聞いたことがない名だな……いや、伝染病としての名は知っているが」

「おやおやおや、博識ですなコカビエル殿。まあペストの大流行の一端はキリスト教のせいですからな~。そのくせやれ悪霊の仕業だ、主を崇めよなどと言うから笑える話です。その主も既に死んでいるというのにいやはや滑稽滑稽!んっんっん」

 

 十字教を心底馬鹿にしたようなペストの態度に、普段なら切りかかるゼノヴィアもイリナも神の死を知り意気消沈していた。

 

「ふん。で、貴様が俺と戦ってくれるということで良いのか?」

「戦い?いえいえ貴方では我が輩の相手になりませんよ」

「なめるな!」

 

 馬鹿にしたようなペストの態度に青筋を浮かべ巨大な光の槍を放つコカビエル。ペストは黒い風を発生させ槍を防ぐ。

 

「ほう、中々やるようだな。何だ、貴様は?何処の神話の戦士だ!」

「我が輩は別に何処ぞの神話に仕えているわけではないのですがね。我が輩達は偉大なる父上により創造された、ただの魔人でございます故……あなた方に比べれば、歴史は薄い」

 

 期待に添えず申し訳ありません、と帽子の鍔をつかみ頭を下げるペスト。その間にも雨のように降ってくる光の槍は全て黒い風の壁に防がれ、黒い衝撃波がコカビエルを襲う。

 

「ほう、その父とやらも強いのか?」

「いいえ、弱いですよ。少なくとも、我々に比べれば。そもそも自分より弱い者を創ってなんの意味があると?」

 

 心底不思議そうに首を傾げるペストに、コカビエルはふん、と鼻を鳴らす。

 

「なるほど、お前の父とやらは、あれか………今代の、既に現れていたのか。で、あるなら興味も失せる。自立式を創造する奴等は、何時の時代も本体を殺せば終わりだ」

「星も壊せぬ神話負けの弱者が、我らの父を侮るか。我が輩より弱いからといって、我が輩より遙かに弱い貴様と同格などと侮辱するな」

「ほう?言うではないか、人間風情が俺より上だと?なら、貴様を殺して身内贔屓だと教えてやろう」 

「……………んっんっん……あいにく我が輩は弱い者虐めは嫌いな方でしてな。他の魔人達に比べると、穏健派なのですよ。なので、もう終わらせてもらいました」

「何?───っ!?」

 

 唐突にコカビエルが地面に落下する。流石は人外、あの高さから落ちてなおそれ自体では傷一つ付いていない。しかし、その体には黒い斑模様が浮かび上がっていた。

 

「これ、は……黒死病?馬鹿な、人間界のウイルスが──何故、俺に」

「我が輩は黒死病を操る魔人ではなく、黒死病と言う現象を実体化させた魔人なのですよ。我が輩が使う力はペスト菌を操るのではなく、黒死病という感染性の呪いを振りまく。本人の抗体など、我が輩にはなんの意味もない」

 

 生きていると判断したら機械だろうと神だろうと死に向かう呪いをかける。防ぐ方法はペスト以上の魔力や神力、光力、仙術などを使うこと。コカビエルには、それが出来ない。

 

「我が輩の素体はイザナミ母様。死を与える魔人としては一級品なのですよ」

 

 立ち上がろうとも力が入らないコカビエル。ペストはコカビエルを肩に担ぐ。

 

「では、我が輩はこれで───あ、これは返してもらいますね。父上の物なので」

「───あ」

 

 ヒョイとイリナの刀を回収するペスト。イリナは弱々しく呟くだけ。ペストは一礼して去ろうとすると、目の前にイッセーが立ちはだかる。

 

「待てよ──!」

「んっんー?我が輩に何かご用ですかな」

「お前は何処の誰なんだよ!?てか、お前のせいで、俺は部長のお乳を揉めなかったんだぞ!」

「────は?」

「俺はここで活躍して、部長のお乳を揉ませてもらうつもりだったのに!」

「───え?」

「許せねぇ、ぶっ飛ばしてやる!」

『身の程を知らん小僧だ──』

『Boost!!』

 

 赤い籠手を突き出し叫ぶイッセー。そのままかけてきたイッセーを蹴り飛ばすペスト。

 

「──ッ!まだまだぁ!」

「───うーん、これ………殺しても良いですかね?」

「────っ!?」

 

 ゾワリと背筋を悪寒が駆ける。ヤバい、これは、死ぬ───本能がそう理解し、ペストの手が伸びてくる。と、そのペストに落雷が落ちる。

 

「─────」

「イッセー君から離れなさい!」

「イッセーに手は出させないわ!」

 

 朱乃が叫び、リアスが滅びの力を放つ。ペストは片手で弾くと顎に手を当て考え込む。

 

「眷属一匹ならともかく魔王の妹は流石に面倒ですなあ───ふむ、兄の立場に感謝することですね」

「お兄さまは関係ないわ!今、貴方の前にいるのは私でしょう!」

「んー?んっんっんっ!おかしなことを言いますなぁ。貴方、兄上の加護もなしに自分が今の評価を得ているとでも?」

「当たり前でしょう?」

「んー───これは、その、うん………我が輩帰ります。ご用の際は、我等が父上王神帝様にご連絡をば」

「王神……?また、彼奴かよ!」

「………とはいえ、無礼なガキは殺しておきましょうかね?いえ、良いです。貴方ごときでは、父上を侮辱したところで父上の名に傷など付きませんからな」

 

 パチン、と指が鳴る。手袋してるのにどうやって、と疑問を持つ前に黒い風が渦巻きペストを包み込み、晴れるとその姿は何処にもなかった。

 

 

 

「貴方の望みはなんですか?」

「………戦いを──闘争を、俺、は……同じぐらい、強い奴と、殺し合って、勝って……勝利の快感に、浸りたい」

「───解りました。お父様から要望をかなえるよう命じられましたからね、その願い。私がかなえましょう!」




コカビエルがその後どうなったかは、会談にてあかします

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