魔獣創造って最強だよね   作:超高校級の切望

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堕天使総督

 授業参観が近づくと、王神家は騒がしくなる。主に成人した見た目の魔人達が誰が行くかと争うためだ。

 駒王学園で教師と働いている王神辰が唯一の突破口なのだがシンは「学園に迷惑かけねーなら誰でも」と適当な性格なので実力でもぎ取ろうとする。

 

「ああ、悪いが今回お前等留守番な」

「「「え!?」」」

「代わり見つけたから其奴に頼む」

「そ、そんな、我が輩せっかくサーカス芸を学んできたのに!」

 

 仮面をとり端整な顔立ちを露わにしスーツ姿になったペストがその場にうなだれる。慰めるようにチュウチュウとネズミ達が寄り添うがあれ全てペストの一部なのだからただの一人演技だ。

 

「では、誰が来るんだ?───ですか?今日このために戻ってきた彼等ではないのだろ──でしょう?」

「無理な敬語は気持ち悪いだけだからやめて良いぞ………誰って、まあお前等も知ってる筈。いや、あったことはないだろうが」

「「……?」」

 

 ベタベタと体をすり付けていたゼノヴィアとそんなゼノヴィアをチラチラみながら頬を染めていたイリナが揃って首傾げていると扉が開く。

 

「おうい、もう入っていいか?」

「入ってんじゃねーか」

 

 現れたのは着物姿の男。日本人では無さそうだが、誰だろうか?ゼノヴィア達は知っていると言われたが写真でも見たことがない。

 

「貴方は?我々は貴方を知っていると言われたが、見覚えがないのだが……」

「堕天使総督アザゼルだ。今度この町で会談を開くことになってな、その許可を貰いに金を積みに来た」

「そのついでに授業参観誘ったんだよ。魔王達も来るみてぇだし、顔合わせにゃちょうど良いだろ?ついでに俺も会談に出ることになった」

「日本神話もな。ここ、もう日本神話のものだし……つーかお前は日本神話所属じゃないんだな」

「俺はフリーだよ。強いて言うなら俺自身が勢力の長だ。日本神話は同盟相手」

 

 一つの神話と対等だと笑うミカドに、魔人達を見るアザゼル。コカビエルを呪ったというペストを始め、他の魔人達が主の学校の風景を見に行けるアザゼルを睨んでいた。

 

「………なるほど、な。歴代とは全く違う。参った参った」

「ところでアザゼル、マリカーやろうぜ」

「おう、俺は強いぜ?」

 

 テレビの入力を切り替えゲーム画面にするとカセットを入れるミカド。ワンレースが終わるとコーラあるか?と聞いてきたアザゼル。コーラを持ってくるように命じると銀髪のメイドが瓶コーラと氷の入ったコップを持ってきた。

 

「ん?グレイフィア、お前何でここに」

「アザゼル、お久しぶりです。今は、ご主人様のお世話になっているのですよ」

「ご主人様だぁ?お前、サーゼクスはどうしたよ」

「─────」

 

 アザゼルが何気なくつぶやいた言葉に不快そうな顔をするグレイフィア。漏れ出す殺気は、アザゼルが知るグレイフィアの力を大きく上回っており冷や汗が流れる。

 

()()が、どうかしました?()()()()()、私にはなんの関係もありません。私は()()に汚されていない、完璧なる私なのですから」

「お、おう……なんか、すまん」

「いえ、解ってくださったなら何よりです。すいませんご主人様、お見苦しいところを」

 

 グレイフィアは申し訳無さそうに頭を下げその場から去っていった。アザゼルはその背を眺める。

 

「なんだ彼奴、何があった?サーゼクスが浮気でもしたか?」

「ああ、あれお前の知るグレイフィアの弟だよ。近親同士の悪魔と交配させたら受精、着床するかの実験に使う虫の材料として玉とったら姉さんに近づけたと喜んだから改造がてら姉に容姿を似せたら、自分こそグレイフィアだと思うようになった」

「はー……なんか、怖いな彼奴。んじゃ、本物のグレイフィアはサーゼクスのとこか」

「いや?銀色ならここにいるけど」

「銀色?」

「同じ名前だと紛らわしいだろ?」

 

 つまり本物の方から名前奪ったのか、しかも名前が髪の色って……容赦ない。というか結局何でグレイフィアがここにいるんだ?と首を傾げていると扉が開き長い銀髪を引き摺ったバスローブ姿の虚ろな瞳の女が入ってくる。体でも洗ってきたのか、ほのかに石鹸と果物の香りがする。

 『ぎんいろ』とかかれた皿に置かれている食事をみると素手で食べ始める。

 

「………あれか?マジで何があった?」

「落ち着きました。コーラのお代わりはいかがですか?おや──」

「──ッ!───あ、う───」

 

 戻ってきたグレイフィアが銀色を見て不快そうな顔をする。それに怯えたように後ずさる銀色。

 

「何故、貴方がここに?虫相手に腰でも振っていればよろしいのに」

「───う、あ──あぅ」

「聞いているのですか?全く、返事もせず不愉快な──」

「ひっ──」

「グレイフィア、その辺。たく、銀色いじめんなよ。泣いちまうだろ?」

「あ──」

「………申し訳ありません」

 

 ミカドの言葉にグレイフィアが殺気を納め銀色がトテトテと近付いてきてグレイフィアから隠れるようにミカドに抱きつき丸くなる。その姿はまるで幼子だ。精神が完全にぶっ壊れて幼児退行している。

 理由は、まあ何となく解った。自分と全く同じ姿をして、自分では全く勝てない存在に罵倒され続けられれば精神もおかしくなるだろう。それにしたって壊れすぎだが……何か別の要因でもあるのだろうか?

 

「そういえば何で外に?虫部屋に居なくて良いのか?」

「────ッ!」

 

 虫部屋という言葉に首を弱々しく横に振る銀色。実験、虫のために玉をとる、虫部屋、その単語から現状を大体把握するアザゼル。行方不明の堕天使は、多分此奴等に消されたな。コカビエルもそうなのだろうか?まあ、おそった其奴等が悪い。

 

「………ん?うお、なんだこれキモ」

 

 と、そんな事を考えていると目玉が大量に付いたツギハギだらけの肉の球体がすり寄ってきた。とてもきもい。みゅーみゅーと十字型の口から鳴き声をあげるそれを掴み放り投げる。ペットかもしれないので傷つけないようにしたが球体はボロボロと涙を流して逃げるように去っていった。

 

「お、ミコト。銀色外に出てるけどなんかあったか?」

 

 病気なら抗体細胞型魔獣打ち込んでやるが、とミコトに尋ねるミカド。と、ミコトはニコニコ笑っている。何かサプライズを考え今まさに教えるような、そんな顔。

 

「ふふふ。なんと、この度銀色ちゃんが妊娠したのです!」

「ほー……」

「…………おぉう」

「「「おおー」」」

 

 特にどうでも良さそうなミカド、顔をひきつらせるアザゼル、パチパチ拍手する魔人にゼノヴィア、そんな周りの対応をみて同じように拍手するイリナ。銀色は目を見開いて固まり、己の腹を撫でる。

 

「というわけで今部屋は妊婦さんに相応しい環境を整えてます。部屋の時間も加速させたし、明日の朝に戻せば明後日の夜には出産ですね!いやぁ、なかなか良いデータが入りましたよ。まさか天使、堕天使だけでなく悪魔も近縁種だったなんて」

「ん?そりゃ、当たり前だろ?」

 

 ミコトの言葉にアザゼルが何言ってんだ?という風に呟く。

 

「悪魔だ堕天使だと分けられてるが、そもそもルシファーと聖書の神は親子だぞ。んで、同じ術方で天使やら悪魔やらを創った。さらにいや悪魔共の始祖リリスも下は神が創った。だから悪魔と堕天使、堕天使と人間で子供が作れるように理論上は天使と悪魔とも子を………え、まさかそういうことのなの?」

「はい。悪魔と天使のハーフです」

 

 

 

「アザゼル、迎えに来たぞ」

「おう、ヴァーリか」

 

 インターホンが押され、時計を確認したアザゼルが玄関に向かうと銀髪の少年ヴァーリが立っていた。アザゼルはまたな、と手を振り去っていった。

 

「彼はどうだった?」

「ああ、ありゃ相当やばいな。ねじぶっ飛んでやがる。どういう生活をしたんだか」

「いや、強いのか?」

「強いぜ、少なくとも、サーゼクス達超越者クラスだろうよ」

「いや、マリカーの事だが……やったんだろ?」

「………強かったよ。そういや、お前この前彼奴にあったんだよな?」

「ああ。まあ、途中コカビエルの気配が弱々しくなってな。失態を片づける、というより後から来て漁夫の利だけをもらう、などと言う形になりそうだったから退いたが」

「それで正解だよ。帰り道、彼奴の使い的なもんにはあったか?あったなら、呪い食らってないか調べときてぇんだが」

「はは。心配性だなアザゼル、安心しろ。もとより移動距離が短くなっていたんだ、不審者にあう確率はぐんと減った。誰とも会ってないよ」

「いや、距離が減ろうと彼奴の使いならそっちから会いに行くだろ」

「そういうものか?それより、マリカーだ。トゲ甲羅はなしでいくぞ」

「まだ根に持ってんのかよ」

 

 

 

 腹の中に、子供がいる?()()の子が、自分の中に?

 イヤだ、イヤだイヤだイヤだイヤだ。不愉快だ、不快だ。腹を今すぐ消し飛ばしたい衝動に襲われながらも力の殆どが封じられ虫は勿論自分を傷つけることも出来ない。

 ふらふらと、一日だけの自由をどう過ごせばいいかも解らず家の中をさまよう。明日からまた時間の流れのおかしな部屋の中で、子供に栄養を与えるためだけに生かされるのだろう。

 と、不意に扉の隙間から部屋を覗くツインテールの女が見えた。頬を赤く染め、目を潤ませ片手は体を支えるように壁に、もう片方の手はスカートの更にした、下着の中に突っ込まれ、水音と共に動く。

 

「………………」

 

 虫の子供なんて、産みたくない。産むならせめて、人の形をした相手が良い。

 

「は、ぁ───ふぅ、ん───ッ!──ふ、は──」

「………どいて」

「へ?あ!!や、違───その──」

 

 何やら慌てているが無視して部屋にはいる。部屋の主がこちらに視線を向ける。何しに来たんだ?という情欲の欠片もない視線。彼の腕の中でぐったりしている青髪の女は、不意に笑う。頬を赤く染めた、色っぽい笑み。彼に何かを耳打ちすると離れ、彼はじっと銀髪を見つめる。

 スルリとバスローブを脱ぎ捨て裸体を露わにする。男は、特に動かない。だが、離れない。笑みを浮かべ近付いていく。その笑みは、先程の青髪の女とよく似ていた───

 

 

 

 

「あ、は──こ、こんなにょ、の…はじ……めて」

「仮にも元人妻だろお前?いろいろ期待したのにな」

「もう、いっかい……しましょう?」

「今日は元々お前の予定じゃないんだがな……つーか元々抱く気なかったし……」

 

 人妻だからなぁ………とはいえ求めてきたのは向こうだし自分は悪くないはず。しかし今日は本来ゼノヴィアとの予定だった。まあ、彼女が譲ったわけだが。

 

「も、もう……もういっかい………」

「面倒くせぇなぁ、研究はもう終わったし返そうかな」

「……もう、いっかい……して、くだ……くだしゃい……」

「………へぇ、可愛い頼み方してくんな。ま、どうせゼノヴィアは行っちまったしな」

 

 返す前に楽しむぐらい、まあ罰は当たらないだろう。




感想にもあったかR-18版も書いた方が良いんだろうか?

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