「裏切り者はお前か、ジークフリート」
「───フリード、僕の前でこれ見よがしにグラムを使うなよ」
グラムを振るうフリードに憎々しげな、獰猛な笑みを浮かべるジークフリート。フリードはグラムを振るい校舎の外に吹っ飛ばした。
上空からは、漸く魔法使い達が生きたまま降り始めた。元々隙間に住む虫はその特性にステ振りしてるから戦闘力は低い。補充されるように召喚されるみたいだし、補充のスピードを訝しみ防御魔法を張れば転移できるのだ。
「所詮は不意打ち用の魔獣か」
パチンと指を鳴らし虫達を隙間に戻す。そもそも今回安全を保障しなくてはならないのは三大勢力なのだ。ミカドや日本神話が何かする必要はない。
「フリード、お前の偽物はどうもお前と戦いたいらしい、相手してやんな」
「ああ。私も、彼奴とは因縁がある」
フリードはそういうと外へと飛び出した。
ミカドはクルリと振り返る。動けるのは魔人達と各トップ達に、ヴァーリと木場祐斗。兵藤一誠と会談中からずっと手をつないでいたリアス・グレモリーと状況把握しようとしているソーナ。ゼノヴィアとイリナは止まっている。帰ったら改良しよう。
ソーナが動けるのは恐らくセラフォルーと同じく原初返りで力が上がっているからだろう。セラフォルーも先ほど本来なら格上の筈のサーゼクスを押さえつけてたし。
「ま、何時までも時間が止まってるのも気持ち悪いなフクロノス、出てこい」
と、髪を書き上げ右目を露わにするミカド。彼の右目をみた事があるのは魔人達だけだ。だから、驚愕する。
時計だった。金色の時計。水晶体の中に時計を埋め込んだかのように黒目も白目も瞳孔もない。文字盤の上を黒い針が三本。一番長く、細い針がカチカチと動いている。
それが、ズルリ飛び出てくる。精神がぶっ壊されて幼児退行しいるグレイフィアはひっ、と怯える中異常は続く。
ゴポリと空っぽの眼孔から黒い泥のような液体が溢れ出し飛び出た眼球に纏わりつく。
バサリと二対四枚の翼を広げたのは単眼の梟だ。顔の中央に着いた時計がカチカチ音を鳴らす。
「─────ホゥ」
ミカドの頭に着地するとグリン、と首を横に回す。200°以上回る首は部屋全体と窓の外を見回し、止まっていた者達が一斉に動き出した。
「何だ、其奴」
「フクロノス。梟と時の神クロノスをもじって名付けた時を操る魔獣だ。昔、俺がまだ未熟だった頃シヴァに見つかって片目を失ってな。それ以来俺の目の代わりをしてくれてるペットだ」
「ホー♪」
嘴の下を撫でてやると気持ちよさそうに目を細めるフクロノス。フクロノスって、こいつネーミングセンス──と呆れるアザゼル。
「え?あ、あれ……な、何が………?」
「おうみろイッセー、裸の姉ちゃんだ、好きだろお前?」
「なにぃ!?まじか!」
と、窓に張り付くイッセー。確かに裸の女は居た。服の中に侵入した虫を捕ろうともがいていた女だ。当然身体は食われ骨や内蔵が飛び出している。しかも虫達はもう居ないので中途半端に生きながらえている。
「う、ぶ………うえぇぇ!」
「あははは!」
スケベ顔から一転、顔を青くして吐き出すイッセーを見てケラケラ笑う。
「お、お前、なんつーもん───」
「でもほら、なかなか良い胸してたから胸の部分は残してるぞ?」
「うるせぇよ!てか、何が起きてんだよ!」
「テロだよテロ。あそこの教会の戦士のくせに何故か魔なる剣、それもニーベンゲルや北欧の剣を使うフリードのパチモンが情報漏らして、んでテロリスト達がきた。最初は対応しようとしたけど考えてみれば三大勢力が安全保障してくれてるし、やめた」
「お、お前はこの町の管理者じゃないのかよ」
「霊的な方のな。後土地神代理。だから、氏子でもない奴らが今回の件で死のうと俺は知らん」
そもそもミカドがリアスに管理の甘さを説いたのは単なるこの町の管理権限を奪いやすくするための口実だし、別段管理不届きで人が死んでいることを、心の底から責める気はない。どうせ甘い管理なら俺にくれよ、お前が管理者気取ってると五月蠅いし、というのが本音である。
「でも何で突然景色が」
「突然じゃないわ。イッセーは、さっきまで止まっていたのよ」
と、リアス。ジロリとミカドを睨みつけてくる。
「この地の人間を守る気なんてないくせに、良くも土地神を名乗れたものね」
「土地神が管理するのは霊的なもんと、氏子の願いだ。俺は土地神であって領主じゃねーの」
だから最悪この地に疫病が蔓延ろうと、願いがなければ何もしない。それが日本の神々だ。だからこそ様々な神話が幅を利かせ自分達の神話を広めることが出来たのだ。結果日本神話を侮る者も多くいるが、戦争にならないようにきちんと同盟を組もうと日本神話を良く知る多くの主神達は考えている。
「止まるって、まさかギャスパー!?」
「悪魔は眷属を利用され、天使は教会の戦士に内通される、か。こりゃ遺憾の意を示さなきゃなあ」
「だがアザゼル、安全を保障したのは俺たちもだぞ?」
「わーってるよ。ヴァーリ、ジークフリートはフリードと何やら因縁あるみたいだから、取り敢えず魔法使い共をやれ」
「了解した」
『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!』
カッ!と白い鎧を纏い外へ飛び出していくヴァーリ。じー、と外を見つめるゴスロリ幼女。
「こんだいのはくりゅうこう、さいきょうとうわさ……wktk」
とか良いながらスマホを取り出しパシャパシャ写真に収めている。
『1,∞ドラゴン
最強と噂の白龍皇雑魚相手に禁手化!テラワロス↓画像投下
2,金髪魔女っ娘
「獅子は兎を狩るのにも全力」キリッwwww
3,夢と幻の赤い龍
草生えるwwww
4,以下名無しに変わってVIPがお送りします
てか何処じゃここ
5,∞ドラゴン
三大勢力会談
6,以下名無しに変わってVIPがお送りします
やはり襲撃を受けとるのか。うちもロ──バカが今こそとか張り切っとった
7,以下名無しに変わってVIPがお送りします
烏に鳩にコウモリ共か、集まって何をするかと思えば、直ぐに裏切り者を出すとは
8,ココノエ
漢字間違えておるぞ?
9,以下名無しに変わってVIPがお送りします
変換した後消して付け足しとる。キャラづくりじゃ、ふれてやるな
10,夢と幻の赤い龍
kwsk
以下名無しに変わってVIPがお送りしますさんがログアウトしました』
「─────」
ムフー、と無表情ながら満足そうなゴスロリ幼女。ケータイをしまい周りの状況を改めて把握しようとする。
イッセーがリアスとどっかに転移していた。
「アザゼル、一つ聞きたい。君はミカド君とも直ぐに友好を築こうとしたようだね。彼の持つ神滅具に気付いて。そこまで力を集めて、何をしようとしていた?」
「備えていたんだよ」
「備える?和平を申し込んだ後に、不穏になる物言いですね」
「うたがってかかるとかマジホビロン」
「……なんですか、この子」
ミカエルの疑うような視線にゴスロリ幼女が良く解らないことを言う。アザゼルは意味が分かるのかそーだな、マジホビロンだな、と頭を撫でる。
「
「さんぎょういない」
「………見つけたの最近、三大勢力の危険分子神器使い込み、頭は二天龍を超えるドラゴン」
ゴスロリ幼女の言葉に三行にまとめるアザゼル。その最後の言葉に、サーゼクス達が目を見開く。
「そうか、彼が動いたのか。
「ん?」
「神が恐れたドラゴン、この世界が出来上がった時から最強の座に君臨し続けている者」
サーゼクスが戦慄している中、不意に女の声が聞こえてきた。
『そう、オーフィスこそが禍の団のトップです』
「え?」
カッ!と床に魔法陣が浮かび上がる。
「───レヴィアタンの魔法陣」
「………ヴァチカンの書物で見たことがあるぞ。あれは、旧魔王レヴィアタンの魔法陣だ」
サーゼクスが呟きゼノヴィアが続ける。魔法陣の中から、一人の女が姿を現した。
「ごきげんよう、現魔王サー───」
「えい」
ぶち、とゴスロリ幼女が現れた女の首を引っこ抜く。脳が発した命令に従い得意げな笑みで口をパクパクと暫く動かしていたが、直ぐに止まる。
「とったどー……われのなまえかってにつかういくない」