「ああ、領の一部が」
触れてないのに光の通った跡はひび割れ砕け、塵へと消え去った。圧倒的な滅びの魔力、否、滅びそのものの破壊跡。心の何処かにあった『バアル家の滅びの魔力は惜しかったかもな〜』などという未練は綺麗サッパリ消え去った。だって、ねえ?バアル家絶対ここまでではないもん。
ていうかこれ、リリス様の後夫くたばったんじゃね?
と思ってたらなんかドス黒い蛇身にして邪竜にして蛇竜が出てきた。
「へえ、ヴリトラのレプリカか。散りばめられた魂はあちこちにあるもんね。全盛期の1割にも及ばないけど」
なんか身をよじっただけで屋敷吹き飛ばしそうなバケモンを期待外れとでも言うように嘆息するショタが居るんですけど。
「時間稼ぎにしかなりはしないが、まあ2秒もあれば君なら逃げるか。だから手はうっておいた」
放たれる邪気の濁流たる黒炎の咆哮。触れればフェニックスの炎すら呪いに沈め飲み込むそれを、少年は片手で掻き消した。
「ああ、悪魔の青年。ここは君達の領地だし、慰謝料としてこれをあげよう」
その余波で龍を消し飛ばしたショタは黄金の装飾品を渡して何処かに行った。
「ファック!なんで冥界にシヴァがいやがる!」
集めに集めたヴリトラ系神器を全て使用し神すら殺せる魔獣を生み出したが恐らく2秒しか持ってないだろう。
速攻で次元の狭間に逃げ込んだ。
どっか異世界を経由してから雲隠れでもしようか、と思ってると別の生き物の気配。オーフィスはもちろんグレートレッドまで去った何者もいない次元の狭間。何か住み着いたのだろうと思ったが明らかにこっちに接近してきてる。
「赤い、鳥?まさか、ガルダかよ!?」
「こん、の……!なめんな焼き鳥が!」
SFに出てくるロボットのコアみたいのを取り出し神器の力を込めようとするミカド。が、その腕を掴まれる。
「まあ落ち着け王神帝。支配者の名を冠する者として、もう少し落ち着きを持ったほうがいい。ところでそれ、なんだ?魔力とも光力とも違う、この世のものではない何かを感じるが」
「…………シヴァ!」
「よよ、よう、ようこそいらっしゃひましたシヴァ様」
「今回はプライベートだからね。こちらこそアポもなく迷惑をかけた」
「ははは。悪魔の常套手段を奪ってるな。ライザーの眷属もなんか人種バラバラだし、やってんだろぶっちゃけ」
フェニックス家広間。
使用人の如く立ったままガタガタ震えるフェニックス夫妻にライザー達兄妹。眷属?こんな場所にいたら気配だけで命が削れてくっての。
ライザーもミカドの軽口に返すことも出来てないし。因みに消し飛んだ領の一部は滅びの理が色濃く残っていたため時間操作でも治らなかったので樹木系の魔物を腐らせた腐葉土で埋めた。やったね、来年から豊作だ。
「で、何しに来たんだよシヴァ。正直俺はあんたと二度と出会いたくなかったんですまじで許してください勘弁してください」
前半の敵意もどこへやら、速攻で頭机に押し付けるミカド。相当シヴァが恐ろしいらしい。恐ろしいだろう。何せ星を滅ぼす力を持つ破壊神なのだから。
「そこらの神など単独で滅せる力を得ておきながら、僕が怖いか?正直君の成長は予想以上だ。僕が勝つが、それでも無傷でとは行かないはずだよ?君が僕に勝てないとしたらその理由は僕を恐れるあまり本気を出せないからだ。ゾロアスターの悪神の一部を食らってるくせにね」
「ゾロアスター?彼処はアジ・ダハーカの死体以外手を出していない筈だが」
「アジ・ダハーカはアンラ・マンユが自らの神性を切り落とし生み出したドラゴンだ。じゃなければ、ハーデス如きに劣る神になってない」
「え、ハーデスってアンラ・マンユより強いの?」
「今のアンラ・マンユなら、だけどね。弱体化してなければ祖神の一柱が祖神の子の子の子に劣るなんてある訳がない。実際かつての姿を維持できず闇の塊みたいになってるし」
それだけ弱体化するほど身を削り生み出された邪竜アジ・ダハーカ。他にも16の災難という概念を世界に定着させたりして弱ったらしい。
「君はそんな結構強い神の一部だった悪竜の死体を取り込んだんだ。もう少し自信を持ってもいいと思うけどね」
「『神に勝てる獣産み放題だぜウェーイ』と調子乗ってたガキの頃にあんたに片眼抉られたんでね。結構なトラウマなのよ」
と、時計の針が動く右目を抑えるミカド。
「第一俺が強くなるのは強さのイメージの明確化のためだ。蟻が一軒家とスカイツリーを『デカい壁』としか認識出来ないように、俺自身それがどの程度の大きさか認識出来ないとスカイツリーに車一台ぶつけただけで壊せると勘違いしちまう。だから神クラスの強さを理解出来るようになり……たかったんだけどなあ、イメージに左右されるせいでお前に勝てる魔獣が産めねえ」
「オーフィスやグレートレッドと一緒にいるのに?」
「そもそもなんで錬金術の象徴と聖書に記される赤い龍が強いんだよ」
「聖書に記される、ではなく聖書の神だけが記したが正しいね。どうせどの神話にも関わらないのに態々人間に広める神はいない。グレートレッドは
グレートレッドは聖書に記されているだけで聖書の龍というわけではなく、オーフィスも錬金術の龍と言うわけではない。なるほど納得だ。
「でも俺からしたらオーフィスはガキで変態で狭くて気持ちいいぐらいの認識だしなあ」
「まあ、トラウマが払拭されるのを気長に待つさ。ところで君、僕の養子にならない?鍛えてあげるよ」
「トラウマ払拭が遠のくどころか、やたら子煩悩なパールヴァティーに抱きしめられた瞬間殺されそうだからやだ」
「安心してくれ。首を切り落として投げても今度はちゃんと見つけるし、見つからなくてもカッコいい顔にする」
「どうでも良いけどガネーシャの首から上が象ってそれもう意識は象なのでは?」
「魂は体にあったからあれはガネーシャだよ。と、そうだ。君にお土産があったんだ」
シヴァはそう言って懐から白い粉を取り出す。
「シャブセッ○スはやってねえよ」
「神の遺灰だよ。愛の神だからその使い方も出来るかもだけど、君って昔の怪物の死体を核に復活させてるんだろう?彼は悪魔達とは別の意味として魔王としての側面持つし、やってみたら?」
「女として復活させていいなら………うわ、シヴァの炎の残滓をまだ感じる」
時計の右目が反応するように青い炎に包まれる。否、それは目から発せられたのでは無く義眼がなければ空洞のはずの眼孔からだ。
「では僕は帰ろう。君からは面白い獣の匂いもするし、次会う時はもっと強くなってる事を願う」
「強くなってなかったら殺したりは」
「する気はないよ、今はね」
つまり明日はわからないと言うこと。空間を素手で引きちぎり次元の狭間から己の神話領域に帰っていくシヴァを見送り、気配が消えたのを確認するとフェニックス家もミカドもその場で倒れる。椅子ごと倒れたミカドは天井を見上げながら額に手を添えた。
「なんで目ぇつけられてんのぉ、俺。俺逃げただけじゃん。神に勝てるかも、とか調子乗ってたけどお前一目見た瞬間あ、無理だって逃げ出したじゃん。くそう、リリスの息子の能力もあんま役に立たねえし。まずいの我慢したのに。食うんじゃなかったか?いや、少しは効いたけど」
何やら悪魔として聞き流してはいけない事を言ってたが残念ながら気付くものは居なかった。
その後恐怖をふっ飛ばすために仲良く自棄酒。
死の恐怖を前にしたからか、生殖本能が刺激されライザーは眷属とやるために自室にこもった。一人駒一つであまり無し。
一人で相手出来る数には限度があったので溢れていた眷属もいたがライザー以上に死の恐怖を感じてた男が使用人に手を出しているのを見つけた。
悪魔の祖であるリリスの因子が行為中にかいた汗と共に気化し、後はもうお察しください。
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