「父さん、それは?神の、遺灰ですよね?」
瓶に詰められた白い粉を見つめるミカドにマイが話しかける。マイとシンは祖神の直系。それが神に連なる物であるとは解るようだ。
「そのとおり、インド神話の神の遺灰だ。それも、シヴァに影響を与えるほどのな………」
復活させたいが、流石に遺灰だけでは無理だ。カーマに関して夫が悪い事をしたと思ってるパールヴァティーから貰った髪もあるが、これでも少し足りない。いや、復活だけならもう出来るけどミカドは復活させるなら強化して復活させる方針なのだ。
「妲己や酒吞、ジェヴォーダンとは文字通り格が違う。そもそもあっちの死体は破壊の炎を受けた訳じゃねーしな。とりあえず復活させて強化方法はあとから考えるか?」
どうでも良いけど神話によればシヴァがパールヴァティーを受け入れるとき、シヴァはカーマに肉体を返すだろうと予言があるらしい。ある意味当たってたな。プラデュムナ?知らんな。
「魔王としての性質も持ってるし、色欲を司る悪魔で魔王クラスの力持ってる奴が居れば使えるんだがなあ」
「私が産んでやろうか?」
と、提案するリリス。
「ん〜。生まれたてだとなあ、神降ろしに耐えれないかもしれんし。そうなると素材が無駄だ」
「神の遺灰を素材………神をも恐れぬとは貴方のためにある言葉ですわね」
「何いってんだ。シヴァとかクソ恐ろしいわ。俺の安心のためにシヴァに勝てる魔獣生み出すぞ何時か絶対」
「自分が勝てるように、とは言いませんの?」
「俺は
本人に力を与える神器ならば、なるほど安心のためには己自身を鍛えるしかない。だがミカドは創造系。
「俺は少なくとも力の方向性を己の強化優先にゃしない。そもそも俺のこれはそういう力じゃねえんだからな。より強い存在のイメージの為に俺自身を鍛えるだけ。んで、俺より強い奴を作る。ぶっちゃけ俺よりシンの方が強いしマイはまだ未熟だが潜在能力は俺より上だしな」
その言葉にビールを飲んでるシンを見るレイヴェル。
「後、三妻も俺より強いな。ティアマトとイザナミはともかく、リリスにゃベッドでも勝てねえし」
正○位か騎○位で争ったと伝えられるだけあり未だ責められてる現状。生々しい話にレイヴェルは耳まで真っ赤になる。
「というか即席ならともかく時間をかけて自意識と力を与えたり復活させた魔人は全部俺より強い」
それはつまり魔王以上の、超越者以上が何人もいる事では、とレイヴェルは血の気が引いた。まあ自意識を持たせた結果留まらず各々自由に過ごしてるらしいが。
「だが呼べばすぐ召喚できる。去年の夏休み異世界でも召喚できた」
「異世界………」
「だから俺を守る意志がありシヴァ相手にも戦える魔人が俺の望むもの。そうすりゃ俺は、安心して好きに暮らせる」
「勝てるのですか?あんな理外の果のその先のような存在に」
「勝てるのを作るさ。そりゃあ怖えよ?無理無理俺なんか勝てるかって思う。けど何時までも怯えるわけにゃいかんだろ。飯食って女抱いて漫画読んで家族と楽しく過ごす。俺が欲しいのはそんな生活。なまじ裏側に関わっちまうとなぁ、この世界がどんだけ危うい均衡で保たれているのかわかって安心どころじゃねーのよ。主に三大勢力のせいで」
各方面に喧嘩売りまくった三大勢力。他の神話の領域にまで布教………で、怒りを抱くのはその地の人間か心根が三下の神ぐらい。そもそも神々自体がこの世界からすれば余所者だ。人類創造が存在しない日本神話が正しい在り方。故にこそ日本神話は領土内の人間が何処を信仰しようと気にせずそれこそ祭りや年明けにしか来ない国民に気まぐれに加護を与える。
逆に自ら人を作ったと自称する神話群は人間を所有物と見てる事が多く勝手に持って行く三大勢力に怒りを抱いているものも居る。自分達が統治の為に創造者を語った自覚がある主神達は殆ど気にしてないが。
「ぶっちゃけ三大勢力がまだ形保ててる理由は主神共の慈悲……とは違うか。無関心……そう、無関心さ故だからな?とは言え祀られる者達だ。信者が滅ぼして滅ぼしてと何度も願えばいつか動く。まあ俺にゃ関係ねえけど………そん時はソーナ達とセラ、後お前も助けてやるよ」
「………シヴァ様が相手でも、ですか?」
「その為に強い魔人創りてえんだろうが。いや、いっそミルたんに頼むか?」
ミルたんと聞き慣れない、恐らく女性の愛称を呼ぶミカドにレイヴェルはムッと顔をしかめる。昨日あれほど人の体を貪っておいて……いや、女好きなのは知ってるけど。
「………!」
思い出し、慌てて顔振るが火照った体はその程度では熱を失わない。ミカドは材料をしまった。もう寝る気なのだろう。レイヴェルは声を掛けようとした、その時だった
「あん?これは、転移か?」
「かんたんに、はじける。どう、するの?」
ティアマトが小首をかしげながら聴いてくる。今夜は自分の番だからか放置して欲しそうに腕に抱きつきながら上目遣いでミカドを見ている。
「なあレイヴェル、これどこの家紋?」
使われようとしている強制転移に刻まれていたのか、悪魔の家紋を見せてくるミカド。レイヴェルはその家紋に見覚えがあった。
「旧アスモデウスの家紋ですわ」
「アスモデウスね。どれどれ………」
スマホを起動しウィキ○ディアで調べ始めるミカド。
序列は32番目だが七大罪の
「行ってくる!」
「………あ」
ティアマトが切なげな声を出すがミカドはさっさと転移してしまった。涙目でレイヴェルを睨むティアマト。めっちゃくちゃ可愛い。
「はじめましてだな人間。いや、リリス様の後夫ともなれば対等に接する権利ぐらいやろう。私はクル──」
そこで言葉は止まる。ミカドが生み出した毒蛇に噛まれたからだ。
「き、貴様!真なる魔王に何を!」
「ん?」
と、周りに上級悪魔がいっぱいいた。全員もれなく敵意を向けている。
「ミコト、お土産だ。新鮮な上級悪魔仮死死体詰め合わせ」
「わあい!」
ガチャガチャのカプセル見たいなカプセルを渡されたミコトは笑顔で喜んだ。