最近兵藤一誠がリアス・グレモリーと朝走っている姿を見る。自転車に乗ったリアス・グレモリーを必死で追う兵藤一誠。筋肉千切れても再生するのだから、もっと限界を超えた修行をした方がためになるだろうに、とその光景を見ながら思った。
あの会談以来どうも嫌われているようで度々オカルト研究部から睨まれる。この前は匙元士郎と階段ですれ違ったら殴りかかられたので蹴り落とした。
そんなある日、リアス・グレモリーから呼び出しを食らった。無視して帰ったら家までやってきたので居留守使ったら転移妨害結界に反応があったので行ってみると、案の定バラバラになったリアス・グレモリーおよびグレモリー眷属達がいた。後々面倒なことになりそうなので脳細胞が死滅する前にミコトに縫い合わさせて放置したらまた性懲りもなくピンポンピンポン鳴らしてきた。
舌打ちしたシンがバラバラに引き裂いたのでまたミコトが縫って富士の樹海に捨ててきた。まあ、転移して町に戻ってピンポンピンポン鳴らしてきたが……どうもショックで死ぬ瞬間の記憶がすっ飛んだらしい。
面倒くさくなったのでリリス達に隠れてもらい対応する。
「何か用か?」
「修行よ!」
「………………は?」
ごめん、ちょっと意味が分からない。
話を聞くと何でもリアス・グレモリーの婚約者が来たらしい。名を、ライザー・フェニックス。結婚したくないリアス・グレモリーはこれを拒否。ライザー側も家の背負っている。婚約破棄されるなど、名に泥を塗られる行為と婚約破棄を拒否。
口論になりレーティングゲームという戦争ごっこをすることになったから、人間でありながらそこまでの強さを得た秘訣を教えろとのこと。住まわせてやってる対価を払えとの事。もう殺して放置しようかな、と考えていたのだが、王神家にはお人好しがいる。
「うう、それは大変ですね。家族も自分のことを解ってくれないなんて、そんな悲しいことはありません」
「解ってくれるのね!」
ミコトだ。基本的に他者に奉仕する性分の彼女は情に訴えかければとてもチョロい。
「おと──お兄様!」
「───対価払ってくれんならな」
「だからそれは、この領地に無断で住んでいたことをチャラにする事で」
「くたばれよ赤虫」
「何ですって!?」
その後交渉の末リアス・グレモリーは一人当たり日給10万円で指導を受けることにした。自分には必要ないとリアスは辞退。彼女は過去の様々なレーティングゲームを調べるらしい。ライザー以外のレーティングゲームまで見るらしい。ここが解らない。
小猫、木場、イッセー、朱乃の面倒を見ることになった。日給40万だ。ミコトとミカド二人で日給80万。
「木場さんと兵藤さんはまだ何とも言えませんが、塔城さんと姫島先輩なら一気に強くなれますよ!」
「本当ですの?」
「どうやって──!」
ミコトの言葉に反応する朱乃と小猫。ミコトはニコニコと疑問に応える。
「姫島先輩は堕天使の力を、塔城さんは仙術を伸ばしましょう!」
「「嫌です!」」
「…………はい?」
二人の明確の拒絶に首をコテンと首を傾げるミコト。
「堕天使の力など使いたくありません」
「仙術なんて、あんな、誰かを傷つけるだけの力なんて………」
「………えーっと……お二人はグレモリー先輩にライザーさんと結婚してほしくないんですよね?」
「はい」
「もちろんですわ。あのような男、リアスに相応しくありません」
「それはつまり、ライザーさんと結婚するとグレモリー先輩は不幸になるんですよね?」
「ええ」
「そうでしょうね」
「…………?なのに、出せる力を出したくないんですか?」
「あんな男の力などに頼らずとも───!」
「あの力を使うなんて───」
「…………えー」
まあそう言われては雇われた身として諦めるしかないのだが………この人達本当に主が好きなんだろうか?と疑問を持つミコト。とりあえず基礎を鍛えるしかなさそうだ。
地面に這い蹲る男子二人。すぐさまナース姿のアーシアが癒やしの力を
「ほら気張れよお前等。俺に傷一つつけりゃそれで終了だぜ?」
「くっ──剣よ!」
「おらぁ!」
地面から生えてくる無数の剣を踏み砕き振るわれた拳を握りつぶす。指をくん、と上に向ければ地面から飛び出した鋭い鱗を持つ蛇が木場達の腹を貫く。未分化細胞の無限倍化により再生するイッセーは歯を食いしばり痛みに耐えながら迫ってきた。腹を殴れば内臓や背骨ごと吹き飛ぶ。
「───っ!もう少し、加減してもいいんじゃねーの。俺達を痛めつけたいだけじゃねーだろうな!」
「あ、加減?お前等、ランボーって奴と赤虫結婚させたくねーんだよな?」
「赤虫って、部長のことか!?」
「あー──えっと、リア──あれ、何だっけ?部長さんとライダーを結婚させたくねーんだよな?」
「あたりまえだろ!」
「そもそも何でだ?あの女が結婚できるなんて、幸運じゃねーか」
「あんな奴部長にふさわしくねぇ!」
そこまでボロクソ言われるとは。いったいどんなクズなのか聞いてみたら、何でもハーレムを作った男なのだとか。しかも婚約者であるリアス・グレモリーの前で眷属とイチャイチャする。
ふむん?と首を傾げる。
「お前の将来の夢ってその男と同じく眷属を女で統一してハーレム作る事じゃなかったか?」
「うっ、うるせぇ!それと部長のことは別だ!彼奴は、部長と結婚した後も他の女の子とイチャイチャしまくるつもりなんだぞ!」
「もしお前が仮に部長さんと結婚したらランサーと違って他の女は囲まないのか?」
「何言ってんだ?男なら、ハーレム作ってなんぼだろ!お前等みたいに付き合わなくても女を欲望のはけ口にするような奴と一緒にすんな!」
「…………?」
何だろう此奴、言葉が通じているのだろうか?実はこの世界の生き物じゃないんじゃないか?と、あまりの話の噛み合わなさに戦慄する。まあ、どうでも良いかと直ぐに興味をなくしたが。
しかし、修行ね─────
王神帝に、小学生時代は存在しない。その頃は兎に角鍛えていたからだ。
イメージ通りの魔物を産めると言うことは、勝つイメージが出来なければ勝てる魔物も生み出せないのだから。
まず根源の海そのものであった女神の加護で海の中で息をすることだけを可能とした。
最初は水深6メートル程。その時点でも、水が重い。さらには空気と違い動きを阻害される。水の中に慣れ、普通に動けるようになった。それから更に一年をかけて深海に到達した。ミシミシと骨が軋み筋肉が潰れそうになったがゆっくりなら動ける。鮫などに襲われるため油断すれば直ぐに骨折した。
それでも、続ける。深海に慣れてきた。何トンもの圧力に耐えながら世界一深いマリアナ海溝で鍛える日々。何をしていたかというと、海底の山を攻撃していた。殴って、蹴って、寝て起きたら飯を食ってまた繰り返す。拳から血が出て足の骨が剥き出しになっても治して続ける。
気がつくと飯を食う時間、眠る時間が減っていき、何時の間にか無くなっていた。仙術を覚えたのだ。霞を食って生きていける仙人になったのだ。
一日中山に対して攻撃を放ち、二年ほどかけ破壊に成功する。なので次の山。海の底は神々すら気にしない場所。時間は幾らでもある。
二つ目の山は半年ほどで。まだまだ足りぬと繰り返し、海に入って七年経つ頃には深海の圧力の中、一撃で山を破壊することに成功した。
破裂しないようにゆっくり浮上し、地上に出てその余りの動きやすさに驚いたものだ。今でも加重魔法を常にかけている。
午後は自分達でやると岩を抱えてヒイコラヒイコラ息をするイッセーを見ながら、もし結婚することになったら面倒くさいことになるんだろうな、とグチグチ言って来そうなリアス・グレモリーを想像する。やっぱ殺すか?でもそうするとせっかく学園生活を楽しんでいる娘の笑顔が曇る。
ようするに結婚しなければいいのだろう?
「もしもし、ソーナか?赤虫の婚約者の連絡先って、お前知ってる?」
イッセーは女の服を弾き飛ばす魔法を編み出し女性だらけのフェニックス眷属達に対して優位に立った。彼女達の実力はミカド以下。故に、脱がせ放題うっはうは。偉い人達が見てる前で、何をしているのだろうかこの変態は。
というか重要な魔法練習期間中に女の服脱がす練習しかしてないのはどう言うことだ。王であるライザーには何も出来ない。
まあ、だから、負けた。仙術を使えば不意打ちなど食らわずにすんだが食らって負けた小猫。堕天使の力を使えば二回勝つことなど余裕な相手に回復され負けた朱乃。そのせいでピンピンしていた女王にやられた木場。
イッセーもまた、残りのフェニックス眷属達にやられ、それでもリアスの元に駆けつけ、ボコボコにされた。そんな姿を見ていられず、リアスは自らの敗北を受け入れたのだ。
「これで、満足かしら?私の可愛い下僕たちを傷つけて、私を手に入れて………でも、思い上がらない事ね。貴方には、心を許したりしないわ」
「ふん、必要ないさ………リアス」
「……………」
キッ!と睨みつけてくるリアスに肩をすくめライザーはため息を吐く。そして───
「君との婚約を破棄させてくれ」
そう言い放った。
「………へ?」
「聞けば君は駒王の領主になって二年と少し。自らの領地で8体のはぐれ悪魔を倒したそうだな」
「ええ、それが何?」
「自分の領地に、それも大して広くもない町に8度も侵入許すような無能と婚約したとあっては俺の名に、ひいてはフェニックス家の看板に泥が付く。だからどうか、君は他の相手を見つけてくれ」
「は?な……何で私が貴方に何かフられなきゃならないの!?納得いかないわ!」
後日、ライザー・フェニックスに
しかし、もしその時君が勝てたら叶えられる願いを叶えようなどと言わなければ彼は妻を王神命の実験材料として差し出すことにはならなかったろう。どれだけ後悔しても、過去は変えられない。吐いた唾は飲み込めない。この世界でもっとも敵に回してはいけないのは絶対的な強者ではなく、価値観が異なる精神的別種族なのだ。自分は欲望に忠実で他人に迷惑をかけまくるくせに、他人が誰かに迷惑をかけると正義面する精神的別種族に関わった平行世界の住人とかも酷い目を見ているから間違いない。