魔獣創造って最強だよね   作:超高校級の切望

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レーティングゲーム

「うーん、結局破棄になったのは良いんですけどね」

「なんだ、何か思うところがあるのか?」

「今回グレモリー先輩が結婚を急かされたのって悪魔の出生率が低いからでしょ?先の大戦で失った分を補充したいわけだから、きっと似たような話は増えるんだろうなぁ、って」

「ま、それが今の悪魔社会なんだから仕方ないだろ?」

「でも、やっぱりかわいそうだな」

 

 そう話し込むミコトとマイ。そこへ風呂上がりのミカドが現れる。彼にべったりとつくのは金髪の、どこかミコトと似通った容姿の女。ミコトの元となった悪魔リリスだ。遺伝子的には親子に当たる。

 

「あ、お母様。そうだ、お母様の体ちょっと調べさせてくれませんか?」

「藪から棒に何だ?」

「ちょっと悪魔の妊娠のメカニズムを解明したくてですね。今後悪魔がきちんと繁殖できるように」

「私の体は他の悪魔共とは異なる。はぐれ悪魔でも捕らえればいいだろ」

「うーん、はぐれ悪魔って基本的に元別種族が多いんですよね……お父様、何とかなりません?」

「あー……旧魔王派の連中ならとっつかまえて実験しても文句言われねーだろ。純粋な悪魔の女で良いんだよな?」

「はい!」

 

 じゃあ適当にさらってくるか、何か最近良くないことをしようとしてるみたいだし、と、その時インターホンが鳴る。扉をあけると、どこか申し訳なさそうな顔をした女悪魔がいた。オーラの質からして純正な悪魔のようだ。

 

 

 

 

 ()()()()()()()()()とは言ってくれる。私情にまみれた印象操作をしたのは向こうだろうに。

 参加させられた理由を思い出し面倒くさそうに欠伸をするミカド。それを咎めるような無数の視線が飛ぶ。所謂重鎮悪魔達だ。

 

「すまないね、このような形になってしまって。リアスはバアル家の力を持つ者。その家としては、汚名をつけられたと判断したらしい」

 

 まあ嘘ではないのだろう。それでもミカドがライザーに渡した情報だって嘘ではない。だから、実力主義の悪魔達の前で彼を戦わせ、あんな人間の言葉に信憑性があるのか?としたい。そのために信用度の足りる相手なのか見定める、という名目なのだ。

 もしライザーが負けてもそんな相手に妹はやれないと言えばいい。リアス・グレモリーに問題があって婚約が破棄された、という状況をどうにかしたいのだろう。

 

「やる気でねぇ……」

「そうかい?なら、もし君が勝てたら私の叶えられる範囲の願い事なら全て叶えよう」

「ふーん………つっても曖昧だな。なあ、そこの爺さん。個人で叶えて良い願いってどの程度だ?」

「じ、爺さん?ふん、口の利き方を知らんガキめが……個人で叶えて良いというと、まあ自分の所有する領地、眷属、経営する会社の経営権、使用人、私財、趣味で集めた持ち物を与えるとか、まあ人間は弱いからな、何か動物の一部でも頼んだらどうだ?」

「ふーん……」

「……!」

 

 チラリとミコトを見るミカド。改めて悪魔達を見回す。

 

「つっても、お前本当に約束守んの?お家同士で決まっていた事にいやいや言う奴の兄貴なんだろ?」

「………な、何なら契約書でも書こうか?」

「良いね。破ると死ぬタイプの契約にしようぜ。つっても、一般人の俺と魔王の命が釣り合うとは思えねーしお前の息子の命で良いぞ……あ、そっちは次期当主だっけ?んじゃあの赤虫で……あの赤虫名前なんだっけ」

「リアス・グレモリー先輩だよ。お父さん、本当にあの人に興味ないんだね。10日間も面倒みてたんじゃないの?」

「な、何故リアスを!?」

「あん?だって、お前は魔王で息子は貴族の次期当主だろ?」

「だから、どうして命を賭けるような!」

「だって信用ならねーんだもんお前等。やってること思い出せよ」

 

 ゾワリ、と貴族悪魔達が魔力を溢れさせる。悪魔に対する侮辱ととったのだろう。マイが袖口から無数の刃物を生み出しシンが牙を剥き出しに唸る。一触即発の気配。と、その時──

 

「呼ばれてないけど私参上!」

 

 シュタ、と両者の間に女性が落ちてきた。黒い艶やかな髪を持った和服の美女。その人物に、悪魔達は目を見開きマイはゲッ、と後ずさる。

 

「あ、天照大神殿!?な、何故この様な場所に……?」

「様をつけろよクソガキ共………そして、どうもミカド、お久しぶりです」

「ああ、先月の箱根温泉旅行以来だな」

 

 ギロリと重鎮悪魔を睨みつけた後ミカドにニコニコ微笑む女の名は天照大神。日本神話の主神である。

 そんな彼女と温泉旅行に行ったらしいミカドは何者なのかという視線が飛ぶ。

 

「大体の話は小石の神達から聞かされてましたよ。日本神話主神天照大神の名を以て、その契約の仲介人となりましょう」

「な──!」

「別に~、私達日本神話は祀ろわぬ民となった人間を救う気はありませんけど、知り合いを助ける程度には人間くさいのですよ。なので契約の仲介人に」

「わ、わざわざ仲介などなくても」

「人に興味を失ったとは言え魂の管理はしてるから眷属を作る際には報告するように言いましたよね?貴方はそれを了承した。ところがぎっちょん密漁は続く続く。まあ本人の意思無視して眷属にするのに報告している暇なんてありませんからねぇ」

 

 ジトリとしたアマテラスの視線にバツが悪そうな顔で目をそらす重鎮悪魔。

 

「というわけで貴方達悪魔の信用度は下の下の下。彼のためにも是非契約を……あ、契約内容にライザー・フェニックスが負けた場合彼に当たらないこと、と付け足しますね」

 

 アマテラスがそういって契約書を取り出す。サーゼクスは、考えを切り替えることにした。そもそも人間が不死のフェニックスに勝てるとは思えないし、リアスの命に比べれば例え領地でも安いものだ。簡単に払える。払ってみせる。

 というかここまで大事にしてしまった時点で中止に出来ないし、アマテラスの要請を断れるほどの立場はない。

 

「わかり、ました………」

「ん、よろしい……さぁて、マイちゃーん!アマテラスお姉ちゃんですよぉ!」

「ひゃあ!来るな、来るなぁ!」

 

 アマテラスが満面の笑みでマイに抱きつこうとする。お姉ちゃん?妹と言うことか?いや、アマテラスの母イザナミは既に死んだはず。ではお姉ちゃんとは?マイはミカドの妹だし、ミカドとそういう関係だから?

 

 

「それでお父様、何を願うつもりなんですか?」

「んー、ミコトへのプレゼント」

「お父様ったら……」

 

 頬を染めクネクネ体を動かすミコト。その頭をポンポン撫でてレーティングゲーム会場に向かう。彼の教室だ。そこから、レーティングゲーム用に作られた場所に転移する。

 どうやら森の中を再現したフィールドらしい。

 

「んじゃお前等は好きにやんな。俺も遊んでくる」

 

 ミカドはそういうと森の中をかけていった。

 

 

 

 今回のフィールドは中々広い。それに森の中。見晴らしも悪い。だが、相手は人間。

 

「見つけてバラバラにしてやるー!」

「おー!」

 

 勇んでつっこんでいった二人が森の名を疾駆する何かに一瞬でバラバラにされた。

 

「───な!?」

 

 その光景に目を見開くチャイナ姿の女の首が宙を舞う。

 

 

 

『ライザー・フェニックス様の兵士2、戦車1、リタイア』

 

 アナウンスされた内容に目を見開く兵士三人と騎士、僧侶一人ずつ。まさかこんなに早く自分達がやられるなんて、相手は人間ではなかったのか!?と固まっているとパキ、と枝を踏み折る音が聞こえる。

 

「何者!?」

「ああん?んなもん、敵か味方に決まってんだろうが」

 

 そういって現れたのは海の底のような髪の色をした女。くぁ、と欠伸をした彼女はズボンとコートのみを身につけ、そのコートも全開。ライザーあたりが好みそうな格好だ。しかし、敵。直ぐに攻撃に移るライザー眷属達。爆風に砂煙が舞う。終わったな、と確信する。が──

 

「こんな貧弱な技で、俺が倒せるとでも思ったのかよ──」

 

 砂煙の中から無傷の女が現れる。騎士がならばと首を切り裂こうと大剣を振るう。女は、避ける動作などを一切しない。剣が首に当たり、しかし切り裂くことなく止まる。驚愕に固まる中、女の首筋から牙の生え揃った口が現れ剣を噛み砕いた。

 

「な、なんだ貴様は!?」

「はは──はははは!」

 

 女の手が巨大化し鋭い爪が生える。騎士の胸を貫いた腕はそのまま死体を地面にたたきつけ潰した。

 

「シーリス様!」

「おのれ、よくも!食らいなさい!」

 

 十二単姿の僧侶が最大出力の魔法を放つが女は巨大な魔力弾を突き破り大きく口を開ける。牙が生え巨大化した口はまるでドラゴン。僧侶の上半身を一瞬でかみ切る。

 

 

 

「な、何だあの女は!?」

「シンちゃんはですねぇ、あらゆる生物の揺りかごであった海の特性を持つ子でして、この世に存在する生物の特性を体に反映できるんですよ。相手を飲み込む口に噛み砕く牙、砕き貫く腕や爪。空へと逃げる相手を追うための翼。最終的に効率がいいのはドラゴンらしいです」

 

 アマテラスはホップコーンを食べながらそう解説していた。

 

 

 

 フェニックス家は不死だ。まあ殺す方法はあるのだから完全なる不死ではないが、頭が吹き飛ぼうが内臓が吹っ飛ぼうが蓄積した栄養関係なく魔力のみで復活できる。

 他にもフェニックスの涙という回復アイテムを生み出す。

 

「ふーん、涙腺の中を通る時に特殊な魔力を帯びるのね。そして、フェロモンバランス、脳内分泌物が安定した時じゃないとそれが崩れる。あ、動かないでねー。フェニックスの回復と精神の関係性を知りたいから麻酔使えないけど、そこはほら、頭を吹き飛ばされても我慢できるフェニックス家の意地を──」

「────────!!」

 

 ミコトは偶然見つけたフェニックス家の少女を解剖していた。マイに頼み微弱な『死』を纏わせたメスで再生を妨害し、様々な実験をする。

 例えば腕を普通に切り落として、新しい腕が生えたら再生を妨害しながら古い腕を移植し直す。右腕が二本にされた少女を嫌悪感から暴れるが両方の右腕が動いたのをみて固まる。

 よしよしちゃんと繋がってるね、という声が酷く遠くに聞こえた。

 そのまま右腕の半ばほどから切り落とされるとキチンと両方再生する。肩から切り落とすと再生したのは一本だけ。

 おそらく本人が正しいと思う形に再生する。上腕の一部が残っていると、そこから先、腕の形を意識してしまい再生したのだろう。跡形もなくすと本来の形に戻る。

 

「なるほどなるほど。じゃあ次は気絶させて……は転移しちゃうから、薬で五感全て失わせて────あれ?」

 

 気絶しないように脳に電気を送り続けていた筈なのに、少女が転移してしまった。心が折れ再生が行われず、開腹された傷が致命傷扱いになったからだろう。

 

 

 山を壊した。深い深い海の底を光りすら届かぬ闇の世界で、世界を感じ取り、自然を感じ取り、ただただ無心に攻撃を続けて。

 そして得た一撃は、ライザー・フェニックスの上体を弾き飛ばす。

 

「───ぐぅ!」

 

 直ぐに再生して炎を放ってくる。炎に込められた魔力や気に干渉して乗っ取る。さらに追加。炎はそのままフェニックス家にちなんで巨大な鳥の姿をとるとライザーに襲いかかる。どれだけ逃げても生きているかのように追ってくる。まあ、というか生きてるのだが。

 ライザーが幾ら炎を放とうとむしろ飲み込み巨大化していく。

 

『ライザー・フェニックス様の僧侶1、リタイア』

 

 先ほどからずっとなっていたリタイアの放送。不意に止まった時は最後の一人までやられたのかと思ったが、そういえば残っていた。それも、今リタイア。今度こそ自分一人。

 

「うおおお!」

 

 王さえ倒せば終わりだ。己の全霊を持って放った炎の一撃は火の鳥も飲み込めずに焼け死に、しかしミカドが拳を振るうと弾け飛ぶ。そのままかかと落としで地面に落下する。

 

「ぐ───?これは、ダメージ?」

「バカな、俺は─まだ───!」

「俺は仙人だぜ?生命力に干渉して魂そのものにダメージを与えるなんて余裕余裕」

「な、なら、何故今更!」

「ミコトがフェニックス家の不死について研究したいっていうから。ま、それも終わりだけどな」

 

 パチンと指を鳴らす。何処からともなく無数の虫が現れ、ライザー・フェニックスに食らいつく。再生は、しない。30秒後。ライザー・フェニックスはリタイアした。

 

 

 

「んじゃ、お前のメイド頂戴」

「────は?」

「だから、お前のメイドだよ。使用人は貰っても良いんだろ?」

「い、いや、彼女は私の眷属で───」

「ん?眷属でも問題ないんだろ?」

 

 契約書を読み直すミカド。確かに使用人や眷属も個人で叶えられる願いの物品に含まれている。

 

「し、しかし!彼女は私の妻で、そんな願いをされるなんて──!」

「妹さん死にますよ?朝になった瞬間、光に焼かれて」

 

 と、アマテラスの言葉に固まるサーゼクス。そうだ、すでに契約はなされているのだ。サーゼクスにかけられた呪いはそのまま血を通りリアスに向かう。

 

「だ、だが──」

「サーゼクス、仕方ありませんよ」

「グレイフィア!?」

「私は大丈夫です。長くても、百年だけですし」

 

 あれ、俺仙人だから寿命なんてないんだけどな、と思ったミカドだが面倒なことになりそうなので黙っておく。

 

「だけど──」

「例え何をされようとも、私は貴方のことを忘れたりしません」

「グレイフィア………すまない」

「んじゃいくぞ」

 

 

 

 

 グレイフィア・ルキフグス。

 ルキフグス家の直系。魔王の妻。超越者の一人として数えられるサーゼクスは彼女を妻とするために魔王になった。後なんか子供たちが傷つかない世界を作りたいとか言ってたな。どっかの猫又姉妹みたいに泣くことになった奴らも結構いるが。

 まあ、そんな超越者が欲しがるほどの美人なのだグレイフィアは。その事を自覚しているから、ミカドの目的も自分の体だろうと思っていた。が───

 

「ミカドく~ん、久しぶりに一緒に寝よ♪」

「今日はイザナミなんだよ………どうする?」

「私は構いませんよ。アマテラス、久し振りに母と寝ましょう」

「おお、親子丼ですか。良いですねそれも」

 

 グレイフィアを無視して二人の美女と共に部屋に向かっていった。というか片方アマテラスなのだが、今母と呼ばなかったか?

 

「はいそれじゃあグレイフィアさんはこっちに」

「あの、私って何で連れてこられたんですか?」

「まあ別に貴方でなくても良かったんですけどね。純血の悪魔の女性なら誰でも」

「それは、また……何故」

 

 ミコトに導かれるまま一室に案内される。ブブブ、と振動音が聞こえてくる。

 

「ほら、今回の件って悪魔の出生率の低さが原因の一端ですよね?だからそれを解決したいと思いまして。そのためにはまず研究でしょ?」

 

 ピタリと肩に何かが乗っかる。それを見たグレイフィアは思わずひっ!と悲鳴を上げる。

 肩に止まったのは、巨大な虫。蜻蛉のような長い体の先端には男性器のような卵管がある。

 

「この子達はそれぞれ様々な種族の精液を吐き出すんですよ。取り敢えずハーフもいるんですし人間と子を残せるのは確実。どんな種族でなら子を残せるのか、その種族だとどうして孕みやすいのか、それを観察します。まずは人間と悪魔、それから天使に堕天使、後はドラゴンや各種動物幻獣を試してみますね。それとその際の卵巣の動きも調べます。全部終わるまでは、まあ一週間ほどですね。悪魔の未来のために頑張りましょう!」

「───ひ、い……いや……サーゼ───っ?」

「あ、暴れないように一服盛らせて貰いました。すいません」

 

 虫の羽音が鼓膜を揺らす。ドサリと倒れたグレイフィアの足に、肩に、ピタリと虫がとまる。

 

 

 

 

「お父様、あの研究用の精巣虫改造できませんか?」

「あん?何でまた」

「グレイフィアさんが泣き出しちゃって………痛かったんですかね?だから、行為が気持ちよくできるように媚薬効果を……」

「ま、良いけどな」

「ところでそちらの方は?」

「『姉さんを渡して貰いましょう。人間如きには相応しくありません』とか言って襲ってきたから殺した」

「じゃあ睾丸を精巣虫にしてもらえます?血縁の場合どうなるか見ておきたいので」

「解った。体はどうする?」

「そっちはいらないので───」

「じゃ、捨てるか」




今回の出来事

レイヴェル、研究される

ライザー眷属、この後ミコトに治して貰いました(双子の猫とチェンソー姉妹は内臓が取り違えられたりしてます)

グレイフィア、人妻からミコトの実験材料に転職

グレイフィアの弟、タマナシになる

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