魔獣創造って最強だよね   作:超高校級の切望

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エクスカリバー

 爽やかな笑顔を浮かべる白髪の少年神父。

 フリード・セルゼンと名乗った彼に、ゼノヴィア達は聞き覚えがあった。

 元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。悪魔や魔獣を次々と滅していく13歳でエクソシストになった天才。しかし、同胞にすら手をかけ異端認定された男。

 何時も楽しそうに笑い言葉の通じない相手だと聞いた。実際昨日遭遇した木場も理性がない狂人だと認識していた。

 

「今回の件の首謀者はコカビエル、その協力者は聖剣計画の発案者バルパー・ガリレイ。目的は戦争の再開。教会所有の聖剣を奪い、魔王の妹たちを町ごと吹き飛ばして両者の怒りを買うつもりだ。協力したはぐれエクソシストは私を含めて三名。拠点となる廃屋は、残念ながら教えられない。若い命を無碍に散らしに行くなど、私は見過ごせないからな」

 

 誰だろう此奴は?

 なんだこのキラキラしたオーラ。何で笑うと歯がキランと光るんだ。なんか、怖い。

 

「分を弁え魔王様方、天使長様達に報告するのが最適だろう……あ、ただ妹のこととなるとやりすぎると噂のセラフォルー様は余計町が危険になるのでやめておいた方が良いだろうな」

「魔王様を呼べというの?今回の件は、私達で十分よ」

「同感だ。わざわざ天使長様達の手を煩わせるなど、言語道断!」

「ははは。面白いことを言う」

 

 と、愉快そうに笑うフリード。

 

「煩わせなければこの町が滅びると言ったろ?お前達では、万が一にも勝てない。それでも抗った、という形を取りたいのは解かったから、上に掛け合って………おや?」

 

 不愉快そうに睨んでくるリアスとその眷属、および教会の使者達に気づき首を傾げるフリード。

 

「まさか自分達だけでどうにかなるなどと、本気で考えている訳ではあるまいな?過剰な自己評価は己の身を滅ぼすぞ。私にも劣るお前達が、コカビエルに勝てるなど笑い話にしかならない」

「────!」

 

 ゼノヴィアが立ち上がり破壊の聖剣を振るう。フリードはそれを()()で受け止めた。ゼノヴィアが目を見開き両手に力を込めるが、フリードは片手に持った魔剣であっさり押し返す。

 

「それは、まさか──グラムか!?貴様、聖剣だけでなくグラムまで!」

「元よりキリスト教の物では無いだろう。何より、これは昨晩私を選んで飛んできた」

 

 魔剣を異空間に収納し何事もないかのようにゼノヴィアの怒りを受け流すフリード。ゼノヴィアのみならずイリナも剣に手をかけるのを見て、はぁ、とため息を吐く。

 

「もし魔王様方が間に合わなかったら、手を貸してもらえますか、ミカド君」

「おう、いいぜ」

 

 空気がピリピリと震え、ソーナは仕方ないというように切り出す。言外に魔王に救援を要請すると言って。そんなソーナにリアスが非難するような目を向ける。

 

「ちょっとソーナ!自分の領地で起きた問題を解決できないなんて、恥なのよ!?なのに、ここは貴方の領地じゃないのに勝手に───!」

「ごっこであろうと領主を名乗るなら暮らす人々のことも考えてください。ここは、人間の世界です」

「────!!」

 

 リアスが魔力を迸らせ、ソーナは全く気にせずお茶を飲み始めた。

 

「マウントの取り合いか?くだらないな。行くぞイリナ………それからフリード。私は背信者に遅れをとるつもりは無い。聖剣は、すべて私達が取り戻す───おっと」

 

 ミカドが持ってきた聖剣の柄を掴み去ろうとすると、机の角にぶつけてしまう。パキン、と音を立てて聖剣が折れた。

 

「───え」

「───は?」

「──な」

 

 イリナ、ゼノヴィア、木場が声を漏らす。聖剣が机の角にぶつけて折れるというあり得ない光景に、他の面子も固まっていた。

 

「ゼ、ゼノヴィアなにしてるのよー!?」

「わ、私か!?いや、私はなにも、こ、こんな所に机おいとく悪魔たちが悪い!」

「っ!そうね、盲点だったわ!」

「ちょっと!責任を押しつけないでくれる!?」

「せ、聖剣が………俺、え?机の、角で──?」

 

 と、混乱の中アーシアが恐る恐る手を挙げる。

 

「どうしたアーシア、何の挙手だ?」

「私が折りました」

「───は?」

「折る気は無かったんです───」

 

 両手で顔を覆うアーシア。そんなアーシアを慰めるようにフリードが肩に手をおく。

 

「彼女を責めないでくれ。私が彼女に襲いかかった理由がそもそもの原因なんだ」

「───アーシア?魔女アーシアか、聖剣を折るとは、貴様を未だ支持している者がいるが、やはり異端認定は間違っていなかったようだな!」

「ふえぇ!?」

 

 聖剣を振るってくるゼノヴィアに悲鳴を上げながら異空間に収納していたらしい剣を取り出し聖剣を防ごうとする。ゼノヴィアが持つ聖剣は『破壊の聖剣』(エクスカリバー・デストラクション)。現存するエクスカリバーの中で最強の攻撃力を誇る。そのまま剣ごと叩ききろうとして、弾かれる。

 

「───な!?」

 

 弾かれる際、眩い光が剣から放たれ悪魔達が苦しむ。ソーナと椿姫だけはミカドに助けられたが。

 

「やっぱり木工用ボンドじゃ駄目だったか~──だから瞬間接着剤にしようって言ったのに」

 

 ヒョコリとミカドの後ろから顔を出しアーシア達を見て呆れたように言う。

 というか此奴も知ってたのか。しかし、木工用ボンドって………

 

「貴様、その聖剣は………何故魔女が聖剣を───やはりバルパーと繋がっているのか!?」

「違いますよ!これは貰ったんです!何で使えるかと言われても、知りませんけど……」

「そりゃ、エクスカリバーは俺が湖の乙女から所有権を貰ってるからな。俺が誰を担い手にするか決められる」

「エクスカリバー?」

「そ、教会が売名行為のために作った偽物で、しかもあっさり折れるちょっと強いだけの聖剣ではなく、正真正銘アーサー王を現代に渡るまで騎士王という名に崇めさせた本物のエクスカリバーだ」

「本物?我々のエクスカリバーが偽物だと言いたいのか!」

「うん」

 

 ゼノヴィアの言葉にあっさり頷くミカド。

 うん、ですって。かわいい返しですねとのんきに話し合うソーナと椿姫。

 

「……そうか。では、その剣は魔女如きに相応しくない。我々が回収しよう」

「話聞いてたか?俺が相応しいと決めたらそれで終わりなんだよ」

「…………アーシアさん、と言ったね?」

 

 ゼノヴィアの言い分に呆れていると今度は木場がアーシアに声をかける。

 

「僕と戦ってくれ」

「え?え?な、何でですか?」

「僕はエクスカリバーを……聖剣を折るために、今日まで生きてきた。君が聖剣の担い手だというのなら、聖剣計画の被害者のために、君の剣を折る!」

「聖剣は教会が回収する。引っ込んでいてくれ」

「ま、待ってください!」

 

 何か勝手に盛り上がる2人にアーシアはワタワタしだす。しかし二人は問答無用と言わんばかりの空気。アーシアは必死に叫ぶ。

 

「で、でも……エクスカリバーは聖剣じゃありませんよ!?」

「「───へ?」」

「選定の剣はブリテンの守護神が用意したから聖剣なんでしょうが、その後アーサー王が戦場で振るっていたのは、キリスト教では悪霊扱いの水の精霊が魔の法、魔法で鍛えた剣ですから、聖剣ではなく魔剣なんです」

「属性は光だけどな。だが聖属性はねーぞ?むしろ、魔剣ではあるが神であるオーディンの造ったグラムの方が聖剣に近く悪魔特効持ってんな」

「そうなのか?私の知る限りでジークフリートはその様な使い方していなかったが……」

「使いこなせてなかったんだろうな」

 

 その後、なんか実力を証明するとかでゼノヴィアがフリードに喧嘩を売り、木場が勝手に参戦し、木場はあっさり敗退した。ゼノヴィア?フリードがグラムの力を解放して放った光に飲まれて気絶した。


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