すみません。切るところが分からなくて過去最大文字数になりました。一応、決着まで。
戦車のスペックとか本当にザックリなので、違和感が多いと思います。言い訳はここまでとして、よろしくお願いします!
《ダージリンサイド》
大洗という無名校から電話が来たときは特に興味を抱きませんでしたわ。しかし、『仙道玲香』の名前を聞いて、わたくしはあの日の胸の高鳴りを思い出しましたの。
一昨年前の中学戦車道全国大会決勝の舞台。こちらの戦力としてスカウトできるような逸材と将来のライバルになるような逸材。
両方を確認するためにわたくしは試合を見ていましたの。
そのとき、わたくしは1人の隊長に目を奪われました。白く長い髪をなびかせる、少女に――。
そして、その華奢な風体からは想像できないような苛烈な戦闘センスに……。
残念ながら彼女は負けてしまいましたが、わたくしは直ぐに先輩たちに《仙道玲香》獲得を進言し、彼女に推薦のお話を送りましたの。
しかし、彼女は怪我を理由に戦車道を引退してしまいました。わたくしはがっかりしましたわ。有能な後輩が手に入らなかったのですもの。
だからこそ、今日、彼女に会えてとても幸せな気分になりましたわ。
それに、大きく成長されていて素敵になっていたので、わたくしとしたことが、少々緊張してしまいましたの。
ふふ、玲香さん、ぜひともわたくしを悦ばせて下さいね。
『くっ、被弾しましたー』
「あらあら、随分と派手なご挨拶ね。玲香さん……。挑戦状、確かに受け取りましたわよ……」
「あの距離から正確に当ててくるなんて、大洗の砲手のレベルは高いのですね。ダージリン様」
「それはどうかしら? あの38tの砲手はおそらく仙道玲香。大洗のチームで彼女だけは特別なの。ねぇ、アッサム」
「仙道玲香、中学時代のデータですと、砲手としてはムラがある方ですね。調子に乗っている日は恐ろしい命中率になっています。車長としても、黒森峰女子中等部を相手に7両を撃破。これには、驚きましたね」
「なっ7両をですか? なぜ、そんな選手が無名校に居るのでしょうか?」
「彼女には事情があるのよ。しかし、今回は随分とわかりやすい囮作戦ですわね」
「データですと、大洗の戦力から考えて囮を使って高低差を活かした待ち伏せをする確率97.5パーセントとなっております。ダージリン、乗ってあげるのですか?」
「当然ですわ。ここまで華麗に挑戦してきてくれましたのに、それに応えないなんて騎士道精神に背く行為ですから――」
『丘の上にⅣ号中戦車発見、待ち伏せをしていたようです! 砲撃してきました!』
「やはり待ち伏せ――のようですね」
「それにしては、攻撃が手薄の様ですが……」
「姿が確認できるのはⅣ号と38tのみ、ふふっ、面白い奇策ですわね、しかし、手は緩めませんことよ。逆包囲して差し上げなさい」
チャーチルとマチルダ2台は右から、残りのマチルダ2台は左から上り包囲殲滅しましょう。攻撃が緩い意図はわかりませんが、こちらが止まってさしあげる理由もありませんから。
『きゃあっ、こちら、履帯をやられました!』
『同じく、履帯を! うわぁっ、いえ、撃破されてしまいました!』
「えっ!?」
わたくしとしたことが、ティーカップから手を離してしまうとは……。そうでしたの、玲香さん。してやられましたわ。最初から貴女は待ち伏せなどするつもりはなかったのですわね。
「ふふっ、おやりになるわね……」
いけませんわ。如何なるときも優雅さを忘れては――でも、わたくしにだって……、熱くなる日はありましてよ……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
戦いはつまるところ数。少数が多数を破るって逸話があるけど、逸話ってことはそれだけ回数が少なかったってこと。
2対5の戦いというリスクを負う作戦。私は最初は乗り気じゃなかった。でも、西住さんはケロッとした顔で平然とこう言ったのだ。
《2対5? ううん、2対2だよ玲香さん。だって――》
そう、セオリー通りに5両の戦車が逆包囲するのだったら当然二手に別れる。つまり、3両と2両に別れるのだ。
だったら、2両の私たちは5両の到着を待つ理由はない。向かってくる2両の迎撃に向かえば良いってわけ。まぁ、手早く2両倒さなきゃ死ぬけど……。
「おおう、やってきたよー、仙道ちゃん。右手側のルートからマチルダ2両ねー」
「ありがとうございます。では、小山先輩、手筈通りにお願いします」
「さっきから怖い運転ばかりで、手汗が酷いよ……」
「こら、柚子っ! 怯むな!」
EチームとAチームは右手側から来るマチルダ2両に向かって突っ込んだ。
ジグザグに不規則に動きながらなら、たとえ近づいて行ってもそうそう当たらない。
それに相手は待ち伏せを予測しているはずなので真っ直ぐ向かって来られたら、絶対に怯むはずだ。正常な判断を失った砲手の精度は著しく悪くなる(経験談)
まぁ、例えばノンナさんクラスの砲手が相手だったら諦めよう。あの人はお化けが出ても物怖じしなさそうだし。
案の定、マチルダ2両は砲撃を一瞬ためらった。私たちを相手にするんだったら、その瞬間が命取りってね――。
「行くよ、みほ――」
私はまずは、手前のマチルダの履帯を狙う。
「おおっ、命中したぞ! 玲香っ! お前、本当にすごいな! はっ、まぁまぁだ。うむ、調子に乗るな!」
「にしし、やっぱやるねぇー」
「河嶋先輩、そんなのいいんで、装填してください」
「ちっ、もう絶対に褒めん!」
先ずは1両目の履帯を壊して――もう一台っと!
「すごーい。玲香、なんで最初に桃ちゃんに砲手やらせたの?」
「うるさいな! 柚子!」
さて、動きは止めたんだ、撃破は頼んだよ。Ⅳ号さん。
火力の弱い38tでマチルダの動きを封じて、火力のあるⅣ号で仕留める。これが、我々のユニゾンアタックである。
おっ、五十鈴さん、やるじゃん1両撃破したか。んで、2両目は狙うのか――。
『こちら、Aチーム。この領域から離脱しましょう。嫌な予感がします』
「なんだ、もう一両はやらんのか? 日和るな! やれっ!」
「小山先輩、全速力で市街地に向かってください!」
「なにっ、玲香! お前も日和ったか?」
「まぁまぁ、河嶋ー。隊長命令には絶対だよー」
会長が諌めるとさすがに河嶋先輩は黙った。ふーん、なるほど。思ったよりもかなり早くダージリンさんのチャーチルが近づいていたのか。
さすが、キューポラから身を乗り出して、全体の確認を怠らない西住流。家を嫌っていても、やっぱり西住さんは家元の娘って部分もちゃぁんと持ち合わせているよ。
欲張らずに正解だな、これは――。じゃあ、行ってみよう。
「「もっと、こそこそ作戦!」」
私たちは遭遇戦を仕掛けるべく、仲間たちが先に行って待っている市街地へと向かった。
マチルダ1両撃破のうえ、もう1両の履帯はすぐには直らないはずだから、最初のほうは実質5対3で遭遇戦ができるはず。
これは恐ろしいくらいこちらが有利だ。
しかし、油断は大敵。奇襲は成功したとはいえ、相手は遥かに格上なのだから――。
懸念通り、というか本気にさせてしまったダージリンさんはやはり強かった。
まず、Ⅲ突がやられた。理由はのぼりが目立ってしまったから。やっぱりだよ、チクショウ! アレが無かったら1両は倒せたかもしれんのに……。Cチームにはいい薬になったと願いたい。
そして、砲撃をゼロ距離から成功したっていう報告をしてくれたBチームは撃破失敗で返り討ち。うん、誰も悪くない。悪いのは89式のスペックさ……。これは言いづらいな、本人たちに……。
Dチームは目の前でCチームが無惨な姿を晒したのを見て、全員外に出ちゃった。いわゆる現場放棄ってヤツ? 無人のM3リーはもちろんその後スタッフが美味しく頂きましたとさ。
あーあ、いつかこうなるとは思ってたんだよねー。
あんなの初心者には日常茶飯事。いくらカーボンで安全安心って洗脳してもマトモな感覚だと被弾の恐ろしさからは逃げたくなる。
ていうか、私も逃げたことあるし。だから、彼女たちは責められないな。ここから、精神的に強くなるのを望むだけ。
だから、身を乗り出して戦車に乗ろうって指導する西住流はマジで恐ろしいところです。はい。
「これで、我々は2両、相手は3両でいずれは4両に増える予定。うーん、実力差が露骨に出てきましたねー」
「のんきに言っとる場合か! なんか考えろ! 副隊長だろっ!」
また、河嶋先輩が無茶振りを……。考えてるよ、目一杯ね。
「ありゃあ、なんかさー、ピンチっぽいよ西住ちゃんのところー」
会長のひと言でふと注意深く前方を見ると、マチルダ2両とチャーチルに追い詰められそうなAチームを見つけた。
「小山先輩、とにかく急いでください! ここで我々はともかく最強のAチームを失うわけにはいきません!」
「だったらさー、あたしに良い考えがあるんだけどー、仙道ちゃん試してみてよー」
「はぁ……」
「こんな言葉を知っている? 英国人は恋と戦争には――。きゃっ」
『被弾しました! いえ、撃破されましたー!』
なんかダージリンさんが喋ってたけど、マチルダ1両の履帯を破壊し、天才的な反応でAチームはそれを撃破して戦線を離脱する。
私たちは置いてきぼりでチャーチルのど真ん前に陣取る。こりゃあ私らも年貢の納めどきだな。まぁ、会長の悪ふざけには乗ってみるけど。
私は急いでキューポラから顔を出した。
ダージリンさんと目が合う。
「ダージリン、君は可愛いな。愛してる。オレの女になれよ――」
「――なっ」
ダージリンさんの顔がみるみる真っ赤になって、ティーカップを車内に落とす。「ダージリン、何をやってるの!」って怒声が車内から聞こえた。
これ、ダージリンさんをめっちゃ怒らせたやつじゃん。ごめんなさい、ダージリンさん。会長命令は絶対なんです。
でも、砲手に紅茶がかかったからなのか知らないけど、砲撃は来ない。
「小山ー」
「はいっ、会長ー」
そんなわけで私達も戦線を離脱してAチームと合流できた。
これで2対3しかも、今のところ実質2対2である。
『玲香さん、長期戦になると数が少ない私達が不利です。広い通りに出て決着をつけましょう』
西住さんの指示で大通りに移動する。うむ、ここで2対2の戦いに持ち込むのだな。
『私達がチャーチルを倒します。38tでは厳しいかもしれませんが玲香さんたちはマチルダをお願い出来ますか?』
「みほ、お願い出来ますか?じゃないよ」
『ふぇ?』
「君が隊長なんだ、命令してくれ。マチルダを倒せって」
『うふふ、やっぱり玲香さんはカッコいいなー。じゃあ、お言葉に甘えて。マチルダを倒してください』
「オッケーだ。隊長、私に任せろ!」
「言われるまでもない」
「にしし、ラストバトルだねー」
「玲香、どう操縦すればいい?」
私たちは再びタッグを組んでグロリアーナと最後の戦いに挑んだ。
「小山先輩、無茶を承知でお願いします。マチルダに、あのマチルダに、どのような角度でもいいです半径3メートル以内に入ってください。そうすれば、必ず私が撃破します。河嶋先輩は装填、もっと早く出来ますよね? わかってます、本気の先輩は当然もっと速い」
「うん、やってみる。玲香、頼んだよ!」
「うっ、そっそうだ! よく気づいたな、玲香。私の本気を見せてやろう!」
いくぞ、大洗女子学園の生徒会の力を見せてやる。私たちは目標を達成するためには手段を選ばない凶暴な集団なんだぞ! 温室育ちのお嬢様なんて、食ってやるからな!
ゴールデン38tは日光で輝きながら、マチルダに突撃を開始した。
「小山先輩、右です! くっ、さすがに硬い! 履帯を破壊しまくってるのがバレたから軽々に狙わせてくれないな。あのマチルダは他の連中とは一味違う。ん? あれは……B チームが砲撃を当てた跡か?」
私はマチルダの補助燃料タンクが破壊された跡を見つけた。ふーん、なるほどねー。派手に燃えたから、最初撃破したって勘違いしたんだ。
報告だと、不意討ちの罠にかかったと聞いている。車長は優秀だけど、素直な性格なのかも。
「河嶋先輩、装填をやめてください。小山先輩は一旦近づくのを止めたフリをしてください」
「はぁ? 玲香! 何を考えている!」
「しばらく空砲を使います。そしたら、向こうは無防備で突っ込んで来るでしょう」
私はマチルダから距離を取って空砲を鳴らすという動作を2、3回繰り返した。
「なるほどー、仙道ちゃんって、いい性格してるじゃーん」
「はぁ、昔はいい子だったんですけどねー、誰かさんに似て悪巧みが好きになっちゃったみたいです」
「おりょ、そんな誰かさんに一度会ってみたいもんだねー」
狙いどおりマチルダはこっちに無警戒で突っ込んできた。
「小山先輩、チャンスです。河嶋先輩も装填急いで!」
マチルダの砲撃が車体を掠める。掠っただけでかなりの衝撃だ。だけど、向こうの装填時間を計算すると――チェックメイトだ!
「もらったぁぁぁぁ!」
この瞬間、私は高校戦車道で初めての撃破を達成した。
「弾薬が切れちゃった作戦成功だねー。いやぁ、この土壇場で空砲を連発するなんてよくやるー」
会長は私の策を見抜いたみたいだ。まっ、こういう悪巧みはこの人の専売特許みたいなもんだからな。
さて、西住さんはどうなった。って、なんだあの動きは? 冷泉さんの操縦ってどうなってんの?
「小山先輩、チャーチルに突っ込んで! 急いで!」
ドリフトのような動きをするⅣ号にあ然としながら早口で指示を出す。敬語を忘れて……。
ほぼ同時にチャーチルとⅣ号は砲撃をする。どちらも被弾してるようだ。砂埃のせいでよく見えないけど――。
『ごめんね。玲香さん、撃破出来なかった……』
「ちっ、やっぱりチャーチルは硬いのか――。でも、Aチームの神業は無駄にしない!」
小山先輩が全速力でチャーチルに突撃する。そして、私はⅣ号が当てた部分の故障ヶ所を狙って射撃をした――。
「玲香、ごめん……」
泣きそうな小山先輩の声。いや、小山先輩のせいじゃないよ。私の指示ミスだ。
『残存車両確認、残存車両、大洗女子学園0、聖グロリアーナ女学院1、よって聖グロリアーナ女学院の勝利!』
念のためですが残存車両は最初に置いてきぼりになったマチルダです。
全国大会もこれくらいのクオリティになると思うのですが、大丈夫でしょうか?
次回はダージリンさんとみほの視点も含めて結末をお届けします。ぜひ読んでみてください!