大洗のボーイッシュな書記会計   作:ルピーの指輪

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サンダース大学付属に行って帰ってくるだけのお話。
ですが、原作と展開が変わってきます。


サンダース大学付属高校に来ております

 なんでも、秋山さんは西住さんと話しているときに会長たちから必ず勝てと釘を刺された彼女を不憫に思い、役に立つためにスパイとしてサンダースに潜入したらしい。

 

「すごいなー、制服まで用意して。ちなみにどうやってここまで来たんだ?」

 

「いやぁ、お恥ずかしい話なのですが、コンビニの輸送船に乗って潜入しました」

 

「はぁ? 優花里って行動力が半端ないな。常識を超えているぞ。ちょっと凡人の私には理解できない……」

 

「すみません――。しかし、玲香殿はどうやってこちらに?」

 

「えっ? そりゃあ、普通に生徒会のヘリを使って――」

 

 去年の年末。私の両腕のリハビリが終わったということで、会長がどこかの国とギャンブル……ごほん、どこかの国のご好意によって中古のヘリコプターを譲ってもらってきてくれたのだ。

 まぁ、誰も免許持ってなかったから、死ぬ気で私が取ったけど……。

 

「ええーっ? 玲香殿はヘリコプターを操縦出来るのですかー!? ていうか、そんな玲香殿に常識云々言われたくないですよー!」

 

 えっ? どう考えてもコンビニの輸送船で密航するよりヘリを操縦する方が常識的だと思うのだが、どうだろうか?

 

「ちょっと、あなたたち! 人の学校に堂々と偵察に来て出されたジュースを当たり前のように飲んでるんじゃないわよ」

 

「何を言っている。私は今日一日ここの客人になったのだ。アリサさんに文句言われる筋合いはない」

 

 ツインテールのサンダースのNo.3、アリサさんが文句を言ってきた。

 

「あなた図々しくなったわね、玲香。中学時代はもうちょっと可愛げがあったけど」

 

「まぁ、色々とあったからね。でも、ようやく君との再戦の約束が果たせそうだ。お互い隊長ではないけどね」

 

「へー、一応覚えててくれたのね。今度こそ完璧に貴女を術中に嵌めてやっつけてやるわ」

 

 アリサさんと私は中学時代に2度対戦している。中学2年のときはケイさん率いるサンダース大学付属中学校に全国大会で敗北。

 中学3年のときに全国大会準決勝でリベンジを果たした。

 

《これであなたとは1勝1敗ね。先輩たちはあなたにサンダースに入ってほしいと言っているけど、私は別々の高校で決着を付けたい。べっ別にどうしてもだったら一緒のチームでも我慢してあげるけどね》

 

 私は怪我をしたとき、この約束が気がかりだった。

 

「両腕のリハビリを頑張れたのも、高校では無理でも大学で君との約束を守ろうと思ってたからという部分が確かにあった。だから、感謝してるよ、アリサさんには」

 

「ふん! 良かったわね。私たちにそのおかげで負けることが出来るのだから」

 

 アリサさんはプイっとそっぽを向いた。

 

「ヘイ! ホワイトデビル&オッドボール。サンダースはあなたたちをウェルカムするわ! それにしてもホワイトデビルはサプライズさせてくれるわねー。確かに『いつでもサンダースはウェルカムだから、来てくれたら何だって教えてあげる』とは言ったけど、まさかこの時期にそれを言ってくるなんて。一本取られちゃった」

 

 そう言いながらケイさんは私を後ろから抱きしめた。

 

「ワォ! それにしてもビッグサイズになってるわねー! それで、何が知りたいの? 戦車の編成かしら?」

 

 ケイさんは上から背伸びして覗き込むように私を見た。

 

「それを聞きたかったんですけどね。こっちの優花里が全部ネタを仕入れてくれたんで、実は知りたいことがもう無くなっちゃったんですよー」

 

「オウ、そういえば作戦会議をオッドボールは全部撮影してたんだもんね。大丈夫よ、チェンジなんてしないから。ウチはそういうのオープンにしてるの。正々堂々と戦いましょ」

 

「ええ、私もまたケイさんとアリサさんと戦えるって考えると腕が治って良かったってしみじみ思うんです。スパイしといて正々堂々もありませんが、本番は小細工なしで行きますのでよろしくお願いします」

 

 私とケイさんはガッチリと握手をした。

 

「オッドボールも、ほらっ」

 

 ケイさんは秋山さんにも手を差し出す。

 

「ええっ、サンダース大附属のケイさんと握手出来るなんて感激ですー」

 

 秋山さんは目を輝かせながらケイさんと握手していた。

 

「なによっ、もっもう帰っちゃうの? ゆっくりしていくんじゃなかったの?」

 

 アリサさんが帰る雰囲気になっている私に声をかけてきた。あれ? さっきは迷惑みたいなこと言ってなかったっけ?

 

「まぁ、そのつもりだったんだけどね。一応、ほら、私って生徒会だからさ、自分のところの生徒が勝手に学校休んで他校の学園艦に潜り込んでいるのを放置出来ないんだよ」

 

「ううっ……面目ありませーん。玲香殿ー」

 

 秋山さんは叱られた犬みたいな表情でしょんぼりしている。

 

「いや、だからさ、今度から潜入するときは、キチンと生徒会に声かけてっていう話なんだけど……」

 

「へっ? 玲香殿?」

 

「だってさ、そうすれば、こっちは生徒会の予算で君をサポート出来るし。学校の授業の単位も操作したりも可能だ。大体、結構金がかかったでしょう? 制服代とか……。後で金額を教えてくれ、生徒会の雑費から出すから」

 

 秋山さんの好意なのかもしれないが、書記会計として一生徒である彼女が自腹をきって諜報活動をしているのは見逃せなかった。

 

「えぇーっ、そんな、私が勝手にやったことなのに。恐れ多いですよー」

 

「いやいや、そもそものきっかけはウチの先輩だろ? 良いんだよ、貰っとけば。別に私のポケットも痛まないし、何だったら先輩なんて、もっと酷い理由で私に予算で落とせとか無茶言うし……」

 

「そっそうですか。ありがとうございます。というか、玲香殿も色々と苦労しているんですねー」

 

「そうなんだよっ! 聞いてくれよ、優花里ぃ! この前なんてさぁ――」

 

 このあと、秋山さんをヘリに乗せてめっちゃ先輩たちの愚痴を話した。すまん、秋山さん。経費に色付けとくから許して! 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

《アリササイド》

 

 今度の大会は先輩たちの最後の大会……。隊長は有能だけど、お人好しすぎるし、キレイ過ぎる……。

 でも、そんな隊長だからこそ、最後の大会は優勝してほしい! その為だったらどんな手段でも使ってみせるわ!

 

 そう思って――この無線傍受機を内緒で購入したんだけどね――。

 

 何でこのタイミングであの子が現れるのよ、仙道玲香!

 

 最初に戦ったときは、ギリギリ勝てたわ。隊長はその時からめちゃめちゃ気に入っていたけどね。

 そして私が隊長になって中学最後の全国大会に挑んだとき、あいつは化物になっていた……。

 

 あいつ一人に次々と撃破される我が校の戦車。白髪鬼(ホワイトヘアーデビル)のあだ名はそのとおりだった。

 

 そんな化物が怪我をして戦車道をやめるって聞いたときは理不尽を感じたわ。だってそうでしょう、私はあいつより楽しそうに戦車に乗るヤツを知らない。

 

 今日、怪我が治ったあいつが来た。嬉しそうに私が負け惜しみで言った約束が守れるって話してた。

 

 ――これは先輩たちの最後の全国大会なのに。どうしてなの? どうして、私は自分勝手にも真正面からあいつと戦いたいって思ってるのよ!

 

 くっ、くそっ! せっかく買ったのに、無線傍受機(これ)は使えなくなったじゃない! 腹いせにあいつをボコボコに撃破してやるわ!

 

 

 

 

 ――えっ、タカシ。その女誰よ? ちょっと雑音多いわね。えっと、周波数を調節っと……。

 

 はぁ!? 一緒に映画? 断るよね、タカシは絶対に断るよね? 嘘……。これはいけないわ! 絶対に阻止しなきゃ……。

 

 タカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシタカシ……………。

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 秋山さんを学校で予備の制服に着替えさせて、彼女が自宅でサンダースの映像をさらに編集したいと申し出たので、私も彼女に付いていった。

 へぇ、理髪店だったんだー。

 

「またまた、優花里に友達ぃ!?」

 

 パンチパーマのオジサンが現れたときは、ちょっと驚いた。秋山さんのお父さんってこんな感じの人だったんだー。

 

「まぁ、よくいらして下さいました。他のお友達も上にいて待っていますよ」

 

 秋山さんに似た美人のお母さんが笑顔でそう言った。他の友達って――まぁ、大体察しはつくけど……。

 

 

「うぉぉっ、皆さん、来てくださっていたのですかー」

 

 秋山さんはAチームが集合していたのに驚いていたみたいだ。

 

「ゆかりん! それに、何で玲香も居るの?」

 

「みんな、秋山さんが居なくて、心配したてたんだよ。玲香さんも一緒だったんだ。てことは、生徒会の用事?」

 

 武部さんと西住さんが秋山さんに声をかける。ほらね、勝手に居なくなるからこんなに心配かける事になるんだよ。

 

「すっすみません……。でも、ちょうど良かったです。本当は後でお見せしようと思っていたのですが、一緒に見て頂けませんか?」

 

 

《実録! 突撃サンダース大学付属高校(なんかアメリカンなBGM♪)》

 

『私は今、サンダース大学付属高校に来ております。それでは潜入を開始します!』

 

 サンクス(どこか懐かしく感じる)の店員の格好の秋山さんが映っている。

 

「これ、どうしたの?」

 

「帰る途中で軽く編集したんですよー。まだ、テロップも仮なんですけど」

 

「そういう意味じゃなくて……」

 

 あー、なんか私の愚痴をヘリで聞きながら色々とやってたけどコレだったのね。てか、作業早くない? 秋山さんってやはり才能の塊なのでは? 生徒会に欲しくなってきた。

 

 サンダースの制服に着替えた秋山さんは、途中でサンダースの自慢のアメリカ産戦車、シャーマンを撮影したりして、実に楽しそうだ。

 

 そして、大胆に作戦会議室に潜入する。

 ケイさんが戦車の構成を読み上げる。ふむ、さすがに油断はないようだ。ファイアフライも出てくるか。

 

 フラッグ車の護衛が居ないのは朗報だな。さすが、秋山さん。見つかるリスクを背負っても必要な情報は手に入れようとする。

 西住さんの為なら危険も犯すということか。忠犬タイプだね。参謀か補佐に回ると非常に力を発揮してくれるだろう。

 

 

『第六機甲師団オッドボール三等軍曹であります』

 

『偽物だぁー!』

 

『やぁ、優花里。なんでここに居るんだい?』

 

『ええっ? 玲香殿こそなんで堂々と大洗の制服でここにいるのですかー?』

 

『なんでって、隊長のケイさんにサンダースのこと教えてもらおうと思って――携帯で電話したらこっちに会いに来てくれって言われたから来たんだけど……』

 

 映像はここで終わった。

 

「えっ、なんで最後に玲香が?」

「というか、玲香さんが普通に入って行けるなら秋山さんが潜入する意味はなかったと言えるが……」

 

 ギョッとする武部さんと辛辣な冷泉さん。

 

「いやいや、秋山さんは良くやったよ。私だったら、直接ケイさんに聞けたけど、絶対に遠慮して聞けない部分もあるから。そもそも、撮影なんて出来ないしね」

 

 私は秋山さんのフォローを入れる。本当に想像以上だった。すごいなこの人は……。

 

「西住殿、まだ仮編集のレベルですが、少しは参考になりますか?」

 

「うん、とっても参考になったよ。必ず勝てるように何とか作戦を考えてみるね! ありがとう!」

 

 おっ、秋山さん。西住さんにありがとうって言われた瞬間、褒めてもらった犬みたいな顔してるな。そういうとこ、可愛いね。

 

 と、まぁ、こんな感じでサンダースの情報は集まった。私と西住さんはこれを元に作戦を練ることになる。

 

 P.S.秋山さんの小学校時代のパンチパーマにドン引きしました。武部さんの友達いない理由はそれなのではってツッコミは正しいけど、黙っててあげてと思いました。




玲香のせいでサンダースとガチンコ勝負が決定!
結局、原作で大洗が勝てたのってアリサのアシストが大きいですよねー。ケイのルー大柴っぽい言葉遣い難しいっす。
味方も強化するけど、敵も強化してしまうオリ主あるあるが好きなのでこの展開で頑張ります!
次回もよろしくお願いします!

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